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レイモンド様が言うには、ルーカス様の留学には勉学以外に婚約者候補探しと言うもう一つの目的があったそうだ。
「婚約者候補って、エミリーが居るでは無いか!?」
それを聞いたお父様は、信じられないと言った顔で叫んだ。
「…ルーカスは子供の時に結ばれたエミリー嬢との婚約について疑問、不満を抱くようになったそうです。そして王都に来て色々な女性を見る内、彼はもっと他の女生とも交流を深めたいと思うようになったそうで─。」
「そ、そんな…。」
ルーカス様のそんな心変わりに、私は全く気付く事が出来なかった…。
あれだけ手紙のやり取りをして居たのに、全く。
だって彼はいつだって、自分の帰りを待つように…戻ったら婚約しようと手紙にはっきりとそう綴って下さった。
あれらの言葉は、全くの出鱈目だったと言うの…?
「俺はあいつが君に手紙を送って居るのを知ると、ちゃんと自分の気持ちを告げるよう話をしたんだ。そしてその際、あいつは分かったと言って居た。だから、君もあいつとの事を色々考えて居ると思って居たんだが…でもその様子では、あいつは君に本当の事を伝えなかったんだな。伝えないまま、あの女と─。」
「あの、その女…ルーカス様と一緒に居るであろうその平民上がりの女と言うのは、同じ学園の生徒なのですか?」
「そうだ。元は平民の女だったが…その容姿が有名となり、ある金持ちの貴族の娘として引き取られたと言う。そしてあの学園に編入して来たんだが…それからすぐ、ルーカスとその女は親しくなったんだ─。」
彼女はマリアンヌと言い、とても愛らしい容姿と性格を持った人物だと言う。
元々育ちが良い金持ちのご子息、令嬢が居る学園で最初は浮いて居た彼女だったが…生徒会長のルーカス様がそんな彼女を気に掛けると、二人は自然とその距離が近くなったのだった。
すると彼女はただの一生徒に過ぎないのに、何時しか生徒会室に入り浸るようになり…生徒会長であるルーカス様と濃密な時間を過ごすようになったのだ。
「もうすぐ留学も終わる頃になって、俺は副会長として生徒会室を片づけに行ったのだが…その際、二人が抱き合う姿を見てしまったんだ。だから俺は、婚約者候補であるエミリー嬢との関係は解消したのか、しっかりけじめを付けたのかとあいつに詰め寄ったが…もう別れ話は住んで居る、あいつも納得して居ると言われた。だからそれ以上、口は出せなかったんだ。」
そう言ってレイモンド様は、後悔の念を滲ませるのだった。
「そんな…レイモンド様が気に病む必要はありません。悪いのは、何も気付かなかった私と…そして、私を欺いて居たルーカス様です。私は何も彼から聞いては居ません、今初めてその事を知りました。彼とは一度、ちゃんと話をせねば─。」
今迄は、この地でルーカス様を待つだけだったが…あなたが私の元に姿を現さないのなら、だったらこちらから会いに行く事にするわ。
そこでちゃんと、今後の事をお話ししましょう─。
すると私の言葉を聞いたレイモンド様は、王都に行くなら是非自分を同行させて欲しいと言った。
「そんな、せっかくお帰りになられてお疲れの所なのに…申し訳ないです。」
「いや、友人としてあいつの裏切り行為を止められなかった事が心残りなんだ。何より、俺は君を…。いや、とにかく俺はあいつの居場所がハッキリと分かって居る。そこまでの道案内と護衛をさせて欲しい。」
するとそんな頼りになるレイモンド様に、父は娘の事を頼むと頭を下げ…自分はその間に、ルーカス様の父親に会いに行き話を付けて来ると言った。
「あいつは息子に甘い所があるからな…。もしかしたら、本当の事をとっくに知って居たのも知れない。そうなら、娘のお前を揃って傷付けた罪を償って貰わねば気が済まん!」
そう言って意気込むお父様に、子供に甘いのはお父様も同じだと苦笑いしそうになったが…でもその姿が頼もしく、おかげで私は何の迷いも無く王都へと出発する事が出来るのだった─。
