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私の顔を見たくもない程に嫌う婚約者は、婚約破棄後に遥か遠き地に送られました。
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「あいつの顔など見たくもない!ここ最近、俺の顔をジロジロ見てくるが…気持ち悪くて仕方ない!」
「そうやってあなたの気を引こうとしてるのよ。」
「そんな事、あいつがやっても可愛くないさ。お前のような可愛い女がやるのならともかくな─。」
そんな話をする、私の婚約者と愛人。
別に私は、あなたの気を引きたかった訳じゃないわ…。
私は、あなたに婚約破棄を告げたくてずっとそのタイミングを伺っていただけ。
でもそんなに私の顔が見たくなければ、直接それを告げる事は出来ないわね。
だから、もう勝手に出て行く事にします─。
***
婚約者が、婚約破棄して欲しいと置手紙を残し姿を消した。
それに気づいた時、俺は飛び上がる程に喜んだ。
俺は元々、あいつとの婚約など望んでいなかったからだ。
なのにあいつに尽くせ、あいつを大事にするようにと父にうんざりする程言われ…でも俺は、あんな地味女にそんな気はちっとも湧かなかった。
逆にあの女のせいで、自由に生きれないという怒りは涌いたがな。
そしてそのせいか、どんどんあいつの顔を見るのが嫌になった。
だから俺は、父との約束を破り違う女に走った。
でも、後悔などしていない。
これで、俺は自由に生きれるんだし─。
しかし、父はこの状況に激怒した。
「今すぐあの娘を連れ戻せ!そして愛人など捨てろ!」
「どうしてです!?俺は、あいつなど好きじゃ─」
「あいつなどと無礼な!あの娘は、ご神託に導れこの地にやって来た姫だ!」
「えぇ!?」
『この地に来れば、運命の相手に出会えるそうなの。』
ある日そう言ってやって来た姫を、領主だった俺の父はご神託も何もないのにその相手は自分の息子だと嘘を付き招いた。
自身の息子に良い思いをさせてやりたかったと言うが、半分は王族との縁を作りたかったのだろう。
「そうならそうと言ってくれよ!だったら俺もいい婚約者を演じてやったのに!あんな女、簡単に俺の虜にしてやったぞ!?」
「悪人の息子は、悪人という訳ですか…。心底ガッカリです。」
***
「お前、その姿…それに、その相手は?」
「私はこの国の末の姫、着飾っても何もおかしくはないわ。こちらの方は、私が出会った本当の運命の相手…彼は夢で神様に言われたそうです。この日、この場所で運命の相手を待てと。実は私も、この家を出た直後にそう神の声を聞いたの。だからすぐそこに向かったのよ。」
「そ、そんな…。」
「この地を出る前に、あなたを私の間違いに巻き込んだ事を謝ろうと参りましたが…あなたのお父様は、全て知った上で私を騙していたのね。王族を騙すなどとんでもない事よ?」
結局、彼の父は城から迎えに来た従者により捕らえられ連れて行かれてしまった。
恐らくこのまま牢に入れられ、罰を受けるのだろう。
「お、俺は被害者みたいなものだ。お前と一緒だ…だから許せ、な?」
「被害者と言うのなら、何故先程お父様を咎めなかったのです?それに、演じてやった、虜にしてやる…普通ならそんな言葉は出てこない筈では?しかも、私と一緒とはどういう事です?姫である私とあなたを、同列に見なしている事になりません?それは、私を敬う心が全くない事の表れではないでしょうか。」
「そ、それは…。」
「あなた、以前愛人に私の顔など見たくもない…気持ち悪いと言っていましたね。だったらもう、そんな事を思わなくていいようにして差し上げましょう─。」
その後、彼と愛人はこの国から追放を受けた。
そして海に浮かぶ孤島に送られ、そこで一生生活するように命じられた。
だってそこに居れば、もう私の顔なんて見なくて済むでしょう?
