残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO

文字の大きさ
174 / 206
四章

阻止と恩の押し売り

しおりを挟む
 予めノワールが調査してくれていた、カイザード子爵の屋敷の内部。領境の街を治めている貴族の屋敷だけあって、それなりに防御力はありそうだ。ただし、影の中を移動する僕にとっては侵入を阻めるようなものはないんだけど。
 面倒な事はせず、僕は直接カイザード子爵の執務室へと浮上した。当然、風魔法の応用で室内の声は外に漏れないようにしてある。
 僕はそっと子爵の後ろに立った。執務机に向かっていた彼は、意外にも真面目に仕事をしているようだ――ん? いや、手紙を書いているようだけど……

「なるほど、他のザフト公爵の寄子にも連携して、さらにドラケン領の村を襲わせる、ですか。ふーん、どれどれ?」

 カイザードはどうやら他の寄子にも書状を書いているようだった。三通ほどあるって事は、ターゲットはあと三人だね。

「なっ、なんだ貴様は! どこから入った!? 侵入者だ! 誰ぞおらんかーーっ!」
「無駄ですよ。風の結界で外には声は漏れませんので。ああ、申し遅れました。冒険者のショーンと申します」

 慌てふためくカイザードを前に、僕は折り目正しく礼をして自己紹介した。

「ぼ、冒険者だと……? その冒険者が何用だ?」

 カイザードは剣の柄に手を掛けながら、立ち上がり、僕から距離を取ろうとする。

「ええ、領境を超えた先にある村で、大規模な盗賊団が現れまして。それを壊滅させたんですが、どうやらリーダーの男が言うにはアジトはこの街にあると言うんですよ。であれば、ここを治めている子爵に引き渡すのが筋だと思いまして」

 そう言いながら、影収納からコンスをドサリと放り投げる。

「な、コンス!?」
「おや、ご存知なのですか?」
「い、いや、こやつには我等も手を焼いておったのだ。よくやってくれた。そ、そうだ、褒美をやろう! 何だ? 金か? 女か?」

 ははは。全く白々しい。汗だくになりながら作り笑いを浮かべてなんとかこの場をやり過ごそうとしているのがバレバレだ。

「いえ、どちらも間に合ってますので」
「で、では何だ? 何が望みだ?」
「そうですねえ……子爵が今書かれていた書状を見るに、どうやら他の代官様達も盗賊の件でお困りのようですね?」
「あ、いや、それは……」

 今こんな手紙を書いて、さらに悪行を重ねる算段をしていたんだから、始めから言い逃れなんて出来る訳もない。漸く彼にもそれが分かったんだろう。

「きいいえええええええっ!」

 ついに腰の剣を抜いて、奇声を上げながら襲い掛かってきた。

 ――ギィン!

 特に何という事はない、鈍い斬撃を右手のガントレットブーメランで弾き、左手で風弾を生成して顔面にブチ当てる。

「フガッ!」

 鼻が潰れ、歯も折れたかな? 顔は血だらけで吹き飛んでいく。

「これはザフト公爵の指示で?」
「……」

 これくらいじゃ口を割らないか。それじゃあ今度は石でもぶつけてみるか。

「いや、ショーン君。僕にやらせてくれないかな」

 土属性魔法で石弾を生成しようとしたところで、影からヨシュア君が出て来た。とても厳しい顔をしている。言葉もどこか、怒りを押し殺しながら発している。

「カイザード子爵、私はグリペン侯爵家の第二子、ヨシュア・グリペンだ」
「――!?」

 突然影から現れたヨシュア君に、カイザードは驚いて声も出ない。

「全く、同じ貴族として私は恥ずかしい。いくら他領とはいえ、守るべき平民を賊に扮して襲うとは。断じて許し難い!」
「あぎゃああああ!」

 うわあ、ヨシュア君もかなりえぐい。赤熱化したフレイムブレイドをカイザードの太ももに突き刺しちゃった。それだけ彼の怒りが大きいって事なんだろうけど。

「ザ、ザフト公爵閣下の命なのだ! 断れる訳がない!」
「ザフト公の命だという証拠は?」
「机の引き出しの中――」

 そこまで聞くと、ヨシュア君はカイザードの喉笛を掻き切った。
 次いで、カイザードの机を漁ると、出るわ出るわ、ザフト公爵から寄せられた命令書。それは配下の貴族の名前も羅列されており、いずれもドラケン領内で暗躍させる内容だった。

「さすがにこれだけの貴族を葬ると、ザフト公も領地経営が成り立たなくなるかもね」
「なに、構わないだろう? 下級貴族にも優秀な人材はいるし、何なら市井に埋もれている人材を登用する手もあるさ。陛下の裁量次第でどうとでもなるよ」

 僕の心配を余所に、ヨシュア君はかなり斬新な考えを持っているようで、将来に向けて何等かのビジョンは有るらしい。
 そして僕達は影泳ぎで次の貴族の下へと向かう。証拠の書状を手に、一晩のうちにザフト領の西側を治める貴族を闇へと葬った。
 こういう事をしていると、やっぱり闇属性って恐ろしい属性だと思うね。
しおりを挟む
感想 283

あなたにおすすめの小説

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
 ブラック企業で働く社畜の辻風ハヤテは、ある日超人気ダンジョン配信者のひかるんがイレギュラーモンスターに襲われているところに遭遇する。  ひかるんに辻ヒールをして助けたハヤテは、偶然にもひかるんの配信に顔が映り込んでしまう。  ひかるんを助けた英雄であるハヤテは、辻ヒールのおじさんとして有名になってしまう。  ダンジョンから帰宅したハヤテは、後ろから謎のもふもふがついてきていることに気づく。  なんと、謎のもふもふの正体はダンジョンから出てきたモンスターだった。  もふもふは怪我をしていて、ハヤテに助けを求めてきた。  もふもふの怪我を治すと、懐いてきたので飼うことに。  モンスターをペットにしている動画を配信するハヤテ。  なんとペット動画に自分の顔が映り込んでしまう。  顔バレしたことで、世間に辻ヒールのおじさんだとバレてしまい……。  辻ヒールのおじさんがペット動画を出しているということで、またたくまに動画はバズっていくのだった。 他のサイトにも掲載 なろう日間1位 カクヨムブクマ7000  

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

処理中です...