神様に妻子の魂を人質に取られたおっさんは、地球の未来の為に並行世界を救う。

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54話 三戸、(すみません、取り乱しました)

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「アンジー! おいアンジー! ……くそっ!」

 三戸はLAVで必死にチヌークを追いかけながら、やはり必死にアンジーに呼びかけている。それよりももっと必死なのは、三戸の運転に追従している志願兵だったりするが。

「ミト、気持ちは分かりますが落ち着いて下さい。アレが飛んでいるのはアンジーが無事な証拠でしょう?」
「ま、まあそりゃそうなんだが……」

 しかしそれならば、なぜブリューナクがチヌークを攻撃しているのか。ローターを攻撃している様は、まるでチヌークを撃墜しようとしているように見える。

「しかし、中にはジャンヌさん達もいるのでしょう? ブリューナクも考えあっての事なのでは?」
「ふうっ、そうだな……」

 先程から頭に血が上りすぎている。ナイチンゲールに諭されるのはこれで何度目か。冷静に考えれば分かる事だ。しかし非常事態である事は間違いない。何等かのトラブルが発生し、チヌークは着陸できない状態なのだ。
 三戸はここから考えられるケースをいくつかシミュレートしてみる。
 ひとつ。アンジーがチヌークを遠隔操作を出来ない状態であること。例えば戦闘中に殿しんがりを買って出て、他のメンバーを逃がしたなど。
 もうひとつ。アンジーが深刻なダメージを受けてしまい、チヌークの制御が困難になってしまった。
 さらにもうひとつ。アンジーがチヌークを操縦しているが、チヌークそのものに不具合が発生し、制御不能の状態になっていること。

「ああ~、もうやめだやめだ! 考えたってしゃーねえ!」

 どう考えてもネガティブじゃ状況しか思い浮かばない。三戸はシミュレートをやめ、地面の障害物を避けながら運転に集中した。結局どう考えても、三戸に出来る事はチヌークを追いかける事だけだ。
 そうこうしているうちに、チヌークのローターは完全に破壊され、ゆっくりと降下を始めた。そう、ゆっくりと・・・・・だ。

「ゆっくり落ちてますね……」
「ああ。ゆっくり落ちてるな……」

 意外な展開に、ナイチンゲールも三戸も呆気にとられている。おかげでややスピードが落ちてしまい、追従していた志願兵の運転するLAVが、漸く追い付いてきた。

(アンジーの仕業か? いや、さすがにアンジーも推進力を失った機体をゆっくり降下させるなんて芸当は……)

 三戸が脳内で考えるが、あのような現象を引き起こすようなものには心当たりがない。ナイチンゲールも同様に考えているが、彼女はもっと分からないだろう。彼女は医療従事者であって軍人やエンジニアではないのだ。
 だが、そのナイチンゲールが閃いたらしい。

「もしかして……」
「ん?」

 三戸はステアリングを握りながらも彼女に注意を向ける。

「サラディン殿の能力ならあるいは……」
「なるほど!」

 サラディンの持つジハードの能力なら、確かに可能だ。そこに思い至った三戸は思わず左の掌に右の拳をポンと乗せた。

「ああっ! ミト! ハンドル! ハンドル!」

 目前に迫る大木に、ナイチンゲールは思わず悲鳴を上げた。

*****

「よっこらせっと」

 ゆっくりと着陸したチヌークから最後に降りてきたのはサラディンだった。

「爺臭い……と言いたいところだが……今回は貴様の働きが大きい。褒めてつかわす」

 さすがに王様らしく、リチャードがふんぞり返りながらサラディンの働きを称えた。

「ふん。さすがにあの高さから飛び降りるのは気が引けるでな。お主の為ではないわい」

 いつもと違って貶すような言葉をかけてこないリチャードに、サラディンもどう反応したらよいのか分からない。そういった反応で返す。
 一方、ジャンヌと関羽はブリューナクから詳細を聞いていた。

「……という訳でよ、アンジーは俺にコイツを護衛するよう指示して、青龍と二人で残ったのさ。おかげで魔物一匹襲って来なかったけどな」
「それにしても、アンジーが気掛かりね……」
「うむ。青龍が言葉を濁していたのもな……」

 ブリューナクの説明を一通り聞き終えるも、やはりアンジーの状態が気にかかるジャンヌと関羽。ちょうどそこへ、LAVで追跡していた三戸達が到着した。
 三戸、そしてナイチンゲールが車を降り、バタンとドアを閉めながら駆け寄っていく。

「みんな無事か! 怪我してるヤツは……アンジーは!? アンジーはどこだ!?」

 全員の様子を見て、怪我人がいなそうな事から取り敢えず安堵するも、アンジーが見当たらない事から三戸は再び取り乱しそうになる。
 そんな三戸の肩に、ジャンヌが優しくそっと手を置いた。

「アンジーは私達をヘキサゴンに無事に送り届けるために、青龍と共に戦場に残ったそうです。今は青龍と共にいるようですから心配はいらないと思いますが、チヌークの状況から、何等かのトラブルはあったと思います」

 三戸はジャンヌの話を聞き、深く長く深呼吸をした。

「済まない、取り乱した。取り敢えずヘキサゴンに戻って待ってみるか」

 三戸は自分が不在の時に妻子を失った過去がある。自分の目が届かない所でアンジーの消息が分からなくなるのは、どうしてもあの時の状況と被ってしまい、冷静ではいられなくなるのだ。トラウマと言っていい。

(みんなの前でこんなんじゃ、ダメだよなぁ……)

 ため息をつきながら、三戸はLAVの運転席へ乗り込んだ。
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