神様に妻子の魂を人質に取られたおっさんは、地球の未来の為に並行世界を救う。

SHO

文字の大きさ
149 / 151
????

146話 一番落ち着く関係

しおりを挟む
「ぐふぉっ!? な、何が起こったんだょ……」

 ルシフェルは一瞬だけ認識できた閃光が、自らの身体に風穴を開けた事を理解するまでに数秒掛かった。腹に大きく開いた風穴は、外周部分が炭化しており、徐々に延焼をはじめている。
 堕天使ルシフェルが悪魔王サタンと化した今、もはや治癒や回復といった能力は失しており、このまま消滅するの待つだけかと思われた。

「ぐ……ククク、このままでは終わらせない。せめてヤツだけは、道連れにしてあげるよ」

 ルシフェルは瀕死になりながらも、三戸を目指して飛んだ。

△▼△

「へ、へへ、直撃だ。ざまぁ見やがれ」

 望遠で様子を見ていた三戸は、ルシフェルに電磁加速砲レールガンが放った雷の弾丸が直撃したのを確認し、満足気にほほ笑んだ。
 レールガンの発射に全エネルギーをつぎ込んだ為、三戸はホバリングする動力さえ失い墜落していた。地上数百メートルから落下して尚存命なのは、救世者メサイアならではのタフさではあるが、さすがに全身の骨が砕けている感覚があった。
 そしてこの痛みがなくなった時、自分の命の火も消えるのだろうと朧気に考える。生前、闘病中もそうだった。痛み、苦しみこそ生きている証。それから解放された時、それが死というものなのだろうと。

 三戸は改めてレーダーマップの反応を確認する。ナイチンゲールが健在だったおかげか、アダムとエヴァ、それに救世者メサイア達の反応で消え去った者はいない。藤井、中谷、岡本の三人も、どうやら反応を見る限り無事なようだ。
 だが……

「アンジー……どうしちまったんだよ、お前。返事をしろよ」

 アンジーの反応だけは見つける事が出来なかった。

「ヤツを倒して世界を救っても、また俺は大切なものを守れなかったってのか?」

 身体は動かない。されど涙は溢れてくる。
 ルシフェルの反応はゆっくりと近付いて来てはいるが、その反応自体は極々微弱だ。もはや風前の灯と言っていいだろう。仮に自分がここで倒されても、残った救世者メサイア達が片付けてくれる。三戸にはそれだけの信頼感はあった。
 アダムとエヴァを守り切った事で、向こうの世界も安泰だろう。あくまでもあの神という存在の言を信じるならば、だが。
 そして、愛する妻子の魂がやがて生まれ来る世界を存続させる事が出来る。
 
 俗な言い方をすればミッションコンプリートだ。しかも、これは過酷な戦闘を伴うミッションであり、多少の犠牲はつきものである事も頭の中では理解はしている。

「でもよう、これで良かったのかな、アンジー……」

 溢れる涙を拭うことさえ出来ない程に壊れてしまった自分の身体。ぼんやりと、滲む視界で空を見上げる事しかできない自分に、勝利の喜びなど見出す事が出来ず、虚無感が心を支配する。

『マスター、寝ている場合ではありませんよ? まだ大事な仕事が残っているのですから!』
「アンジーか! 無事だったのか! どこにいる!?」

 三戸の頭の中に語り掛けてくるアンジーの声。無事だったのかとホッとすると同時に、眼球だけを動かしてその姿を探す。

『ここですよっ!』
 
 不意に視界の中に現れたのは、アンジーではなくふぁむちゃんだった。

「……どういう事だ?」
『はいっ、実は……』

 三戸の問いかけに、無表情なふぁむちゃんの内部にいるのであろうアンジーの声が、三戸の頭の中に向けて説明を始めた。
 アンジーによれば、ルシフェルが放った波動の直撃を受けた際、アンジーの身体、というかファントムの機体そのものが大きく損傷を受け、もはや修復不能なレベルだったいう。
 そのまま放置していれば機能停止に追い込まれるところだったが、間一髪、ふぁむちゃんに全機能を移植する事で、アンジーのAIとしてのは守る事が出来たという。
 しかしあくまでも生き延びたのはAIだけであり、機体を失った今出来る事は少ないという。

「ああ、構わねえよ。お前が無事ならそれでいい。それより仲間の所に逃げろ。ヤツが近付いて来てる」
『はい! 分かっています。でも、だからこそ、マスターにはしっかり締めて欲しいんです!』

 そんなアンジーの言葉に、三戸は苦笑を返す事しか出来ない。もう自分は動く事も出来ない。もしルシフェルが生きたままここに辿り着いたら、自分は嬲り殺されるだけだろう。
 だが、自分を慕うアンジーならばこれくらいの事は言うだろう。だからこそ、苦笑する事しかできない。

「お前の前では、最後までかっこいいマスターでいたかったんだけどな。この通り、指一本動かねえんだ」
『マスターのアーマーをお借りしますねっ!』

 三戸の諦めの言葉など聞こえないとばかりに、アンジーが何かをしようとしていた。
 アンジーが言葉を発した直後、ふぁむちゃんの身体から銀色の光の玉が抜け出した。そしてそれは徐々にアンジーの姿を模していく。
 姿形はアンジーだが、何も身に纏っていない身体は半透明で、まるでアストラルボディのようだ。
 そのアンジーの姿をした銀色の何かが、倒れている三戸の首に手を回し、優しく抱擁する。

『マスター、一緒に終わらせましょう』

 半透明のアンジーがそう言って、三戸に優しく口づけをする。すると、彼女の身体は銀の粒子となって砕け散り、三戸が纏っているアーマーへと溶け込んでいった。

『えへへ、マスターとキスしちゃいましたっ!』

 照れくささと嬉しさが同居したアンジーの声に、三戸が状況を確認する。なぜか自分はシートに座っていた。目の前には操縦桿、計器類。どれも見慣れたものだ。

『マスターとアンジーと言えば、やっぱりこれが一番しっくり来る関係性ですよねっ!』

 半透明のディスプレイが出現し、その中には最高の笑顔のアンジーがいた。
 
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

処理中です...