神様に妻子の魂を人質に取られたおっさんは、地球の未来の為に並行世界を救う。

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104話 仮説

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「で、こいつらは俺達の言葉は理解出来るのか?」

 三戸がまずジャブを繰り出す。意思疎通とは、まずは言葉を理解するところからだと彼は思っている。もちろん、ボディランゲージでもそれは可能だろうが、『林檎と梨と桃があるから、その中から林檎を食え』をジェスチャーで表現できるかと言えば、無理だ。

「ははは! 我々の言葉は理解しているよ。というか、そういう風にしたんだ!」
「ええ、それは私が保証します。ただ、彼らは言葉を発する事が出来ないのです。構造的に」

 アスキーとナイチンゲールの説明に、ああ、なるほどと三戸は納得した。こちらから、相手がイエスかノーで答えられる質問の仕方をすれば、ある程度の情報は得られるという事だ。

「よお! お前ら、元気か?」

 三戸が、それぞれ思い思いに過ごしていたデーモン達に話しかけた。すると、デーモン達が三戸の前に集まってきて、コクリと頷いた。
 これで意思疎通が出来る事を確認した三戸は、いくつか質問を続けていった。それにデーモンは頷いたり、首を振ったりして答えていく。

「……で、結局分かった事は殆どない、か」

 藤井が難しい顔で首を振っていた。
 巣穴の場所を知っているか→ノー
 それではお前達はどこから来たのか教えられるか→ノー
 お前達はいつからここにいるのか教えられるか→ノー
 ……という具合に、万事この調子なのである。

「唯一分かった事は、こいつらは巣穴から出てきた訳じゃないって事か」

 何かしら有益な情報を得られるかと思っていたが、ほぼ空振りだった結果に、流石の三戸も落胆の色を隠し切れないでいる。

「ねえ、ミト……」

 そこで、ジャンヌが不安そうな表情で三戸に話しかけてきた。この娘のこのような表情は珍しい。

デーモンこの子」達が巣穴から出て来てないって事は、もしかして……」

 ここでジャンヌは言い淀む。口にしていいものかどうか、戸惑っているように見える。しかし、意を決したジャンヌは再び口を開いた。

「……ここが既に魔界という事はないかしら?」

 その一言に、戦慄を覚える一同。
 確かに否定できない部分もあった。今までと違う。それだけでもジャンヌの言葉に信憑性を持たせるには十分だったりする。

「みなさん!」

 しかしここで、三戸軍団一の元気娘が声を張り上げた。澱んだ空気を清浄化するような、よく通る済んだ声。
 全員の視線が自分に集中した事を確認したアンジーは続けた。

「ここが魔界だろうが天界だろうが、やるべき事は一緒です! アダムさんとエヴァさんのお二人を守り切り、魔物の親玉を倒せばいいのですっ!」

 ふんす。
 まさにそう表現するのが相応しい、熱弁を振るった後のアンジーの姿についついほっこりしてしまう。
 そんな中で、三戸は状況を改めて考えてみる。
 あの瘴気に満ちた穴が魔界への入り口ならば、現在こうして生きていられるこの場所が魔界そのものとは考えにくい。しかし、デーモン達が自然発生的に現れているのも不可解な事は確か。
 だとすれば、ここと同じ時空、次元のどこかに魔界が存在していて、そこからデーモン達が移動してきたと考えたらどうだろうか。そして、彼等は自分達がどこから来たのか分からないという。

「こいつらとアダムとエヴァ。なんだか似ていると思わないか?」

 ある一つの考えに辿り着いた三戸がぽつりと呟く。
 から来たはずなのにがどこだか分からない。どこにあるのかも分からない。

「あ……まさか!」

 その事をみんなに告げると、全員がひとつの可能性に気付いた。

「そう、エデンだ」

 先程ジャンヌが放った一言よりも、更に大きな衝撃が走る。しかし三戸はひらひらと手を振って、おどけた表情で続けた。

「神とやらが、アダムとエヴァの二人をエデンから追放して戻れなくしたのは、そのままエデンに留まっていると、瘴気に冒されて死んじまうからじゃねえのかな。ま、悪魔とやらを相手に後手に回った苦し紛れの一手だと思うよ」

 二人が悪魔に唆されて食してしまった木の実。それはエデンを魔界の住人から守るための結界の実。それがある限り、魔物は二人に直接手を下す事が出来ずにいた。
 止むを得ず、悪魔は蛇を使い二人を嵌め、エデンに張り巡らされた結界を解く事に成功した。そしてエデンをそのまま魔界化すれば、悪魔は人類を滅ぼすという目的を達する事が出来る。
 それを阻止するために、神は逆にエデンを封じ、アダムとエヴァを脱出させた。このデーモン達は、そのエデンのから迷い出た迷子なのではないか。
 それが三戸の仮説だった。

 

 
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