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四章
企みを逆手に取って
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それから更に表世界の時間で四日程。僕達はザフト領の西側、ドラケン領との領境に程近い街に紛れ込んだ。今回は正規の手続きを踏んで関所を通り、街に入っている。
冒険者がドラケン領にあるダンジョンを目指して逗留するのに、この街は途中の宿場町としてよく使われているらしい。ヨシュア君は僕達のパーティのポーターとして連れてきた、冒険者見習いという事にしておいた。身に付けた装備は上等なものだけど、プラチナランカーがいるパーティのポーターなら、金回りもいいのだろうと周囲が勝手に誤解してくれるので楽だね。
ここまでの旅路で、表の時間換算で一か月程の時間を影の中で修行に当てた。僕もヨシュア君も相当に腕を上げたし、風属性の極大魔法もいくつかストックを作った。
さすがにこのレベルの魔法となると、シルフの加護が無ければ僕には無理だったね。試しに他の属性で似たような威力の魔法を作ろうとしたけど無理だった。
ちなみに、その極大魔法の威力なら、街一つくらいなら壊滅させられるよ。
ただし、威力の高い魔法はどれも大味で、敵味方の区別なく被害が出てしまう。例えばダンジョンの中のような狭い空間では使い勝手が悪いんだよね。今後は強力なボス一体に対して大ダメージを与えられるような、局地的に効果が出る技も考えないといけないかな。
僕達は昼間のうちに食料品を買い込んだり、樽に水を用意して影収納にぶち込み、宿は取らずに街を見下ろせる小高い山での野営を選択した。もちろん、これには理由があるんだ。
この街はザフト公爵の寄子の貴族の中でも有力とされる、カイザード子爵が治めているところだ。
「日も暮れたし、そろそろかな?」
「そうだね。今からなら領境を超えて、ドラケン側の村に着く頃にはちょうど深夜になる。野盗に扮して襲うには持ってこいだ」
僕とヨシュア君がこういう会話をしているのは、もちろんノワールが掴んできた情報による。影に忍んでカイザード子爵が部下に指示を出すのを聞いてきたというのだから間違いない。
「それにしても、悪知恵が働くものですね。わざわざ装備もバラバラな兵を百人近くも集め、それに村を襲わせるとは」
呆れた様子でノワールが呟く。
彼女は悪知恵と表現したけど、実際これはかなり有効な手段ではある。百人にも及ぶ大規模盗賊団が領内をうろついているとなれば、ドラケン侯爵もそちらを警戒しなければならない。
……ドラケン侯爵が末端の村を見捨てるような人間ならば別だけどね。
それはそれとして、カイザード子爵が取った手段は、僕みたいな平民からしたら到底許せるもんじゃない。手始めにカイザード子爵を潰させてもらおうか。
「動き出したな」
アーテルが眼下で蠢く松明の列を見ながら呟いた。ノワールの報告通り、百人程の隊列だ。街道を使わずに谷沿いに進むあたり、明らかになってはいけない行動である事が分かる。
僕達はそれと並ぶように、山道を移動。連中のターゲットになる村が特定出来たら、その村に先行して奴らを迎え撃つ算段だ。勿論、たまたま居合わせた旅の冒険者としてね。
暫く歩くとノワールが声を掛けてきた。
「この位置からだと、奴らの狙いはハンセン村に間違いないでしょう」
「よし、じゃあ影泳ぎで先行しよう」
△▼△
僕達四人は、簡単な木の柵で囲まれた村の前で浮上した。
「こんばんはー! すみません、旅の冒険者なんですが、一晩ここで夜を明かしても構いませんかー?」
そう叫ぶと、少しして村の長老らしき人が数人の男を引き連れてやってきた。
「お前さん達がその冒険者か。何しに来た?」
白い長髪を後ろに流した老人だが、背筋が曲がって杖を突いている割には威厳と言うか、迫力がある。
「僕はこのパーティのリーダー、ショーンと言います、ドラケン領にあるというダンジョンで一仕事しようとこちらに赴いたのですが、途中で道に迷ってしまいまして。よかったらどこか場所を貸していただけないかと思いまして」
「フム……生憎この村には宿なんぞないし、食料も分けてやれるほど裕福ではないが……そうじゃな、井戸くらいは好きに使うがいい。冒険者なら野営もお手の物じゃろう?」
「ありがとうございます」
「村の中央に広場がある。そこの隅なら好きに使うがええ。くれぐれも悪さをせんようにな」
そう言い残して長老は立ち去った。連れの若い男が一人残り、僕達を広場に案内してくれるようだ。
「よう、この村に一泊の宿を求めてくる冒険者は割と多いんだ。さっきも言ったように宿はないからな、いつも広場を使ってもらってるんだ。その冒険者が遺していった石組みの簡単な竈もあるから使ったらいい」
「へえ、そうなんですね。助かります」
そんな雑談を交わしながら広場へ行くと、確かに野営の跡と思しき場所がある。なるほど、ここなら村の連中から丸見えだ。監視されながら一晩過ごすって事だね。
そんな心の内を見透かしたのか、若い男が言う。
「まあ、あんまり居心地は良くねえかもしれねえが、我慢してくれや。得体の知れねえ余所モンを入れない村も多いんでな。この村はまだマシな方さ」
