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*19話 お前が元凶か!
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「……帰れ」
「空気読め」
俺とノワールの揃った声に、現れたばかりの女神は硬直した。
そして半泣きで周囲を見回す。
「えっ……えっ!? なんで!? なんでこんな状況に!? 違う、もっとロマンチックな流れになる予定だったんです! なんで、合体してるの!?」
いや、『なんで』はこっちのセリフだ。
こんな盛り上がった場面でなんで来た!?
今更やめられるわけがない。
ノワールはこの状況でも全然萎えていないどころか、むしろさっきより固くて熱い。
俺も早くこの熱を感じたくて仕方がない。
ノワールも同じらしく、眉を寄せて苦しそうに息を押し殺している。
……いっそこのまま続けてもいいんじゃないかとすら思う。
ちらりとノワールを見ると目が合って、同じことを考えているのか、ゆっくり唇が近づいてきた。
俺はそれを受け入れようとそっと口を開いて……。
「ちょ、ちょっと待ってぇぇ!! ストップ!! なんで続けようとしてるの!?」
続きをしようとする俺たちを邪魔するように、目の前で手をバタバタ振り回してくる女神がうっとうしくて、ノワールが小さく舌打ちした。
「花は!? 種は!? なんで無いの!? キスをしたら花が咲いて呪いが解けるってぇぇ」
「俺が飲まされた。キスはしたが花は咲いてないぞ」
「嘘ぉ……」
混乱しきった女神は、まだ状況を飲み込めず、半泣きのまま所在なげに揺れていた。
そしてその視線が俺の顔で止まる。
「……はっ!」
そしてガバッと詰め寄ってきた。
肩を掴まれそうになった瞬間、ノワールがその手を叩き落とす。
「触るな」
「いったぁぁい!」
ノワールが鋭い声で女神の手を叩き落とし、俺をかばうように抱き寄せた。
女神は押さえた手をぷるぷる震わせながら涙目で俺たちを見る。
「ちょ、ちょっと待って!? あなたの運命の相手は別の……」
「運命なんて関係ない。俺が愛しているのはアルだけだ」
「そんな……!」
女神はショックのあまり、その場で口をぱくぱくさせるだけになった。
「あれ……? なんで? どうして……?」
俺の顔を覗き込み、首をひねる女神。
まぁ、想定通りならノワールとキスをして花を咲かせるのはエミリオだったもんな。
だが、すまんな。
あんたのシナリオ、全部俺がぶち壊した。
悪いとは思うけど、反省はしてない。
俺がノワールを選んで、ノワールが俺を選んだ。
ただ、それだけの話だ。
そして確信する。
目の前のこいつこそノワールを苦しめ続けてきた元凶。
愛し子なんて勝手な愛の押しつけで、ノワールの人生を勝手にいびつにした張本人だ。
文句を言うなら今しかない!
「お前か! ノワールにあんな訳わからん痛みと呪いを押しつけたのは!」
気付いたら怒鳴りつけていた。
正直相手が神とか関係ない。
今までの与えられたノワールの苦しみを思えば、こいつの顔を見ているだけで怒りが爆発する。
「ち、違います! 呪いじゃなくて、加護なんです! ……ひ、ひどい言い方……っ!」
「加護?」
ふざけるな。
「あれが加護だって? 毎日苦しませて、血が滲むほど痛がらせて、寿命まで削って……それが?」
「うっ……! そ、それは……」
「『私が好きだから加護あげちゃう♡』てノリで人の人生をめちゃくちゃにすんな!」
「ひんっ……!」
泣きそうな顔しても許さない。
「大体なんで加護を与えられた奴が苦しむんだよ。この国のその他大勢が幸せになるのに、加護を貰った本人だけが地獄を見るんだ? おかしいだろ!」
「そ、それはぁ。あの人と作ったこの国を……ま、守りたくてぇ……でも私が直接手を下すと問題になるからぁ……」
「だから? ちょうどよく自分の力を宿した人間がいたから利用しようって?」
「あの、そ、その……悪気は……っ!」
「悪気がなくても、やってることは悪意満載だよ!」
「悪意もありません!」
「うるせぇ! だいたいな、お前の押しつけ愛なんていらないんだよ!!」
こいつのアホみたいな独りよがりのせいで、ノワールの未来が何度も壊されかけた事実が悔しくてたまらない。
俺がまくしたてていると、ノワールも低い声で追い打ちをかける。
「独りよがりの愛情なんて迷惑だ。反省しろ」
「うあああああああん!!」
女神はとうとう、その場で膝をついて大泣きし始めた。
いや、泣きたいのはこっちだからな???
