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146話 一番落ち着く関係
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「ぐふぉっ!? な、何が起こったんだょ……」
ルシフェルは一瞬だけ認識できた閃光が、自らの身体に風穴を開けた事を理解するまでに数秒掛かった。腹に大きく開いた風穴は、外周部分が炭化しており、徐々に延焼をはじめている。
堕天使ルシフェルが悪魔王サタンと化した今、もはや治癒や回復といった能力は失しており、このまま消滅するの待つだけかと思われた。
「ぐ……ククク、このままでは終わらせない。せめてヤツだけは、道連れにしてあげるよ」
ルシフェルは瀕死になりながらも、三戸を目指して飛んだ。
△▼△
「へ、へへ、直撃だ。ざまぁ見やがれ」
望遠で様子を見ていた三戸は、ルシフェルに電磁加速砲が放った雷の弾丸が直撃したのを確認し、満足気にほほ笑んだ。
レールガンの発射に全エネルギーをつぎ込んだ為、三戸はホバリングする動力さえ失い墜落していた。地上数百メートルから落下して尚存命なのは、救世者ならではのタフさではあるが、さすがに全身の骨が砕けている感覚があった。
そしてこの痛みがなくなった時、自分の命の火も消えるのだろうと朧気に考える。生前、闘病中もそうだった。痛み、苦しみこそ生きている証。それから解放された時、それが死というものなのだろうと。
三戸は改めてレーダーマップの反応を確認する。ナイチンゲールが健在だったおかげか、アダムとエヴァ、それに救世者達の反応で消え去った者はいない。藤井、中谷、岡本の三人も、どうやら反応を見る限り無事なようだ。
だが……
「アンジー……どうしちまったんだよ、お前。返事をしろよ」
アンジーの反応だけは見つける事が出来なかった。
「ヤツを倒して世界を救っても、また俺は大切なものを守れなかったってのか?」
身体は動かない。されど涙は溢れてくる。
ルシフェルの反応はゆっくりと近付いて来てはいるが、その反応自体は極々微弱だ。もはや風前の灯と言っていいだろう。仮に自分がここで倒されても、残った救世者達が片付けてくれる。三戸にはそれだけの信頼感はあった。
アダムとエヴァを守り切った事で、向こうの世界も安泰だろう。あくまでもあの神という存在の言を信じるならば、だが。
そして、愛する妻子の魂がやがて生まれ来る世界を存続させる事が出来る。
俗な言い方をすればミッションコンプリートだ。しかも、これは過酷な戦闘を伴うミッションであり、多少の犠牲はつきものである事も頭の中では理解はしている。
「でもよう、これで良かったのかな、アンジー……」
溢れる涙を拭うことさえ出来ない程に壊れてしまった自分の身体。ぼんやりと、滲む視界で空を見上げる事しかできない自分に、勝利の喜びなど見出す事が出来ず、虚無感が心を支配する。
『マスター、寝ている場合ではありませんよ? まだ大事な仕事が残っているのですから!』
「アンジーか! 無事だったのか! どこにいる!?」
三戸の頭の中に語り掛けてくるアンジーの声。無事だったのかとホッとすると同時に、眼球だけを動かしてその姿を探す。
『ここですよっ!』
不意に視界の中に現れたのは、アンジーではなくふぁむちゃんだった。
「……どういう事だ?」
『はいっ、実は……』
三戸の問いかけに、無表情なふぁむちゃんの内部にいるのであろうアンジーの声が、三戸の頭の中に向けて説明を始めた。
アンジーによれば、ルシフェルが放った波動の直撃を受けた際、アンジーの身体、というかファントムの機体そのものが大きく損傷を受け、もはや修復不能なレベルだったいう。
そのまま放置していれば機能停止に追い込まれるところだったが、間一髪、ふぁむちゃんに全機能を移植する事で、アンジーのAIとしての人格は守る事が出来たという。
しかしあくまでも生き延びたのはAIだけであり、機体を失った今出来る事は少ないという。
「ああ、構わねえよ。お前が無事ならそれでいい。それより仲間の所に逃げろ。ヤツが近付いて来てる」
『はい! 分かっています。でも、だからこそ、マスターにはしっかり締めて欲しいんです!』
そんなアンジーの言葉に、三戸は苦笑を返す事しか出来ない。もう自分は動く事も出来ない。もしルシフェルが生きたままここに辿り着いたら、自分は嬲り殺されるだけだろう。
だが、自分を慕うアンジーならばこれくらいの事は言うだろう。だからこそ、苦笑する事しかできない。
「お前の前では、最後までかっこいいマスターでいたかったんだけどな。この通り、指一本動かねえんだ」
『マスターのアーマーをお借りしますねっ!』
三戸の諦めの言葉など聞こえないとばかりに、アンジーが何かをしようとしていた。
アンジーが言葉を発した直後、ふぁむちゃんの身体から銀色の光の玉が抜け出した。そしてそれは徐々にアンジーの姿を模していく。
姿形はアンジーだが、何も身に纏っていない身体は半透明で、まるでアストラルボディのようだ。
そのアンジーの姿をした銀色の何かが、倒れている三戸の首に手を回し、優しく抱擁する。
『マスター、一緒に終わらせましょう』
半透明のアンジーがそう言って、三戸に優しく口づけをする。すると、彼女の身体は銀の粒子となって砕け散り、三戸が纏っているアーマーへと溶け込んでいった。
『えへへ、マスターとキスしちゃいましたっ!』
照れくささと嬉しさが同居したアンジーの声に、三戸が状況を確認する。なぜか自分はシートに座っていた。目の前には操縦桿、計器類。どれも見慣れたものだ。
『マスターとアンジーと言えば、やっぱりこれが一番しっくり来る関係性ですよねっ!』