「そうなんですね。もしも魔物などが襲ってきたら、助勢しますので」
「はは、そりゃありがてえ。じゃあな。お、そうだ、ハンセン村へようこそ!」
中々気のいい男みたいだ。こりゃあますますカイザード子爵の企みから守らなきゃいけないね。
冒険者がドラケン領にあるダンジョンを目指して逗留するのに、この街は途中の宿場町としてよく使われているらしい。ヨシュア君は僕達のパーティのポーターとして連れてきた、冒険者見習いという事にしておいた。身に付けた装備は上等なものだけど、プラチナランカーがいるパーティのポーターなら、金回りもいいのだろうと周囲が勝手に誤解してくれるので楽だね。
ここまでの旅路で、表の時間換算で一か月程の時間を影の中で修行に当てた。僕もヨシュア君も相当に腕を上げたし、風属性の極大魔法もいくつかストックを作った。
さすがにこのレベルの魔法となると、シルフの加護が無ければ僕には無理だったね。試しに他の属性で似たような威力の魔法を作ろうとしたけど無理だった。
ちなみに、その極大魔法の威力なら、街一つくらいなら壊滅させられるよ。
ただし、威力の高い魔法はどれも大味で、敵味方の区別なく被害が出てしまう。例えばダンジョンの中のような狭い空間では使い勝手が悪いんだよね。今後は強力なボス一体に対して大ダメージを与えられるような、局地的に効果が出る技も考えないといけないかな。
僕達は昼間のうちに食料品を買い込んだり、樽に水を用意して影収納にぶち込み、宿は取らずに街を見下ろせる小高い山での野営を選択した。もちろん、これには理由があるんだ。
この街はザフト公爵の寄子の貴族の中でも有力とされる、カイザード子爵が治めているところだ。
「日も暮れたし、そろそろかな?」
「そうだね。今からなら領境を超えて、ドラケン側の村に着く頃にはちょうど深夜になる。野盗に扮して襲うには持ってこいだ」
僕とヨシュア君がこういう会話をしているのは、もちろんノワールが掴んできた情報による。影に忍んでカイザード子爵が部下に指示を出すのを聞いてきたというのだから間違いない。
「それにしても、悪知恵が働くものですね。わざわざ装備もバラバラな兵を百人近くも集め、それに村を襲わせるとは」
呆れた様子でノワールが呟く。
彼女は悪知恵と表現したけど、実際これはかなり有効な手段ではある。百人にも及ぶ大規模盗賊団が領内をうろついているとなれば、ドラケン侯爵もそちらを警戒しなければならない。
……ドラケン侯爵が末端の村を見捨てるような人間ならば別だけどね。
それはそれとして、カイザード子爵が取った手段は、僕みたいな平民からしたら到底許せるもんじゃない。手始めにカイザード子爵を潰させてもらおうか。
「動き出したな」
アーテルが眼下で蠢く松明の列を見ながら呟いた。ノワールの報告通り、百人程の隊列だ。街道を使わずに谷沿いに進むあたり、明らかになってはいけない行動である事が分かる。
僕達はそれと並ぶように、山道を移動。連中のターゲットになる村が特定出来たら、その村に先行して奴らを迎え撃つ算段だ。勿論、たまたま居合わせた旅の冒険者としてね。
暫く歩くとノワールが声を掛けてきた。
「この位置からだと、奴らの狙いはハンセン村に間違いないでしょう」
「よし、じゃあ影泳ぎで先行しよう」
△▼△
僕達四人は、簡単な木の柵で囲まれた村の前で浮上した。
「こんばんはー! すみません、旅の冒険者なんですが、一晩ここで夜を明かしても構いませんかー?」
そう叫ぶと、少しして村の長老らしき人が数人の男を引き連れてやってきた。
「お前さん達がその冒険者か。何しに来た?」
白い長髪を後ろに流した老人だが、背筋が曲がって杖を突いている割には威厳と言うか、迫力がある。
「僕はこのパーティのリーダー、ショーンと言います、ドラケン領にあるというダンジョンで一仕事しようとこちらに赴いたのですが、途中で道に迷ってしまいまして。よかったらどこか場所を貸していただけないかと思いまして」
「フム……生憎この村には宿なんぞないし、食料も分けてやれるほど裕福ではないが……そうじゃな、井戸くらいは好きに使うがいい。冒険者なら野営もお手の物じゃろう?」
「ありがとうございます」
「村の中央に広場がある。そこの隅なら好きに使うがええ。くれぐれも悪さをせんようにな」
そう言い残して長老は立ち去った。連れの若い男が一人残り、僕達を広場に案内してくれるようだ。
「よう、この村に一泊の宿を求めてくる冒険者は割と多いんだ。さっきも言ったように宿はないからな、いつも広場を使ってもらってるんだ。その冒険者が遺していった石組みの簡単な竈もあるから使ったらいい」
「へえ、そうなんですね。助かります」
そんな雑談を交わしながら広場へ行くと、確かに野営の跡と思しき場所がある。なるほど、ここなら村の連中から丸見えだ。監視されながら一晩過ごすって事だね。
そんな心の内を見透かしたのか、若い男が言う。
「まあ、あんまり居心地は良くねえかもしれねえが、我慢してくれや。得体の知れねえ余所モンを入れない村も多いんでな。この村はまだマシな方さ」
「そうなんですね。もしも魔物などが襲ってきたら、助勢しますので」
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