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AD1855
35話 救援
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「マスター!」
自らが運転する7tトラックから、アンジーが焦った表情で飛び降りてくる。どうやらアンジーも異変を察知していたらしく、急ぎたいところだが荷台に難民を乗せていたため、速度を上げられない焦燥感が滲み出ていた。
「来たか! すぐにいくぞ! LAVだ! 上部ハッチにMINIMI!」
「はい!」
アンジーが出したのは陸自の迷彩カラーとは違う、空自仕様の車両だった。上部ハッチには様々な武装を装備できるようになっているが、今回三戸がチョイスしたのは軽機関銃MINIMI。
さらに、三戸はナイチンゲールにもあるものを手渡した。
「これは?」
「護身用です。まあ、使わせないように頑張りますがね」
三戸が手渡したのは9mm機関拳銃。サブマシンガンに分類される。
簡単に使い方をレクチャーしたのち、三戸はLAVの後部に乗り込む。ナイチンゲールの時代には、すでに銃器は戦争の道具として一般的であったので、それほど違和感なく受け入れられたようだ。ただ、その連射速度には驚愕していたが。
「アンジー、運転頼む! 魔物は轢いちまっても構わねえ! 関さんとジャンヌの救援にいくぞ!」
「はいっ!」
アパッチなどでの空中からの攻撃も考えたが、もしもの時は関羽とジャンヌを拾って撤退する事も考えられる。そのためにも陸上での機動性が重要だと考えた。
「魔物共の側面を突く! 迂回してくれ、アンジー!」
「ウィルコ!」
LAVは斜面を斜めに疾走する。当然のように整地されていない地面はバンピーだ。しかし、そんな事はお構いなしに、抜群の走破性で駆け下る。
「見えた! 左!」
「はいっ! 確認しました!」
視認性が良いとは言えないLAVの運転席より、上部ハッチから乗り出している三戸の方が戦場をよく把握できる。恐らくジャンヌのブリューナクだろう。爆炎が立ち昇るのを確認した。
「よし、突っ込めアンジー!」
「はいっ! 突貫しますっ!」
三戸がMINIMIを斉射しながら、アンジーの運転でLAVが魔物の群れに突っ込んでいく。銃弾に穿たれ倒れる者。LAVに撥ねられ吹っ飛んでいく者。撃てば当たる。走れば当たる。そんな状態の中、夥しい数の魔物の死体を見て三戸は戦慄した。
(既にこれだけの数をやって尚、この大群か……)
焼け焦げて炭化した死体や一刀両断された死体。明らかにジャンヌと関羽によるものだ。とても正確には数えられたものではないが、これだけの数を人間二人で倒したなどと、誰が信じられるだろうか。それほどの数だった。
*****
一方、関羽とジャンヌは限界に近付いていた。
「ジャンヌ殿、そなたは下がれ。下がって民を退かせつつ、ミト殿を待つのだ」
ジャンヌの参戦で、一時は盛り返した関羽達だったが、集落で略奪や破壊をしていた魔物達が第二派となって襲い掛かってきたのだ。既に五百以上の魔物を片付けていたが、更にそこへ同規模の戦力の魔物が襲来してきた。心は折れずとも体力の方は限界に近く、また、魔物の新たな攻撃手段である瘴気弾は徐々に二人へダメージを蓄積させていた。
「ふふ、そうしたいのは山々なのですが……もうこの坂を登っていく事は出来そうにありませんね」
ジャンヌの方も、窮地の関羽を救う為に奮戦したが、もうガス欠に近い。ブリューナクを大地に突き立て、どうにか立っている状態である。
「ですが、最後に悪あがきを一つしてみましょうか」
ジャンヌはブリューナクを持ち直し、その刃を地面に突き立てた。
「もう籠められるものは私の命の力くらいしかありませんが……少しでも多くの魔物を道連れにしてみせましょう!」
彼女がそう叫ぶと、地面から数本の火柱が上がった。それは扇形に拡散していき、多くの魔物を巻き込んでいく。やがてそれは、十メートル程進んだところで消失する。
「くっ……こんなものですか。ひ弱なこの身体が恨めしいですね……」
