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AD184
7話 軍神
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見渡す限りの荒野。視界が回復した彼等を出迎えた光景はそれだった。
「……アンジー。ここは?」
「……はい、出ました! 西暦百八十四年、元の世界でいう所の中国、冀州です!」
「なるほど……さて、可能性がある人物が多すぎるんだよな、この時代のこの国は」
「そうですね。これから百年以上に渡り争乱が続く時代になりますから、多くの英傑が出現していますね」
三戸とアンジーが話しているのは、まさにこの時代、この場所から、元の世界に於ける『三國志』の舞台の幕が上がるという事。
漢王朝は衰退し政治は腐敗、民が苦しみ抜く時代背景。ここに漢王朝を打倒せんと一人の男が立ち上がる。
しかし、全土に飛び火した反乱は、いつしか理念を忘れただの暴力となり果てる。
そんな乱れた世を憂い、数多の英傑が立ち上がりは消えて行く、そんな時代。
「ミト。ここでも百年に渡る戦乱の世が……?」
二人の話を聞いていたジャンヌが、心を痛めている。母国と同じように、これから百年にも渡り争乱に明け暮れるというのだ。
「そうだな。俺達が生きていた時代より命が軽い。大勢の人間が死んだだろうな。世を正そうとする者。自らの野望を果たさんとする者。欲望を満たそうとするだけの者。それぞれ理由はあるだろうが、我を通せば軋轢が生まれ、それが殺し合いに発展する。いつの時代も人間は愚かだと思うよ。過ちを繰り返してばかりだ」
三戸は雲以外は何もない空を見上げ、虚しさを隠そうともせずに吐き捨てた。
「……マスター」
「さて、付近に反応もなさそうだし、どこかに移動しようか」
心配そうに自分を見つめるアンジーに笑いかけながら、三戸は移動を提案する。休むにしても情報を集めるにしても、この場はあまりにも何もない。
「南に向かえば官渡、そこから西に向かえば虎牢関、どちらもひとつの節目となった戦場ですね、マスター」
マップ検索をしたのだろう。アンジーが近辺の情報を提示してきた。
「じゃあ南へ向かおう。アンジー、高機動車を出してくれ」
三戸が官渡へ向かうルートを選んだ事には特に理由はない。当時の情勢を詳しく知っている訳でもない。ただ漠然と、虎牢関には直接向かうべきではない。そんな直感が働いただけだ。
「はい、マスター!」
元気に返事をしたアンジーが、魔法の様にポンと出した車に乗り込む。
ジャンヌは初めての体験でワクワクしているのか、瞳がキラキラしていた。いざ走り出すと、馬車では体験できないスピードに興奮する事しきりだ。年頃の乙女らしく、楽し気にはしゃぐジャンヌとアンジーを横目に、三戸はハンドルを握る。
一行の旅路は暫く平穏に進んだが、やはりそうそう上手くは行かないらしい。
「レーダーに反応ですね、マスター。しかしこれは……」
「こりゃ予想外だな」
「人間が相手ですか……どうしますか? ミト」
騎馬が五十騎程。関所らしき場所を封鎖しているようだ。無視して突っ切ってもいいのだが、この時代の人間とは初コンタクトになる。三戸は話をしてみるべきだと判断する。
目視できる距離まで接近するとスピードを落とし、停車する。エンジンはアイドリングのままだ。
「俺が話してこよう。アンジー、何かあったらジャンヌとここから離脱しろ。いいな?」
「……はい。わかりました」
89式小銃を肩に掛け、騎馬隊へと進み寄る三戸。アンジーを車から降ろさなかったのは、騎馬隊が自分に対し敵対行動を取った時に暴発させない為だ。
「そこで止まれ! 貴様、何者だ!」
何者? そう尋ねられて三戸はしばし思案する。
(何者と聞かれてもな)
仕方なく出した三戸の答えは、嘘ではないが非常に大雑把なものだった。
「俺達は魔物を倒す旅をしている。この辺りで魔物が出るという話は聞かないか?」
魔物と聞いてざわつく騎兵達。
「取り乱すな!」
騎兵が守っていた関所の中から出て来たのは一人の大柄な男。百九十センチ以上はありそうだ。
騎兵達を一言で鎮めるあたり、なかなかの胆力の持ち主だ、と三戸は感心する。そして近付くにつれ明らかになって行く大男の姿に、三戸は納得した。
(なるほど。黄巾討伐や官渡なら、この男が一番しっくり来るかも知れない)
「貴公は魔物と戦っていると言っていたがそれは真か?」
百九十センチを超える堂々たる体躯に、長く、良く手入れされた顎鬚。そして手にしているのは青龍偃月刀。これだけの特徴を備えた男は、数多の三国志の英傑の中でも一人しかおるまい。
「ああ。間違いない。俺は三戸 花乃介。あんたは関羽だな?」
「その名を知っているとは。貴公はまさか……?」