半透明のディスプレイが出現し、その中には最高の笑顔のアンジーがいた。
ルシフェルは一瞬だけ認識できた閃光が、自らの身体に風穴を開けた事を理解するまでに数秒掛かった。腹に大きく開いた風穴は、外周部分が炭化しており、徐々に延焼をはじめている。
堕天使ルシフェルが悪魔王サタンと化した今、もはや治癒や回復といった能力は失しており、このまま消滅するの待つだけかと思われた。
「ぐ……ククク、このままでは終わらせない。せめてヤツだけは、道連れにしてあげるよ」
ルシフェルは瀕死になりながらも、三戸を目指して飛んだ。
△▼△
「へ、へへ、直撃だ。ざまぁ見やがれ」
望遠で様子を見ていた三戸は、ルシフェルに電磁加速砲が放った雷の弾丸が直撃したのを確認し、満足気にほほ笑んだ。
レールガンの発射に全エネルギーをつぎ込んだ為、三戸はホバリングする動力さえ失い墜落していた。地上数百メートルから落下して尚存命なのは、救世者ならではのタフさではあるが、さすがに全身の骨が砕けている感覚があった。
そしてこの痛みがなくなった時、自分の命の火も消えるのだろうと朧気に考える。生前、闘病中もそうだった。痛み、苦しみこそ生きている証。それから解放された時、それが死というものなのだろうと。
三戸は改めてレーダーマップの反応を確認する。ナイチンゲールが健在だったおかげか、アダムとエヴァ、それに救世者達の反応で消え去った者はいない。藤井、中谷、岡本の三人も、どうやら反応を見る限り無事なようだ。
だが……
「アンジー……どうしちまったんだよ、お前。返事をしろよ」
アンジーの反応だけは見つける事が出来なかった。
「ヤツを倒して世界を救っても、また俺は大切なものを守れなかったってのか?」
身体は動かない。されど涙は溢れてくる。
ルシフェルの反応はゆっくりと近付いて来てはいるが、その反応自体は極々微弱だ。もはや風前の灯と言っていいだろう。仮に自分がここで倒されても、残った救世者達が片付けてくれる。三戸にはそれだけの信頼感はあった。
アダムとエヴァを守り切った事で、向こうの世界も安泰だろう。あくまでもあの神という存在の言を信じるならば、だが。
そして、愛する妻子の魂がやがて生まれ来る世界を存続させる事が出来る。
俗な言い方をすればミッションコンプリートだ。しかも、これは過酷な戦闘を伴うミッションであり、多少の犠牲はつきものである事も頭の中では理解はしている。
「でもよう、これで良かったのかな、アンジー……」
溢れる涙を拭うことさえ出来ない程に壊れてしまった自分の身体。ぼんやりと、滲む視界で空を見上げる事しかできない自分に、勝利の喜びなど見出す事が出来ず、虚無感が心を支配する。
『マスター、寝ている場合ではありませんよ? まだ大事な仕事が残っているのですから!』
「アンジーか! 無事だったのか! どこにいる!?」
三戸の頭の中に語り掛けてくるアンジーの声。無事だったのかとホッとすると同時に、眼球だけを動かしてその姿を探す。
『ここですよっ!』
不意に視界の中に現れたのは、アンジーではなくふぁむちゃんだった。
「……どういう事だ?」
『はいっ、実は……』
三戸の問いかけに、無表情なふぁむちゃんの内部にいるのであろうアンジーの声が、三戸の頭の中に向けて説明を始めた。
アンジーによれば、ルシフェルが放った波動の直撃を受けた際、アンジーの身体、というかファントムの機体そのものが大きく損傷を受け、もはや修復不能なレベルだったいう。
そのまま放置していれば機能停止に追い込まれるところだったが、間一髪、ふぁむちゃんに全機能を移植する事で、アンジーのAIとしての人格は守る事が出来たという。
しかしあくまでも生き延びたのはAIだけであり、機体を失った今出来る事は少ないという。
「ああ、構わねえよ。お前が無事ならそれでいい。それより仲間の所に逃げろ。ヤツが近付いて来てる」
『はい! 分かっています。でも、だからこそ、マスターにはしっかり締めて欲しいんです!』
そんなアンジーの言葉に、三戸は苦笑を返す事しか出来ない。もう自分は動く事も出来ない。もしルシフェルが生きたままここに辿り着いたら、自分は嬲り殺されるだけだろう。
だが、自分を慕うアンジーならばこれくらいの事は言うだろう。だからこそ、苦笑する事しかできない。
「お前の前では、最後までかっこいいマスターでいたかったんだけどな。この通り、指一本動かねえんだ」
『マスターのアーマーをお借りしますねっ!』
三戸の諦めの言葉など聞こえないとばかりに、アンジーが何かをしようとしていた。
アンジーが言葉を発した直後、ふぁむちゃんの身体から銀色の光の玉が抜け出した。そしてそれは徐々にアンジーの姿を模していく。
姿形はアンジーだが、何も身に纏っていない身体は半透明で、まるでアストラルボディのようだ。
そのアンジーの姿をした銀色の何かが、倒れている三戸の首に手を回し、優しく抱擁する。
『マスター、一緒に終わらせましょう』
半透明のアンジーがそう言って、三戸に優しく口づけをする。すると、彼女の身体は銀の粒子となって砕け散り、三戸が纏っているアーマーへと溶け込んでいった。
『えへへ、マスターとキスしちゃいましたっ!』
照れくささと嬉しさが同居したアンジーの声に、三戸が状況を確認する。なぜか自分はシートに座っていた。目の前には操縦桿、計器類。どれも見慣れたものだ。
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半透明のディスプレイが出現し、その中には最高の笑顔のアンジーがいた。
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