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四章
ユーイング、呆れたり驚いたり。
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デライラ、そしてルークスにグランツが付いている女王陛下は当面は心配ないだろう。しかし危険なのは女王陛下の側に付いた有力者たちだ。すでに敵対勢力の密偵や工作員がオストバーグに入り込んでいる事から、直接女王陛下を狙うばかりでなく、周辺から崩していく事も考えられるもんね。
ヴィルベルヴィント様が危惧しているのはそこで、僅かな手勢で王都に赴いたオスト公爵の身を案じるのも無理のない事だ。
かと言って、ヴィルベルヴィント様がオストバーグを留守にして自ら王都に向かうのは愚かだろうね。ノワールが敵の密偵や工作員を排除したとは言え、やはり本拠地はきっちりと守ってもらった方がいいよね。
「僕達は明朝王都に向けて出発します」
「済まない。よろしく頼むよ」
僕の肩書は冒険者だ。家柄や土地に囚われる事なく自由に動ける。ましてやプラチナランカーともなれば、例え王侯貴族と言えども僕を縛る事は簡単には出来ないだろう。
それだけに、自分でしっかり敵を見極めなくちゃいけない。それも現在のところははっきりしている。ノワールを封印した四大精霊王の残り三人。そして彼等を唆し、洗脳した黒幕だ。ノワールの敵は僕の敵だ。そしてその敵が不穏な動きを見せようとしている。
「僕の意思であり、目的でもありますから」
敵に回った精霊王達はぶん殴って正気に戻すし、四公家だろうが王家だろうが敵になれば叩き潰す。これは僕がノワールを復活させた時に定められた運命なんだろうね。
黒幕を倒して光と闇の存在が世界に認められた時、その世界がどう変わるかなんて分からない。それでも僕は長い間封印されてきたノワールの為に戦うんだ。
△▼△
翌朝オストバーグを出立した僕等は、影泳ぎで王都に浮上した。したんだけど……
浮上した瞬間、猛烈なパンチが飛んできたんだ。アーテルがそれを手のひらで受け止めると、パンチを放ってきた相手の緊張が解けた。
「……お前らか。もう少し普通に入って来やがれ」
そう、僕達は王都の三つの門を全てスルーし、直接冒険者ギルド本部のグランドマスター執務室に浮上したんだ。気配を察知して迷いなく攻撃してくるあたり、流石はユーイングさんだね。受け止めたのがアーテルじゃなくてヨシュア君だったら、ミンチになっている程の強烈な一撃だったよ。
ともかく、拳を引いたユーイングさんは、そのまま自分のデスクへと戻り、執務用の椅子にどっかり腰掛けた。
「で、あっという間に戻って来て、一体どうしたってんだ?」
ちょっときな臭い顔をして僕にそう問いかける。いや、きな臭いのは国の情勢でしょ。
「オスト公爵がルーバーに来てるはずなんですが」
ルーバーっていうのは王都の名前だ。
「ああ、オスト公はルーバーのオスト家別荘に詰めているよ。連れて来た手勢が警護してるからすぐにどうこうって事はない。しかもオスト公が出張ってきたおかげで王都の勢力がいい具合に拮抗してきた」
つまりオスト公が来るまでは女王陛下を擁護する勢力が劣勢だった訳か。それを支えていたのはユーイングさんなのかも知れないね。
「一応、陛下からの依頼って事にして、デライラの嬢ちゃん以外にも腕利きの冒険者を警護に派遣してある。嬢ちゃんやルークス、グランツの実力から言えば余程の事が無い限り陛下の身は安全だろうが、警護を厚く見せるのはそれだけで抑止力になるからな」
「そうなんですね。ありがとうございます」
「……それで、お前らは何しに来たんだ? それとそっちの兄さんは?」
ユーイングさんがそんな疑問を挟むのも無理はないか。ただ、ユーイングさん個人は信用しているけど、冒険者ギルドという組織は決して一枚岩じゃない。冒険者個人の判断で敵になるか味方になるか分からない。果たして本当の事を言うべきか。
