アクアヴェルン 婚約破棄された令息は隣国で護衛騎士に溺愛される。

中洲める

文字の大きさ
18 / 23

*18話 まだ少しの平穏を

しおりを挟む
 大砂嵐から1年が経った。
 日々は驚くほど穏やかに流れ、大きな変化はない。
 あの時、命を懸けてまで固めた覚悟は何だったのか。
 気づけばそんな思いが浮かぶほど、穏やかな時間が続いていた。

 唯一の変化といえば、グードに新しい家族ができたことくらいだ。
 出かける時以外は鞍もつけず、自由だったグードが、ある日どこからか雌のラクドを連れて帰ってきた。
 それ以来、彼女はオアシスのそばを離れず、いつしか家族のようにそこにいるのが当たり前になった。
 そして10日前、小さな命が誕生した。

 産まれたその子をヤグと名付けた。
 雌ラクドのリンダ、そして小さなヤグが加わったことで、オアシスは少しだけ賑やかになった。

 外からヤグのはしゃぐ鳴き声が響く。砂を蹴る軽やかな足音が混じるのを聞いていると僕まで楽しい気持ちになった。
「ヤグ、何してるんだろう?」
 シャツだけ羽織ってベッドを抜け、窓際に歩み寄る。
 見下ろせば、グードが子の相手をしている姿が見えた。ヤグは嬉しそうに跳ね、尻尾を振り、グードは優しくそれを見守っている。
 あの自由奔放だったグードが、今は父親の顔をしている。

「ヤグ、元気だねぇ」
「グードも、すっかり父親だな」

 いつの間にかラステアが隣に立っていた。
 朝の光を受けた肌が淡く光り、穏やかな声が耳に落ちる。
 上半身裸で、ズボンだけという無防備な姿に思わず笑みがもれる。
「シャツ、いる?」
 僕が着ているのはラステアのもので、脱いで渡そうとしたら止められた。
「それはクリスが着ていて」
 そう言いながら僕を背中から抱きしめる。
「ラステアは温かいね」
 背を預けるように寄りかかると、ラステアはしっかり受け止めて抱きしめてくれる。

 外ではリンダも混ざり家族で食事をしているのが見えた。

「僕たちの子は、いつ来るのかな」
 彼らを見ていたら自然とそんな言葉が零れ落ちた。


 だが、僕らの間にまだ子供は訪れない。

「まだ、その時じゃないんだろ」
 ラステアがそっと額を僕の肩に寄せる。
 そのぬくもりが波のように広がり、胸の奥の焦りが少しずつ溶けていく。

「早く会いたいなぁ」
 ヤグの無邪気な姿に、まだ見ぬ我が子の影を重ねる。
 きっと優しい目をした子に違いない。
 ラステアに似ているだろうか。それとも僕に?
 きっとどちらに似ていても、例え似ていなくても可愛いに違いない。
 そんな妄想が愛おしい。
 ラステアの腕がゆるやかに僕を包みこんだ。

「魔力を持つ者が結ばれて、二人の愛と魔力が満ちた時、奇跡が与えられるんだよな」
「うん。ヴェルンは、両親の愛そのものが形になった存在。だから一度しか生まれないし、二人以外との子供もできない」

 その奇跡は1度きり。
 奇跡を得たあともう他の誰とも子を成すことはできない。
 それが奇跡の代償だ。

 けれど、たった1度でいいんだ。
 ラステアとの愛の結晶が生まれるのであれば……。

 早く会いたい。
 だって、僕らはこんなに愛し合っているのに。

 そんな風に思ってしまうと少し焦りも感じてしまう。

「大丈夫。いつか来るさ。それにこうしてクリスといるだけで、俺は幸せだ」
 ラステアがそっと唇を重ねる。
 最初は触れるだけだった口づけが、次第に熱を帯びていく。
「……ん、ふ」
 そのまま抱き上げられ、再びベッドに戻された。
 着たばかりのシャツを脱がされ、昨日散々かわいがられて腫れてしまった乳首を摘ままれる。
 そこから伝わる指先の熱に、思わず息を呑んだ。
 もう少しで冷めるはずだった疼きが、また目を覚ましてしまう。
「あっ、んっ……。え、また……?」
「子供が欲しいなんて言われたら、止められない」

