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AD1430
3話 戦闘準備
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自分達がいた世界とこの並行世界は互いに影響を及ぼし合っている。
神様が言っていた言葉を思い返す三戸。元の世界で言えば、英仏百年戦争当時のフランス。そこに相当する場所と時間軸に自分達がいる理由。
「アンジー、百年戦争の犠牲者数は?」
「はい。所説ありますが三百万人以上と言われています」
「……こっちの世界でも、それだけの数の人間が魔物に虐殺されるって事か?」
こちらの世界で起こった大量虐殺は、元の世界にもなんらかの形で反映されている。それが英仏百年戦争という訳だ。
「こちらの世界は、古来より魔物の侵攻を受けてきたのが原因で元の世界より人口は少ないようです。ですから、一概に同程度の人間が殺されるとは言えないかも知れませんが……」
しかし三戸には、どうしてこの時代のこの場所にいるのかまだ納得出来ない事があった。
「単純に犠牲者の数で言えば、第二次大戦がダントツだろ? どうしてその時代じゃないんだ?」
「これは推測になりますが……」
アンジーの推測はこうだ。
確かに三戸の言う通り、規模が大きいのは二度に渡る世界大戦だが、三戸一人で世界規模の虐殺の何処を食い止めればいいと言うのか。こればかりは物理的に不可能と思える。であるならば、過去の虐殺を無かった事にして人類に力を蓄えさせ、将来起こるであろう魔物の大侵攻に備えさせるべきではないか。
「なるほど。納得だ。非常に」
「恐れ入ります。そしてもう一つ。この時代のこの場所に、マスターと同種の人間がいるのではないでしょうか?」
仲間を集めろ。三戸はそんな神様の言葉を思い出す。
(敢えて仲間になる人物がいる場所に俺達を出現させた訳か)
「それも納得できる。完璧だ、アンジー」
「うふふふっ。有難うございます!」
三戸に頭を撫でられ、アンジーは嬉しそうに身を捩る。
「それなら仲間探しと行こうじゃないか。取り敢えずカレーの街に行ってみよう」
「はいっ!」
一時間程歩くと、カレーの街が見えてきた。物々しい雰囲気に三戸は顔を顰める。街に入ると何やら軍人らしき連中が忙しく走り回っており、住民の避難の先導をしているようにも見える。
「ちょっと情報を仕入れて来ますね!」
「ああ。気を付けてな」
アンジーが人込みに消えていくのを見ながら三戸は苦笑する。
ハイテクなAIでも情報は足で集める。そのくせアンジーの仕入れた情報は、この場にいる三戸にも共有されるのだからアンバランスな話だ。
「どうせレーダーでお互いの位置は把握できるんだ。俺も少し聞き込みをするか」
ブラブラと街並みを眺めながら、誰に話を聞こうかと物色していると、一人の兵士が目に入る。いかにも中世ヨーロッパ風の鉄兜とチェインメイル、それに剣を装備しているイケメンだった。
「あのー、すみません。俺は今この街に着いたばかりなんですけど、何かあったんですか?」
三戸は今の見た目が十八歳という事で、なるべく丁寧に話し掛ける。
「ん? 君は旅人かい? 随分変わった服装だが」
「はい、ずっと東の国から」
「そうだったのか。いや、斥候からの連絡で、魔物が三体飛んでいるのを発見したらしいんだ。なので街の人に避難準備をさせている所なんだ。ああ、でも心配しなくてもいい。この街には聖女様がいらっしゃる。不思議な力で何度も魔物を撃退しているんだ。しかし君も念のため、安全な所に避難するのがいいだろう」
「そうなんですか。有難うございます」
(聖女様に不思議な力、ね)
この街に元の世界から来た救世者がいるのはほぼ確定だろう。
すんなりと仲間になってくれればいいがな、とか、ごねられたらどうしよう、とか、比較的どうでもいいような事を考えながら三戸は『聖女』とやらを探して動き出す。
しかし、『聖女』とコンタクトを取る前に一仕事しなくてはならないらしい。
『アンジー! レーダーに反応だ。多いな。合流出来るか?』
『はい! こちらでも捕捉しています。すぐにそちらへ向かいます』
二分後、三戸の隣にアンジーが舞い降りた。
「……早かったな。飛んで来たのか?」
「いいえ? 跳んで来ましたが?」
「……あんまり人間離れした事をするのは感心しないな。見ろ。住人がざわついているぞ?」
三戸は、跳んできたなどと事もなげに話すアンジーに注意を促す。周囲の人々がアンジーを指差して騒いでいた。