ノワールなんて半生、ずっとこの暴走加護に苦しめられてきたんだぞ。
「申し訳ありません……! 本当に悪気も悪意もないんです。信じてください!」
「……」
俺とノワールが冷えた目を向ける中、女神は必死に訴えてくる。
「わ、私……初代の夫を愛しすぎて……! その魂に似た子が生まれると……守らなきゃって魔力が勝手に暴発しちゃうんですぅぅぅ……ああああ……っ」
……暴発。
本当にバグじゃんそれ。
しかもバグだとわかってて利用し続けたなんて悪質すぎる……。
「でもでも、ちゃんと、正しい相手に七色の種を渡して、愛し合って花を咲かせてもらえれば……魔力を回収できるようしたんです」
「なんですぐ回収しない?」
「私が直接関与すると、愛し子に注がれた魔力が暴走して、四肢が爆散しちゃいます……!」
「わぁ……」
「迷惑な……」
「だ、だから、私の魔力を媒介できる人間に種を渡して、回収を……」
「ほほぅ、それを運命と言い張るのか……」
「そ、それだけじゃないです。その子は愛し子と相性がいいんです。出会った瞬間惹かれ合うような相手なんです!」
まぁ、ゲームのノワールとエミリオは出会ってお互い惹かれ合ったもんな……。
「いつもそれで上手く行っててぇ。今回だけ何故か違うので、私も戸惑ってるんです!」
睨むな。逆切れすんな。駄目神が。
「歴代の愛し子が短命なのは?」
「死んでません! 普通に長生きします! ただの卒業扱いなんです!」
「あんなに頻繁に苦しんだのはなんでだ? いくらなんでも災厄の芽とやらが多すぎる」
「現在だけじゃなくて先の先の先の芽まで摘もうとしてしまうので……」
……なるほど、だから愛し子が長生きすればするほど長く平穏が続くと。
文献に載っている情報、断片的すぎるだろ……。
「そういう大事なことは伝えとけ!」
「だってぇ……説明書を付けようとしたら神々の会議で反対されたりぃ、伝承が勝手にロマン方向に盛られたりしてぇ……ぐす……!」
語尾を伸ばすな。
泣きながら言う女神の姿に、怒りよりも呆れのほうが勝った。
「……もういい。俺の『呪い』は解けたんだな?」
「か、加護……です……。呪いって言わないで……」
「あんなの呪いだ。ふざけんな」
「ひんっ!」
女神は両手で顔を覆って再び泣き出した。
「今回はイレギュラーですが、加護は何故か解けましたので徐々に私の魔力は抜けていきますぅ……もう死にません……だから怒らないでぇ……」
「ならいい。もう帰れ。いや、待て!」
姿が薄れていく女神をノワールが呼び止める。
「次に『愛し子』が出た時はそいつに種を渡せ。お前が勝手に相手を選ぶな。愛し子本人に託せ。説明もしろ! 直接関わらないでもそのくらい出来るだろ」
「はいぃ……約束しますぅ……」
うなだれたまま、女神は光となって消えていった。
「はぁ……」
「ふぅ……」
静かになって俺たちは息を吐き出した。
静寂が落ちる。
ノワールは助かった。
本当に。
もう死なないんだ。
胸の奥を締めつけていたものが、ほどけていく。
長い間息を止めていたみたいに、弱々しい呼吸が漏れる。
泣きそうになるのを、必死にこらえた。
「ノワール……よかった……」
「ああ」
触れ合った体が同時に力を抜き、互いを抱きしめる。
温かくて、生きていて、ここにいる。それだけで胸がいっぱいになる。
……でも、その静かな抱擁は、ほんの一秒しか続かなかった。
「すまん、もう動いていいか? 限界だ」
低い声が震えている。
ノワールはまったく萎えていない。
それどころか……さっきより明らかに熱くて大きい。
「……うん。いいよ」
囁くように答え、そっと唇を重ねる。
それだけで、ノワールの体がびくりと震えた。
合図だとわかったのだろう。すぐにキスは深くなり、同時に腰がゆっくりと動き出す。
長い間繋がったままだったせいで、俺の体はもうノワールを受け入れる形に馴染んでしまっていた。
奥を擦られるたび、体の奥底まで震えが走り、甘い快感がじんわり広がっていく。
「ああっ、くっ……ぁ……ノワール……っ」
「ああ……アル……。最高だ。気持ちよすぎて……溶けそうだ……」
熱に浮かされたみたいに、ノワールは息を零しながら言葉を吐き出す。
欲と愛情、その両方に濡れた声が耳に響いてくすぐったい。
