神様に妻子の魂を人質に取られたおっさんは、地球の未来の為に並行世界を救う。

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83話 着々と。

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 なんと、ナイチンゲール以外の全員が飛行可能という事実が判明し、三戸を始め他の救世者メサイア達もあんぐりしていた。
 だが、それによって戦術の幅が広がったのもまた事実であり、三戸は作戦を練り直す。
 そんな三戸を余所に、自分達も飛べると知った他の面子は飛行訓練に勤しんでいた。

「じゃあ、入るぞ?」
「ええ、いつでも来て!」

 ブリューナクが半透明になり、ジャンヌの身体の中に入り込んでいく。流石にこの光景は三戸も気になったようで、一部始終を凝視していた。

「……特に違和感はないわね。むしろ身体の内側から力が溢れ出てくるよう」

(マジかよ!?)

 ブリューナクが完全に入り込んだ後のジャンヌの台詞に、三戸は思わずツッコミを入れたくなった。何しろ、ジャンヌの背中には真っ赤に燃え盛る一対の翼が生えていたのだ。そう、ブリューナクの背にあったのと同じ、炎の翼が。
 ジャンヌはその翼をはためかせながら不安気な表情をしている。
 
「でも私、上手く飛べるかしら?」
『大丈夫だ。イメージすりゃいい。慣れれば歩いたり走ったりと同じ感覚で空を飛べる』

 ジャンヌとブリューナクが身体の内と外で会話をしているのは些か奇妙だったが、ブリューナクの言う事には内心頷いていた。三戸も初飛行の時は不安だった事を思い出す。しかし、慣れてしまえば飛行機を飛ばす事も車を運転する事もそう変わらない。
 そうしている内にジャンヌがふわふわと浮上し、自分の中にいるブリューナクからレクチャーを受けながら飛行訓練を始めた。

 もう一方では、関羽の中に青龍が入り込んでいた。

「ほう……これは良い」
『ふふ。私も驚いているよ。ここまで一体化するとはな。実に居心地がいい』

 どうやら関羽と青龍は、『違和感がない』どころの話ではないらしい。外観もジャンヌのように翼が生えるといった事もなく、いつもの関羽と変わらない。
 特に青龍からのレクチャーなど受ける事なく、ふわりと宙に浮いた関羽が縦横無尽に辺りを飛び回る。

(まるで足りなかったピースが揃ったみたいな……そんな感じだな。けど、あの立派な髭が邪魔そうだ)

 颯爽と飛び回る関羽を見た三戸の印象だ。方向転換するたびに、首に巻き付いたり顔を視界を塞いだりする髭には思わず苦笑してしまったが。
 しかし、この関羽の仕上がりの早さに関しては心当たりがないでもない。
 青龍偃月刀。そもそもが宿として造られたものだ。関羽が初めからそれを求め、青龍ありきで戦ってきた。
 並行世界こちら側 に来るまで、使用者である救世者メサイアですらその正体を知らなかったエクスカリバーのスレイプニルや、ジハードのスキュラとは事情が異なると言っていい。どちらかと言えば三戸とアンジーの関係に似ている。生前から共に戦ってきたという意味で。

「お二人共凄いですね。初フライトにしては見事なものです!」

 であるアンジーが、瞳を輝かせながら二人が飛行する様子を見て称賛の言葉を口にする。

「ああ。凄いもんだ。流石はオルレアンの聖女に軍神だな。アンジー、二人にもっと空中戦のイロハを教えてこいよ?」
「はいっ!」

 空中戦には空中戦のテクニックがある。主に敵の背後を取る為の技術だ。しかし人型の状態で空を飛ぶことは、戦闘機パイロットの三戸では教えられない要素がある。
 人型の状態での三次元戦闘。それはアンジーの独壇場だ。では技術を習得するにはどうしたらいいか。それは模倣だ。ジャンヌと関羽には、アンジーの動きをトレースさせる事で空中での戦闘を習熟させる腹積もりの三戸だった。

「ミト」

 そこへゲッソリした様子のナイチンゲールと、もっとゲッソリした顔のリチャードとサラディンがやって来た。

「よう、ご苦労さん。どうだ?」

 一応労ったつもりの三戸だったが、三人とも表情はいかにも機嫌が悪そうだ。

「お主! あんなに厄介な仕事だとは思わなんだぞ!」
「そうじゃ! 誤って足に垂らしてしもうて大怪我したぞい!」
「そうですよ! タダでさえあんなに大量に生み出さなくてはならないのに、治療にまで気力を割かねばならないこちらの身にもなって下さい!」

 三戸が三人に頼んでいたのは銃弾の作成だ。M24狙撃銃に装填する為の7.62mmの銃弾。ただし中身はたっぷりの硫酸を圧縮したものが詰め込まれている特別製だ。
 リチャードが三戸に弾丸を手渡してきた。その数五発分。
 その弾丸の中の硫酸の量は、なんと7tトラック一台分。それをサラディンの重力操作で弾丸サイズにまで圧縮し、そのまま形状を保持。さらにその硫酸を地形操作と土属性の能力を持つリチャードが、鉱物を生成して弾丸の形状に包み込む。
 どの工程も繊細な作業な上に、銃弾の寸法もシビアに出さなければならない。しかし、最も過酷だったのは、ドクターの注射器からトラック五台分の硫酸を生成したナイチンゲールだろう。

「三人共、本当にありがとう。コイツがヤツへの秘密兵器になる」

 三戸は三人に改めて深く頭を下げた。
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