残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO

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一章

新たな敵

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 サマンサギルド長がマッピングした羊皮紙の束をふんだくっていき、それをイヴァン副ギルド長と共に食い入るように見始めた。
 多少思うところがない訳じゃないけど、ギルドの歴史はダンジョンとの戦いであったとも言えるしね。あんな風に目の色が変わるの無理ないか。

「えーっと、それでデライラ。この剣、使ってみるかい?」

 魔力供給を必要としない、エンチャントが施された魔剣。
 厳密に言えば魔力供給は必要だけど、使い手が供給するのではなく、魔剣自身が魔力を生産しているとでも言ったらいいだろうか。詳しいメカニズムは分からないけど、ノワールによればそうらしい。

「なんか凄そうな剣なんだけど……いいの?」
「ああ。どうせ僕のパーティには使い手がいないし」

 デライラが遠慮がちに剣を受け取った。

「――!? ショーン、これ、この剣……生きてる?」

 生きてるとはデライラも妙な事を言う。確かに生き物が呼吸をするように、この剣も空気中の魔力を吸収しているかもしれないけど……ああ、そういう意味では生きているって比喩も的外れではないのかな?

「すごい。なんか分かる。これはあたしなんかが所有していい剣じゃない……でも、このダンジョンから出るまでは貸してもらうわね」
「ああ。好きに使うといいよ」

 あげるつもりなんだけどな。でもデライラは頑固だからなぁ。

「ご主人様、第三波が動き出しました。それ以降の階層では動きはないので、恐らくこれで最後かと」

 ノワールがそっと耳打ちしてきた。

「そろそろ来るみたいですよ」

 僕がそう告げると、マップを貪るように見ていた二人も緊張感を取り戻し如何にも戦闘態勢といった雰囲気に変わる。このあたりは流石だよね。

「ショーン。このマップの事とか能力の事とかは取り敢えず後回しだ。だが魔物を片付けたら洗いざらい吐いてもらうからな?」

 下の階層に向かう通路を見据えながら、イヴァン副ギルド長がそんな事を言う。でもね、それは言う訳にはいかないんだよね。

「黙秘させていただきます」

 僕としてはそう答えるしかない。

「なっ、この……」
「イヴァン、まずはあなたが生き残る事ね」

 まさかの答えにイヴァン副ギルド長がちょっとイラついたみたいだけど、そこはサマンサギルド長が上手く抑えてくれた。
 だけど考えてみて欲しい。ギルドとして大事なのは僕の能力なんかじゃないはずだよね。この危機を乗り切って、領主様の期待に応える事じゃないのかなぁ?
 
「サマンサギルド長、敵が来たら魔法攻撃で先制しましょう」
「ん、そうね。魔力が切れたら乱戦に突入という事でいいかしら?」

 僕がサマンサギルド長に現実的な話題を振ると、彼女も方針を打ち出した。もっとも、方針も何もなし崩し的にそうなっちゃうよねって話なんだけど、それでも前衛陣が魔法に巻き込まれるよりはマシだ。

「来ます」

 ノワールの一言で全員の集中力が増していく。初めに現れたのはオーガだ。しかも群れている。二十や三十じゃきかない。さらにゴブリンを従えている。こっちはもう数えるのも面倒なくらいだ。これは手強いから、さっさと魔法で潰しちゃおう。

「後続は頼むわね。極大風刃メガ・ウィンドカッター!」

 先程、第二波の多くを屠った風系統の大威力魔法だ。どうやらサマンサギルド長は風系統の魔法が得意みたいだね。右手を水平に薙ぐと、巨大な風の刃が前方に広がりながら飛んで行った。勿論風なんて見えるものじゃないのでそう感じただけなんだけどね。
 技の名前を詠唱したり、今右手を振ったようなアクションを起こしたりするのもイメージ力をアップするには有効な方法だ。イメージが明確であればあるほど、それを汲み取って魔法を発現させる精霊達もやりやすいという事なんだろうね。
 
 サマンサギルド長が放った極大風刃はオーガや取り巻きのゴブリンを薙ぎ払い、視界の中にいる敵をほぼ全滅させてしまった。流石の威力だけど、サマンサギルド長は肩で息をしている。全力の一撃だったんだね。
 それじゃあ僕の番だ。僕には闇魔法を封印しながらあれだけの火力を叩き出せる魔法はない。だから、こうだ。

「みんな! 後続が来たら僕が足を止めるから、張り切って倒しちゃって!」

 続いて現れたのはリザードマン、オーガ、ワーウルフ、それに……コカトリス、か。
これは厄介な事になったなぁ……

 コカトリスはニワトリのような身体に蛇のような尻尾を持つ魔物だ。身体はニワトリなんかと比べ物にならないくらい大きく、人間と同じくらいの大きさがある。
 戦闘力自体はそれほでもない。尻尾の攻撃に毒があるくらいで、熟練の冒険者や戦士なら対応は可能だ。問題はそのスキルにある。
 スキルは視線。個体によって違いはあるが、その目に見られただけで石化したり焼かれたり、毒に冒されたりという厄介さ。
 大型の盾を持ったタンク役が注意を引き付け、その間に死角から仕留める、といった戦法が有効だけど、この乱戦になりやすい状況ではそれは無理だ。そもそも盾持ちのタンク役なんていないしね。
 というか、この間の合同クエストで潜ったときは、コカトリスなんかいなかったのに。

 ただ、僕にはそれに対処できる力がある。どうするか。
 ここで使うべきか。使ってしまったら後には引けない。
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