何度も唇を重ねているうちに、俺の体からじわりと七色の魔力が立ちのぼり、ノワールの輪郭をなぞるようにまとわりついた。
温度も質感も少しずつ違うその光が、内側から肌を撫でていくみたいで、くすぐったくて、くるしいほど気持ちいい。
どうやら、俺の中で例の花が咲いているらしい。
それを見ることはできないけれど、きっと美しいのだろう。
けれど俺にはそれよりも、幸福に目を細めるノワールの顔の方がずっと眩しかった。
「ノワール……ノワール……、ずっと、一緒に……」
「ん……愛してる。アル……全部、俺のだ……」
抱きしめた腕がぎゅっと力をこめ、そしてノワールの動きが深く沈んで止まった。
すぐに、腹の奥へ熱が注ぎ込まれる。
「あ……っ」
じわりと染みてくるその熱が愛おしくて、俺は無意識に腹へ手を添えていた。
「……く、出ちまった……」
「気持ちよかった……?」
「……最高だった」
息を吐きながら、ノワールは俺を抱きしめ直す。
その抱擁が優しくて、安心する。
やっと思いが通じ合った。
とても幸せだ……。
深く息を吐いたその直後。
繋がった部分で、ノワールの熱が再び膨れ上がる。
「え、ノワール……?」
「……何年我慢してきたと思ってる?」
低く掠れた声。
完全に理性が吹き飛んだ男の声だった。
「一回で終わるわけないだろう?」
「ま、まっ……うそっ、ちょ、待って……!」
「アルだって、まだイけるだろ?」
掴まれた腰が持ち上げられ、ノワールが再び動き出す。
熱い、深い、逃がさないという意志が伝わってくる。
「はぁ……っ、ふ、ぁ……っ」
「手加減しながら全力で抱く。覚悟しろ……」
それは手加減とは言わない。
絶対言わない!
叫ぼうとした声は、ノワールの口づけに塞がれて、甘く溶かされて消えていった。
「空気読め」
俺とノワールの揃った声に、現れたばかりの女神は硬直した。
そして半泣きで周囲を見回す。
「えっ……えっ!? なんで!? なんでこんな状況に!? 違う、もっとロマンチックな流れになる予定だったんです! なんで、合体してるの!?」
いや、『なんで』はこっちのセリフだ。
こんな盛り上がった場面でなんで来た!?
今更やめられるわけがない。
ノワールはこの状況でも全然萎えていないどころか、むしろさっきより固くて熱い。
俺も早くこの熱を感じたくて仕方がない。
ノワールも同じらしく、眉を寄せて苦しそうに息を押し殺している。
……いっそこのまま続けてもいいんじゃないかとすら思う。
ちらりとノワールを見ると目が合って、同じことを考えているのか、ゆっくり唇が近づいてきた。
俺はそれを受け入れようとそっと口を開いて……。
「ちょ、ちょっと待ってぇぇ!! ストップ!! なんで続けようとしてるの!?」
続きをしようとする俺たちを邪魔するように、目の前で手をバタバタ振り回してくる女神がうっとうしくて、ノワールが小さく舌打ちした。
「花は!? 種は!? なんで無いの!? キスをしたら花が咲いて呪いが解けるってぇぇ」
「俺が飲まされた。キスはしたが花は咲いてないぞ」
「嘘ぉ……」
混乱しきった女神は、まだ状況を飲み込めず、半泣きのまま所在なげに揺れていた。
そしてその視線が俺の顔で止まる。
「……はっ!」
そしてガバッと詰め寄ってきた。
肩を掴まれそうになった瞬間、ノワールがその手を叩き落とす。
「触るな」
「いったぁぁい!」
ノワールが鋭い声で女神の手を叩き落とし、俺をかばうように抱き寄せた。
女神は押さえた手をぷるぷる震わせながら涙目で俺たちを見る。
「ちょ、ちょっと待って!? あなたの運命の相手は別の……」
「運命なんて関係ない。俺が愛しているのはアルだけだ」
「そんな……!」
女神はショックのあまり、その場で口をぱくぱくさせるだけになった。
「あれ……? なんで? どうして……?」
俺の顔を覗き込み、首をひねる女神。
まぁ、想定通りならノワールとキスをして花を咲かせるのはエミリオだったもんな。
だが、すまんな。
あんたのシナリオ、全部俺がぶち壊した。
悪いとは思うけど、反省はしてない。
俺がノワールを選んで、ノワールが俺を選んだ。
ただ、それだけの話だ。
そして確信する。
目の前のこいつこそノワールを苦しめ続けてきた元凶。
愛し子なんて勝手な愛の押しつけで、ノワールの人生を勝手にいびつにした張本人だ。
文句を言うなら今しかない!
