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8話 なんでもやるって
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なんでもやってやると強く思っていた。
だが現実は、そう甘くない。
俺にできることには限界がある。
その事実を、ここ三カ月という時間が嫌というほど思い知らせてくれた。
どれほどエミリオを探し続けても、情報はなく霧の向こう側にあるように掴みどころがない。
人を使って調べてようやく、二属性を持つ平民を養子にした貴族がいるという曖昧な噂をつかむことができた。
俺たちと同じ年らしい。
ようやく主人公の影を見つけてそっと胸を撫で下ろす。
なら、貴族なら通う義務があるこの学園に入学しているはずだ。
見つからないのはおそらく『ゲームの仕組み』なんだろう。
ここは現実の世界であるはずなのに、そんなものが影響しているのが本当に笑えない。
俺の焦りも祈りも、ただ空回りするばかりだった。
そんな中でも、ノワールと過ごす日々だけは変わらない。
寝心地の良さに負けて、毎晩ノワールのベッドで寝て、同じ朝陽を浴びて起きる。
食事をとり、教室へ向かい、講義に出て、訓練に参加して寮へ帰ればノワールと過ごす。
自分の部屋に籠もって勉強していても、いつの間にかノワールが隣にいて離れようとしない。
まるで、俺が呼吸する先にいつもノワールがいるようだった。
それが全然嫌じゃなくて、むしろ当たり前のように感じる。
今日もノワールの部屋で横に並んで書き物をしている。
わからないところは話して相談して詰めていく。
これは昔から続く、変わらない習慣だった。
「この辺り、卒業の時期にやるらしいよ」
書庫から借りた本をめくりながら、何気なく声をかける。
「ほう……」
「本を借りる時に司書さんが教えてくれた」
「せっかくだから学べるところまで学ぼうか」
「うん。知識は多いほど損はしない」
入学前から俺とノワールの教育は十分すぎるほど進んでいた。
入学テストも拍子抜けするほど簡単で……それが今では少しだけ誇らしい。
アルベルトという人物は傲慢で頭の足りない、けれど悪知恵の働くキャラだったと記憶している。
けれど、こうやって正しく使えばこんなにも優秀な人間なんだ。
なぜゲームのアルベルトがあそこまで歪んだ人間になってしまったのか。
その原因は、おそらく家族にある。
遅くに生まれ、可愛らしい容姿を持ったアルベルト。
八歳上の兄は幼い頃から優秀で、跡継ぎとしてすでに期待されていた。
だから次男のアルベルトには、役割は求められなかった。ただ可愛がればよかったのだ。
良いことをしても、悪いことをしても、周囲はただかわいいと甘やかし、ひたすら持ち上げるだけ。
俺は前世の記憶を取り戻し、それが『優しい虐待』なのだと気づけた。
だが、ゲームのアルベルトはそれに気付くことなく育ってしまった。
その結果、彼の中で善悪の境界がいつの間にか曖昧になっていったのだと思う。
何をしても許される。そんな世界で育てられれば、人は簡単に歪んでしまう。
そして最後には、あっさりと家族に見捨てられた。
その冷酷さは、今の俺から見ればあまりにも酷く、それでいてどこか貴族らしい結末でもあった。
だからこそ俺は、学ぶことを疎かにしない。
無知であることの恐ろしさを、身にしみて知っているからだ。
やがて部屋の扉がノックされ、俺たちは顔を上げた。
外には執事が立っていて、「そろそろ休憩なさってはどうか」と、お茶と茶菓子を盆に載せて運んできてくれていた。
「ノワール。今日はもう終わりにしよう」
「ああ、もうそんな時間か」
俺たちは集中するとすぐに時間を忘れる。
だから執事がこうして適度に区切ってくれるのは、本当にありがたい。
