神様に妻子の魂を人質に取られたおっさんは、地球の未来の為に並行世界を救う。

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4話 オルレアンの乙女

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「アンジー、俺達のデビュー戦だ。ド派手に行くぞ。対空ミサイルと対地ミサイルで先制。空陸両方の敵を減らす。すり抜けて来た奴にはciwsで迎撃。俺には手榴弾いくつかとM9、それと89式の小銃を銃剣付きで。俺は下に降りる。兵隊が邪魔しにきたら無力化するのを許可する」
「了解です! ご武運を!」

 三戸は手早くアンジーに指示を出した。ちなみにM9とはサブマシンガンである。89式自動小銃とともに自衛隊の装備品だ。
 そして彼は城壁の上をアンジーに任せ、城門の外で魔物を待ち受ける。上を見上げると、ミサイルが発射され敵に向かい飛翔して行く。放たれたミサイルは四発。続いて地上にミサイルが四発。直撃した魔物は跡形もない。直撃を免れた敵も、かなりの数が爆発に巻き込まれたようだ。

「それでも結構抜けて来たな」

 三戸は手榴弾のピンを抜き遠投する。軽く投げたつもりが百メートル以上飛んでしまい、改めて自分の身体のいい加減さに辟易としてしまう。それでも次からは力加減を調整し、手榴弾を放り続けた。
 城壁の上からはアンジーによるミサイル攻撃、すり抜けてきた地上の敵は手榴弾。着実に魔物の数を減らして行く二人だが、魔物には恐怖心というものがないのか、ひたすらにカレーの街を目指して進んで来る。
 かなり接近されたので、三戸は89式自動小銃での迎撃に切り替える。城壁の上でもciwsでの迎撃に切り替えたようで、機関砲の連続音が鳴り響く。次々に倒れ、落下する魔物達。しかし、それでも屍を踏み越えてくる魔物の群れ。

『なあ、アンジー。戦闘中なんだがどうしても聞かなきゃならん事がある』
『はい! なんでしょう、マスター?』
『あのな。弾切れが起きないんだが』
『はい! 弾数無限ですから! 正確にはマスターの使用している武装に私が供給しています!』
『そうか……? ありがとう?』
『はぁいっ!』

 三戸にはアンジーの声しか聞こえなかったが、その返事からアンジーが物凄い笑顔でいるのが想像できた。それならば、と三戸は問答無用で撃ち続ける。
 その直後、背中で城門が開く音がした。そして迫る魔物が炎に包まれる。

「あんたが『聖女』さんかい?」

 視線を向けずに声だけを掛けつつ、三戸は銃剣による格闘戦に突入していた。

「お話は後ほど。このケダモノ共を駆逐した後にゆっくりと」
「了解だ」

 ciws十基の活躍で、空から来る魔物は完全に駆逐したらしく、アンジーが城壁から飛び降りてくる。

「マスター!! ご助力致します!!」
「お、おう!?」

 助力に来たアンジーの姿は何と言うか……メカニカルになっていた。
 身体の至る所に装甲を纏い、背中には翼やノズル。垂直尾翼もある。足首には特徴的な下反角水平尾翼。片腕に2発、両腕で四発、更に両方の太ももにも各二発ずつミサイルが装着されている。さらに、両腕に吊り下げ式に持っている20mm機関砲。

「ふっ……ふははははは!」
「な、何がおかしいのです!? マスター!?」

 魔物を蹴り飛ばしながらも爆笑し始めた三戸に、憤慨したようにアンジーが問い詰める。

「いや、やっぱりお前は俺のアンジーだったよ」
「はいっ!」

 アンジーの首の後ろにある機種部分には、『ANGIE 1』のロゴがマーキングされていた。彼女が三戸の愛機である事を証明するかのように。
 『聖女』の参戦で加速度的に討滅速度が増した三戸達は、間もなく完全に魔物を全滅させる。

「カレーを救っていただき感謝致します。それから、住民の避難誘導に時間がかかり、参戦が遅れた事をお詫び致します。私はジャンヌ・ダルクと申します」

 三戸にしてみればやはり、という印象だろうか。白い肌に薄桃色の頬。プラチナブロンドの髪をなびかせ白銀の甲冑に身を包んだ少女。碧い瞳がこちらを見定めるように三戸を見つめる。

「お会い出来て光栄だ、オルレアンの乙女。俺はハナノスケ・ミト。ミトがファミリーネームだ」
「その異名をご存知だという事は、あなたもやはり並行世界へやって来た方なのですね?」
「まあ、そうなんだが……もう少し人目に付かない所で話せないかな?」

 いつの間にか、周囲には魔物を圧倒的な力で蹴散らした人物を見ようと、そして聖女の姿を一目見ようとする野次馬で溢れかえっていた。さらに銀髪の美少女も視線を集めるのに一役買っている。

「そうですね。では私がお世話になっている教会へ」

 そう言って歩き始めるジャンヌに従い、三戸とアンジーは並んで歩く。程なくして教会に到着し、一室に招かれ椅子に腰かけると、対面にジャンヌが座った。

「まずは改めましてカレーの危機を救っていただき有難うございました」

 テーブルに頭が着きそうな程深々と頭を下げるジャンヌ。

「並行世界とは言え、自らの故郷が魔物に蹂躙されるのは我慢ならなかったか?」

 三戸の質問には当然意図がある。
 三戸の歴史の知識が正しければ、ジャンヌは異端者の汚名を着せられ火刑に処された筈だ。そんな彼女がフランスを救う為に戦うだろうか。

「いいえ……フランスなどどうなっても知った事ではないのです。私を陥れて処刑したのですから。しかし民には関係のない事です。そしてこちらの世界に来る前に聞いた神様の言葉。こちらでの魔物による人類の虐殺を防げば、元の世界の英仏戦争の悲劇が起こらないかも知れないと」

 これでジャンヌが三戸と同じ使命を帯びてやってきた事は確定した。

「オルレアンの乙女……か。清く正しく美しくをそのまま人の姿にしたような感じだな」

 三戸は見たままの感想を言ったまでだが、ジャンヌはぎりりと唇を噛みしめて絞り出すように言った。

「……私は聖女などでは有りません。後世には、異端者として処刑された罪人。そう伝わっているでしょうからね」
「俺達は君が生きた時代より六百年近く後の時代の人間なんだが……」

 そんな三戸の言葉に、ジャンヌの瞳が驚愕に見開かれる。ジャンヌの認識では、並行世界の、同時代を救うという事だったのだろう。まさか自分より後の、そう、未来を生きた人間が来るなど予想外の事だ。

「続けるぞ。俺が知る限りでは、ジャンヌ・ダルクという人物は、死後に異端の汚名は取り外されフランスの守護聖人に列せられていた筈だ。異端の汚名を着て処刑された、ではなく殉教扱いだそうだ」

 そうは言っても、本人の与り知らぬ所で汚名返上したとて、それに何の意味があるのか、と三戸は思う。しかしジャンヌはそうではないようだった。

「そう……だったのですね。ミト殿。有難うございます。これで私は祖国を憎まずに済みます」

 一筋の涙を零しながら謝辞を述べるジャンヌに、深く頷く三戸とアンジーの視線は慈愛に満ちていた。三戸とて日本を守ってきた自負がある。祖国を愛する気持ちは分かるつもりだった。
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