「お前か! ノワールにあんな訳わからん痛みと呪いを押しつけたのは!」
気付いたら怒鳴りつけていた。
正直相手が神とか関係ない。
今までの与えられたノワールの苦しみを思えば、こいつの顔を見ているだけで怒りが爆発する。
「ち、違います! 呪いじゃなくて、加護なんです! ……ひ、ひどい言い方……っ!」
「加護?」
ふざけるな。
「あれが加護だって? 毎日苦しませて、血が滲むほど痛がらせて、寿命まで削って……それが?」
「うっ……! そ、それは……」
「『私が好きだから加護あげちゃう♡』てノリで人の人生をめちゃくちゃにすんな!」
「ひんっ……!」
泣きそうな顔しても許さない。
「大体なんで加護を与えられた奴が苦しむんだよ。この国のその他大勢が幸せになるのに、加護を貰った本人だけが地獄を見るんだ? おかしいだろ!」
「そ、それはぁ。あの人と作ったこの国を……ま、守りたくてぇ……でも私が直接手を下すと問題になるからぁ……」
「だから? ちょうどよく自分の力を宿した人間がいたから利用しようって?」
「あの、そ、その……悪気は……っ!」
「悪気がなくても、やってることは悪意満載だよ!」
「悪意もありません!」
「うるせぇ! だいたいな、お前の押しつけ愛なんていらないんだよ!!」
こいつのアホみたいな独りよがりのせいで、ノワールの未来が何度も壊されかけた事実が悔しくてたまらない。
俺がまくしたてていると、ノワールも低い声で追い打ちをかける。
「独りよがりの愛情なんて迷惑だ。反省しろ」
「うあああああああん!!」
女神はとうとう、その場で膝をついて大泣きし始めた。
いや、泣きたいのはこっちだからな???
ノワールなんて半生、ずっとこの暴走加護に苦しめられてきたんだぞ。
「申し訳ありません……! 本当に悪気も悪意もないんです。信じてください!」
「……」
俺とノワールが冷えた目を向ける中、女神は必死に訴えてくる。
「わ、私……初代の夫を愛しすぎて……! その魂に似た子が生まれると……守らなきゃって魔力が勝手に暴発しちゃうんですぅぅぅ……ああああ……っ」
……暴発。
本当にバグじゃんそれ。
しかもバグだとわかってて利用し続けたなんて悪質すぎる……。
「でもでも、ちゃんと、正しい相手に七色の種を渡して、愛し合って花を咲かせてもらえれば……魔力を回収できるようしたんです」
「なんですぐ回収しない?」
「私が直接関与すると、愛し子に注がれた魔力が暴走して、四肢が爆散しちゃいます……!」
「わぁ……」
「迷惑な……」
「だ、だから、私の魔力を媒介できる人間に種を渡して、回収を……」
「ほほぅ、それを運命と言い張るのか……」
「そ、それだけじゃないです。その子は愛し子と相性がいいんです。出会った瞬間惹かれ合うような相手なんです!」
まぁ、ゲームのノワールとエミリオは出会ってお互い惹かれ合ったもんな……。
「いつもそれで上手く行っててぇ。今回だけ何故か違うので、私も戸惑ってるんです!」
睨むな。逆切れすんな。駄目神が。
「歴代の愛し子が短命なのは?」
「死んでません! 普通に長生きします! ただの卒業扱いなんです!」
「あんなに頻繁に苦しんだのはなんでだ? いくらなんでも災厄の芽とやらが多すぎる」
「現在だけじゃなくて先の先の先の芽まで摘もうとしてしまうので……」
……なるほど、だから愛し子が長生きすればするほど長く平穏が続くと。
文献に載っている情報、断片的すぎるだろ……。
「そういう大事なことは伝えとけ!」
「だってぇ……説明書を付けようとしたら神々の会議で反対されたりぃ、伝承が勝手にロマン方向に盛られたりしてぇ……ぐす……!」
語尾を伸ばすな。
泣きながら言う女神の姿に、怒りよりも呆れのほうが勝った。
「……もういい。俺の『呪い』は解けたんだな?」
「か、加護……です……。呪いって言わないで……」