自分が思った以上の威力を出せずに、ジャンヌは無念の表情で前のめりに倒れた。しかし、ジャンヌのこの魂を込めた一撃が、三戸が確認した爆炎だったのである。
「見事! ジャンヌ殿はそこで休んでおられよ。この軍神、関雲長! もう一花咲かせてくれようぞ!」
関羽が倒れたジャンヌの前で仁王立ちだ。もはや青龍偃月刀を振るう力も残っていない。ただ、漲る殺気と眼力のみで魔物の動きを止めて見せた。
と、その時だ。何やら最近では聞き慣れてしまった銃撃音と、『鉄の馬なし馬車』のエンジン音が聞こえてきた。
それは群がる魔物をハチの巣にし、立ちふさがる魔物を撥ね飛ばしながら猛スピードで接近してくる。
「おお……ミト殿か! ジャンヌ殿! ミト殿だ! ミト殿が来てくれたぞ!」
「え……ミト?」
関羽の声に応え、音のする方に顔だけ動かすジャンヌ。
そしてそこへ、二人の魔物の間に割って入るようにLAVが停車した。屋根からMINIMIを掃射しながら三戸が叫ぶ。
「二人共生きてるか!? 後部座席に乗れ!」
「承知! さ、ジャンヌ殿、立てるか?」
関羽がジャンヌに肩を貸し、少し窮屈そうに後部座席へと乗り込んだ。それを確認した三戸がアンジーに指示を出す。
「よし、出してくれ。数を減らしつつ撤退する」
「はいっ!」
アンジーはLAVをバック走行させながら斜面を登っていく。
「えいっ! えいっ!」
ついでに窓を開けて、手榴弾をポイポイと投げつけていく器用さだ。三戸は追ってくる魔物に向けてMINIMIを撃ちまくり、追撃を許さない。
(後ろに進みながら、それでも前に手榴弾を投げつけるとか、どんだけ剛腕なんだよ)
窓から僅かに腕を出しただけのスナップスローで、しっかり前方に手榴弾を投擲しているアンジーの剛球投手ぶりに、三戸も思わず苦笑いだ。
そうしている内に、MINIMIの弾幕と手榴弾の爆発に阻まれた魔物達は追撃を諦め、海岸沿いの集落へと戻っていった。それを見た三戸は、ようやく一息つき、アンジーへゆっくり運転するよう指示を出す。
ジャンヌと関羽が気を失ったように眠っていたからだ。
自らが運転する7tトラックから、アンジーが焦った表情で飛び降りてくる。どうやらアンジーも異変を察知していたらしく、急ぎたいところだが荷台に難民を乗せていたため、速度を上げられない焦燥感が滲み出ていた。
「来たか! すぐにいくぞ! LAVだ! 上部ハッチにMINIMI!」
「はい!」
アンジーが出したのは陸自の迷彩カラーとは違う、空自仕様の車両だった。上部ハッチには様々な武装を装備できるようになっているが、今回三戸がチョイスしたのは軽機関銃MINIMI。
さらに、三戸はナイチンゲールにもあるものを手渡した。
「これは?」
「護身用です。まあ、使わせないように頑張りますがね」
三戸が手渡したのは9mm機関拳銃。サブマシンガンに分類される。
簡単に使い方をレクチャーしたのち、三戸はLAVの後部に乗り込む。ナイチンゲールの時代には、すでに銃器は戦争の道具として一般的であったので、それほど違和感なく受け入れられたようだ。ただ、その連射速度には驚愕していたが。
「アンジー、運転頼む! 魔物は轢いちまっても構わねえ! 関さんとジャンヌの救援にいくぞ!」
「はいっ!」
アパッチなどでの空中からの攻撃も考えたが、もしもの時は関羽とジャンヌを拾って撤退する事も考えられる。そのためにも陸上での機動性が重要だと考えた。
「魔物共の側面を突く! 迂回してくれ、アンジー!」
「ウィルコ!」
LAVは斜面を斜めに疾走する。当然のように整地されていない地面はバンピーだ。しかし、そんな事はお構いなしに、抜群の走破性で駆け下る。
「見えた! 左!」
「はいっ! 確認しました!」
視認性が良いとは言えないLAVの運転席より、上部ハッチから乗り出している三戸の方が戦場をよく把握できる。恐らくジャンヌのブリューナクだろう。爆炎が立ち昇るのを確認した。
「よし、突っ込めアンジー!」
「はいっ! 突貫しますっ!」
