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「黒川、アーン」
城田が差し出したスプーンをもはや抵抗することなく受け入れる。
刺される前から城田は心配性なところはあったが、今の城田は過保護という言葉がピッタリだ。
毎日餌付けされ、口の周りに食べ物が付けばティッシュで拭かれる。
最初は吹かれることも抵抗したがゴメン嫌だった?と仔犬の顔をされ、「別に嫌な訳では無い」と言ったが最後、じゃあこれからも拭いてあげると有無を言わさぬ笑顔で微笑まれた。
慣れとは恐ろしいもので最早恥ずかしさも無くなってきた。
いや、慣れてはダメだ。
あくまで退院するまでのことなのだから。
、、、退院したらしないよな?
スプーンを差し出し満面の笑顔の城田が目に入る。
、、、今度ちゃんと話す必要がありそうだ。
「じゃあ黒川、また明日来るから、ちゃんと安静にな。」
「分かってるって、またな」
名残惜しそうに振り返りながら病室を後にする城田、これも毎日のことだ。
「君達は本当に仲が良いね。まるで夫婦のようだ。」
話しかけてきたのは同じ病室の田川さんというおじいさんだ。
2日前からいつの間にか隣のベッドに入院していた。
顔や声から優しさが滲み出ている、正に好々爺と言った感じのおじいさんだ。
見た目は数年前に亡くなった俺のじいちゃんと同じくらいだから80歳近いくらいだろう。
一日のほとんど寝ているらしいがたまに起きた時にこうして話しかけてくれる。
いつの間にか起きて一連の流れを見られていたらしい。
「夫婦だなんて、俺達男同士ですよ。」
「おや、黒川くんは男同士の恋愛に偏見があるのかね?」
「いや偏見なんて、男同士だろうが、女同士だろうが人を好きになるって素敵なことだと思います。
ただ俺達はそういう関係じゃ無いってだけです。」
誤解はしっかり解いておかねば。
「フフ、黒川くんは本当に良い子だね。」
「いえ、今ではそういう考え方の人も多いと思いますよ。」
そう、うちの大学なんてむしろ俺と城田を脳内でくっ付けて喜んでいる女子がかなり居そうだし。
「そうか、いい時代だね。、、、、私はね親友の男の子のことが好きだったんだ。」
まさかのカミングアウトに少し驚いたものの真剣に話す田川さんの言葉に黙って耳を傾ける。
「でも、私の時代は男が好きだと周りに知られたら気持ち悪がられ、除け者にされることが目に見えていた。
だから決して気持ちを表に出さず押し殺していた。
やがて彼は普通に結婚し数年前に奥さんと子供に看取られて一足先に逝ってしまった。
生涯で好きになったのは彼だけで、男の人が好きだったのか、彼だから好きになったのかは分からない。」
性別を関係なく好きな人に好きと言えるたったそれだけのことがどんなに幸せなんだろう。
気付くと、俺の頬に涙が伝っていた。
「黒川くんは本当に優しいね、こんな老いぼれの為に泣いてくれるなんて。
、、、こうして死ぬ間際になって想いを伝えなかったことをずっと後悔してしまう。
黒川くん、君達はせっかく好きなものを好きと言える時代に生まれたんだ、後悔のないように生きなさい。」
「はい、ありがとうございます。」
その後田川さんは「こちらこそありがとう」と穏やかな笑顔を見せた後、少し疲れたと言って眠ってしまった。
次の日、隣のベッドに足を骨折して入院した年配の男性が運ばれてきた。
田川さんはどうしたのだろう?、、まさか
俺はすぐさま熱を測りに来た看護士さんに確認した。
「あの、隣のベッドに居た田川さんは?」
「田川さん?そんな人は、、、
ああ、一年前にこの部屋に入院してたおじいちゃん。
そういえばちょうど一年前の昨日亡くなられたのよね。黒川くん、田川さんとお知り合いだったの?」
、、、ということは俺が数日間話していたのは、、、つまりそういうことだろう。
でも何故か怖くはなかった。
むしろ、、
「はい、とっても優しいおじいさんでした。」
むしろ、田川さんと話せたことはきっと俺の人生に必要なことだったのだろう。
城田が差し出したスプーンをもはや抵抗することなく受け入れる。
刺される前から城田は心配性なところはあったが、今の城田は過保護という言葉がピッタリだ。
毎日餌付けされ、口の周りに食べ物が付けばティッシュで拭かれる。
最初は吹かれることも抵抗したがゴメン嫌だった?と仔犬の顔をされ、「別に嫌な訳では無い」と言ったが最後、じゃあこれからも拭いてあげると有無を言わさぬ笑顔で微笑まれた。
慣れとは恐ろしいもので最早恥ずかしさも無くなってきた。
いや、慣れてはダメだ。
あくまで退院するまでのことなのだから。
、、、退院したらしないよな?
