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AD184
8話 大賢良師 張角
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三戸とジャンヌ、アンジーは、関羽に今までの成り行きを説明した。共に戦う仲間を探している事、仲間と共に魔物を駆逐し、魔界に通じる穴を塞ぐ事を目的としている事。
「となると、貴殿らはそれがしがここにいる事を知っていて参られたのか?」
「いや、それは違うな。俺達は、ジャンヌの時代の魔界の穴を閉じてジャンヌと友諠を結んだ。そしたら勝手にここに連れて来られたというのが正しい。俺達自身、どの時代の何処に誰が居るのか全く分かっていない。そしてこの時代の魔界の穴を塞いだ後、どこに飛ばされるのかも分からない。まさに神のみぞ知るって奴だ」
関羽は三戸の話を聞きながら、自慢の顎鬚を撫でつけている。癖のようなものなのだろう。
「なるほど。ならば貴殿らにはいくつかの選択肢がある。それがし以外にもう一人、並行世界からの男が来ている」
「「「な!?」」」
三戸はあの神と接触した空間での神の言葉を思い起こしていた。
神と接触したあの空間に行くには資格を満たす必要があると言っていた気がする。逆に言えば、資格を満たした者が複数いればあり得る話ではある。
関羽の話によれば、もう一人の人物も、この地に送られ魔物と戦っているらしい。戦っているのだが……
「奴は魔物と戦う事により人心を集めている。それは良い。だが奴は、己に集まる民を導くと称し戦闘集団を作り上げ、村々を制圧して勢力を拡大しておるのだ。自らがこの世界を支配するのを欲するかのようにな。しかも、魔物を倒すという目的は忘れておらんのが厄介なところでな」
三戸は思った。人々を掌握し、戦力を纏めて魔物に対抗するのは悪い事とは言い切れないだろう。むしろ関羽もその男と手を組んだ方が効率がいいのではないか。
「関羽様は、なぜそのもう一人のお方と共闘なさらないのですか?」
三戸は、自分が思ったのと同じ事をストレートに問うアンジーに苦笑し、関羽もまた尋ねられる事は織り込み済みだったのだろう。やはり苦笑している。
「何か理由があるのですね? 関羽殿?」
「うむ。ジャンヌ殿の言われる通り、奴が真っ当に組織を拡大しているのであれば共闘の道もあったであろうな。だが奴は、制圧した村々で怪しげな術を使い民を洗脳し、自らの尖兵としておるのだ」
関羽の話では、もう一人の救世者とやらに従っている者達は、自らの意思で従っているのでは無いという。だが、もう一人の救世者が居るのは確実な訳で、そちらとも話す必要があると三戸は考える。
この時代のこの場所に自分達を運んだ神の意思とやらは、三戸が関羽を選ぶのか、もう一人を選ぶのか、はたまた両方か。それを見極めようとしている気がする。
「もう一人の救世者に会いに行こう。関羽さん、あんたとは共闘できそうな気がするが、もう一人と会わずにそれを決めるのはフェアじゃない」
「言わんとしている事は理解できる。どちらが信頼に値するか、己が目で見定めるのがよかろう。それがしが奴の根城に案内致す」
今度は関羽を交えて高機動車に乗り込む。
「この馬の無い鉄の馬車は、これ程の速度で走れるのか。孔明や孔明の細君がおったらさぞ喜んだであろうな」
ジャンヌもそうだったが、関羽も同様に驚いている。そして諸葛孔明夫妻が発明好きだという話が事実だった事に、少しばかり感動している三戸。そしてファントムに乗せて飛んだらどれだけ驚く事だろうと、悪戯心がムクムクと湧き上がる。
「マスター。流石に滑走路も無しでは、ファントムの姿で離陸はできませんからね!?」
「……」