三戸がMINIMIを斉射しながら、アンジーの運転でLAVが魔物の群れに突っ込んでいく。銃弾に穿たれ倒れる者。LAVに撥ねられ吹っ飛んでいく者。撃てば当たる。走れば当たる。そんな状態の中、夥しい数の魔物の死体を見て三戸は戦慄した。
(既にこれだけの数をやって尚、この大群か……)
焼け焦げて炭化した死体や一刀両断された死体。明らかにジャンヌと関羽によるものだ。とても正確には数えられたものではないが、これだけの数を人間二人で倒したなどと、誰が信じられるだろうか。それほどの数だった。
*****
一方、関羽とジャンヌは限界に近付いていた。
「ジャンヌ殿、そなたは下がれ。下がって民を退かせつつ、ミト殿を待つのだ」
ジャンヌの参戦で、一時は盛り返した関羽達だったが、集落で略奪や破壊をしていた魔物達が第二派となって襲い掛かってきたのだ。既に五百以上の魔物を片付けていたが、更にそこへ同規模の戦力の魔物が襲来してきた。心は折れずとも体力の方は限界に近く、また、魔物の新たな攻撃手段である瘴気弾は徐々に二人へダメージを蓄積させていた。
「ふふ、そうしたいのは山々なのですが……もうこの坂を登っていく事は出来そうにありませんね」
ジャンヌの方も、窮地の関羽を救う為に奮戦したが、もうガス欠に近い。ブリューナクを大地に突き立て、どうにか立っている状態である。
「ですが、最後に悪あがきを一つしてみましょうか」
ジャンヌはブリューナクを持ち直し、その刃を地面に突き立てた。
「もう籠められるものは私の命の力くらいしかありませんが……少しでも多くの魔物を道連れにしてみせましょう!」
彼女がそう叫ぶと、地面から数本の火柱が上がった。それは扇形に拡散していき、多くの魔物を巻き込んでいく。やがてそれは、十メートル程進んだところで消失する。
「くっ……こんなものですか。ひ弱なこの身体が恨めしいですね……」
自分が思った以上の威力を出せずに、ジャンヌは無念の表情で前のめりに倒れた。しかし、ジャンヌのこの魂を込めた一撃が、三戸が確認した爆炎だったのである。
「見事! ジャンヌ殿はそこで休んでおられよ。この軍神、関雲長! もう一花咲かせてくれようぞ!」
関羽が倒れたジャンヌの前で仁王立ちだ。もはや青龍偃月刀を振るう力も残っていない。ただ、漲る殺気と眼力のみで魔物の動きを止めて見せた。
と、その時だ。何やら最近では聞き慣れてしまった銃撃音と、『鉄の馬なし馬車』のエンジン音が聞こえてきた。
それは群がる魔物をハチの巣にし、立ちふさがる魔物を撥ね飛ばしながら猛スピードで接近してくる。
「おお……ミト殿か! ジャンヌ殿! ミト殿だ! ミト殿が来てくれたぞ!」
「え……ミト?」
関羽の声に応え、音のする方に顔だけ動かすジャンヌ。
そしてそこへ、二人の魔物の間に割って入るようにLAVが停車した。屋根からMINIMIを掃射しながら三戸が叫ぶ。
「二人共生きてるか!? 後部座席に乗れ!」
「承知! さ、ジャンヌ殿、立てるか?」
関羽がジャンヌに肩を貸し、少し窮屈そうに後部座席へと乗り込んだ。それを確認した三戸がアンジーに指示を出す。
「よし、出してくれ。数を減らしつつ撤退する」
「はいっ!」
アンジーはLAVをバック走行させながら斜面を登っていく。
「えいっ! えいっ!」
ついでに窓を開けて、手榴弾をポイポイと投げつけていく器用さだ。三戸は追ってくる魔物に向けてMINIMIを撃ちまくり、追撃を許さない。
(後ろに進みながら、それでも前に手榴弾を投げつけるとか、どんだけ剛腕なんだよ)
窓から僅かに腕を出しただけのスナップスローで、しっかり前方に手榴弾を投擲しているアンジーの剛球投手ぶりに、三戸も思わず苦笑いだ。
そうしている内に、MINIMIの弾幕と手榴弾の爆発に阻まれた魔物達は追撃を諦め、海岸沿いの集落へと戻っていった。それを見た三戸は、ようやく一息つき、アンジーへゆっくり運転するよう指示を出す。
ジャンヌと関羽が気を失ったように眠っていたからだ。
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