神様に妻子の魂を人質に取られたおっさんは、地球の未来の為に並行世界を救う。

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39話 外見

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 結局ブリューナクと青龍も、アンジーと同じように主とコミュケーションを楽しみたいとの強硬な主張を通し、常に具現化した状態でいる事になった。ただし、三戸やナイチンゲールからいくつかの条件が付けられる。

「外を出歩くならもう少し人間に近い姿じゃないと、魔物と間違われるぞ。それから服着ろ服!」
「せめて衣服は着用してください! 服! 特に青龍さんは!」
 
 それを聞いて、ジャンヌと関羽がくつくつと笑う。

「なあ、アンジー。アンジーはどうしてその姿なん――」
「可愛いは正義だからですっ!」

 ブリューナクがアンジーに問いかけると、彼女が間髪入れずに答えた。

「ふむふむ。その姿がミト様の好みという事か」
「ちょっとそこ! ヲイ!」

 青龍がしみじみと語るものだから、思わず三戸がツッコミを入れてしまう。そもそもアンジーの美少女っぷりは、三戸が想像できる美少女像というものを遥かに超越しているのだ。好みとかそういう問題ではないのである。

(それに、アンジーを見て『好みじゃない』とか言える男がこの世にいる訳がない)

 三戸は内心そう思いながらため息をつく。アンジーのルックスを自分の基準にされてはいろんな意味でたまらない。そこまで外観重視ではないのだから。

「フフフ。ミト様、冗談ですよ。で、雲長はあのような少女の姿がよいのだな?」
「おいこら! 待たぬか!」

 今度は関羽が真顔で焦る。

「フフフ。冗談だよ、雲長。それにしても、どうしたものか……」

 青龍は思案に耽り始めた。そこにトコトコとアンジーが駆け寄って、耳打ちする。

「ほう、なるほどなるほど」

 青龍が何度も頷き納得すると、次はブリューナクのもとへ行き、アンジーは同じように耳打ちする。

「はぁ~、すげえな、お前。なるほど、分かったぜ!」

 ブリューナクも鋭い爪の親指でサムズアップだ。
 そして二人の身体が再び眩い光に包まれる。

 ――バサッバサッ

 光が収まると、一羽の真っ赤なオウムが羽ばたき、ジャンヌの肩に停まる。

「ブリューナク?」
「ああ。この姿なら会話してても怪しまれないだろ?」
「なるほど! これがアンジーの提案だったのね!」

 ジャンヌが肩に停まるブリューナクに頬ずりをしている。余程嬉しいのだろう。ブリューナクの方もまんざらではなさそうだ。

「どうだ? 雲長」



 そしてもう一人。綺麗な青髪を頭の両サイドにシニヨンでまとめた女性が立っていた。衣服はやはり鮮やかなブルーのロングチャイナドレス。スリットは深い。これはアンジーの『中国っぽい女性』観に基づくものだ。姿は竜人だった時のような鱗は見えず、普通の人間となんら変わらない。やたらと美人だという事を除いては。
 ちなみに、現在認識されているチャイナドレスは西欧文化が融合したものらしいので、関羽にはまったく馴染みのないものだったりする。というか、チャイナドレスの原型となった満民族の民族衣装が広がったの十六世紀頃と言われているので、そもそも関羽の時代には無かった事になる。しかし、その魅力は破壊力抜群のようだ。

「う、うむ。とても良いのではないだろうか」

 少し照れながら、歯切れ悪く関羽が答えた。珍しい関羽の表情に、その場の全員がニタニタとしている。

「ぬぅ……」

 居心地が悪くなった関羽がふとテントの外へと目をやった。

「おぅっ!?」

 なぜか関羽がビクリと硬直した。普段は何事にも動じない関羽のそのリアクションもまた非常にレアであり、青龍としては『ごちそうさま』と言ったところか。
 その視線の先には、恨めしそうにテントの中を窺うリチャードとサラディンが、膝を抱えて並んで座っていた。

*****

 医療テントの中で喧嘩を始めたリチャードとサラディンが、アンジーに放り出された直後。

「そんなに元気が有り余っているなら、リチャード様とサラディン様にはやっていただきたい事があります!」
「な、なんじゃろうか?」
「……」

 ジト目のアンジーの迫力に、少しのけ反りながら冷や汗を流すサラディンと、何もない空を見上げてやり過ごそうとしているリチャード。

「このキャンプ地を要塞にして下さい! 魔物が攻めてきても絶対に陥落しない、無敵の要塞にです!」
「「はい?」」

 その後、幾分態度が柔らかくなったアンジーから説明を受けた。
 概要として、エクスカリバーの地形操作の能力で防壁を作り、このキャンプ地を囲ってしまう。防衛用の火器を数基置いていくので、サラディンの重力操作で適切と思われる場所に配置する。

「こういった部隊配置に類する事は、マスターよりも軍の責任者だったお二人の方が適任かと思います」

 アンジーのこの言葉を聞いて、二人のやる気は俄然盛り上がりを見せた。扱いはぞんざいだが、なんだかんだ言いながら期待されている。ここは点数を稼ぐ良い機会ではないか。犬猿の仲の二人も、この思惑は見事に一致した。

「よし! やるぞサラディン!」
「うむ! 無敵の要塞じゃな! 承った!」

 そして二人は作業に取り掛かる。リチャードのエクスカリバーの地形操作の能力で土を盛り上げ防壁を構築。それもただの防壁ではなく、外側からはオーバーハングになっており、よじ登ったりすることは非常に困難だ。さらに、防壁の上はアンジーの出す戦闘車両の通行も念頭に置いた設計だ。
 
「ふむ。これは中々に芸術的な出来栄えではないか」
「そうじゃな。しかも機能的じゃ」

 サラディンのジハードの重力操作の能力で、二人は空中から要塞を眺めていた。地上からではよく分からないが、その形はヘキサグラム。六芒星と言われるものだ。六つの頂点にそれぞれciwsを配備し、全方向からの攻撃に対処できるようにしている。その設計思想は函館の五稜郭などに見られるものと同様だ。
 二人は特に意図していた訳ではないが、エルサレムの争奪戦を繰り広げた二人がユダヤの象徴といわれる六芒星を模した要塞を作るとは、中々に皮肉が効いている。
 何はともあれ、かなりの自信作に仕上がった事で、二人は揚々とジャンヌ達がいる医療テントに引き上げた。そしてそこで見たものは、真っ赤な美しい毛色のオウムに愛情を注いでいるジャンヌと、青い煽情的なチャイナドレスの美女を前に初心な反応を見せる関羽の姿。

「ぐ……余らが土木作業をしている間になんと恨めし、いや、羨ましい……」
「二人とも、爆発してしまえばええんじゃ……」
 
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