魔法

はんまる

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第一話

魔界

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私の名前は女神 女衣歌。16歳。親はいない。というか親についての記憶がない。ホテル住まい。そして外国人のような、金色の髪に赤色の目。この三拍子のせいで、私は気味悪がられ、友達がいない。
私は履歴書のいらないバイトだが、ブラックではないバイトからホテルへの帰り道。まぁ、ホテルといってもなんかボロい小屋みたいなところなんだけどね。でも冷暖房もあるし、雨風凌げるからいいんだけどね。しかも1泊3000円だし。
古びて忘れられた商店街が左手にあった。私は目の前を見た。ここから500メートルぐらい歩いて、左に曲がって、少し歩いてまた左に曲がるというルートだから、商店街を通った方がすぐに着く気がする。カキンとはずれかけたタイルを踏みながら、ゆっくりと商店街の中を入っていった。商店街の中は薄暗く、看板が外れかけた店や、テーブルや椅子が倒れている店。ふと横を見た。細い路地裏がある。へぇ、こんな道があるんだ。あ、こっちから行ったほうが速いかも。とか考えながらゆっくりと埃のまみれの路地裏に足を踏み入れた。すると瞼が重くなって、、、。


「先生、召喚完了です!って、こいつ日本人じゃなくないですか、、、。」
男の子の声がした。ゆっくりと目をあけた。私と同じ金髪の少年が私を覗き込んでいた。片目が隠れている。って、、、。
「ここどこ!あなた誰!いった、、、。」
横になっていたらしく、ガバッと起き上がった。すると、頭に激痛が走った。思わずぎゅっと目を瞑り、額を抑えた。ゆっくりと周りを見回した。どうやら教室のようだ。ただ、見慣れたものとは違って、机や椅子は本物の焦茶色の木。しかも机や椅子の足は猫足。窓も半円で、金色の縁取りがされている。ここはまるで、、、。
「大丈夫?あぁ、やっぱり、魔力が強いのね。すぐに薬を飲ませるわ。」
今度は女の人の声がした。重い瞼をゆっくり上げた。
茶色い髪をポニーテールにして、白いワイシャツを着たTHE先生って人が、私の両腕を支えていた。私をなんとか立ち上がらせて、ゆっくりと階段を降りていった。そして一つの、、、。扉のような、壁のような場所に辿り着いた。なぜ私がこう表現したかというと、一見扉のようなのだ。ドアノブがついていないことをのぞいて。すると先生らしき人は、その扉のような壁のようなところについている10センチくらいの埋め込まれた赤い宝石に手を置いた。その色はまるで私の目みたいな色。とか考えていたら、先生は、
「                     」
口パクのようなことをした。不思議に思った私は、何をしたのか聞こうとした。すると、ギィィィっと音を立てて扉?が開いた。びっくりしてポカンとしていると、先生?はスタスタ中に入っていった。
「さ、こっちよ。」
手招きしながら中に入っていった。それについていくと、納戸のようなものが広がっていた。
「そこ座ってて。」
先生は近くの椅子を指して言った。言われた通りにストンと座り、先生を見た。棚から何か赤いジュースのような液体が入ったコルクのしまったビンを取っていた。その液体はやはり私の目の色と似ていて、、、。
そして先生はむぎゅっと私に瓶を渡した。
「これ飲んで。」
、、、先生は、知らない人からここがどこかもわからないのに渡された飲み物を素直に飲むと思ったのかしら。でも、逆らったらどうなるかわからないので、とりあえずちょっとだけ飲んで誤魔化そ、、、。
ちょびっと液体を飲み込んだ。ん、意外と飲みやすい。
「あっ。」
私は驚いて声を上げた。全部飲み干してしまったからだ。やっば、、、。
「飲んでくれたのね!じゃ、説明するわね。あなたは、人間界から魔界に召喚されたの。ここは魔法学校で、私はこの学校の教師。あなたと雷神くんの担任よ。特待生の雷神くん、、、。あ、さっきの金髪の片目が隠れた男の子ね。とにかく、魔法学校の特待生は人間とパートナーになる決まりがあるの。パートナーっていうのは、まぁペアみたいな相棒のようなものね。そのためにあなたは魔界に召喚されたってわけ。だから、あなたは魔界の住人として、魔法使いとして生活してもらうわ。あと、さっき飲んだ液体は、人間は魔界の魔力は刺激が強いから、慣れさせるため、あと、魔界の言葉や文が分かるようになってもらえるように飲んでもらってたの。さっきまで私たち、人間界の日本語で喋ってたのよ。」
わかったような、わからないような。でも、特に思い残したこともないし。友達もいないし。ま、いっか。
するとギィィっとさっきのように音を立てて納戸を出て、たくさん階段を登って疲れた。魔界なんだから魔法で上がればいいのに。魔界の人は何考えてるかわかんないわ。多分ここ5階。こんなに高いんだから、エレベーターつければいいのに。あ、でも小学校の時校舎は4回建てだったな。
上り切ると、雷神が居た。
「俺たちの寮を案内するからついてきて。」
「まって。俺たち?」
私がダラダラと汗を流しながら聞くと、
「ああ、パートナーはおんなじ寮で過ごすことになってるんだ。大丈夫、プライベート空間はあるから。」
そういう問題じゃないわい!って心の中でツッコミを入れた。でもスタスタ雷神は歩き出してしまい、慌てて追いかけた。
ぴたりと扉の前で止まった。さっきの納戸の扉と一緒だ。先生がやったのと同じように、雷神は宝石に手を置いて、
「ソーサリープロミス・オープン!」
今度はちゃんと聞こえた。あ、変な薬飲んだから、魔界の言葉がわかったんだ。
扉が空いて先を見ると、わぁっと声を上げた。綺麗な少し高級なホテルのようだったからだ。
人間界でスマホで見て憧れてた。こんな綺麗なホテルに泊まってみたいなぁって。普通に賃貸に住めばいいんだけど、色々手続きで親がいないこととか色々と問題になりそうだから、ホテル住まいだったのだ。右にトイレ、左に風呂場につながる扉が。小さな廊下の先にある扉を開けると、広いリビングダイニングキッチンが広がっていた。右側に白で統一されたキッチン。そのすぐ横にダイニングキッチン。左にソファとテレビなどがあって、私は目をキラキラ輝かせた。キッチンの横にまた小さな廊下が。そこを入っていくと、
「女神の部屋はこっち。」
と言いながら左のドアを指差した。これは流石に変な宝石はなく、普通に取ってのついたものだった。ガチャっとドアを開けると、真っ直ぐに勉強机、隣に魔法っぽい本がずらっと並んだ本棚。その隣にはベッドが置いてあった。そのベッドにストンと座り、近くの窓を見た。本当に、魔界に来たんだな。
夕日を見ながら思った。この世界なら、
「友達もできるかな。」
ポツリとつぶやいた。
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