お茶を淹れ終えた執事が部屋を退出すると、いつものように俺たちは並んで腰を下ろした。
隣り合ってお茶を飲むこの時間は、すっかり日課になっている。
誰かとこれほど長く、濃密に時間を共有するのは初めてだ。
ノワールとは家族以上に深く結びついてしまっている、と時々思う。
クッキーをかじる俺を見つめるノワールは、今日もどこか楽しげだ。
赤い瞳が柔らかい光を宿しているのを見ると、心の奥があたたかくなる。
それにしても、ノワールは俺と居るとずっと楽しそうだ。
「毎日俺と一緒で飽きない?」
「飽きない」
婚約者ではなかった頃、同じ王宮に住んではいたけれど部屋は別だった。
けれど今は教室でも部屋でも常に一緒だ。
それなのに迷いもなく返ってきた即答に、思わず笑いそうになった。
「お前は? 俺に飽きたのか?」
「いや。もうここまで来ると、一緒にいるのが当たり前って感じだ」
「なら結婚しても問題なさそうだな」
「結婚なあ……。本当に俺でいいの?」
「もちろんだ」
大好きだぞ、と冗談めかした声で言いながら俺を抱きしめてくるノワール。
胸の奥がきゅっと痛むのは、どうしてなのか自分でも分からない。
「どうせなら風呂も一緒がいい」
「風呂は嫌だ」
「前は一緒に入っただろ?」
「前はよかったけど……今のお前の目、エロすぎて。なんか怖い」
思わず肩が跳ねる。
婚約者になってからのノワールの視線はどこか知らない熱を孕んでいる。
昔はただのじゃれ合いだったのに、今は背筋が妙にむず痒くなる。
「お前の裸を見る貴重な機会だからな。舐めるように見るに決まってるだろ」
「!? 獣か!」
反射的に胸を隠すと、ノワールが楽しそうに俺をソファーへ押し倒した。
制服に伸びる手が本気なのか冗談なのか分からなくて、心臓が跳ね上がる。
「婚約者なんだから見てもいい。俺には権利がある!」
「いや、ちょっ、おま――!」
息が少し荒く、目の奥に熱が宿ったノワールが怖くて、俺は思わず押し戻す。
「お前とおなじものがついてるだけ! 見ても面白くないぞ」
「惚れた相手の裸だ。見たいに決まってる」
くっ、真顔で反論してきやがる。
「これだからBLの世界は……!」
「びーえる?」
「何でもない、忘れてくれ!」
王子に余計な概念を植え付けてしまった。
やめてくれ、頼む。
「かわいい令嬢や女子が山ほどいるのに、なんで俺なんだ……」
「お前が一番かわいい」
そう言いながら、ソファの背もたれへ俺を追い詰めて顎クイまでしてくる。
まさかこの国の王子が、娯楽小説で覚えたような仕草を本当にしてくるなんて誰が想像しただろう。
「俺にやるな!」
顎にかけられた指を弾くと、ノワールは痛いと言いながらも笑っている。
王宮にいた頃、閉じ込められたように曇っていたノワールの瞳が、今はちゃんと光を帯びている。
その光が消えてほしくなくて、俺は必死に楽しいことを教えてきた。
だからこそ今、目の前で笑ってくれるノワールがたまらなく大切だ。
出会ってしまった時は悔やんだけれど、付き合っていくうちにそんな気持ちは消えて行った。
家族よりも近く、同じ時間を積み重ねてきた『相棒』のような存在。
彼が笑うと、それだけで胸の奥に灯がともったように温かくなる。
けれどこれは、恋でも執着でもない。
『友達』としての『好き』。
ノワールには運命の相手がいて、それが彼を救う未来につながる。
俺はただ、その日まで隣で支え続けたいだけだ。
友人として、力になりたい。それだけなのに、不思議と胸が痛む時もある。
彼が大事すぎるからだろう。
失いたくないからこそ、心が揺れる。
……そんなことを思っていた、その時だった。
ノワールの体が突然、かすかに震えた。
ついさっきまで浮かんでいた笑顔が、一瞬で凍り付く。
自分を抱きしめるように身を縮め、噛みしめた唇が震えている。
