【俺は期間限定だった幸せを掴み取ったらしい】

In・san・i・ty=DoLL

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≪本編≫

【本編5】

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「そんな、ツチノコじゃないんだから…」

「…ツチノコってwww」

俺は葉月さんの言葉に笑った。

「まぁ、確かに幻と言われる存在ですけどね。…実はCGだとまで言われてますよ?w」

実際に会った事が無いモデル仲間やスタッフからはそんな声が出ていた。

「ぶっはwどんだけだよww」

あれ?会話続いてる。

それにこの人、段々敬語が取れちゃってる。

こっちが素かな?

声じゃ判断出来無いけど、喋ってると確かに男の人…かな?

「…じゃあ、無名の新人に向かって真摯に頭を下げてくれた社長さんに、敬意を表するか」

「え?」

葉月さんはそう言って部屋を見渡すと、女性の衣装のハンガーラックの方に歩いて行った。

「女性側の衣装はここにあるので全部?」

「はい」

「ふ~ん。並び順でペアになってるのかな?」

「たぶん。今日はさっきの朝倉さんって言うヘアメイクがスタイリスト込みで全部仕切っていたので…葉月さん?」

葉月さんは丹念に女性用の衣装を一つづつ丁寧に持ち上げてはラックに戻すを繰り返す。

「全部で3着ね。よし、ヘアメイクやろう。鏡の前座って」

葉月さんは前回同様てきぱきと準備を始めて、約30分で俺の支度を整えた。

やっぱりこの人の手、気持ちいい。

短時間で施された技術は流石で、朝倉さんがやってくれたヘアメイクとは全然違った。

前回の時みたく目元の印象を変えて、髪型も少し落ち着いた感じに仕上げられた。

小道具とばかりに自分が着けていたダサい黒縁眼鏡を掛けてくれる。

「あれ?」

「伊達だよ。違和感あるなら外して」

これ、伊達眼鏡だったのか。

鏡に写る自分を見る。

ああ、確かにこれなら“冴えない少年”だ。

「どう?」

朝倉さんのメイクはどうやっても“俺”だった。

「凄い…俺、超ダサいw」

「だろ?ww」

近くにいた葉月さんの顔がチラッと見えたけど、すぐに離れてしまって素顔は確認出来なかった。

何か、今、変な感じした…。

何だろ?

葉月さんはそのままノートと色鉛筆?を取り出して、何やら書き込んでいた。

それが終わるのを待って、一緒に控え室から出る。

「ちょっと電話してくるから、先に撮影所に戻ってて」

「あ、電話なら俺の携帯をどうぞ?」

確かこの人携帯持ってなかったよね?

「あ~、いや、知らない番号だと出てもらえないからいい。公衆電話なら俺だって解ってくれるから、気持ちだけありがとう」

控え室に戻ろうとした俺を止めて、葉月さんは言い辛そうに苦笑いした。

「なるほど。そうですか、それじゃあ先に戻ってますね」

途中で別れて、俺はスタジオに向かう。

「時間かかるかもしれないから撮影始まっても気にしないでくれ。メイクとか髪型はさっきのノートに書いてあるから!」

「えっ?」

そう言って葉月さんは公衆電話がある入り口の方に向かって行った。

いや、相手居ないんだから撮影始まらないですよ?

そう思いながらスタジオに戻ると、カメラマンの山田さんが気付いて近寄ってきた。

「すみません。ご迷惑をおかけ…「おお!いいね!全然違うよ!」…あの?」

俺の謝罪を遮って大声で絶賛してくれたので、クライアントの中澤さんやその秘書、山田さんのアシスタントさん達も見に来た。

「本当だ。さっきと全然違うじゃないか!これこれ、これだよ!」

「確かに、冴えない少年だ!」

「これ、さっきの子がやったのかい?」

「はい」

「いい腕だね。先日のフレグランスの撮影もあの子がやったとか言ってたね?」

「はい。ピンチヒッターで急な話だったんですが、理想的に仕上げて頂きました」

「へぇ、言っちゃなんだが、本人はパっとしないのにな~」

「それは言っちゃ駄目だろう?」

「いや、だからこそこのOMIくんが出来上がったんじゃないのか?」

「…確かに」

皆がクスクス笑いながら仕上がりを誉めてくれる。

葉月さん、ホントすごいよ!

メイク一つで、さっきまでのピリピリイライラムードが緩和されるなんて!

…若干、貴方の容姿で笑いが起こってますけどねw
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