あっさりとアンジーに考えを読まれた挙句に、先手を打たれた三戸は運転に集中する振りをして押し黙る。確かにファントムはVTOL機ではない。ならヘリでもいいか、とすぐに考えを切り替える三戸。
「あの砦が連中の拠点だ」
そんな事を考えながら、関羽と出会った関所から三時間程走っただろうか。街道を臨める山間部に砦を築いており、そこを根城に活動しているらしい。一同武装して気を引き締め、高機動車から降りる。
「やっぱりか……」
三戸が砦に籠る連中を見て呟く。いずれも黄色い布を頭に巻き付けている。
「ミト殿はどうやら分かっておられるようであったな」
「ああ。この時代、送り込まれた場所。恐らくは後漢が衰退し、三国時代の幕開けとなった騒乱の元凶。即ち黄巾の乱の首謀者」
「いかにも。奴は新たな生を受けて尚、前世とやる事が変わっておらぬ」
三戸は五歩程砦に向かい進み出で、大音声で叫んだ。
「俺は並行世界より来た三戸 花乃介と言う! あんた達の首領、天公将軍 張角と話がしたい!」
ややあって砦の扉が開く。中から現れたのは、灰色の髭を蓄え黄色い布の道士服を纏い、捻れた木の杖を持った壮年の男。胡散臭さとカリスマが同居した、何とも不思議な印象を受ける。
「儂が大賢良師、張角だ。関将軍を連れておるという事は、並行世界からの客人という事に偽りは無さそうだな。良かろう、話を聞こう」
(客人、だと?)
まるで自分がこの世界の住人であるかのような物言いに、三戸は激しい違和感を覚える。
「悪いが、砦に入って退路を断たれては堪らん。ここで話したいがよろしいか!?」
砦の内部で会談を行い、決裂した際に閉じ込められたのでは困る。
木製の城門なぞ、現代の火砲に掛かればどうという事はないが、もし関羽の言うように、この世界の黄巾賊が張角に洗脳されているのであれば殺すのは不本意だ。巻き込んで犠牲者を出したくない、その為に砦の外で会談を要求したに過ぎない。
「よかろう。ではそちらに参ろうかの」
黄巾の乱の首謀者張角。並行世界で出会った彼は果たして敵か味方か。
「となると、貴殿らはそれがしがここにいる事を知っていて参られたのか?」
「いや、それは違うな。俺達は、ジャンヌの時代の魔界の穴を閉じてジャンヌと友諠を結んだ。そしたら勝手にここに連れて来られたというのが正しい。俺達自身、どの時代の何処に誰が居るのか全く分かっていない。そしてこの時代の魔界の穴を塞いだ後、どこに飛ばされるのかも分からない。まさに神のみぞ知るって奴だ」
関羽は三戸の話を聞きながら、自慢の顎鬚を撫でつけている。癖のようなものなのだろう。
「なるほど。ならば貴殿らにはいくつかの選択肢がある。それがし以外にもう一人、並行世界からの男が来ている」
「「「な!?」」」
三戸はあの神と接触した空間での神の言葉を思い起こしていた。
神と接触したあの空間に行くには資格を満たす必要があると言っていた気がする。逆に言えば、資格を満たした者が複数いればあり得る話ではある。
関羽の話によれば、もう一人の人物も、この地に送られ魔物と戦っているらしい。戦っているのだが……
「奴は魔物と戦う事により人心を集めている。それは良い。だが奴は、己に集まる民を導くと称し戦闘集団を作り上げ、村々を制圧して勢力を拡大しておるのだ。自らがこの世界を支配するのを欲するかのようにな。しかも、魔物を倒すという目的は忘れておらんのが厄介なところでな」
三戸は思った。人々を掌握し、戦力を纏めて魔物に対抗するのは悪い事とは言い切れないだろう。むしろ関羽もその男と手を組んだ方が効率がいいのではないか。
「関羽様は、なぜそのもう一人のお方と共闘なさらないのですか?」
三戸は、自分が思ったのと同じ事をストレートに問うアンジーに苦笑し、関羽もまた尋ねられる事は織り込み済みだったのだろう。やはり苦笑している。
