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四章
阻止と恩の押し売り
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予めノワールが調査してくれていた、カイザード子爵の屋敷の内部。領境の街を治めている貴族の屋敷だけあって、それなりに防御力はありそうだ。ただし、影の中を移動する僕にとっては侵入を阻めるようなものはないんだけど。
面倒な事はせず、僕は直接カイザード子爵の執務室へと浮上した。当然、風魔法の応用で室内の声は外に漏れないようにしてある。
僕はそっと子爵の後ろに立った。執務机に向かっていた彼は、意外にも真面目に仕事をしているようだ――ん? いや、手紙を書いているようだけど……
「なるほど、他のザフト公爵の寄子にも連携して、さらにドラケン領の村を襲わせる、ですか。ふーん、どれどれ?」
カイザードはどうやら他の寄子にも書状を書いているようだった。三通ほどあるって事は、ターゲットはあと三人だね。
「なっ、なんだ貴様は! どこから入った!? 侵入者だ! 誰ぞおらんかーーっ!」
「無駄ですよ。風の結界で外には声は漏れませんので。ああ、申し遅れました。冒険者のショーンと申します」
慌てふためくカイザードを前に、僕は折り目正しく礼をして自己紹介した。
「ぼ、冒険者だと……? その冒険者が何用だ?」
カイザードは剣の柄に手を掛けながら、立ち上がり、僕から距離を取ろうとする。
「ええ、領境を超えた先にある村で、大規模な盗賊団が現れまして。それを壊滅させたんですが、どうやらリーダーの男が言うにはアジトはこの街にあると言うんですよ。であれば、ここを治めている子爵に引き渡すのが筋だと思いまして」
そう言いながら、影収納からコンスをドサリと放り投げる。
「な、コンス!?」
「おや、ご存知なのですか?」
「い、いや、こやつには我等も手を焼いておったのだ。よくやってくれた。そ、そうだ、褒美をやろう! 何だ? 金か? 女か?」
ははは。全く白々しい。汗だくになりながら作り笑いを浮かべてなんとかこの場をやり過ごそうとしているのがバレバレだ。
「いえ、どちらも間に合ってますので」
「で、では何だ? 何が望みだ?」
「そうですねえ……子爵が今書かれていた書状を見るに、どうやら他の代官様達も盗賊の件でお困りのようですね?」
「あ、いや、それは……」
今こんな手紙を書いて、さらに悪行を重ねる算段をしていたんだから、始めから言い逃れなんて出来る訳もない。漸く彼にもそれが分かったんだろう。
「きいいえええええええっ!」
ついに腰の剣を抜いて、奇声を上げながら襲い掛かってきた。
――ギィン!
特に何という事はない、鈍い斬撃を右手のガントレットで弾き、左手で風弾を生成して顔面にブチ当てる。
「フガッ!」
鼻が潰れ、歯も折れたかな? 顔は血だらけで吹き飛んでいく。
「これはザフト公爵の指示で?」
「……」
これくらいじゃ口を割らないか。それじゃあ今度は石でもぶつけてみるか。
「いや、ショーン君。僕にやらせてくれないかな」
土属性魔法で石弾を生成しようとしたところで、影からヨシュア君が出て来た。とても厳しい顔をしている。言葉もどこか、怒りを押し殺しながら発している。
「カイザード子爵、私はグリペン侯爵家の第二子、ヨシュア・グリペンだ」
「――!?」
突然影から現れたヨシュア君に、カイザードは驚いて声も出ない。
「全く、同じ貴族として私は恥ずかしい。いくら他領とはいえ、守るべき平民を賊に扮して襲うとは。断じて許し難い!」
「あぎゃああああ!」
うわあ、ヨシュア君もかなりえぐい。赤熱化したフレイムブレイドをカイザードの太ももに突き刺しちゃった。それだけ彼の怒りが大きいって事なんだろうけど。
「ザ、ザフト公爵閣下の命なのだ! 断れる訳がない!」
「ザフト公の命だという証拠は?」
「机の引き出しの中――」
そこまで聞くと、ヨシュア君はカイザードの喉笛を掻き切った。
次いで、カイザードの机を漁ると、出るわ出るわ、ザフト公爵から寄せられた命令書。それは配下の貴族の名前も羅列されており、いずれもドラケン領内で暗躍させる内容だった。
「さすがにこれだけの貴族を葬ると、ザフト公も領地経営が成り立たなくなるかもね」
「なに、構わないだろう? 下級貴族にも優秀な人材はいるし、何なら市井に埋もれている人材を登用する手もあるさ。陛下の裁量次第でどうとでもなるよ」
僕の心配を余所に、ヨシュア君はかなり斬新な考えを持っているようで、将来に向けて何等かのビジョンは有るらしい。