その仕草だけで、発作の兆しだとすぐに分かった。
胸の奥がざわつき、血の気が引く。
「来たのか?」
「……っ」
『発作』。
女神の魔力を受け継いだ彼が、国のどこかで生まれた災厄を祓うため、強制的に魔力を奪われる時に起きる症状。
俺はすぐにノワールを抱きしめ、治癒の術を流し込む。
「ゆっくり息を吸って。そう、吸って……吐いて」
震える背を必死にさする。
ノワールの呼吸が荒れ、肌が悲鳴を上げるように熱い。
いつものことだ。
そう分かっていても、慣れるはずがない。
人が治める人の国だ。
災いが起きるなら人が力を合わせて何とかするべきだ。
神の力に頼り丸投げて、たった一人に重荷を背負わせるものではない。
俺は立ち会うたびに神を呪う。
やがて呼吸は少しずつ整っていく。
けれどその後に残るのは、ひび割れた器のように脆くなったノワールの身体だ。
どれほど治癒を施しても、壊れた『肉体そのもの』は戻らない。
発作は確実に、彼を削っている。
その事実が俺の心臓をぎゅっと握り潰す。
「ノワール、俺が必ず助ける」
「アル……。お前がいてくれるから……俺は……」
強く握られた手。絡められた指。
その先に乗せられる言葉は、重すぎる。
「アル……愛してる」
「……」
返事ができない。
胸が痛い。喉が塞がる。
言葉が出ない俺を、ノワールはそれでも優しく、愛しそうに見る。
その視線が、苦しい。
どう応えればいい?
俺に向けられたこの深い愛を、どう受け止めればいい?
分からない。分からないまま、ただ祈る。
一刻も早く、ノワールの『運命の相手』が見つかってほしい。
治癒師として分かってしまう。
ノワールの寿命はもう、いつ割れてもおかしくない薄氷の上に立っている。
残された時間は少ない。
俺にできることはこうして治癒を施して抱きしめるだけ。
それが悔しくて、情けなくて、涙が出そうになる。
「どうか早くエミリオが見つかりますように」
治癒が終わり、安心して意識を失ったノワールを強く抱きしめた。
だが現実は、そう甘くない。
俺にできることには限界がある。
その事実を、ここ三カ月という時間が嫌というほど思い知らせてくれた。
どれほどエミリオを探し続けても、情報はなく霧の向こう側にあるように掴みどころがない。
人を使って調べてようやく、二属性を持つ平民を養子にした貴族がいるという曖昧な噂をつかむことができた。
俺たちと同じ年らしい。
ようやく主人公の影を見つけてそっと胸を撫で下ろす。
なら、貴族なら通う義務があるこの学園に入学しているはずだ。
見つからないのはおそらく『ゲームの仕組み』なんだろう。
ここは現実の世界であるはずなのに、そんなものが影響しているのが本当に笑えない。
俺の焦りも祈りも、ただ空回りするばかりだった。
そんな中でも、ノワールと過ごす日々だけは変わらない。
寝心地の良さに負けて、毎晩ノワールのベッドで寝て、同じ朝陽を浴びて起きる。
食事をとり、教室へ向かい、講義に出て、訓練に参加して寮へ帰ればノワールと過ごす。
自分の部屋に籠もって勉強していても、いつの間にかノワールが隣にいて離れようとしない。
まるで、俺が呼吸する先にいつもノワールがいるようだった。
それが全然嫌じゃなくて、むしろ当たり前のように感じる。
今日もノワールの部屋で横に並んで書き物をしている。
わからないところは話して相談して詰めていく。
これは昔から続く、変わらない習慣だった。
「この辺り、卒業の時期にやるらしいよ」
書庫から借りた本をめくりながら、何気なく声をかける。
「ほう……」
「本を借りる時に司書さんが教えてくれた」
「せっかくだから学べるところまで学ぼうか」
「うん。知識は多いほど損はしない」
入学前から俺とノワールの教育は十分すぎるほど進んでいた。
入学テストも拍子抜けするほど簡単で……それが今では少しだけ誇らしい。
