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AD1855
52話 撤退戦
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ジャンヌ、関羽、リチャード、サラディンがチヌークに乗り込み扉を閉めると、二基のローターはその回転数を上げ、大柄な機体をゆっくりと浮上させていく。
「アンジー、お前がアレの制御を疎かにしねえよう、援護してやる」
ブリューナクが最初に具現化した時のように、鳥である朱雀が無理矢理人型を模したような、そんな姿でアンジーの隣で浮いている。手には燃え盛る槍。ブンッ! とその槍を一振りし、チヌークに視線を投げかけながらそう言う。
「そうだな。アレには我が主が乗っているのでな。落とされては敵わん」
さらに反対側の隣には龍人姿の青龍。手には幅広の片刃の剣を構えている。
「お二人共……ありがとうございますっ!」
そして三人は各々魔物に躍りかかり、空中戦を繰り広げるのだった。
一方、チヌークの機体の内部では、四人がそれぞれ違う反応を見せている。
もちろん、大きな機体は魔物の標的になりやすく、幾度も攻撃が掠めていく。
「ほっほっほ。これは中々肝が冷えるわい」
サラディンが無人の操縦席がある方向をチラチラと見ながら落ち着かない様子だ。
「敵の攻撃を受けるだけというのは性に合わん!」
リチャードは苛立たし気に窓の外を見ている。窓の外ではアンジーが20mm機関砲で魔物を撃ち落としていた。自分はそれを眺めている事しかできない。その事がどうにも気に入らないらしい。
自ら戦場で剣を振るっている時は恐怖など微塵も感じないし、むしろ興奮で気分が高揚するくらいだが、何もする事が出来ずにただ守られているだけ。ストレスが溜まっていくのも止む無しと言ったところか。
「お主らは、アンジーにミトを信じよと言っておきながら、アンジーの事は信じられぬか?」
逆に、泰然自若。関羽は瞳を閉じ、落ち着き払っていた。
「そうですよ。それにブリューナクも青龍も私達を守ってくれています。何も心配いりません」
この中では一番三戸との付き合いが長いジャンヌも同様だ。アンジーや三戸が不在でも、このチヌークが落ちるなどとは考えていない。
「むう、何だか儂等、小者感が漏れ出していたようじゃぞ?」
「ぐぬぬぬ……この鬱憤はヘキサゴンに戻ったら魔物共にぶつけてくれるわ!」
明らかに不貞腐れた風の二人は、どかりと座り窓の外に見える空中戦を観戦するのだった。
一方、アンジーは群がる飛行型魔物を迎撃しつつ、無人運転の状態のチヌークを制御するという離れ業をやってのけている。しかしチヌークを遠隔操作すると言っても、単に目的地まで飛ばすだけという訳ではない。チヌークにも攻撃を仕掛ける魔物はいる。その攻撃を躱しながら、自らも敵と対峙するという多角的な判断を強いられていた。
(ジャンヌ様と関羽様の信頼に応えるためにも、絶対に無傷でヘキサゴンまで送り届けなければ! それから私への信頼が足りないリチャード様とサラディン様からは、一層の信頼を勝ち取らないと!)
現状アンジーに対する負荷は高い。ブリューナクと青龍の参戦で事態は好転したが、まだ連携という意味では手探り状態だった。それは、火砲を扱うアンジーにとって、味方であるブリューナクも青龍も、動きを把握しておかなければならない対象という事である。
しかしそれでも、段々とアンジーにも分かってきた事がある。
(ブリューナクさんは空中機動力を生かした遊撃戦が得意。龍鱗に覆われた青龍さんは、高い防御力を生かして接近戦に持ち込み確実に仕留める……それなら!)
「ブリューナクさん!、青龍さん! ヘキサゴンに着くまでの少しの間、私の指示に従ってください!」
「ん? おー、いいぜ!」
「ほう、よかろう。見事私を使ってみせよ」
アンジーの叫びに、敵を倒しながらも答えるブリューナクと青龍。
「では! ブリューナクさんはチヌークに近付く敵を、青龍さんは私に近付く敵を落として下さい!」
「おお! 了解だ!」
「うむ。ここでお主を守ればよいのだな? 任せてもらおう!」
二人の答えを聞いたアンジーは、その場に留まり、ホバリングの状態になる。チヌークはそのままヘキサゴンへの最短距離を飛行させた。護衛にブリューナクが付いている。自分はチヌークを飛ばす事。そして魔物を撃ち落とす事のみに専念する。その決心の現れが空中で留まる事だった。
「青龍さん、少しの間、しっかり私を守って下さいね! 私が落とされたら関羽様も落ちちゃいますからねっ!」
「ふふふ。分かっているとも!」
二人は強く頷きあう。そして青龍は柳葉刀を両手に構えた。柳葉刀とは中国で一般的に使われていた刀剣で、切っ先の方が幅広になっている片刃で反りのある剣だ。柄は短く片手剣に分類される。
その闘気溢れる姿を見たあと、アンジーは静かに目を閉じる。もはや目で敵を追うのはやめたのだ。この先は戦場を広範囲に表示するレーダーマップのみを頼りに戦う。いくらアンジーが優秀なAIだと言っても、人型をしていてはその視界の広さは人間と変わらない。アンジーの意識の中に表示されているレーダーに映る敵のみに狙いを定め、ミサイルをロックオンしていく。
戦場全体を俯瞰するそのレーダーのみを頼りに戦うには、あまりにもアンジーの負担が大きすぎた。しかし、自らの存在を守るという作業を完全に青龍に委ねた今だからこそ、できる芸当だ。
