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AD1855
55話 脳筋ズ、汚名返上か
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二台のLAVに分乗した三戸達がヘキサゴンへと帰還した。出迎えてくる難民達や志願兵達は一様に心配そうな表情だったが、救世者達の無事な姿を見て安堵したようだった。
三戸もアンジーが不在だからと言って呆けてばかりもいられない。ブリューナクの話では、飛行型の魔物の部隊はアンジーと青龍が抑えている。追撃が来ない事から、壊滅させた公算が大きいだろう。
しかし、遅れてやってくる地上部隊の大群は健在だ。アンジーと青龍がこちらに帰還している最中だとすれば、その大群は無傷のままこのヘキサゴンに押し寄せてくる。
三戸達は防壁上に移動し、志願兵達と合流した。
「アンジーがいないとciwsは動かせない。手持ちの武器は配備されているMINIMIだけだ。LAVから取り外したのも含めて三十九丁。これでやりくりするしかない」
三戸が隊長にそう言うと、敬礼をしながら隊長が答える。三戸がLAVで魔物に突撃をかましたため、MINIMIの一丁は使い物にならなくなっている。
「我々志願兵は二十名ですが、有志の中から銃撃手を選抜してはいかがでしょうか!」
「ふむ……」
隊長の言うように、確かに難民の中には『俺も戦わせてくれ!』という連中が多くいた。銃火器を遊ばせておく手はないし、戦力に余裕もない。そこで三戸はしばし考えを巡らせ、隊長に聞いてみた。
「なあ、ターキーさんに掛け合って、銃とか弓矢とか借りられないか?」
「はあ……それほど数に余裕はありませんし、弾薬も豊富という訳でもありませんが、事情が事情ですので協力はして下さると思います」
火器が足りないなら現地調達で。それが三戸が出した結論だ。ただし、防壁上からの狙撃のみ。
魔物も瘴気弾を放ってくることから、防壁上とは言え安全は保障できない。しかし、魔物に恨みを持つ人々が雪辱の機会を求めるのも分かる。
「有志の中から銃器の扱いに経験があるヤツを選抜しといてくれ。それから隊長、あのデカいの運転してターキーさんから武器を借りてきてくれ」
「え……?」
三戸が指示したのは7tトラックで武器を調達してこい、だ。隊長の表情が固まる。あんな大きいものを自分に運転できるのか、と。
「操作方法は変わらんよ。ただデカいだけだ。ほら、急がねえと魔物が攻めてくるぞ!」
「はっ!」
隊長は残った志願兵に色々と指示を飛ばし、一名を連れて7tトラックへと走って行った。
「あいつ、部下に運転させる気だな……」
呆れ顔で隊長を見送った三戸の所に、リチャードと関羽がやってきた。
「ミトよ。このヘキサゴンの西側に空堀を掘ってみた。中には石槍をびっしり敷き詰めてある」
ドヤ顔のリチャードを見て苦笑する関羽だが、その仕事振りは素直に評価しているようで、付け加えるように言った。
「うむ。これで簡単には防壁に近付く事は出来まいよ。空堀の外で立ち往生する魔物は、ミトの銃器の格好の的となろう?」
そう言われて、三戸は防壁上を西側に移動した。視線を下に向ければ、幅二十メートル程の空堀が出来上がっていた。深さは十メートル程だろうか。底には隙間なく鋭利に尖った石柱が突き出しており、落ちたら最後、串刺しになる運命が待ち受けている。
リチャードのエクスカリバーの能力を駆使したのだろうが、この短時間での仕上がりには三戸も素直に称賛した。
「凄いな! これでかなり持ちこたえられる! ついでに西側だけじゃなくて、全周囲覆ってくれよな!」
「全周囲……う、うむ! 余に任せておけい!」
にこやかにサムズアップする三戸に、やや表情を強張らせながらも胸をドンと叩くリチャード。そして海岸線のある南側へと移動していく彼を関羽と二人で見送る。
「何も言ってないのに南側へ行くあたり、あの男もちゃんと考えているんだよな」
「うむ。敵が攻め寄せる西側の防御を強くしたのもあの御仁の提案であった。普段の言動とは違って機転は利く。それがしも見倣わねばな」
言われても出来ないタイプ。言われればやるタイプ。言われなくてもやるべきことを出来るタイプ。どのタイプが重用されるかは言うまでもない。リチャードは言うまでもなく、自分自身でやるべきことが分かっていて、そして実行できる能力を持っている。そして躊躇なく実行してしまう。
「ああ。心強い仲間だよ」
三戸はオレンジ色に染まり始めた西の空を見上げながらそう返した。
「それがしもここで青龍を待っていても良いだろうか?」
「ああ、もちろん。出迎えて褒めてやらねえとな」
*****
その頃、ヘキサゴン内部では、サラディンが難民達を集めて大声を張り上げていた。
「良いか皆の者! この防壁の外側には堀が出来ておる! しかも、その堀を作ったバカ者は、堀の底に石の槍を敷き詰めておるでな。間違っても落ちるでないぞい!」
――ザワザワ……
「しかしあのバカとて悪戯にこんな事をした訳ではないのじゃ! 魔物からこのヘキサゴンを守る為なのじゃ! どうかあのバカを責めんでやってくれい!」
その直後、ざわつく難民を前に熱弁を振るうサラディンの耳に、難民の騒めきとは別の怒声が飛び込んできた。
「誰がバカ者だクソ爺! 貴様を堀に落として、落ちた者がどうなるか見本を見せてやるわ!」
「……おっと。聞こえておったか。しまったのぅ」
