神様に妻子の魂を人質に取られたおっさんは、地球の未来の為に並行世界を救う。

SHO

文字の大きさ
56 / 151
AD1855

55話 脳筋ズ、汚名返上か

しおりを挟む
 二台のLAVに分乗した三戸達がヘキサゴンへと帰還した。出迎えてくる難民達や志願兵達は一様に心配そうな表情だったが、救世者メサイア達の無事な姿を見て安堵したようだった。
 三戸もアンジーが不在だからと言って呆けてばかりもいられない。ブリューナクの話では、飛行型の魔物の部隊はアンジーと青龍が抑えている。追撃が来ない事から、壊滅させた公算が大きいだろう。
 しかし、遅れてやってくる地上部隊の大群は健在だ。アンジーと青龍がこちらに帰還している最中だとすれば、その大群は無傷のままこのヘキサゴンに押し寄せてくる。
 三戸達は防壁上に移動し、志願兵達と合流した。

「アンジーがいないとciwsは動かせない。手持ちの武器は配備されているMINIMIだけだ。LAVから取り外したのも含めて三十九丁。これでやりくりするしかない」

 三戸が隊長にそう言うと、敬礼をしながら隊長が答える。三戸がLAVで魔物に突撃をかましたため、MINIMIの一丁は使い物にならなくなっている。

「我々志願兵は二十名ですが、有志の中から銃撃手を選抜してはいかがでしょうか!」
「ふむ……」

 隊長の言うように、確かに難民の中には『俺も戦わせてくれ!』という連中が多くいた。銃火器を遊ばせておく手はないし、戦力に余裕もない。そこで三戸はしばし考えを巡らせ、隊長に聞いてみた。

「なあ、ターキーさんに掛け合って、銃とか弓矢とか借りられないか?」
「はあ……それほど数に余裕はありませんし、弾薬も豊富という訳でもありませんが、事情が事情ですので協力はして下さると思います」

 火器が足りないなら現地調達で。それが三戸が出した結論だ。ただし、防壁上からの狙撃のみ。
 魔物も瘴気弾を放ってくることから、防壁上とは言え安全は保障できない。しかし、魔物に恨みを持つ人々が雪辱の機会を求めるのも分かる。

「有志の中から銃器の扱いに経験があるヤツを選抜しといてくれ。それから隊長、あのデカいの運転してターキーさんから武器を借りてきてくれ」
「え……?」

 三戸が指示したのは7tトラックで武器を調達してこい、だ。隊長の表情が固まる。あんな大きいものを自分に運転できるのか、と。

「操作方法は変わらんよ。ただデカいだけだ。ほら、急がねえと魔物が攻めてくるぞ!」
「はっ!」

 隊長は残った志願兵に色々と指示を飛ばし、一名を連れて7tトラックへと走って行った。

「あいつ、部下に運転させる気だな……」

 呆れ顔で隊長を見送った三戸の所に、リチャードと関羽がやってきた。

「ミトよ。このヘキサゴンの西側に空堀を掘ってみた。中には石槍をびっしり敷き詰めてある」

 ドヤ顔のリチャードを見て苦笑する関羽だが、その仕事振りは素直に評価しているようで、付け加えるように言った。

「うむ。これで簡単には防壁に近付く事は出来まいよ。空堀の外で立ち往生する魔物は、ミトの銃器の格好の的となろう?」

 そう言われて、三戸は防壁上を西側に移動した。視線を下に向ければ、幅二十メートル程の空堀が出来上がっていた。深さは十メートル程だろうか。底には隙間なく鋭利に尖った石柱が突き出しており、落ちたら最後、串刺しになる運命が待ち受けている。
 リチャードのエクスカリバーの能力を駆使したのだろうが、この短時間での仕上がりには三戸も素直に称賛した。

「凄いな! これでかなり持ちこたえられる! ついでに西側だけじゃなくて、全周囲覆ってくれよな!」
「全周囲……う、うむ! 余に任せておけい!」

 にこやかにサムズアップする三戸に、やや表情を強張らせながらも胸をドンと叩くリチャード。そして海岸線のある南側へと移動していく彼を関羽と二人で見送る。

「何も言ってないのに南側へ行くあたり、あの男もちゃんと考えているんだよな」
「うむ。敵が攻め寄せる西側の防御を強くしたのもあの御仁の提案であった。普段の言動とは違って機転は利く。それがしも見倣わねばな」

 言われても出来ないタイプ。言われればやるタイプ。言われなくてもやるべきことを出来るタイプ。どのタイプが重用されるかは言うまでもない。リチャードは言うまでもなく、自分自身でやるべきことが分かっていて、そして実行できる能力を持っている。そして躊躇なく実行してしまう。

「ああ。心強い仲間だよ」

 三戸はオレンジ色に染まり始めた西の空を見上げながらそう返した。

「それがしもここで青龍を待っていても良いだろうか?」
「ああ、もちろん。出迎えて褒めてやらねえとな」

*****

 その頃、ヘキサゴン内部では、サラディンが難民達を集めて大声を張り上げていた。

「良いか皆の者! この防壁の外側には堀が出来ておる! しかも、その堀を作ったバカ者は、堀の底に石の槍を敷き詰めておるでな。間違っても落ちるでないぞい!」

 ――ザワザワ……

「しかしあのバカとて悪戯にこんな事をした訳ではないのじゃ! 魔物からこのヘキサゴンを守る為なのじゃ! どうかあのバカを責めんでやってくれい!」

 その直後、ざわつく難民を前に熱弁を振るうサラディンの耳に、難民の騒めきとは別の怒声が飛び込んできた。

「誰がバカ者だクソ爺! 貴様を堀に落として、落ちた者がどうなるか見本を見せてやるわ!」
「……おっと。聞こえておったか。しまったのぅ」

 てへっと舌をだし、笑ってごまかすクソ爺だった。
 もちろん三戸にも関羽にも一部始終が聞こえていたが、このサラディンも難民に注意喚起を促すという裏方の仕事を、指図される訳でもないのにやってしまう機転に感心する二人だった。

 
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...