アルベルトという人物は傲慢で頭の足りない、けれど悪知恵の働くキャラだったと記憶している。
けれど、こうやって正しく使えばこんなにも優秀な人間なんだ。
なぜゲームのアルベルトがあそこまで歪んだ人間になってしまったのか。
その原因は、おそらく家族にある。
遅くに生まれ、可愛らしい容姿を持ったアルベルト。
八歳上の兄は幼い頃から優秀で、跡継ぎとしてすでに期待されていた。
だから次男のアルベルトには、役割は求められなかった。ただ可愛がればよかったのだ。
良いことをしても、悪いことをしても、周囲はただかわいいと甘やかし、ひたすら持ち上げるだけ。
俺は前世の記憶を取り戻し、それが『優しい虐待』なのだと気づけた。
だが、ゲームのアルベルトはそれに気付くことなく育ってしまった。
その結果、彼の中で善悪の境界がいつの間にか曖昧になっていったのだと思う。
何をしても許される。そんな世界で育てられれば、人は簡単に歪んでしまう。
そして最後には、あっさりと家族に見捨てられた。
その冷酷さは、今の俺から見ればあまりにも酷く、それでいてどこか貴族らしい結末でもあった。
だからこそ俺は、学ぶことを疎かにしない。
無知であることの恐ろしさを、身にしみて知っているからだ。
やがて部屋の扉がノックされ、俺たちは顔を上げた。
外には執事が立っていて、「そろそろ休憩なさってはどうか」と、お茶と茶菓子を盆に載せて運んできてくれていた。
「ノワール。今日はもう終わりにしよう」
「ああ、もうそんな時間か」
俺たちは集中するとすぐに時間を忘れる。
だから執事がこうして適度に区切ってくれるのは、本当にありがたい。
お茶を淹れ終えた執事が部屋を退出すると、いつものように俺たちは並んで腰を下ろした。
隣り合ってお茶を飲むこの時間は、すっかり日課になっている。
誰かとこれほど長く、濃密に時間を共有するのは初めてだ。
ノワールとは家族以上に深く結びついてしまっている、と時々思う。
クッキーをかじる俺を見つめるノワールは、今日もどこか楽しげだ。
赤い瞳が柔らかい光を宿しているのを見ると、心の奥があたたかくなる。
それにしても、ノワールは俺と居るとずっと楽しそうだ。
「毎日俺と一緒で飽きない?」
「飽きない」
婚約者ではなかった頃、同じ王宮に住んではいたけれど部屋は別だった。
けれど今は教室でも部屋でも常に一緒だ。
それなのに迷いもなく返ってきた即答に、思わず笑いそうになった。
「お前は? 俺に飽きたのか?」
「いや。もうここまで来ると、一緒にいるのが当たり前って感じだ」
「なら結婚しても問題なさそうだな」
「結婚なあ……。本当に俺でいいの?」
「もちろんだ」
大好きだぞ、と冗談めかした声で言いながら俺を抱きしめてくるノワール。
胸の奥がきゅっと痛むのは、どうしてなのか自分でも分からない。
「どうせなら風呂も一緒がいい」
「風呂は嫌だ」
「前は一緒に入っただろ?」
「前はよかったけど……今のお前の目、エロすぎて。なんか怖い」
思わず肩が跳ねる。
婚約者になってからのノワールの視線はどこか知らない熱を孕んでいる。
昔はただのじゃれ合いだったのに、今は背筋が妙にむず痒くなる。
「お前の裸を見る貴重な機会だからな。舐めるように見るに決まってるだろ」
「!? 獣か!」
反射的に胸を隠すと、ノワールが楽しそうに俺をソファーへ押し倒した。
制服に伸びる手が本気なのか冗談なのか分からなくて、心臓が跳ね上がる。
「婚約者なんだから見てもいい。俺には権利がある!」
「いや、ちょっ、おま――!」
息が少し荒く、目の奥に熱が宿ったノワールが怖くて、俺は思わず押し戻す。
「お前とおなじものがついてるだけ! 見ても面白くないぞ」
「惚れた相手の裸だ。見たいに決まってる」
くっ、真顔で反論してきやがる。