そうして故郷を出て、三日かけて王都へとやって来た私とレイモンド様だったが…ルーカス様とマリアンヌ嬢の居場所までもう少しと言う所で、不審な者達に襲われる事となった。
でもレイモンド様は体術が得意らしく、私や荷物持ちの従者を庇いつつ一人でそんな不届き者達を退治してしまった。
逃げた一人は従者に後を追わせて居るし…きっと後に捕まるはずだ。
「レイモンド様、ありがとうございます!お怪我は無いですか?」
「あぁ、大丈夫だ。心配してくれてありがとう。」
「それにしても、この男達は何なのでしょう?もしや、物取りの一味とか…?」
私は地面に転がり気絶した男達の顔を、恐る恐る伺った。
しかしレ、イモンド様はそうではないと首を振った。
「こいつらは、あの学園でマリアンヌの取り巻きをして居た奴らだ。今も彼女の命じるままに動いて居るのだろう。」
「命じるって、今こうして襲われたのも彼女の仕業…?」
私は恐ろしくなり、ブルブルと身体を震わせた。
するとレイモンド様は、そんな私を落ち着かせるようにその逞しい胸に抱き寄せ…そして優しく頭を撫でてくれた。
「あ、あの、レイモンド様─」
「すまない!君を安心させたくて…好きで見ない男に触れられ、迷惑だったな。」
「そんな、迷惑だとは─。」
そう、迷惑だとは全く思わなかった。
むしろ、その胸に抱かれすごくドキドキして…でもそれは嫌なドキドキでは無く、心が弾むようなドキドキで─。
その時、気を失って居た男が目を覚ましその場から逃げ出そうとしたが…しかしそれに気付いたレイモンド様に、すぐにその男を取り押さえてしまった。
「お前はマリアンヌの取り巻きの一人だな!どうせあいつに、これ以上面倒な事になる前にエミリー嬢を始末して来いと命じられたんだろう?あいつと、そして一緒に居るルーカスの元へさっさと案内しろ!これ以上罪を重くしたくないなら、大人しく俺に従え!」
「わ、分かったよ、従うから許してくれ─!」
レイモンド様の気迫に、男はすっかり怯え…結局大人しく私達を二人の元へと案内するのだった─。
「婚約者候補って、エミリーが居るでは無いか!?」
それを聞いたお父様は、信じられないと言った顔で叫んだ。
「…ルーカスは子供の時に結ばれたエミリー嬢との婚約について疑問、不満を抱くようになったそうです。そして王都に来て色々な女性を見る内、彼はもっと他の女生とも交流を深めたいと思うようになったそうで─。」
「そ、そんな…。」
ルーカス様のそんな心変わりに、私は全く気付く事が出来なかった…。
あれだけ手紙のやり取りをして居たのに、全く。
だって彼はいつだって、自分の帰りを待つように…戻ったら婚約しようと手紙にはっきりとそう綴って下さった。
あれらの言葉は、全くの出鱈目だったと言うの…?
「俺はあいつが君に手紙を送って居るのを知ると、ちゃんと自分の気持ちを告げるよう話をしたんだ。そしてその際、あいつは分かったと言って居た。だから、君もあいつとの事を色々考えて居ると思って居たんだが…でもその様子では、あいつは君に本当の事を伝えなかったんだな。伝えないまま、あの女と─。」
「あの、その女…ルーカス様と一緒に居るであろうその平民上がりの女と言うのは、同じ学園の生徒なのですか?」
「そうだ。元は平民の女だったが…その容姿が有名となり、ある金持ちの貴族の娘として引き取られたと言う。そしてあの学園に編入して来たんだが…それからすぐ、ルーカスとその女は親しくなったんだ─。」
彼女はマリアンヌと言い、とても愛らしい容姿と性格を持った人物だと言う。
元々育ちが良い金持ちのご子息、令嬢が居る学園で最初は浮いて居た彼女だったが…生徒会長のルーカス様がそんな彼女を気に掛けると、二人は自然とその距離が近くなったのだった。
すると彼女はただの一生徒に過ぎないのに、何時しか生徒会室に入り浸るようになり…生徒会長であるルーカス様と濃密な時間を過ごすようになったのだ。