「お初にお目に掛かります、グランドマスター。私はヨシュア・グリペン。グリペン侯爵家の次男です」
「――!! これは失礼しました、ヨシュア公子。私が冒険者ギルドのグランドマスター、ユーイングです」
さすがにヨシュア君の素性を明かすとユーイングさんも畏まった態度になった。ただし、服装はいつものラフなシャツによれたジャケットを腕まくりしている、全然畏まっていない格好なんだけどね。
「ああ、いいですよ、普段通りにして下さい。別に公式な訪問という訳ではないので」
「あ、ああ。そう言ってもらうと助かるな」
「で、私がショーン君のパーティを護衛として指名依頼を出しましてね。ある人を探して各地を巡っているのです。王都に寄ったのはそのついでですね」
「ほう?」
ヨシュア君はそう告げるが、ユーイングさんは完全に信用した訳ではないね。目が探っているような感じでヨシュア君を見ている。
今の情勢を考えれば、グリペン家という大貴族の次男が王都に現れた。それは何か政情に大きな影響を及ぼす可能性がある。しかも、プラチナランカーの冒険者を引き連れてだもんね。
でも、ヨシュア君の目的は第一が『黒曜の君』の情報収集な訳で、一切嘘は言っていない。中々面白いやり取りだ。
「ヨシュア君は――」
「いやヨシュア君ってお前……」
あまりに近しい僕の呼び方にユーイングさんがドン引きするけど、構わず続けた。
「クリーム色の髪に褐色の肌、それに黒曜のような黒い瞳。そんな女性を探しているんです。侍女を引き連れて街で買い物をしていた事から、貴族か裕福な家庭のお嬢さんではないかと」
「褐色ねえ……」
褐色と聞いてユーイングさんがノワールを見る。ノワールは静かに影収納から出したティーカップを口に運んでいた。あ、ごめん、僕にも同じのくれる?
「少なくとも貴族の中には褐色の肌をした一族はいねえなあ。クリーム色の髪と言えばドラケン侯爵家がそうだが……」
そしてユーイングさんが言い淀む。
「何か?」
「いや、気を悪くしねえで聞いて欲しいんだが、俺が昔依頼を受けて旅をしている時にな――」
ユーイングさんの口から語られた内容に、僕達は激しく嫌悪感を覚える事になった。
ヴィルベルヴィント様が危惧しているのはそこで、僅かな手勢で王都に赴いたオスト公爵の身を案じるのも無理のない事だ。
かと言って、ヴィルベルヴィント様がオストバーグを留守にして自ら王都に向かうのは愚かだろうね。ノワールが敵の密偵や工作員を排除したとは言え、やはり本拠地はきっちりと守ってもらった方がいいよね。
「僕達は明朝王都に向けて出発します」
「済まない。よろしく頼むよ」
僕の肩書は冒険者だ。家柄や土地に囚われる事なく自由に動ける。ましてやプラチナランカーともなれば、例え王侯貴族と言えども僕を縛る事は簡単には出来ないだろう。
それだけに、自分でしっかり敵を見極めなくちゃいけない。それも現在のところははっきりしている。ノワールを封印した四大精霊王の残り三人。そして彼等を唆し、洗脳した黒幕だ。ノワールの敵は僕の敵だ。そしてその敵が不穏な動きを見せようとしている。
「僕の意思であり、目的でもありますから」
敵に回った精霊王達はぶん殴って正気に戻すし、四公家だろうが王家だろうが敵になれば叩き潰す。これは僕がノワールを復活させた時に定められた運命なんだろうね。
黒幕を倒して光と闇の存在が世界に認められた時、その世界がどう変わるかなんて分からない。それでも僕は長い間封印されてきたノワールの為に戦うんだ。
△▼△
翌朝オストバーグを出立した僕等は、影泳ぎで王都に浮上した。したんだけど……
浮上した瞬間、猛烈なパンチが飛んできたんだ。アーテルがそれを手のひらで受け止めると、パンチを放ってきた相手の緊張が解けた。
「……お前らか。もう少し普通に入って来やがれ」