そして僕達は影泳ぎで次の貴族の下へと向かう。証拠の書状を手に、一晩のうちにザフト領の西側を治める貴族を闇へと葬った。
こういう事をしていると、やっぱり闇属性って恐ろしい属性だと思うね。
面倒な事はせず、僕は直接カイザード子爵の執務室へと浮上した。当然、風魔法の応用で室内の声は外に漏れないようにしてある。
僕はそっと子爵の後ろに立った。執務机に向かっていた彼は、意外にも真面目に仕事をしているようだ――ん? いや、手紙を書いているようだけど……
「なるほど、他のザフト公爵の寄子にも連携して、さらにドラケン領の村を襲わせる、ですか。ふーん、どれどれ?」
カイザードはどうやら他の寄子にも書状を書いているようだった。三通ほどあるって事は、ターゲットはあと三人だね。
「なっ、なんだ貴様は! どこから入った!? 侵入者だ! 誰ぞおらんかーーっ!」
「無駄ですよ。風の結界で外には声は漏れませんので。ああ、申し遅れました。冒険者のショーンと申します」
慌てふためくカイザードを前に、僕は折り目正しく礼をして自己紹介した。
「ぼ、冒険者だと……? その冒険者が何用だ?」
カイザードは剣の柄に手を掛けながら、立ち上がり、僕から距離を取ろうとする。
「ええ、領境を超えた先にある村で、大規模な盗賊団が現れまして。それを壊滅させたんですが、どうやらリーダーの男が言うにはアジトはこの街にあると言うんですよ。であれば、ここを治めている子爵に引き渡すのが筋だと思いまして」
そう言いながら、影収納からコンスをドサリと放り投げる。
「な、コンス!?」
「おや、ご存知なのですか?」
「い、いや、こやつには我等も手を焼いておったのだ。よくやってくれた。そ、そうだ、褒美をやろう! 何だ? 金か? 女か?」
ははは。全く白々しい。汗だくになりながら作り笑いを浮かべてなんとかこの場をやり過ごそうとしているのがバレバレだ。
「いえ、どちらも間に合ってますので」
「で、では何だ? 何が望みだ?」
「そうですねえ……子爵が今書かれていた書状を見るに、どうやら他の代官様達も盗賊の件でお困りのようですね?」
「あ、いや、それは……」
今こんな手紙を書いて、さらに悪行を重ねる算段をしていたんだから、始めから言い逃れなんて出来る訳もない。漸く彼にもそれが分かったんだろう。
「きいいえええええええっ!」
ついに腰の剣を抜いて、奇声を上げながら襲い掛かってきた。
――ギィン!
特に何という事はない、鈍い斬撃を右手のガントレットで弾き、左手で風弾を生成して顔面にブチ当てる。
「フガッ!」
鼻が潰れ、歯も折れたかな? 顔は血だらけで吹き飛んでいく。
「これはザフト公爵の指示で?」
「……」
これくらいじゃ口を割らないか。それじゃあ今度は石でもぶつけてみるか。
「いや、ショーン君。僕にやらせてくれないかな」
土属性魔法で石弾を生成しようとしたところで、影からヨシュア君が出て来た。とても厳しい顔をしている。言葉もどこか、怒りを押し殺しながら発している。
「カイザード子爵、私はグリペン侯爵家の第二子、ヨシュア・グリペンだ」
「――!?」
突然影から現れたヨシュア君に、カイザードは驚いて声も出ない。
「全く、同じ貴族として私は恥ずかしい。いくら他領とはいえ、守るべき平民を賊に扮して襲うとは。断じて許し難い!」
「あぎゃああああ!」
うわあ、ヨシュア君もかなりえぐい。赤熱化したフレイムブレイドをカイザードの太ももに突き刺しちゃった。それだけ彼の怒りが大きいって事なんだろうけど。
「ザ、ザフト公爵閣下の命なのだ! 断れる訳がない!」
「ザフト公の命だという証拠は?」
「机の引き出しの中――」
そこまで聞くと、ヨシュア君はカイザードの喉笛を掻き切った。
次いで、カイザードの机を漁ると、出るわ出るわ、ザフト公爵から寄せられた命令書。それは配下の貴族の名前も羅列されており、いずれもドラケン領内で暗躍させる内容だった。
「さすがにこれだけの貴族を葬ると、ザフト公も領地経営が成り立たなくなるかもね」
「なに、構わないだろう? 下級貴族にも優秀な人材はいるし、何なら市井に埋もれている人材を登用する手もあるさ。陛下の裁量次第でどうとでもなるよ」
僕の心配を余所に、ヨシュア君はかなり斬新な考えを持っているようで、将来に向けて何等かのビジョンは有るらしい。
そして僕達は影泳ぎで次の貴族の下へと向かう。証拠の書状を手に、一晩のうちにザフト領の西側を治める貴族を闇へと葬った。
こういう事をしていると、やっぱり闇属性って恐ろしい属性だと思うね。
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