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溺愛するメイドに結婚指輪をあげてしまった夫とは、もう夫婦で居る事を辞めますね。
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私はある日を境に病に侵され、寝込む事になってしまった。
すると夫は、最初こそ心配したものの…今では、中々回復しない私にすっかり愛想を尽かせてしまった。
しかもそれだけでなく…少し前から雇った若く可愛いメイドを、まるで妻のように大事にするようになってしまった。
前々から、夫は彼女を気に入って居た。
でも、それは決して男女のそれではなかったはず。
いつの間に、二人はそんな仲になってしまったのか…。
メイドの方も、病が移るのは怖い…旦那様にも止められて居るからと、私の世話を全くしなくなった。
だから私は、自ら進んで田舎の診療所に身を寄せる事を決めた。
そうして、身の回りの荷物を一生懸命纏めて居たが…その時、夫から贈られたはずの結婚指輪が見当たらない事に気づいた。
そこで私は、夫に謝罪すると同時に…その指輪の行方に心当たりはないか尋ねる事に─。
「あなたと会えない代わりに、あの指輪を診療所に持って行きたかったの。失くしてしまったのなら、本当に申し訳ないわ。」
「あぁ…あの指輪は、彼女に贈ったよ。丁度指の太さも同じだったし…何より、彼女があれを気に入って居たから。」
何と、夫はあの指輪を私に内緒でメイドの彼女にあげてしまったと言う。
「酷い…!あれは、私とあなたの愛の結晶じゃないの?そう言って、あなたはあれを私に贈ってくれたじゃない。」
「でも…もう君の命は長くないだろうし、それなら元気な彼女が持って居た方がいいじゃないか。」
夫は私がいくら治療しても元気にならないので、もう命が助からないと考えて居るようだ。
夫の言葉に呆然とする私に、彼は追い打ちをかけるようにこう言った。
「お前が死んでも、俺は彼女を後妻に迎えるから大丈夫だ。彼女も乗り気で、だからこそあの指輪を受け取ってくれたんだよ。」
「…二人の間で、そんな話になって居たんですね。もういいです。私の死を待たなくても、結構よ。私、診療所に入る前にあなたと離縁します。どうか別れて下さい。」
私は薄情な夫とこれ以上夫婦でいる気にはならず…彼と縁を切ってから、自身の体を治すことに集中したいと考えたのだ。
すると夫は、その方がお前の医者代を出さなくて済む…喜んで離縁を受け入れると、あっさり了承─。
一人診療所に旅立つ私を、それはそれは嬉しそうに見送るのだった。
そうして、私が診療所に入って三ヶ月が過ぎた頃…ある知らせが飛び込んで来て…それは元夫とメイドについてだった。
あの後、結婚に向けて益々濃密な日々を過ごすようになった二人だったが…私の結婚指輪を手に入れて以降、メイドはすっかり貴金属に夢中になってしまった。
それまで質素な暮らしをして居たのに、お金持ちの奥様になれると言った事も彼女の欲を搔き立てたのだろう。
するとそんな彼女は…元夫の事業の支援してくれる方々を集めた大事なパーティで、あるご婦人の目を盗み彼女の指輪を盗み取ろうとしてしまった。
が、彼女の悪事はすぐに見破られ…彼女はそのご婦人だけでなく、他の方たちからも一斉に非難された。
結局、ご婦人は彼女の事を許さず…彼女はそのまま、憲兵に突き出されてしまった。
だが元夫は、そんな彼女を叱るでもなく…また支援者の方々に謝罪する事もなく、ただ彼女と引き離されたことを嘆くだけだった。
するとそんな夫の態度を見た支援者たちは大いに呆れ…すぐに彼を見切り、今後一切彼と関わらないことを決めてしまった。
そのせいで、元夫の事業はあっという間に傾き…今や家も土地も失い、路頭に迷う羽目になって居るそうだ。
またメイドだが、尋問によって他のパーティーでも盗みを働いていたことが発覚…そのせいで、彼女は牢に入る事が決定した。
だが入った牢の環境が余りに劣悪で…彼女はすぐ病に罹り、今や寝たきりだと言う。
あんなに私の病が移る事を怖がっていたと言うのに、自分の行いによって結果病に侵されるとはね…、
私は彼女や夫の現状を知り、大いに呆れるのだった。
そんな私だが…少し前に、すっかり元気になって居た。
そして退院に向け、今は部屋を片付けて居る所だが…元夫と違い、私には行く所がある。
実はこの診療所に入って少しした頃…私は、同じ部屋に入って居るご婦人と仲良くなり…そんな彼女を見舞いに来る…彼女の息子だと言う殿方とも自然と話をするように─。
私がここに来た経緯を知った彼は、私の事を大層憐れんでくれ…また、こんなに気が合う女性は初めてだ…元気になったら俺の妻になって欲しいと求愛してくれた。
私も、明るく優しい彼にいつの間にか惹かれていたし…彼の母親の応援もあり、私は彼の気持ちに応る事にしたのだった。
そうして、新しい恋が私に生きる活力を与えてくれたのか…私はどんどん仲良くなっていき、彼の母親と共に退院が決まったのだった。
そうして迎えに来てくれた彼の馬車に乗り込み、彼の家へと向かったのだが…その窓から、元夫らしき姿を見た。
