完 片思いの相手に催眠術を掛けて思い出作りに好き勝手エッチな事をして告白もしたら何故か上手くいった

手を握る

12

僕は今度は自分の両手で彼の頬を包み、マジマジと顔を見てみた。
　彼は日焼けしていて、顔も普通の人よりも黒い。だからこそ、明るいグリーンアイが眩しいくらいに映えている。
　その瞳には今、僕だけがハッキリと写っていた。でも写っているだけで、彼には届かない僕の姿。
　その瞳の下にはスッと整った鼻があり、普段は口角が上がっていつも笑っている唇があった。

「ゼクルスって綺麗だなぁ……」

　ずっと堀が深く少しだけ強面の男らしい顔つきだと思っていたゼクルスの顔だが、眉毛がキリっと上に上がっているだけで、目元だけみれば優しそうな瞳に見える。
　ゼクルスの働く石材屋には多くの従業員がおり、力仕事が多い職業柄、男の従業員ばかりだ。
　僕みたいなひ弱そうな人間はおらず、寧ろゼクルスみたいに身体が比較的大きく、同じ男の僕も憧れる、強靭で麗しい肉体を持つ人間ばかりだった。

　ゼクルスだって本当は休みがバラバラじゃ無ければ仕事仲間と遊びたいだろうし、普通に女性にもモテるだろうに。休みの日が似ているだけで同性の僕を誘ってくれて。誰にも優しいから、僕にも優しくて。
　ゼクルスは僕がまた独り言を言ってしまったせいで身体は揺れていた。

　ーーーーこのままキス出来れば良いのに。

　不意にそんな事が頭を過った。

　ーーーー出来るんじゃないか？

　催眠術でバレないんじゃ無いか？
　後から催眠術で記憶を無かった事にすれば良いじゃないか。証拠も無いし。