「あんなの呪いだ。ふざけんな」
「ひんっ!」
女神は両手で顔を覆って再び泣き出した。
「今回はイレギュラーですが、加護は何故か解けましたので徐々に私の魔力は抜けていきますぅ……もう死にません……だから怒らないでぇ……」
「ならいい。もう帰れ。いや、待て!」
姿が薄れていく女神をノワールが呼び止める。
「次に『愛し子』が出た時はそいつに種を渡せ。お前が勝手に相手を選ぶな。愛し子本人に託せ。説明もしろ! 直接関わらないでもそのくらい出来るだろ」
「はいぃ……約束しますぅ……」
うなだれたまま、女神は光となって消えていった。
「はぁ……」
「ふぅ……」
静かになって俺たちは息を吐き出した。
静寂が落ちる。
ノワールは助かった。
本当に。
もう死なないんだ。
胸の奥を締めつけていたものが、ほどけていく。
長い間息を止めていたみたいに、弱々しい呼吸が漏れる。
泣きそうになるのを、必死にこらえた。
「ノワール……よかった……」
「ああ」
触れ合った体が同時に力を抜き、互いを抱きしめる。
温かくて、生きていて、ここにいる。それだけで胸がいっぱいになる。
……でも、その静かな抱擁は、ほんの一秒しか続かなかった。
「すまん、もう動いていいか? 限界だ」
低い声が震えている。
ノワールはまったく萎えていない。
それどころか……さっきより明らかに熱くて大きい。
「……うん。いいよ」
囁くように答え、そっと唇を重ねる。
それだけで、ノワールの体がびくりと震えた。
合図だとわかったのだろう。すぐにキスは深くなり、同時に腰がゆっくりと動き出す。
長い間繋がったままだったせいで、俺の体はもうノワールを受け入れる形に馴染んでしまっていた。
奥を擦られるたび、体の奥底まで震えが走り、甘い快感がじんわり広がっていく。
「ああっ、くっ……ぁ……ノワール……っ」
「ああ……アル……。最高だ。気持ちよすぎて……溶けそうだ……」
熱に浮かされたみたいに、ノワールは息を零しながら言葉を吐き出す。
欲と愛情、その両方に濡れた声が耳に響いてくすぐったい。
何度も唇を重ねているうちに、俺の体からじわりと七色の魔力が立ちのぼり、ノワールの輪郭をなぞるようにまとわりついた。
温度も質感も少しずつ違うその光が、内側から肌を撫でていくみたいで、くすぐったくて、くるしいほど気持ちいい。
どうやら、俺の中で例の花が咲いているらしい。
それを見ることはできないけれど、きっと美しいのだろう。
けれど俺にはそれよりも、幸福に目を細めるノワールの顔の方がずっと眩しかった。
「ノワール……ノワール……、ずっと、一緒に……」
「ん……愛してる。アル……全部、俺のだ……」
抱きしめた腕がぎゅっと力をこめ、そしてノワールの動きが深く沈んで止まった。
すぐに、腹の奥へ熱が注ぎ込まれる。
「あ……っ」
じわりと染みてくるその熱が愛おしくて、俺は無意識に腹へ手を添えていた。
「……く、出ちまった……」
「気持ちよかった……?」
「……最高だった」
息を吐きながら、ノワールは俺を抱きしめ直す。
その抱擁が優しくて、安心する。
やっと思いが通じ合った。
とても幸せだ……。
深く息を吐いたその直後。
繋がった部分で、ノワールの熱が再び膨れ上がる。
「え、ノワール……?」
「……何年我慢してきたと思ってる?」
低く掠れた声。
完全に理性が吹き飛んだ男の声だった。
「一回で終わるわけないだろう?」
「ま、まっ……うそっ、ちょ、待って……!」
「アルだって、まだイけるだろ?」
掴まれた腰が持ち上げられ、ノワールが再び動き出す。
熱い、深い、逃がさないという意志が伝わってくる。
「はぁ……っ、ふ、ぁ……っ」
「手加減しながら全力で抱く。覚悟しろ……」
それは手加減とは言わない。
絶対言わない!
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