どうやら家を失った元夫は、この田舎まで流れてきたようだが…私には新しい幸せが待って居る為、すぐに彼から視線を外し…代わりに、新しく夫になる彼から贈られた真新しい結婚指輪をうっとりと眺めるのだった─。
すると夫は、最初こそ心配したものの…今では、中々回復しない私にすっかり愛想を尽かせてしまった。
しかもそれだけでなく…少し前から雇った若く可愛いメイドを、まるで妻のように大事にするようになってしまった。
前々から、夫は彼女を気に入って居た。
でも、それは決して男女のそれではなかったはず。
いつの間に、二人はそんな仲になってしまったのか…。
メイドの方も、病が移るのは怖い…旦那様にも止められて居るからと、私の世話を全くしなくなった。
だから私は、自ら進んで田舎の診療所に身を寄せる事を決めた。
そうして、身の回りの荷物を一生懸命纏めて居たが…その時、夫から贈られたはずの結婚指輪が見当たらない事に気づいた。
そこで私は、夫に謝罪すると同時に…その指輪の行方に心当たりはないか尋ねる事に─。
「あなたと会えない代わりに、あの指輪を診療所に持って行きたかったの。失くしてしまったのなら、本当に申し訳ないわ。」
「あぁ…あの指輪は、彼女に贈ったよ。丁度指の太さも同じだったし…何より、彼女があれを気に入って居たから。」
何と、夫はあの指輪を私に内緒でメイドの彼女にあげてしまったと言う。
「酷い…!あれは、私とあなたの愛の結晶じゃないの?そう言って、あなたはあれを私に贈ってくれたじゃない。」
「でも…もう君の命は長くないだろうし、それなら元気な彼女が持って居た方がいいじゃないか。」
夫は私がいくら治療しても元気にならないので、もう命が助からないと考えて居るようだ。
夫の言葉に呆然とする私に、彼は追い打ちをかけるようにこう言った。
「お前が死んでも、俺は彼女を後妻に迎えるから大丈夫だ。彼女も乗り気で、だからこそあの指輪を受け取ってくれたんだよ。」
「…二人の間で、そんな話になって居たんですね。もういいです。私の死を待たなくても、結構よ。私、診療所に入る前にあなたと離縁します。どうか別れて下さい。」
私は薄情な夫とこれ以上夫婦でいる気にはならず…彼と縁を切ってから、自身の体を治すことに集中したいと考えたのだ。
すると夫は、その方がお前の医者代を出さなくて済む…喜んで離縁を受け入れると、あっさり了承─。
一人診療所に旅立つ私を、それはそれは嬉しそうに見送るのだった。
そうして、私が診療所に入って三ヶ月が過ぎた頃…ある知らせが飛び込んで来て…それは元夫とメイドについてだった。
あの後、結婚に向けて益々濃密な日々を過ごすようになった二人だったが…私の結婚指輪を手に入れて以降、メイドはすっかり貴金属に夢中になってしまった。
それまで質素な暮らしをして居たのに、お金持ちの奥様になれると言った事も彼女の欲を搔き立てたのだろう。
するとそんな彼女は…元夫の事業の支援してくれる方々を集めた大事なパーティで、あるご婦人の目を盗み彼女の指輪を盗み取ろうとしてしまった。
が、彼女の悪事はすぐに見破られ…彼女はそのご婦人だけでなく、他の方たちからも一斉に非難された。
結局、ご婦人は彼女の事を許さず…彼女はそのまま、憲兵に突き出されてしまった。
だが元夫は、そんな彼女を叱るでもなく…また支援者の方々に謝罪する事もなく、ただ彼女と引き離されたことを嘆くだけだった。
するとそんな夫の態度を見た支援者たちは大いに呆れ…すぐに彼を見切り、今後一切彼と関わらないことを決めてしまった。
そのせいで、元夫の事業はあっという間に傾き…今や家も土地も失い、路頭に迷う羽目になって居るそうだ。
またメイドだが、尋問によって他のパーティーでも盗みを働いていたことが発覚…そのせいで、彼女は牢に入る事が決定した。
だが入った牢の環境が余りに劣悪で…彼女はすぐ病に罹り、今や寝たきりだと言う。
あんなに私の病が移る事を怖がっていたと言うのに、自分の行いによって結果病に侵されるとはね…、
私は彼女や夫の現状を知り、大いに呆れるのだった。
そんな私だが…少し前に、すっかり元気になって居た。
そして退院に向け、今は部屋を片付けて居る所だが…元夫と違い、私には行く所がある。
実はこの診療所に入って少しした頃…私は、同じ部屋に入って居るご婦人と仲良くなり…そんな彼女を見舞いに来る…彼女の息子だと言う殿方とも自然と話をするように─。
私がここに来た経緯を知った彼は、私の事を大層憐れんでくれ…また、こんなに気が合う女性は初めてだ…元気になったら俺の妻になって欲しいと求愛してくれた。
私も、明るく優しい彼にいつの間にか惹かれていたし…彼の母親の応援もあり、私は彼の気持ちに応る事にしたのだった。
そうして、新しい恋が私に生きる活力を与えてくれたのか…私はどんどん仲良くなっていき、彼の母親と共に退院が決まったのだった。
そうして迎えに来てくれた彼の馬車に乗り込み、彼の家へと向かったのだが…その窓から、元夫らしき姿を見た。
どうやら家を失った元夫は、この田舎まで流れてきたようだが…私には新しい幸せが待って居る為、すぐに彼から視線を外し…代わりに、新しく夫になる彼から贈られた真新しい結婚指輪をうっとりと眺めるのだった─。
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