84 / 151
AD1855
83話 着々と。
しおりを挟む
なんと、ナイチンゲール以外の全員が飛行可能という事実が判明し、三戸を始め他の救世者達もあんぐりしていた。
だが、それによって戦術の幅が広がったのもまた事実であり、三戸は作戦を練り直す。
そんな三戸を余所に、自分達も飛べると知った他の面子は飛行訓練に勤しんでいた。
「じゃあ、入るぞ?」
「ええ、いつでも来て!」
ブリューナクが半透明になり、ジャンヌの身体の中に入り込んでいく。流石にこの光景は三戸も気になったようで、一部始終を凝視していた。
「……特に違和感はないわね。むしろ身体の内側から力が溢れ出てくるよう」
(マジかよ!?)
ブリューナクが完全に入り込んだ後のジャンヌの台詞に、三戸は思わずツッコミを入れたくなった。何しろ、ジャンヌの背中には真っ赤に燃え盛る一対の翼が生えていたのだ。そう、ブリューナクの背にあったのと同じ、炎の翼が。
ジャンヌはその翼をはためかせながら不安気な表情をしている。
「でも私、上手く飛べるかしら?」
『大丈夫だ。イメージすりゃいい。慣れれば歩いたり走ったりと同じ感覚で空を飛べる』
ジャンヌとブリューナクが身体の内と外で会話をしているのは些か奇妙だったが、ブリューナクの言う事には内心頷いていた。三戸も初飛行の時は不安だった事を思い出す。しかし、慣れてしまえば飛行機を飛ばす事も車を運転する事もそう変わらない。
そうしている内にジャンヌがふわふわと浮上し、自分の中にいるブリューナクからレクチャーを受けながら飛行訓練を始めた。
もう一方では、関羽の中に青龍が入り込んでいた。
「ほう……これは良い」
『ふふ。私も驚いているよ。ここまで一体化するとはな。実に居心地がいい』
どうやら関羽と青龍は、『違和感がない』どころの話ではないらしい。外観もジャンヌのように翼が生えるといった事もなく、いつもの関羽と変わらない。
特に青龍からのレクチャーなど受ける事なく、ふわりと宙に浮いた関羽が縦横無尽に辺りを飛び回る。
(まるで足りなかったピースが揃ったみたいな……そんな感じだな。けど、あの立派な髭が邪魔そうだ)
颯爽と飛び回る関羽を見た三戸の印象だ。方向転換するたびに、首に巻き付いたり顔を視界を塞いだりする髭には思わず苦笑してしまったが。
しかし、この関羽の仕上がりの早さに関しては心当たりがないでもない。
青龍偃月刀。そもそもが青龍を宿すものとして造られたものだ。関羽が初めからそれを求め、青龍ありきで戦ってきた。
並行世界 に来るまで、使用者である救世者ですらその正体を知らなかったエクスカリバーのスレイプニルや、ジハードのスキュラとは事情が異なると言っていい。どちらかと言えば三戸とアンジーの関係に似ている。生前から共に戦ってきたという意味で。
「お二人共凄いですね。初フライトにしては見事なものです!」
空のスペシャリストであるアンジーが、瞳を輝かせながら二人が飛行する様子を見て称賛の言葉を口にする。
「ああ。凄いもんだ。流石はオルレアンの聖女に軍神だな。アンジー、二人にもっと空中戦のイロハを教えてこいよ?」
「はいっ!」
空中戦には空中戦のテクニックがある。主に敵の背後を取る為の技術だ。しかし人型の状態で空を飛ぶことは、戦闘機パイロットの三戸では教えられない要素がある。
人型の状態での三次元戦闘。それはアンジーの独壇場だ。では技術を習得するにはどうしたらいいか。それは模倣だ。ジャンヌと関羽には、アンジーの動きをトレースさせる事で空中での戦闘を習熟させる腹積もりの三戸だった。
「ミト」
そこへゲッソリした様子のナイチンゲールと、もっとゲッソリした顔のリチャードとサラディンがやって来た。
「よう、ご苦労さん。どうだ?」
一応労ったつもりの三戸だったが、三人とも表情はいかにも機嫌が悪そうだ。
「お主! あんなに厄介な仕事だとは思わなんだぞ!」
「そうじゃ! 誤って足に垂らしてしもうて大怪我したぞい!」
「そうですよ! タダでさえあんなに大量に生み出さなくてはならないのに、治療にまで気力を割かねばならないこちらの身にもなって下さい!」
三戸が三人に頼んでいたのは銃弾の作成だ。M24狙撃銃に装填する為の7.62mmの銃弾。ただし中身はたっぷりの硫酸を圧縮したものが詰め込まれている特別製だ。
リチャードが三戸に弾丸を手渡してきた。その数五発分。
その弾丸の中の硫酸の量は、なんと7tトラック一台分。それをサラディンの重力操作で弾丸サイズにまで圧縮し、そのまま形状を保持。さらにその硫酸を地形操作と土属性の能力を持つリチャードが、鉱物を生成して弾丸の形状に包み込む。
どの工程も繊細な作業な上に、銃弾の寸法もシビアに出さなければならない。しかし、最も過酷だったのは、ドクターの注射器からトラック五台分の硫酸を生成したナイチンゲールだろう。
「三人共、本当にありがとう。コイツがヤツへの秘密兵器になる」
三戸は三人に改めて深く頭を下げた。
だが、それによって戦術の幅が広がったのもまた事実であり、三戸は作戦を練り直す。
そんな三戸を余所に、自分達も飛べると知った他の面子は飛行訓練に勤しんでいた。
「じゃあ、入るぞ?」
「ええ、いつでも来て!」
ブリューナクが半透明になり、ジャンヌの身体の中に入り込んでいく。流石にこの光景は三戸も気になったようで、一部始終を凝視していた。
「……特に違和感はないわね。むしろ身体の内側から力が溢れ出てくるよう」
(マジかよ!?)