「あー……でもマスター、今更ですよ。これから、マスターと私は魔物を蹂躙するんです。さあ、城壁に登って迎撃準備をしましょう!」
五メートル程もある城壁の上に、助走するでもなく跳躍したアンジーはふわりと着地する。三戸も、俺にもできるかな、程度の軽い気持ちで跳躍したのだが、あっさりとできてしまった。
「できちまった……」
「マスターは、その人間離れした身体能力を既に使いこなしているんですね! 流石です!」
三戸はアンジーの称賛を苦笑しながら聞き流し、周囲を見る。城壁の上は敵を迎撃する為に、弓兵や弩弓などを配置するための結構なスペースがある。
「これなら大丈夫だろ。アンジー、ここから十メートル間隔でciwsを置いてくれ。空から来る敵はどれくらいだ?」
「え~、二百くらいですね。ちなみに陸上から侵攻してくるのは四百程です」
「ならciwsは十基。火器管制は任せる。俺は地上で戦うから、指示があったら武器を出してくれ」
「分かりました!」
ciwsとは、艦艇などに搭載されている対空兵器で、敵のミサイルや航空機の迎撃を目的とした機関砲やバルカン砲の類で、ある程度自動で制御されるシステムだ。飛んで来る魔物の迎撃にはぴったりの兵装である。
ちなみに、アンジーのデータベースに記録されている兵装は殆ど取り出せるので、陸自や海自、一部米軍の武器も使えたりする。
「おい! 貴様らここで何をしている!」
街の兵隊だろうか。城壁の上というのは一般人は立ち入り禁止区域なのだろう。どうやら三戸達を咎めにきた様だ。
「そんな事はどうでもいい。魔物の群れが近付いているぞ。早く迎撃準備をしろ」
三戸は今、見た目十八歳という事も忘れ、思わず自衛隊時代の上官っぽい言い方をしてしまう。そんな彼に、咎めにきた兵士が色めき立った。
「な、なんだと!? そんなもの見えんではないか!」
はぁ、とため息をつき、三戸は双眼鏡を取り出し兵士に渡す。
「それで覗いて見ろ」
「……何だこれは? ん? こうすればいいのか? な、なんだあの大群は!」
訝し気に双眼鏡を受け取った兵士が、双眼鏡をのぞき込み驚愕する。
「すぐに聖女様にお知らせせねば!!」
そう言い捨て兵士は走り去ってしまった。
「全く……聖女も大事だろうが、迎撃準備くらいして欲しいもんだな」
「全くもってマスターの仰る通りですね。ところでマスター。ミサイルの方はとっくに射程に入っていますが?」
「ああ。そろそろ始めようか」
三戸とアンジーの並行世界救済ミッションが今始まる。
神様が言っていた言葉を思い返す三戸。元の世界で言えば、英仏百年戦争当時のフランス。そこに相当する場所と時間軸に自分達がいる理由。
「アンジー、百年戦争の犠牲者数は?」
「はい。所説ありますが三百万人以上と言われています」
「……こっちの世界でも、それだけの数の人間が魔物に虐殺されるって事か?」
こちらの世界で起こった大量虐殺は、元の世界にもなんらかの形で反映されている。それが英仏百年戦争という訳だ。
「こちらの世界は、古来より魔物の侵攻を受けてきたのが原因で元の世界より人口は少ないようです。ですから、一概に同程度の人間が殺されるとは言えないかも知れませんが……」
しかし三戸には、どうしてこの時代のこの場所にいるのかまだ納得出来ない事があった。
「単純に犠牲者の数で言えば、第二次大戦がダントツだろ? どうしてその時代じゃないんだ?」
「これは推測になりますが……」
アンジーの推測はこうだ。
確かに三戸の言う通り、規模が大きいのは二度に渡る世界大戦だが、三戸一人で世界規模の虐殺の何処を食い止めればいいと言うのか。こればかりは物理的に不可能と思える。であるならば、過去の虐殺を無かった事にして人類に力を蓄えさせ、将来起こるであろう魔物の大侵攻に備えさせるべきではないか。
「なるほど。納得だ。非常に」
「恐れ入ります。そしてもう一つ。この時代のこの場所に、マスターと同種の人間がいるのではないでしょうか?」
仲間を集めろ。三戸はそんな神様の言葉を思い出す。
(敢えて仲間になる人物がいる場所に俺達を出現させた訳か)
「それも納得できる。完璧だ、アンジー」
「うふふふっ。有難うございます!」
三戸に頭を撫でられ、アンジーは嬉しそうに身を捩る。
「それなら仲間探しと行こうじゃないか。取り敢えずカレーの街に行ってみよう」
「はいっ!」
一時間程歩くと、カレーの街が見えてきた。物々しい雰囲気に三戸は顔を顰める。街に入ると何やら軍人らしき連中が忙しく走り回っており、住民の避難の先導をしているようにも見える。