 金の瞳が熱を帯び、まっすぐ僕を射抜く。
 視線を受けるだけで、身体の奥が熱くなる。
「昨日もしたのに……」
「俺は、いつだってクリスと繋がっていたい」

 そう言いながらラステアは、僕を優しく、しかし逃さぬようにベッドへ押し倒した。
 指先が膝裏に入り、身を開かされる。
 羞恥と期待が入り混じる。



 ペニスに吐息がかかり、快感を期待して震えるのが自分でもわかった。
 とろりと先走りが落ちる。
 
 期待と緊張が入り混じり、どうすることもできない。
 名前を呼ぼうとした唇をふさぐように、ラステアの指先が頬を撫でる。
 その優しさが余計に切なく、息を飲んだ。

 零れた雫を舐めとって、ラステアが先端を口に入れた。
「……っぁ、あぅっ」
 ころころと舌先で先端とくびれを突かれて腰が浮く。
 逃げたいのに両足を掴まれていて身動きが取れない。
「ラステア……ぁ……」
「甘えた声を出して……可愛い」
「そこで、しゃべらな……でぇ」
 最奥まで咥えたラステアは吸いながらペニスへ舌を絡める。
「あん……ぁああ」
 じゅぼじゅぼと卑猥な音が朝日の差し込む部屋に響く。
「ラステア、ラステアぁ」
 甘えた声なのが自分でもわかる。
 気持ちよすぎて苦しい、けどもっとして欲しい。
 そんな矛盾した気持ちがラステアの頭に添えられた手に出てしまう。

「クリス、そんなに頭を押し付けなくても可愛がってあげる」
「んん……っああ!」
 愛撫が激しくなり、勝手に腰が動く。
「も、イく……、いっちゃう……っ!」
 僕の声に反応してラステアが強く吸いあげた。

「ひ、んっ……っ!」
 昨晩、嫌というほど出したのに。
 もう出ないと思っていた精液が絞り出されるように吐き出された。

「上手にイけてえらいな」
 しっかり飲んだラステアが唇を拭いながら顔を上げた。
 頭を撫でられても全然嬉しくない。
 だって、もう体に火がついてしまった。

「責任、とって……」
 お尻の穴が濡れているのが分かった。

 ヴェルンは食べた物が全て魔力に変換されるから、いつだってラステアを受け入れることが出来る。
 人と同じ体。けれど愛で出来たヴェルンはそれに応えるつくりをしているんだ。

「早く……」
 背中に腕を回すと、ラステアは片足に腕を引っかけたまま僕をベッドに押し倒し、濡れているそこにペニスを突き立てた。

 最奥まで容赦なく入ってきた熱い塊。
 歓喜した体が絶頂に震える。

「ああああっ~~~っっ」
 待ち望んだ刺激。
 あまりの気持ちよさに一瞬意識が飛んだ。
「入れただけでイったの?」
 激しく収縮を繰り返す内部の動きに息をつめながら、ラステアがキスをしてくれる。
「もっと、ほし……」
「うん、たくさんあげる」
 甘い声。
 僕が好きだって全身で伝えてくれる。

 腰を持ち上げられて、上から叩きつけるように腰が突き入れられる。
「はぅ……ああ、ぅ、ひ、んっ」
「見て、クリス。俺のを全部飲み込んでる」
 顔を上げれば自分の腰が折り曲げられて、ペニスも、受け入れている場所も、出入りするラステアのものまで全部見える。

 大きなものが自分の中から出入りする様は卑猥で、息を飲むと勝手に中が締まった。

「うっ、そんなに、興奮した? すごい締めてる」
「だって、僕の中に、ラステアが……」
 感覚ではわかっているけれど、視覚で見るのはまた違う。

「クリスは、ここがイイんだ」
「あんっ」
 腰を揺らして中を擦られると痺れるような快感が走る。

 ゆらゆらと力なく揺れる僕のペニス。
 気持ちいいのに、反応を示さない。
 けれどラステアを受け入れている中は、刺激へ敏感に反応してうねり、締め付ける。

「あ、ああ……っ」
「ああ、すごい。クリス、気持ちい……」
 上ずったラステアの声を聞いているだけで、快感が増す。
 僕が、ラステアを気持ちよくしている。

「イク……出る……っ」
「中に、中に欲し……ぁ」
「うん」
 ラステアは嬉しそうに微笑んで、中の動きを楽しむようにゆっくり腰を動かして、1番奥で止まった。

「~~~~っ」

 そして僕の力ないペニスを握り刺激する。

「だめ、出ない……ああ、くるし……ぃ」
「締まる。気持ちいい、しぼり、とられる……っ」
「も、でないからぁぁ……っ~~~!!」
 2人で悶えながら同時に絶頂を迎えた。