スプーンを差し出し満面の笑顔の城田が目に入る。
、、、今度ちゃんと話す必要がありそうだ。
「じゃあ黒川、また明日来るから、ちゃんと安静にな。」
「分かってるって、またな」
名残惜しそうに振り返りながら病室を後にする城田、これも毎日のことだ。
「君達は本当に仲が良いね。まるで夫婦のようだ。」
話しかけてきたのは同じ病室の田川さんというおじいさんだ。
2日前からいつの間にか隣のベッドに入院していた。
顔や声から優しさが滲み出ている、正に好々爺と言った感じのおじいさんだ。
見た目は数年前に亡くなった俺のじいちゃんと同じくらいだから80歳近いくらいだろう。
一日のほとんど寝ているらしいがたまに起きた時にこうして話しかけてくれる。
いつの間にか起きて一連の流れを見られていたらしい。
「夫婦だなんて、俺達男同士ですよ。」
「おや、黒川くんは男同士の恋愛に偏見があるのかね?」
「いや偏見なんて、男同士だろうが、女同士だろうが人を好きになるって素敵なことだと思います。
ただ俺達はそういう関係じゃ無いってだけです。」
誤解はしっかり解いておかねば。
「フフ、黒川くんは本当に良い子だね。」
「いえ、今ではそういう考え方の人も多いと思いますよ。」
そう、うちの大学なんてむしろ俺と城田を脳内でくっ付けて喜んでいる女子がかなり居そうだし。
「そうか、いい時代だね。、、、、私はね親友の男の子のことが好きだったんだ。」
まさかのカミングアウトに少し驚いたものの真剣に話す田川さんの言葉に黙って耳を傾ける。
「でも、私の時代は男が好きだと周りに知られたら気持ち悪がられ、除け者にされることが目に見えていた。
だから決して気持ちを表に出さず押し殺していた。
やがて彼は普通に結婚し数年前に奥さんと子供に看取られて一足先に逝ってしまった。
生涯で好きになったのは彼だけで、男の人が好きだったのか、彼だから好きになったのかは分からない。」
性別を関係なく好きな人に好きと言えるたったそれだけのことがどんなに幸せなんだろう。
気付くと、俺の頬に涙が伝っていた。
「黒川くんは本当に優しいね、こんな老いぼれの為に泣いてくれるなんて。
、、、こうして死ぬ間際になって想いを伝えなかったことをずっと後悔してしまう。
黒川くん、君達はせっかく好きなものを好きと言える時代に生まれたんだ、後悔のないように生きなさい。」
「はい、ありがとうございます。」
その後田川さんは「こちらこそありがとう」と穏やかな笑顔を見せた後、少し疲れたと言って眠ってしまった。
次の日、隣のベッドに足を骨折して入院した年配の男性が運ばれてきた。
田川さんはどうしたのだろう?、、まさか
俺はすぐさま熱を測りに来た看護士さんに確認した。
「あの、隣のベッドに居た田川さんは?」
「田川さん?そんな人は、、、
ああ、一年前にこの部屋に入院してたおじいちゃん。
そういえばちょうど一年前の昨日亡くなられたのよね。黒川くん、田川さんとお知り合いだったの?」
、、、ということは俺が数日間話していたのは、、、つまりそういうことだろう。
でも何故か怖くはなかった。
むしろ、、
「はい、とっても優しいおじいさんでした。」
むしろ、田川さんと話せたことはきっと俺の人生に必要なことだったのだろう。
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