そう、僕達は王都の三つの門を全てスルーし、直接冒険者ギルド本部のグランドマスター執務室に浮上したんだ。気配を察知して迷いなく攻撃してくるあたり、流石はユーイングさんだね。受け止めたのがアーテルじゃなくてヨシュア君だったら、ミンチになっている程の強烈な一撃だったよ。
ともかく、拳を引いたユーイングさんは、そのまま自分のデスクへと戻り、執務用の椅子にどっかり腰掛けた。
「で、あっという間に戻って来て、一体どうしたってんだ?」
ちょっときな臭い顔をして僕にそう問いかける。いや、きな臭いのは国の情勢でしょ。
「オスト公爵がルーバーに来てるはずなんですが」
ルーバーっていうのは王都の名前だ。
「ああ、オスト公はルーバーのオスト家別荘に詰めているよ。連れて来た手勢が警護してるからすぐにどうこうって事はない。しかもオスト公が出張ってきたおかげで王都の勢力がいい具合に拮抗してきた」
つまりオスト公が来るまでは女王陛下を擁護する勢力が劣勢だった訳か。それを支えていたのはユーイングさんなのかも知れないね。
「一応、陛下からの依頼って事にして、デライラの嬢ちゃん以外にも腕利きの冒険者を警護に派遣してある。嬢ちゃんやルークス、グランツの実力から言えば余程の事が無い限り陛下の身は安全だろうが、警護を厚く見せるのはそれだけで抑止力になるからな」
「そうなんですね。ありがとうございます」
「……それで、お前らは何しに来たんだ? それとそっちの兄さんは?」
ユーイングさんがそんな疑問を挟むのも無理はないか。ただ、ユーイングさん個人は信用しているけど、冒険者ギルドという組織は決して一枚岩じゃない。冒険者個人の判断で敵になるか味方になるか分からない。果たして本当の事を言うべきか。
「お初にお目に掛かります、グランドマスター。私はヨシュア・グリペン。グリペン侯爵家の次男です」
「――!! これは失礼しました、ヨシュア公子。私が冒険者ギルドのグランドマスター、ユーイングです」
さすがにヨシュア君の素性を明かすとユーイングさんも畏まった態度になった。ただし、服装はいつものラフなシャツによれたジャケットを腕まくりしている、全然畏まっていない格好なんだけどね。
「ああ、いいですよ、普段通りにして下さい。別に公式な訪問という訳ではないので」
「あ、ああ。そう言ってもらうと助かるな」
「で、私がショーン君のパーティを護衛として指名依頼を出しましてね。ある人を探して各地を巡っているのです。王都に寄ったのはそのついでですね」
「ほう?」
ヨシュア君はそう告げるが、ユーイングさんは完全に信用した訳ではないね。目が探っているような感じでヨシュア君を見ている。
今の情勢を考えれば、グリペン家という大貴族の次男が王都に現れた。それは何か政情に大きな影響を及ぼす可能性がある。しかも、プラチナランカーの冒険者を引き連れてだもんね。
でも、ヨシュア君の目的は第一が『黒曜の君』の情報収集な訳で、一切嘘は言っていない。中々面白いやり取りだ。
「ヨシュア君は――」
「いやヨシュア君ってお前……」
あまりに近しい僕の呼び方にユーイングさんがドン引きするけど、構わず続けた。
「クリーム色の髪に褐色の肌、それに黒曜のような黒い瞳。そんな女性を探しているんです。侍女を引き連れて街で買い物をしていた事から、貴族か裕福な家庭のお嬢さんではないかと」
「褐色ねえ……」
褐色と聞いてユーイングさんがノワールを見る。ノワールは静かに影収納から出したティーカップを口に運んでいた。あ、ごめん、僕にも同じのくれる?
「少なくとも貴族の中には褐色の肌をした一族はいねえなあ。クリーム色の髪と言えばドラケン侯爵家がそうだが……」
そしてユーイングさんが言い淀む。
「何か?」
「いや、気を悪くしねえで聞いて欲しいんだが、俺が昔依頼を受けて旅をしている時にな――」
ユーイングさんの口から語られた内容に、僕達は激しく嫌悪感を覚える事になった。
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