あなたも幸せだし、私も幸せだわ。
そう言って見送る私に、彼は涙を浮かべ何かを叫んだが、波の音にあっという間にかき消されすぐに何も聞こえなくなった。
あの時、婚約破棄は直接顔を見て告げられなかったけど…まさかこんなふうに、海を超えての今生の別れをする事になるとは夢にも思わなかったわ─。
「そうやってあなたの気を引こうとしてるのよ。」
「そんな事、あいつがやっても可愛くないさ。お前のような可愛い女がやるのならともかくな─。」
そんな話をする、私の婚約者と愛人。
別に私は、あなたの気を引きたかった訳じゃないわ…。
私は、あなたに婚約破棄を告げたくてずっとそのタイミングを伺っていただけ。
でもそんなに私の顔が見たくなければ、直接それを告げる事は出来ないわね。
だから、もう勝手に出て行く事にします─。
***
婚約者が、婚約破棄して欲しいと置手紙を残し姿を消した。
それに気づいた時、俺は飛び上がる程に喜んだ。
俺は元々、あいつとの婚約など望んでいなかったからだ。
なのにあいつに尽くせ、あいつを大事にするようにと父にうんざりする程言われ…でも俺は、あんな地味女にそんな気はちっとも湧かなかった。
逆にあの女のせいで、自由に生きれないという怒りは涌いたがな。
そしてそのせいか、どんどんあいつの顔を見るのが嫌になった。
だから俺は、父との約束を破り違う女に走った。
でも、後悔などしていない。
これで、俺は自由に生きれるんだし─。
しかし、父はこの状況に激怒した。
「今すぐあの娘を連れ戻せ!そして愛人など捨てろ!」
「どうしてです!?俺は、あいつなど好きじゃ─」
「あいつなどと無礼な!あの娘は、ご神託に導れこの地にやって来た姫だ!」
「えぇ!?」
『この地に来れば、運命の相手に出会えるそうなの。』
ある日そう言ってやって来た姫を、領主だった俺の父はご神託も何もないのにその相手は自分の息子だと嘘を付き招いた。
自身の息子に良い思いをさせてやりたかったと言うが、半分は王族との縁を作りたかったのだろう。
「そうならそうと言ってくれよ!だったら俺もいい婚約者を演じてやったのに!あんな女、簡単に俺の虜にしてやったぞ!?」
「悪人の息子は、悪人という訳ですか…。心底ガッカリです。」
***
「お前、その姿…それに、その相手は?」
「私はこの国の末の姫、着飾っても何もおかしくはないわ。こちらの方は、私が出会った本当の運命の相手…彼は夢で神様に言われたそうです。この日、この場所で運命の相手を待てと。実は私も、この家を出た直後にそう神の声を聞いたの。だからすぐそこに向かったのよ。」
「そ、そんな…。」
「この地を出る前に、あなたを私の間違いに巻き込んだ事を謝ろうと参りましたが…あなたのお父様は、全て知った上で私を騙していたのね。王族を騙すなどとんでもない事よ?」
結局、彼の父は城から迎えに来た従者により捕らえられ連れて行かれてしまった。
恐らくこのまま牢に入れられ、罰を受けるのだろう。
「お、俺は被害者みたいなものだ。お前と一緒だ…だから許せ、な?」
「被害者と言うのなら、何故先程お父様を咎めなかったのです?それに、演じてやった、虜にしてやる…普通ならそんな言葉は出てこない筈では?しかも、私と一緒とはどういう事です?姫である私とあなたを、同列に見なしている事になりません?それは、私を敬う心が全くない事の表れではないでしょうか。」
「そ、それは…。」
「あなた、以前愛人に私の顔など見たくもない…気持ち悪いと言っていましたね。だったらもう、そんな事を思わなくていいようにして差し上げましょう─。」
その後、彼と愛人はこの国から追放を受けた。
そして海に浮かぶ孤島に送られ、そこで一生生活するように命じられた。
だってそこに居れば、もう私の顔なんて見なくて済むでしょう?
あなたも幸せだし、私も幸せだわ。
そう言って見送る私に、彼は涙を浮かべ何かを叫んだが、波の音にあっという間にかき消されすぐに何も聞こえなくなった。
あの時、婚約破棄は直接顔を見て告げられなかったけど…まさかこんなふうに、海を超えての今生の別れをする事になるとは夢にも思わなかったわ─。
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