ブリューナクが完全に入り込んだ後のジャンヌの台詞に、三戸は思わずツッコミを入れたくなった。何しろ、ジャンヌの背中には真っ赤に燃え盛る一対の翼が生えていたのだ。そう、ブリューナクの背にあったのと同じ、炎の翼が。
ジャンヌはその翼をはためかせながら不安気な表情をしている。
「でも私、上手く飛べるかしら?」
『大丈夫だ。イメージすりゃいい。慣れれば歩いたり走ったりと同じ感覚で空を飛べる』
ジャンヌとブリューナクが身体の内と外で会話をしているのは些か奇妙だったが、ブリューナクの言う事には内心頷いていた。三戸も初飛行の時は不安だった事を思い出す。しかし、慣れてしまえば飛行機を飛ばす事も車を運転する事もそう変わらない。
そうしている内にジャンヌがふわふわと浮上し、自分の中にいるブリューナクからレクチャーを受けながら飛行訓練を始めた。
もう一方では、関羽の中に青龍が入り込んでいた。
「ほう……これは良い」
『ふふ。私も驚いているよ。ここまで一体化するとはな。実に居心地がいい』
どうやら関羽と青龍は、『違和感がない』どころの話ではないらしい。外観もジャンヌのように翼が生えるといった事もなく、いつもの関羽と変わらない。
特に青龍からのレクチャーなど受ける事なく、ふわりと宙に浮いた関羽が縦横無尽に辺りを飛び回る。
(まるで足りなかったピースが揃ったみたいな……そんな感じだな。けど、あの立派な髭が邪魔そうだ)
颯爽と飛び回る関羽を見た三戸の印象だ。方向転換するたびに、首に巻き付いたり顔を視界を塞いだりする髭には思わず苦笑してしまったが。
しかし、この関羽の仕上がりの早さに関しては心当たりがないでもない。
青龍偃月刀。そもそもが青龍を宿すものとして造られたものだ。関羽が初めからそれを求め、青龍ありきで戦ってきた。
並行世界 に来るまで、使用者である救世者ですらその正体を知らなかったエクスカリバーのスレイプニルや、ジハードのスキュラとは事情が異なると言っていい。どちらかと言えば三戸とアンジーの関係に似ている。生前から共に戦ってきたという意味で。
「お二人共凄いですね。初フライトにしては見事なものです!」
空のスペシャリストであるアンジーが、瞳を輝かせながら二人が飛行する様子を見て称賛の言葉を口にする。
「ああ。凄いもんだ。流石はオルレアンの聖女に軍神だな。アンジー、二人にもっと空中戦のイロハを教えてこいよ?」
「はいっ!」
空中戦には空中戦のテクニックがある。主に敵の背後を取る為の技術だ。しかし人型の状態で空を飛ぶことは、戦闘機パイロットの三戸では教えられない要素がある。
人型の状態での三次元戦闘。それはアンジーの独壇場だ。では技術を習得するにはどうしたらいいか。それは模倣だ。ジャンヌと関羽には、アンジーの動きをトレースさせる事で空中での戦闘を習熟させる腹積もりの三戸だった。
「ミト」
そこへゲッソリした様子のナイチンゲールと、もっとゲッソリした顔のリチャードとサラディンがやって来た。
「よう、ご苦労さん。どうだ?」
一応労ったつもりの三戸だったが、三人とも表情はいかにも機嫌が悪そうだ。
「お主! あんなに厄介な仕事だとは思わなんだぞ!」
「そうじゃ! 誤って足に垂らしてしもうて大怪我したぞい!」
「そうですよ! タダでさえあんなに大量に生み出さなくてはならないのに、治療にまで気力を割かねばならないこちらの身にもなって下さい!」
三戸が三人に頼んでいたのは銃弾の作成だ。M24狙撃銃に装填する為の7.62mmの銃弾。ただし中身はたっぷりの硫酸を圧縮したものが詰め込まれている特別製だ。
リチャードが三戸に弾丸を手渡してきた。その数五発分。
その弾丸の中の硫酸の量は、なんと7tトラック一台分。それをサラディンの重力操作で弾丸サイズにまで圧縮し、そのまま形状を保持。さらにその硫酸を地形操作と土属性の能力を持つリチャードが、鉱物を生成して弾丸の形状に包み込む。
どの工程も繊細な作業な上に、銃弾の寸法もシビアに出さなければならない。しかし、最も過酷だったのは、ドクターの注射器からトラック五台分の硫酸を生成したナイチンゲールだろう。
「三人共、本当にありがとう。コイツがヤツへの秘密兵器になる」
三戸は三人に改めて深く頭を下げた。
0
あなたにおすすめの小説
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜
ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。
アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった
騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。
今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。
しかし、この賭けは罠であった。
アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。
賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。
アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。
小説家になろうにも投稿しています。
なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。
~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる
静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】
【複数サイトでランキング入り】
追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語
主人公フライ。
仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。
フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。
外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。
しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。
そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。
「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」
最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。
仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。
そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。
そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。
一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。
イラスト 卯月凪沙様より
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる