【冤罪で処刑された逆行令嬢は奇策にて冤罪を晴らす】

In・san・i・ty=DoLL

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【終話】

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「お嬢様。今日もお嬢様と縁を結びたいと仰る方から釣書が届きました」

そう言ってディティが両手いっぱいの釣書と肖像画を持ってくる。

「また?もう、何度断っても送ってくるんだから困ったものだわ」

私の旦那になる方が公爵家を継ぐと聞き間違えた貴族諸侯は、嫡男以外の息子の釣書と肖像画をこぞって送りつけてくるようになった。

「ディティはお嬢様が皆様に認められて嬉しいですけどね」

それにしても多すぎる。

「まぁ、行き遅れになる前に旦那様を決めなきゃならないのだから、時間は限られているのだけれど…はっきり言って面倒だわ」

追加された釣書と肖像画を見て、ため息しか出ない。

「そうだな」

「公爵家に釣り合う身分で年が近い方は大体婚約者がいらっしゃるみたいだし、いらっしゃらない方は素行に難がある方ばかり…」

もちろん、婚約破棄をしてまで私に近付こうとした方のものは問答無用で送り返した。

「大変だな」

「どこかの高貴な方は何故かウチに入り浸るし」

目の前のソファーに座り、長い足を組んで優雅に紅茶を飲んでいるのはハーディ様。

「駄目か?」

シレっと答えるが、問題はそこじゃない。

「頻繁に来すぎです。ご公務はどうしたんですか?」

不敬だろうが何だろうが、あの一件で吹っ切れた私は、言いたい事を言うようになった。

それを見ていた使用人達は、いつもの事なので気にも留めずに自分達の仕事に精を出している。

「ここ最近は、父も母も公務より嫁を決めろと責めるように言い出してな。どうせなら気に入った令嬢がいいと思って、現在、猛攻撃を仕掛けているんだが、見向きもされない。ベルゼ嬢はどう思う?」

ハーディ様はにやにやと私の反応を見ている。

「そうですね。全く脈が無いんじゃありませんか?」

「つれないな」

肩を竦めて苦笑いするしぐさも、腹立たしいぐらいに様になっている。

「貴方様がそのご令嬢のどこを気に入られたのか解らないのですが、さっさと諦めて他の方を探した方が良いのでは?」

本当に毎日来るのはやめて頂けないかと、頭を抱えてしまいそう。

「そうだな。その令嬢は、元婚約者や義妹に冤罪に嵌められると知った途端、独りで戦うような心が強い女だ。保険に権力者を味方に付けた頭の切れるとこ。それも気に入った理由だな。それに、俺の横に立っても遜色無い身分と教養を持っている。お互いに婚約者に裏切られた者同士、裏切られる辛さを知っているところも強みだな。それから…」

「も、もう、結構です!」

本気なのかしら?

「なら、そろそろ腹を括らないか?」

「それとこれとは話が違います!」

私にどうしろと?

「気が弱そうに見えて、実は気が強いのも好みだ」

「話、聞いてますか?」

「怒った顔が綺麗なのも好みだ」

「ハーディ様!」

「なんだ?やっと婚約を承諾する気になったか?」

「そうではありません」

確かに、ハーディ様と私はこれ以上無い程の優良物件同士だ。

お互いに元婚約者と婚約破棄もしくは解消をしていて、更に言えば、私は第二王位継承権を持った方の婚約者だった身。

もちろん、王妃教育も受けていた。

王太子妃に私を推す貴族も少なくない。

「何が不服だ?俺がゼレウスの血縁者なのが問題か?」

「そこは問題ありません」

だけど、私はもう裏切られたり、無い者とされるのは嫌なのだ。

「じゃぁ、何だ?」

「…ハーディ様は何人側室を持つおつもりか伺っても?」

王家に嫁ぐなら側室は当たり前のものとして受け入れなければならないが、私は私だけを見てくれる人がいい。

だからこそ、ハーディ様の手を取る訳にはいかない。

「そうだな。正妃と恙無く子供が儲けられるなら側室は要らんな。金と時間の無駄だ」

「は?」

今、何て?

「俺は、お前だけでいいと言っている」

あり得ない…。

「…もし、何らかの事情で子供が出来ないと解ったらどうするんです?」

「その時は、弟のセインの子を養子にして王太子として立太子させればいいだろう」

「それも叶わない場合は?」

「少し変則だが、ゼレウスとメガイラの子なら血筋はしっかりしている。あの子を養子として王太子にすればいい。それも駄目なら公爵家の孤児院にいる子供を養子にしてもいい」

全ての懸念に対して、予想外の答えが帰ってくる。

「どうしてそこまで…」

「お前が欲しいと思ったからだが?」

ハーディ様の真剣な眼差しに私は息を飲んだ。

「…っ」

ティーカップを置いたハーディ様は、立ち上がると私の座っているソファーの前で跪いた。

「あの断罪の日。真っ直ぐに前を向き、冤罪を晴らしたお前が眩しく見えた。女は着飾る事と、噂話や権力にしか興味ない生き物だと思っていた俺の認識を、お前が変えたんだ。そんなお前に一目惚れしたと言ってもいい。ベルゼ嬢、どうか私と一緒にこの先を生きて頂けませんか?」

この方は人を射殺せそうな目をするくせに、こんなに甘い眼差しも出来るのね。

と、素直に感心した。

でも、私には公爵家を継ぐ子供を作らなければならない。

「ああ、公爵家なら第二子に継がせればいい」

ハーディ様は私の考えを見破っていた。

「他に懸念はあるか?」

負けた…。

「はー。…ありません。降参です」

惨敗だわ。

「では、結婚してくれるか?」

「…解りました。未熟者ではありますが、よろしくお願いします」

私は立ち上がってハーディ様の差し出された手に、自分の手を乗せた。

「「「「「「やったー!!!」」」」」」

途端に、部屋の外から歓声があがる。

何事!?

「「「「「おめでとうございます!お嬢様!」」」」」

部屋の中に使用人達が入ってきて、祝いの言葉をかけてくれる。

みんな気にしていてくれたんだと思うと、涙が滲んできた。

後日、正式にハーディ様の婚約者として世間に発表され、婚約式では、全国民の前でハーディ様が側室は取らないと大々的に宣言してくれた。

しばらくは世間を騒がせたが、一途な次期国王陛下は国民に好意的に受け入れられた。

私も絆された感が否めないが、数年後には待望の第一子が、更に翌年には第二子が生まれ、王家や公爵家の後継ぎ問題も解決された。

ハーディ様に愛され、今では子供達に囲まれて幸せに暮らしている。

あの時、あの決断をして本当に良かったと思う。

<完>
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