「ああ。並行世界の人間だ。ちなみにあんたの千八百年後の世界を生きていた」
「なんと……」
三戸が出会った二人目の救世者……それは三國志の時代において軍神と呼ばれた男、関 雲長であった。
「……アンジー。ここは?」
「……はい、出ました! 西暦百八十四年、元の世界でいう所の中国、冀州です!」
「なるほど……さて、可能性がある人物が多すぎるんだよな、この時代のこの国は」
「そうですね。これから百年以上に渡り争乱が続く時代になりますから、多くの英傑が出現していますね」
三戸とアンジーが話しているのは、まさにこの時代、この場所から、元の世界に於ける『三國志』の舞台の幕が上がるという事。
漢王朝は衰退し政治は腐敗、民が苦しみ抜く時代背景。ここに漢王朝を打倒せんと一人の男が立ち上がる。
しかし、全土に飛び火した反乱は、いつしか理念を忘れただの暴力となり果てる。
そんな乱れた世を憂い、数多の英傑が立ち上がりは消えて行く、そんな時代。
「ミト。ここでも百年に渡る戦乱の世が……?」
二人の話を聞いていたジャンヌが、心を痛めている。母国と同じように、これから百年にも渡り争乱に明け暮れるというのだ。
「そうだな。俺達が生きていた時代より命が軽い。大勢の人間が死んだだろうな。世を正そうとする者。自らの野望を果たさんとする者。欲望を満たそうとするだけの者。それぞれ理由はあるだろうが、我を通せば軋轢が生まれ、それが殺し合いに発展する。いつの時代も人間は愚かだと思うよ。過ちを繰り返してばかりだ」
三戸は雲以外は何もない空を見上げ、虚しさを隠そうともせずに吐き捨てた。
「……マスター」
「さて、付近に反応もなさそうだし、どこかに移動しようか」
心配そうに自分を見つめるアンジーに笑いかけながら、三戸は移動を提案する。休むにしても情報を集めるにしても、この場はあまりにも何もない。
「南に向かえば官渡、そこから西に向かえば虎牢関、どちらもひとつの節目となった戦場ですね、マスター」
マップ検索をしたのだろう。アンジーが近辺の情報を提示してきた。
「じゃあ南へ向かおう。アンジー、高機動車を出してくれ」
三戸が官渡へ向かうルートを選んだ事には特に理由はない。当時の情勢を詳しく知っている訳でもない。ただ漠然と、虎牢関には直接向かうべきではない。そんな直感が働いただけだ。
「はい、マスター!」
元気に返事をしたアンジーが、魔法の様にポンと出した車に乗り込む。
ジャンヌは初めての体験でワクワクしているのか、瞳がキラキラしていた。いざ走り出すと、馬車では体験できないスピードに興奮する事しきりだ。年頃の乙女らしく、楽し気にはしゃぐジャンヌとアンジーを横目に、三戸はハンドルを握る。
一行の旅路は暫く平穏に進んだが、やはりそうそう上手くは行かないらしい。
「レーダーに反応ですね、マスター。しかしこれは……」
「こりゃ予想外だな」
「人間が相手ですか……どうしますか? ミト」
騎馬が五十騎程。関所らしき場所を封鎖しているようだ。無視して突っ切ってもいいのだが、この時代の人間とは初コンタクトになる。三戸は話をしてみるべきだと判断する。
目視できる距離まで接近するとスピードを落とし、停車する。エンジンはアイドリングのままだ。
「俺が話してこよう。アンジー、何かあったらジャンヌとここから離脱しろ。いいな?」
「……はい。わかりました」
89式小銃を肩に掛け、騎馬隊へと進み寄る三戸。アンジーを車から降ろさなかったのは、騎馬隊が自分に対し敵対行動を取った時に暴発させない為だ。
「そこで止まれ! 貴様、何者だ!」
何者? そう尋ねられて三戸はしばし思案する。
(何者と聞かれてもな)
仕方なく出した三戸の答えは、嘘ではないが非常に大雑把なものだった。
「俺達は魔物を倒す旅をしている。この辺りで魔物が出るという話は聞かないか?」
魔物と聞いてざわつく騎兵達。
「取り乱すな!」
騎兵が守っていた関所の中から出て来たのは一人の大柄な男。百九十センチ以上はありそうだ。
騎兵達を一言で鎮めるあたり、なかなかの胆力の持ち主だ、と三戸は感心する。そして近付くにつれ明らかになって行く大男の姿に、三戸は納得した。
(なるほど。黄巾討伐や官渡なら、この男が一番しっくり来るかも知れない)
「貴公は魔物と戦っていると言っていたがそれは真か?」
百九十センチを超える堂々たる体躯に、長く、良く手入れされた顎鬚。そして手にしているのは青龍偃月刀。これだけの特徴を備えた男は、数多の三国志の英傑の中でも一人しかおるまい。
「ああ。間違いない。俺は三戸 花乃介。あんたは関羽だな?」
「その名を知っているとは。貴公はまさか……?」
「ああ。並行世界の人間だ。ちなみにあんたの千八百年後の世界を生きていた」
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