「ちょっと情報を仕入れて来ますね!」
「ああ。気を付けてな」
アンジーが人込みに消えていくのを見ながら三戸は苦笑する。
ハイテクなAIでも情報は足で集める。そのくせアンジーの仕入れた情報は、この場にいる三戸にも共有されるのだからアンバランスな話だ。
「どうせレーダーでお互いの位置は把握できるんだ。俺も少し聞き込みをするか」
ブラブラと街並みを眺めながら、誰に話を聞こうかと物色していると、一人の兵士が目に入る。いかにも中世ヨーロッパ風の鉄兜とチェインメイル、それに剣を装備しているイケメンだった。
「あのー、すみません。俺は今この街に着いたばかりなんですけど、何かあったんですか?」
三戸は今の見た目が十八歳という事で、なるべく丁寧に話し掛ける。
「ん? 君は旅人かい? 随分変わった服装だが」
「はい、ずっと東の国から」
「そうだったのか。いや、斥候からの連絡で、魔物が三体飛んでいるのを発見したらしいんだ。なので街の人に避難準備をさせている所なんだ。ああ、でも心配しなくてもいい。この街には聖女様がいらっしゃる。不思議な力で何度も魔物を撃退しているんだ。しかし君も念のため、安全な所に避難するのがいいだろう」
「そうなんですか。有難うございます」
(聖女様に不思議な力、ね)
この街に元の世界から来た救世者がいるのはほぼ確定だろう。
すんなりと仲間になってくれればいいがな、とか、ごねられたらどうしよう、とか、比較的どうでもいいような事を考えながら三戸は『聖女』とやらを探して動き出す。
しかし、『聖女』とコンタクトを取る前に一仕事しなくてはならないらしい。
『アンジー! レーダーに反応だ。多いな。合流出来るか?』
『はい! こちらでも捕捉しています。すぐにそちらへ向かいます』
二分後、三戸の隣にアンジーが舞い降りた。
「……早かったな。飛んで来たのか?」
「いいえ? 跳んで来ましたが?」
「……あんまり人間離れした事をするのは感心しないな。見ろ。住人がざわついているぞ?」
三戸は、跳んできたなどと事もなげに話すアンジーに注意を促す。周囲の人々がアンジーを指差して騒いでいた。
「あー……でもマスター、今更ですよ。これから、マスターと私は魔物を蹂躙するんです。さあ、城壁に登って迎撃準備をしましょう!」
五メートル程もある城壁の上に、助走するでもなく跳躍したアンジーはふわりと着地する。三戸も、俺にもできるかな、程度の軽い気持ちで跳躍したのだが、あっさりとできてしまった。
「できちまった……」
「マスターは、その人間離れした身体能力を既に使いこなしているんですね! 流石です!」
三戸はアンジーの称賛を苦笑しながら聞き流し、周囲を見る。城壁の上は敵を迎撃する為に、弓兵や弩弓などを配置するための結構なスペースがある。
「これなら大丈夫だろ。アンジー、ここから十メートル間隔でciwsを置いてくれ。空から来る敵はどれくらいだ?」
「え~、二百くらいですね。ちなみに陸上から侵攻してくるのは四百程です」
「ならciwsは十基。火器管制は任せる。俺は地上で戦うから、指示があったら武器を出してくれ」
「分かりました!」
ciwsとは、艦艇などに搭載されている対空兵器で、敵のミサイルや航空機の迎撃を目的とした機関砲やバルカン砲の類で、ある程度自動で制御されるシステムだ。飛んで来る魔物の迎撃にはぴったりの兵装である。
ちなみに、アンジーのデータベースに記録されている兵装は殆ど取り出せるので、陸自や海自、一部米軍の武器も使えたりする。
「おい! 貴様らここで何をしている!」
街の兵隊だろうか。城壁の上というのは一般人は立ち入り禁止区域なのだろう。どうやら三戸達を咎めにきた様だ。
「そんな事はどうでもいい。魔物の群れが近付いているぞ。早く迎撃準備をしろ」
三戸は今、見た目十八歳という事も忘れ、思わず自衛隊時代の上官っぽい言い方をしてしまう。そんな彼に、咎めにきた兵士が色めき立った。
「な、なんだと!? そんなもの見えんではないか!」
はぁ、とため息をつき、三戸は双眼鏡を取り出し兵士に渡す。
「それで覗いて見ろ」
「……何だこれは? ん? こうすればいいのか? な、なんだあの大群は!」
訝し気に双眼鏡を受け取った兵士が、双眼鏡をのぞき込み驚愕する。
「すぐに聖女様にお知らせせねば!!」
そう言い捨て兵士は走り去ってしまった。
「全く……聖女も大事だろうが、迎撃準備くらいして欲しいもんだな」
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