「これだからBLの世界は……!」
「びーえる?」
「何でもない、忘れてくれ!」
王子に余計な概念を植え付けてしまった。
やめてくれ、頼む。
「かわいい令嬢や女子が山ほどいるのに、なんで俺なんだ……」
「お前が一番かわいい」
そう言いながら、ソファの背もたれへ俺を追い詰めて顎クイまでしてくる。
まさかこの国の王子が、娯楽小説で覚えたような仕草を本当にしてくるなんて誰が想像しただろう。
「俺にやるな!」
顎にかけられた指を弾くと、ノワールは痛いと言いながらも笑っている。
王宮にいた頃、閉じ込められたように曇っていたノワールの瞳が、今はちゃんと光を帯びている。
その光が消えてほしくなくて、俺は必死に楽しいことを教えてきた。
だからこそ今、目の前で笑ってくれるノワールがたまらなく大切だ。
出会ってしまった時は悔やんだけれど、付き合っていくうちにそんな気持ちは消えて行った。
家族よりも近く、同じ時間を積み重ねてきた『相棒』のような存在。
彼が笑うと、それだけで胸の奥に灯がともったように温かくなる。
けれどこれは、恋でも執着でもない。
『友達』としての『好き』。
ノワールには運命の相手がいて、それが彼を救う未来につながる。
俺はただ、その日まで隣で支え続けたいだけだ。
友人として、力になりたい。それだけなのに、不思議と胸が痛む時もある。
彼が大事すぎるからだろう。
失いたくないからこそ、心が揺れる。
……そんなことを思っていた、その時だった。
ノワールの体が突然、かすかに震えた。
ついさっきまで浮かんでいた笑顔が、一瞬で凍り付く。
自分を抱きしめるように身を縮め、噛みしめた唇が震えている。
その仕草だけで、発作の兆しだとすぐに分かった。
胸の奥がざわつき、血の気が引く。
「来たのか?」
「……っ」
『発作』。
女神の魔力を受け継いだ彼が、国のどこかで生まれた災厄を祓うため、強制的に魔力を奪われる時に起きる症状。
俺はすぐにノワールを抱きしめ、治癒の術を流し込む。
「ゆっくり息を吸って。そう、吸って……吐いて」
震える背を必死にさする。
ノワールの呼吸が荒れ、肌が悲鳴を上げるように熱い。
いつものことだ。
そう分かっていても、慣れるはずがない。
人が治める人の国だ。
災いが起きるなら人が力を合わせて何とかするべきだ。
神の力に頼り丸投げて、たった一人に重荷を背負わせるものではない。
俺は立ち会うたびに神を呪う。
やがて呼吸は少しずつ整っていく。
けれどその後に残るのは、ひび割れた器のように脆くなったノワールの身体だ。
どれほど治癒を施しても、壊れた『肉体そのもの』は戻らない。
発作は確実に、彼を削っている。
その事実が俺の心臓をぎゅっと握り潰す。
「ノワール、俺が必ず助ける」
「アル……。お前がいてくれるから……俺は……」
強く握られた手。絡められた指。
その先に乗せられる言葉は、重すぎる。
「アル……愛してる」
「……」
返事ができない。
胸が痛い。喉が塞がる。
言葉が出ない俺を、ノワールはそれでも優しく、愛しそうに見る。
その視線が、苦しい。
どう応えればいい?
俺に向けられたこの深い愛を、どう受け止めればいい?
分からない。分からないまま、ただ祈る。
一刻も早く、ノワールの『運命の相手』が見つかってほしい。
治癒師として分かってしまう。
ノワールの寿命はもう、いつ割れてもおかしくない薄氷の上に立っている。
残された時間は少ない。
俺にできることはこうして治癒を施して抱きしめるだけ。
それが悔しくて、情けなくて、涙が出そうになる。
「どうか早くエミリオが見つかりますように」
治癒が終わり、安心して意識を失ったノワールを強く抱きしめた。
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