「もうすぐ留学も終わる頃になって、俺は副会長として生徒会室を片づけに行ったのだが…その際、二人が抱き合う姿を見てしまったんだ。だから俺は、婚約者候補であるエミリー嬢との関係は解消したのか、しっかりけじめを付けたのかとあいつに詰め寄ったが…もう別れ話は住んで居る、あいつも納得して居ると言われた。だからそれ以上、口は出せなかったんだ。」
そう言ってレイモンド様は、後悔の念を滲ませるのだった。
「そんな…レイモンド様が気に病む必要はありません。悪いのは、何も気付かなかった私と…そして、私を欺いて居たルーカス様です。私は何も彼から聞いては居ません、今初めてその事を知りました。彼とは一度、ちゃんと話をせねば─。」
今迄は、この地でルーカス様を待つだけだったが…あなたが私の元に姿を現さないのなら、だったらこちらから会いに行く事にするわ。
そこでちゃんと、今後の事をお話ししましょう─。
すると私の言葉を聞いたレイモンド様は、王都に行くなら是非自分を同行させて欲しいと言った。
「そんな、せっかくお帰りになられてお疲れの所なのに…申し訳ないです。」
「いや、友人としてあいつの裏切り行為を止められなかった事が心残りなんだ。何より、俺は君を…。いや、とにかく俺はあいつの居場所がハッキリと分かって居る。そこまでの道案内と護衛をさせて欲しい。」
するとそんな頼りになるレイモンド様に、父は娘の事を頼むと頭を下げ…自分はその間に、ルーカス様の父親に会いに行き話を付けて来ると言った。
「あいつは息子に甘い所があるからな…。もしかしたら、本当の事をとっくに知って居たのも知れない。そうなら、娘のお前を揃って傷付けた罪を償って貰わねば気が済まん!」
そう言って意気込むお父様に、子供に甘いのはお父様も同じだと苦笑いしそうになったが…でもその姿が頼もしく、おかげで私は何の迷いも無く王都へと出発する事が出来るのだった─。
そうして故郷を出て、三日かけて王都へとやって来た私とレイモンド様だったが…ルーカス様とマリアンヌ嬢の居場所までもう少しと言う所で、不審な者達に襲われる事となった。
でもレイモンド様は体術が得意らしく、私や荷物持ちの従者を庇いつつ一人でそんな不届き者達を退治してしまった。
逃げた一人は従者に後を追わせて居るし…きっと後に捕まるはずだ。
「レイモンド様、ありがとうございます!お怪我は無いですか?」
「あぁ、大丈夫だ。心配してくれてありがとう。」
「それにしても、この男達は何なのでしょう?もしや、物取りの一味とか…?」
私は地面に転がり気絶した男達の顔を、恐る恐る伺った。
しかしレ、イモンド様はそうではないと首を振った。
「こいつらは、あの学園でマリアンヌの取り巻きをして居た奴らだ。今も彼女の命じるままに動いて居るのだろう。」
「命じるって、今こうして襲われたのも彼女の仕業…?」
私は恐ろしくなり、ブルブルと身体を震わせた。
するとレイモンド様は、そんな私を落ち着かせるようにその逞しい胸に抱き寄せ…そして優しく頭を撫でてくれた。
「あ、あの、レイモンド様─」
「すまない!君を安心させたくて…好きで見ない男に触れられ、迷惑だったな。」
「そんな、迷惑だとは─。」
そう、迷惑だとは全く思わなかった。
むしろ、その胸に抱かれすごくドキドキして…でもそれは嫌なドキドキでは無く、心が弾むようなドキドキで─。
その時、気を失って居た男が目を覚ましその場から逃げ出そうとしたが…しかしそれに気付いたレイモンド様に、すぐにその男を取り押さえてしまった。
「お前はマリアンヌの取り巻きの一人だな!どうせあいつに、これ以上面倒な事になる前にエミリー嬢を始末して来いと命じられたんだろう?あいつと、そして一緒に居るルーカスの元へさっさと案内しろ!これ以上罪を重くしたくないなら、大人しく俺に従え!」
「わ、分かったよ、従うから許してくれ─!」
レイモンド様の気迫に、男はすっかり怯え…結局大人しく私達を二人の元へと案内するのだった─。
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