「マスター! 少し遅れますが、待っていて下さいねっ!」
この後、冴えわたるアンジーのミサイル攻撃と青龍の二刀流攻撃に、ブリューナクが退屈したのは別のお話。
「アンジー、お前がアレの制御を疎かにしねえよう、援護してやる」
ブリューナクが最初に具現化した時のように、鳥である朱雀が無理矢理人型を模したような、そんな姿でアンジーの隣で浮いている。手には燃え盛る槍。ブンッ! とその槍を一振りし、チヌークに視線を投げかけながらそう言う。
「そうだな。アレには我が主が乗っているのでな。落とされては敵わん」
さらに反対側の隣には龍人姿の青龍。手には幅広の片刃の剣を構えている。
「お二人共……ありがとうございますっ!」
そして三人は各々魔物に躍りかかり、空中戦を繰り広げるのだった。
一方、チヌークの機体の内部では、四人がそれぞれ違う反応を見せている。
もちろん、大きな機体は魔物の標的になりやすく、幾度も攻撃が掠めていく。
「ほっほっほ。これは中々肝が冷えるわい」
サラディンが無人の操縦席がある方向をチラチラと見ながら落ち着かない様子だ。
「敵の攻撃を受けるだけというのは性に合わん!」
リチャードは苛立たし気に窓の外を見ている。窓の外ではアンジーが20mm機関砲で魔物を撃ち落としていた。自分はそれを眺めている事しかできない。その事がどうにも気に入らないらしい。
自ら戦場で剣を振るっている時は恐怖など微塵も感じないし、むしろ興奮で気分が高揚するくらいだが、何もする事が出来ずにただ守られているだけ。ストレスが溜まっていくのも止む無しと言ったところか。
「お主らは、アンジーにミトを信じよと言っておきながら、アンジーの事は信じられぬか?」
逆に、泰然自若。関羽は瞳を閉じ、落ち着き払っていた。
「そうですよ。それにブリューナクも青龍も私達を守ってくれています。何も心配いりません」
この中では一番三戸との付き合いが長いジャンヌも同様だ。アンジーや三戸が不在でも、このチヌークが落ちるなどとは考えていない。
「むう、何だか儂等、小者感が漏れ出していたようじゃぞ?」
「ぐぬぬぬ……この鬱憤はヘキサゴンに戻ったら魔物共にぶつけてくれるわ!」
明らかに不貞腐れた風の二人は、どかりと座り窓の外に見える空中戦を観戦するのだった。
一方、アンジーは群がる飛行型魔物を迎撃しつつ、無人運転の状態のチヌークを制御するという離れ業をやってのけている。しかしチヌークを遠隔操作すると言っても、単に目的地まで飛ばすだけという訳ではない。チヌークにも攻撃を仕掛ける魔物はいる。その攻撃を躱しながら、自らも敵と対峙するという多角的な判断を強いられていた。
(ジャンヌ様と関羽様の信頼に応えるためにも、絶対に無傷でヘキサゴンまで送り届けなければ! それから私への信頼が足りないリチャード様とサラディン様からは、一層の信頼を勝ち取らないと!)
現状アンジーに対する負荷は高い。ブリューナクと青龍の参戦で事態は好転したが、まだ連携という意味では手探り状態だった。それは、火砲を扱うアンジーにとって、味方であるブリューナクも青龍も、動きを把握しておかなければならない対象という事である。
しかしそれでも、段々とアンジーにも分かってきた事がある。
(ブリューナクさんは空中機動力を生かした遊撃戦が得意。龍鱗に覆われた青龍さんは、高い防御力を生かして接近戦に持ち込み確実に仕留める……それなら!)
「ブリューナクさん!、青龍さん! ヘキサゴンに着くまでの少しの間、私の指示に従ってください!」
「ん? おー、いいぜ!」
「ほう、よかろう。見事私を使ってみせよ」
アンジーの叫びに、敵を倒しながらも答えるブリューナクと青龍。
「では! ブリューナクさんはチヌークに近付く敵を、青龍さんは私に近付く敵を落として下さい!」
「おお! 了解だ!」
「うむ。ここでお主を守ればよいのだな? 任せてもらおう!」
二人の答えを聞いたアンジーは、その場に留まり、ホバリングの状態になる。チヌークはそのままヘキサゴンへの最短距離を飛行させた。護衛にブリューナクが付いている。自分はチヌークを飛ばす事。そして魔物を撃ち落とす事のみに専念する。その決心の現れが空中で留まる事だった。
「青龍さん、少しの間、しっかり私を守って下さいね! 私が落とされたら関羽様も落ちちゃいますからねっ!」
「ふふふ。分かっているとも!」
二人は強く頷きあう。そして青龍は柳葉刀を両手に構えた。柳葉刀とは中国で一般的に使われていた刀剣で、切っ先の方が幅広になっている片刃で反りのある剣だ。柄は短く片手剣に分類される。
その闘気溢れる姿を見たあと、アンジーは静かに目を閉じる。もはや目で敵を追うのはやめたのだ。この先は戦場を広範囲に表示するレーダーマップのみを頼りに戦う。いくらアンジーが優秀なAIだと言っても、人型をしていてはその視界の広さは人間と変わらない。アンジーの意識の中に表示されているレーダーに映る敵のみに狙いを定め、ミサイルをロックオンしていく。
戦場全体を俯瞰するそのレーダーのみを頼りに戦うには、あまりにもアンジーの負担が大きすぎた。しかし、自らの存在を守るという作業を完全に青龍に委ねた今だからこそ、できる芸当だ。
「マスター! 少し遅れますが、待っていて下さいねっ!」
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