てへっと舌をだし、笑ってごまかすクソ爺だった。
もちろん三戸にも関羽にも一部始終が聞こえていたが、このサラディンも難民に注意喚起を促すという裏方の仕事を、指図される訳でもないのにやってしまう機転に感心する二人だった。
三戸もアンジーが不在だからと言って呆けてばかりもいられない。ブリューナクの話では、飛行型の魔物の部隊はアンジーと青龍が抑えている。追撃が来ない事から、壊滅させた公算が大きいだろう。
しかし、遅れてやってくる地上部隊の大群は健在だ。アンジーと青龍がこちらに帰還している最中だとすれば、その大群は無傷のままこのヘキサゴンに押し寄せてくる。
三戸達は防壁上に移動し、志願兵達と合流した。
「アンジーがいないとciwsは動かせない。手持ちの武器は配備されているMINIMIだけだ。LAVから取り外したのも含めて三十九丁。これでやりくりするしかない」
三戸が隊長にそう言うと、敬礼をしながら隊長が答える。三戸がLAVで魔物に突撃をかましたため、MINIMIの一丁は使い物にならなくなっている。
「我々志願兵は二十名ですが、有志の中から銃撃手を選抜してはいかがでしょうか!」
「ふむ……」
隊長の言うように、確かに難民の中には『俺も戦わせてくれ!』という連中が多くいた。銃火器を遊ばせておく手はないし、戦力に余裕もない。そこで三戸はしばし考えを巡らせ、隊長に聞いてみた。
「なあ、ターキーさんに掛け合って、銃とか弓矢とか借りられないか?」
「はあ……それほど数に余裕はありませんし、弾薬も豊富という訳でもありませんが、事情が事情ですので協力はして下さると思います」
火器が足りないなら現地調達で。それが三戸が出した結論だ。ただし、防壁上からの狙撃のみ。
魔物も瘴気弾を放ってくることから、防壁上とは言え安全は保障できない。しかし、魔物に恨みを持つ人々が雪辱の機会を求めるのも分かる。
「有志の中から銃器の扱いに経験があるヤツを選抜しといてくれ。それから隊長、あのデカいの運転してターキーさんから武器を借りてきてくれ」
「え……?」
三戸が指示したのは7tトラックで武器を調達してこい、だ。隊長の表情が固まる。あんな大きいものを自分に運転できるのか、と。
「操作方法は変わらんよ。ただデカいだけだ。ほら、急がねえと魔物が攻めてくるぞ!」
「はっ!」
隊長は残った志願兵に色々と指示を飛ばし、一名を連れて7tトラックへと走って行った。
「あいつ、部下に運転させる気だな……」
呆れ顔で隊長を見送った三戸の所に、リチャードと関羽がやってきた。
「ミトよ。このヘキサゴンの西側に空堀を掘ってみた。中には石槍をびっしり敷き詰めてある」
ドヤ顔のリチャードを見て苦笑する関羽だが、その仕事振りは素直に評価しているようで、付け加えるように言った。
「うむ。これで簡単には防壁に近付く事は出来まいよ。空堀の外で立ち往生する魔物は、ミトの銃器の格好の的となろう?」
そう言われて、三戸は防壁上を西側に移動した。視線を下に向ければ、幅二十メートル程の空堀が出来上がっていた。深さは十メートル程だろうか。底には隙間なく鋭利に尖った石柱が突き出しており、落ちたら最後、串刺しになる運命が待ち受けている。
リチャードのエクスカリバーの能力を駆使したのだろうが、この短時間での仕上がりには三戸も素直に称賛した。
「凄いな! これでかなり持ちこたえられる! ついでに西側だけじゃなくて、全周囲覆ってくれよな!」
「全周囲……う、うむ! 余に任せておけい!」
にこやかにサムズアップする三戸に、やや表情を強張らせながらも胸をドンと叩くリチャード。そして海岸線のある南側へと移動していく彼を関羽と二人で見送る。
「何も言ってないのに南側へ行くあたり、あの男もちゃんと考えているんだよな」
「うむ。敵が攻め寄せる西側の防御を強くしたのもあの御仁の提案であった。普段の言動とは違って機転は利く。それがしも見倣わねばな」
言われても出来ないタイプ。言われればやるタイプ。言われなくてもやるべきことを出来るタイプ。どのタイプが重用されるかは言うまでもない。リチャードは言うまでもなく、自分自身でやるべきことが分かっていて、そして実行できる能力を持っている。そして躊躇なく実行してしまう。
「ああ。心強い仲間だよ」
三戸はオレンジ色に染まり始めた西の空を見上げながらそう返した。
「それがしもここで青龍を待っていても良いだろうか?」
「ああ、もちろん。出迎えて褒めてやらねえとな」
*****
その頃、ヘキサゴン内部では、サラディンが難民達を集めて大声を張り上げていた。
「良いか皆の者! この防壁の外側には堀が出来ておる! しかも、その堀を作ったバカ者は、堀の底に石の槍を敷き詰めておるでな。間違っても落ちるでないぞい!」
――ザワザワ……
「しかしあのバカとて悪戯にこんな事をした訳ではないのじゃ! 魔物からこのヘキサゴンを守る為なのじゃ! どうかあのバカを責めんでやってくれい!」
その直後、ざわつく難民を前に熱弁を振るうサラディンの耳に、難民の騒めきとは別の怒声が飛び込んできた。
「誰がバカ者だクソ爺! 貴様を堀に落として、落ちた者がどうなるか見本を見せてやるわ!」
「……おっと。聞こえておったか。しまったのぅ」
てへっと舌をだし、笑ってごまかすクソ爺だった。
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