「はぁ、はぁ、はぁ……」
「本当に出ないな」
 ペニスに添えられていた手を眺めるラステア。
 あんなに出したのに残っているわけがない。
「だから、言ったのに……」
「でも、後ろはまだイけるだろ?」
 にやりと笑ったラステアは僕の体をベッドへ寝かせ、再び動き出す。

「も、ラステア!」
 文句を言いながらも、遠慮なく触れてくれるのは嬉しい。
 そんな僕を見透かしているのか、ラステアは嬉しそうに顔を寄せキスをして、とっておきの甘い表情で囁いた。
「クリス、愛してる……」
「……っ! ズルい」
「愛してる」
「……僕も」

 結局、求められたら拒めない。
 だって、僕もラステアを愛しているから。


 抱き合いながら、何度もキスを重ねる。
 体だけじゃない、想いそのものが交わっていくようで、息が詰まるほど幸せだった。
 唇を離しても、まだ残る体温が恋しい。
 体にこもる熱が、簡単には冷めそうにない。

 熱が深まるごとに、自分が誰なのか分からなくなる。
 ただラステアの名を呼ぶために、呼吸しているようだった。

 この人との愛の結晶が欲しい。
 そう願いながら、僕はラステアの腕の中に身を委ねた。







 気づけば窓の外はすっかり暮れていた。
 オアシスを包む風は静かに流れ、グードたちも眠っている気配がする。

「……1日が終わってしまったな」
 ラステアが暗くなった窓の外を見ながら穏やかに呟く。
 その声音には、充実と名残惜しさがまじっていた。

「ラステアがしつこくするからだよ」
「クリスだって、まんざらでもなかったじゃないか」
 からかうような笑みに、思わず頬を膨らませる。

「それは……そうだけど」
「俺は大満足な一日だったぞ」
「もう……」

 呆れたように視線を逸らしながらも、僕も悪くない1日だったなんて思ってしまっている。
 ラステアの満たされた表情を見たら、文句なんて言えなくなる。
 だって僕だって、同じように幸せだから。

 互いの笑い声が、夜の空気に溶けて消えていく。
 静かな夜に、寄り添うぬくもりだけが確かなものとして残った。

「明日は剣の稽古、したい」
「うん、そうしよう」
「今日は……もう寝るだけがいい」
「わかった」
「ぎゅってして」
「はい」

 ラステアの腕が、そっと僕を包む。
 その抱擁は、言葉以上に深い安心をくれた。
 このまま時が止まればいいのに。そんな思いすら浮かぶ。

 幸せな1日が、静かに終わっていく。
 明日も、こんな日が続くだろう。
 そう信じたくなるほどに、今は穏やかだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由

スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。 これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。 無自覚両片想いの勇者×親友。 読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。

婚約破棄されてヤケになって戦に乱入したら、英雄にされた上に美人で可愛い嫁ができました。

零壱
BL
自己肯定感ゼロ×圧倒的王太子───美形スパダリ同士の成長と恋のファンタジーBL。 鎖国国家クルシュの第三王子アースィムは、結婚式目前にして長年の婚約を一方的に破棄される。 ヤケになり、賑やかな幼馴染み達を引き連れ無関係の戦場に乗り込んだ結果───何故か英雄に祭り上げられ、なぜか嫁(男)まで手に入れてしまう。 「自分なんかがこんなどちゃくそ美人(男)を……」と悩むアースィム(攻)と、 「この私に不満があるのか」と詰め寄る王太子セオドア(受)。 互いを想い合う二人が紡ぐ、恋と成長の物語。 ※諸事情により、本編、番外編「嫁溺愛大将と幼馴染み達」「イザームさんとルーカスくん」のみ再掲します。 「羽化」 「案外、短気」 「飴と鞭」 は未公開のままで失礼いたします。

婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。

フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」  可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。  だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。 ◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。 ◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

【完結】Restartー僕は異世界で人生をやり直すー

エウラ
BL
───僕の人生、最悪だった。 生まれた家は名家で資産家。でも跡取りが僕だけだったから厳しく育てられ、教育係という名の監視がついて一日中気が休まることはない。 それでも唯々諾々と家のために従った。 そんなある日、母が病気で亡くなって直ぐに父が後妻と子供を連れて来た。僕より一つ下の少年だった。 父はその子を跡取りに決め、僕は捨てられた。 ヤケになって家を飛び出した先に知らない森が見えて・・・。 僕はこの世界で人生を再始動(リスタート)する事にした。 不定期更新です。 以前少し投稿したものを設定変更しました。 ジャンルを恋愛からBLに変更しました。 また後で変更とかあるかも。 完結しました。

魔法学園の悪役令息ー替え玉を務めさせていただきます

オカメ颯記
BL
田舎の王国出身のランドルフ・コンラートは、小さいころに自分を養子に出した実家に呼び戻される。行方不明になった兄弟の身代わりとなって、魔道学園に通ってほしいというのだ。 魔法なんて全く使えない抗議したものの、丸め込まれたランドルフはデリン大公家の公子ローレンスとして学園に復学することになる。無口でおとなしいという触れ込みの兄弟は、学園では悪役令息としてわがままにふるまっていた。顔も名前も知らない知人たちに囲まれて、因縁をつけられたり、王族を殴り倒したり。同室の相棒には偽物であることをすぐに看破されてしまうし、どうやって学園生活をおくればいいのか。混乱の中で、何の情報もないまま、王子たちの勢力争いに巻き込まれていく。

妹の代わりにシロクマ獣人と真っ白婚!?

虎ノ威きよひ
BL
結婚相手が想像以上にシロクマでした!! 小国の王子ルカは、妹の代わりに政略結婚することになってしまった。 結婚の相手は、軍事大国の皇子のクマ獣人! どんな相手だろうと必ず良い関係を築き、諸外国に狙われやすい祖国を守ってもらう。 強い決意を胸に国を渡ったルカだったが、城の前にデンッと居たのは巨大なシロクマだった。 シロクマ獣人とは聞いていたが、初対面で獣化してるなんてことがあるのか! さすがに怯んでしまったルカに対してシロクマは紳士的な態度で、 「結婚相手のグンナルだ」 と名乗る。 人の姿でいることが少ないグンナルに混乱するルカだったが、どうやらグンナルにも事情があるようで……。 諸事情で頻繁にシロクマになってしまう寡黙な美形攻め×天真爛漫でとにかく明るい受け 2人がドタバタしながら、白い結婚から抜け出す物語 ※人の姿になったりシロクマ姿になったりする、変身タイプの獣人です。 ※Rシーンの攻めは人間です。 ※挿入無し→⭐︎ 挿入有り→★ ※初日4話更新、以降は2話更新

【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】

ゆらり
BL
 帝国の侵略から国境を守る、レゲムアーク皇国第一魔導騎士団の駐屯地に派遣された、新人の魔導騎士ネウクレア。  着任当日に勃発した砲撃防衛戦で、彼は敵の砲撃部隊を単独で壊滅に追いやった。  凄まじい能力を持つ彼を部下として迎え入れた騎士団長セディウスは、研究機関育ちであるネウクレアの独特な言動に戸惑いながらも、全身鎧の下に隠された……どこか歪ではあるが、純粋無垢であどけない姿に触れたことで、彼に対して強い庇護欲を抱いてしまう。  撫でて、抱きしめて、甘やかしたい。  帝国との全面戦争が迫るなか、ネウクレアへの深い想いと、皇国の守護者たる騎士としての責務の間で、セディウスは葛藤する。  独身なのに父性強めな騎士団長×不憫な生い立ちで情緒薄めな甘えたがり魔導騎士+仲が良すぎる副官コンビ。  甘いだけじゃない、骨太文体でお送りする軍記物BL小説です。番外は日常エピソード中心。ややダーク・ファンタジー寄り。  ※ぼかしなし、本当の意味で全年齢向け。 ★お気に入りやいいね、エールをありがとうございます! お気に召しましたらぜひポチリとお願いします。凄く励みになります!

処理中です...