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【5月14日①】美少女vs美女(どっちも男w)対決!

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今日の日程は体育館で男女別の柔道。

運動場でソフトボール。

全てが終わったら、体育館で男女混合ドッジボールで締め括り。

ヒロインはと言えば、昨日の卓球優勝で少し話し掛ける女子もいたけど、男子には媚びた態度、女子にはトゲのある態度で、またクラスメートからは敬遠されてしまった。

男子達の“顔だけは可愛いのに残念な思考回路”という適切な評価に、頷くしか出来ない。

そして、今、私はとてもテンションが高いと自負しております!

だって、念願の美少女vs美女(どっちも男w)対決、しかも決勝戦が!

今!

目の前で繰り広げられてるの!!

写真が取りやすいように2階にある応援席の最前は陣取ったわ!

2人の技の掛け合いで道着がはだけると、どよめきと歓声と悲鳴が上がる。

すかさずシャッターを切る私!

柔道の技とか解らないけど、2人の足がお互いに引っ掛け合おうとして、なかなか勝負が決まらない事だけは解った。

そのスピードが早いの何の!

ちなみに、女子は遼ちゃんの圧勝で終わっている。

「体格差で言えば詠斗が不利だが、動きが早い分有利だな。足払いがうまく決まれば大外刈りか大内刈りで勝負が決まりそうなんだが、縁先輩もうまく切り抜けてるから、体力勝負だな」

遼ちゃんに解説して貰いながら、シャッターを切る。 

「正直、縁先輩がこんなに強いとは思ってなかったな。去年は霜月先輩だったし今年もそうかと思っていた」

遼ちゃんの言い分はもっともだけど、霜月ちゃんは、ソフトボールの審判として駆り出される陽向先生が心配だからと、時間が重なる柔道を辞退したのは内緒。

なので、今はグラウンドで待機してますw

「霜月ちゃんが縁先輩を推薦したみたいなの」

「へぇ。今もすごい試合だけど、詠斗と霜月先輩の対決も見てみたかったね」

自分には真似出来ないと、秀臣くんがマジマジと2人の対戦を見ている。

「実は、1年の時にすでに対決済みなんだよね」

「そうなの?見たかったわ。どっちが勝ったのかしら?」

「霜月ちゃんが珍しく“負けたぁ!”って雄叫びあげてたw」

時雨も思い出したのか、うんうんと頷いている。

「詠斗、ホントにハイスペックだなー」

秀臣くんがしみじみと対戦中の詠斗くんを見た。

あれ?

詠斗くん、こっち見てる?

目を見開いてるけど、何かあった?

その顔も可愛いけどw

そんな事を考えている内に、背中に衝撃と、体の浮遊感。

「は?え?」

「「「「雫(ちゃん)っ!」」」」

嘘っ!

私、落ちた!?

時雨や秀臣くん、遼ちゃんの伸ばされた手が空振りしたのが見えた。

あ、前世で階段落ちた時に見た光景とそっくりだ。

落ちたと解ったけれど、どうにも出来ない。

3人の絶望的な顔が辛い…。

「まーにーあーえーっ!」

そんな中、知ってる声が近付いてくる。

詠斗くん?

衝撃と共に何かに包み込まれる感触と、上下が解らなくなる感覚。

床に落ちた割には…。

「痛く‥ない?」

不思議に思って目を開けてみると、道着が見えた。

え?

は?

混乱していると上から時雨が飛び降りてきて、私を抱え上げてくれた。

「雫!怪我は?」

「へ、いき…」

焦っている時雨に取り敢えず大丈夫だと答える。

何があったの?

「詠斗!」

縁先輩が駆け寄ってきた。

私がいた下には詠斗くんが転がっている。

まさか?

「いてて。ははw何とかなるもんだな。雫、痛い所はないか?」

詠斗くんは、にっこり笑って私を見上げた。

その額からは血が出ていた。

「わたし‥ない…え、詠斗く‥怪我…頭‥血が…」

恐怖からか、私は声が出なくて、ただただ震えて時雨にしがみついていた。

「あ?ああ、こんなもん。舐めときゃ治る。雫が無事で良かった」

「だめ~。どうやって舐めるの?救護班の人~!」

流れる血を袖口で拭き取った詠斗くんは、縁先輩に窘められながら起き上がった。

縁先輩が救護班を呼んでくれて、詠斗くんの手当てをする。

「あり、ありがと‥う…」

言葉になったかどうか。

私は意識を失った。
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