「何か理由があるのですね? 関羽殿?」
「うむ。ジャンヌ殿の言われる通り、奴が真っ当に組織を拡大しているのであれば共闘の道もあったであろうな。だが奴は、制圧した村々で怪しげな術を使い民を洗脳し、自らの尖兵としておるのだ」
関羽の話では、もう一人の救世者とやらに従っている者達は、自らの意思で従っているのでは無いという。だが、もう一人の救世者が居るのは確実な訳で、そちらとも話す必要があると三戸は考える。
この時代のこの場所に自分達を運んだ神の意思とやらは、三戸が関羽を選ぶのか、もう一人を選ぶのか、はたまた両方か。それを見極めようとしている気がする。
「もう一人の救世者に会いに行こう。関羽さん、あんたとは共闘できそうな気がするが、もう一人と会わずにそれを決めるのはフェアじゃない」
「言わんとしている事は理解できる。どちらが信頼に値するか、己が目で見定めるのがよかろう。それがしが奴の根城に案内致す」
今度は関羽を交えて高機動車に乗り込む。
「この馬の無い鉄の馬車は、これ程の速度で走れるのか。孔明や孔明の細君がおったらさぞ喜んだであろうな」
ジャンヌもそうだったが、関羽も同様に驚いている。そして諸葛孔明夫妻が発明好きだという話が事実だった事に、少しばかり感動している三戸。そしてファントムに乗せて飛んだらどれだけ驚く事だろうと、悪戯心がムクムクと湧き上がる。
「マスター。流石に滑走路も無しでは、ファントムの姿で離陸はできませんからね!?」
「……」
あっさりとアンジーに考えを読まれた挙句に、先手を打たれた三戸は運転に集中する振りをして押し黙る。確かにファントムはVTOL機ではない。ならヘリでもいいか、とすぐに考えを切り替える三戸。
「あの砦が連中の拠点だ」
そんな事を考えながら、関羽と出会った関所から三時間程走っただろうか。街道を臨める山間部に砦を築いており、そこを根城に活動しているらしい。一同武装して気を引き締め、高機動車から降りる。
「やっぱりか……」
三戸が砦に籠る連中を見て呟く。いずれも黄色い布を頭に巻き付けている。
「ミト殿はどうやら分かっておられるようであったな」
「ああ。この時代、送り込まれた場所。恐らくは後漢が衰退し、三国時代の幕開けとなった騒乱の元凶。即ち黄巾の乱の首謀者」
「いかにも。奴は新たな生を受けて尚、前世とやる事が変わっておらぬ」
三戸は五歩程砦に向かい進み出で、大音声で叫んだ。
「俺は並行世界より来た三戸 花乃介と言う! あんた達の首領、天公将軍 張角と話がしたい!」
ややあって砦の扉が開く。中から現れたのは、灰色の髭を蓄え黄色い布の道士服を纏い、捻れた木の杖を持った壮年の男。胡散臭さとカリスマが同居した、何とも不思議な印象を受ける。
「儂が大賢良師、張角だ。関将軍を連れておるという事は、並行世界からの客人という事に偽りは無さそうだな。良かろう、話を聞こう」
(客人、だと?)
まるで自分がこの世界の住人であるかのような物言いに、三戸は激しい違和感を覚える。
「悪いが、砦に入って退路を断たれては堪らん。ここで話したいがよろしいか!?」
砦の内部で会談を行い、決裂した際に閉じ込められたのでは困る。
木製の城門なぞ、現代の火砲に掛かればどうという事はないが、もし関羽の言うように、この世界の黄巾賊が張角に洗脳されているのであれば殺すのは不本意だ。巻き込んで犠牲者を出したくない、その為に砦の外で会談を要求したに過ぎない。
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黄巾の乱の首謀者張角。並行世界で出会った彼は果たして敵か味方か。
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