悪役令嬢でもなんでもいい

はんまる

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悪役令嬢でもなんでもいい

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私の名前は桃。21歳。
この王国の王子の婚約者だ。
王子は優しくて、人望もあって、しっかりしている。要するに、完璧ってことだ。
だから使用人たちは王子にメロメロ。だから私も嫉妬くらいする。、、、最初のうちは。
王宮に来て1週間経った時。王子がモテモテで、「私の婚約者なのに、、、。」とムッとしていた。
だが、1ヶ月経った頃、そんなのことをいちいち言っていたら大変。
第一、好きで婚約しているわけではない。でも、やっぱり王子はかっこいい。
毎日自分の部屋でぐるぐると頭を回しながら過ごす。辛い。なんでこんなところにいるのだっけ。
色々な感情を抱えて生きていたある日のことだった。
パリーン
廊下に甲高い音が響き渡った。
音がした方を見ると、1人の使用人がお皿を落として大慌てしていた。
真っ白の緩くウェーブしたロングヘア。肌もそれに負けないくらい真っ白で、めちゃくちゃ美少女。
こんなところで使用人やってないで、女優とかやったらいいのにな。
とか考えていて、助けるのを忘れていた。
慌てて駆け寄ろうとすると、バッと風が吹いた。そこには王子の姿があった。ふわりと白い服を揺らして、ストンと使用人のそばにしゃがみ込んだ。
「大丈夫か?片付けは俺がやっておく。指を怪我していたら医務室に行くといい。」
優しく声をかけた。おぉ、さすがイケメン。
「と、とんでもありません!王子様に片付けさせるだなんて!!、、、いった、、、。」
可愛らしい鈴が鳴るような声で言った。
だが、指が痛むようで、思わず声を上げた使用人に、1人の使用人が駆け寄った。
茶色のボブヘアで、つり目。
確かこの子の名前は兎亜。白い髪の子の親友で、その子大好きって有名だな。でも、白い髪の子の名前がわからない。
「私が片付けておきます。多分この子、医務室の場所わからないので教えてあげてください。」
「えぇ、でも、、、。」
ドキマギとした様子であわあわとしながら王子についていった。
お皿を片付けていた兎亜さんがウインクをした。
ははーん、なるほどな。この子、王子のことが好きなんだ。
でも、他の使用人と一緒で、王子と婚約できないんだろうなぁ。いい子そうなのに、かわいそう、、、。
その後、使用人をみかけた。あ、兎亜さんだ。
あの白い使用人の子の部屋の前にいる。
するとしゃがみ、スッとその子の部屋のドアの下に手紙を差し込んだ。
「、、、全部、沙桜のためだから。」
ボソッとつり目の使用人がつぶやいた。
?どういうこと?確かめようとしたが、兎亜さんが近づいて来たから、さっと隠れた。

そう考えていたある日のこと。たまたまお皿を割った子を見つけた。
「あ、おーい!」
私が声をかけると、
「はっ!桃様!お皿の件は大変申し訳ありませんでした!よりによって桃様のお気に入りのお皿だったなんて、、、。申し訳ありません、、、。」
ペコペコと誤っている女の子に、
「いいんだよ、別に。それより、怪我はなかった?あと、お名前は?」
正直お気に入りのお皿だったからショックだったけど。
「あ、ありがとうございます!使用人の沙桜です!怪我は大丈夫です。早めに止血できましたし。その、、、。王子様のおかげで、、、。」
カァッと顔を赤ていう沙桜さんをみて、可愛いと思うと同時に、ズキンと胸が痛んだ。
やっぱり、本当に王子のことが好きな人が、婚約者になった方がいいと思う。
この子の方が、素直で、可愛くて、本当に王子のことが好きで、、、。
私みたいな、「令嬢」っていう名前だけの私よりもきっとこの子の方がいい。
それからというもの、どんどんどんどん時は流れていった。
そしてどんどんどんどん私よりもあの子の方がいいと思い始めた。
そして、、、。
どんどん、王子と沙桜さんとの距離が近づいていった。
そして、使用人が声をかけてきた。兎亜さんだ。
「桃様。王子様たちから、お話があるそうです。」
ニコッと下手くそな愛想笑いをした。汗が額を流れた。ドクンドクンと心臓の音が激しい。
大広間に行くと、王子様がいた。そして隣には、沙桜さんがいた。
私は息が苦しくなった。汗がダラダラと流れてきた。
ドクンドクンドクンドクン
兎亜さんは、自信満々の様子笑い、ステージの上に上がっていった。
「私、沙桜に『王子様に近づくな』とか『使用人のくせに生意気だ』などと書かれた手紙を渡している様子をみました。さらには、使用人をやめさせる手続きをしている桃様をみました。」
悪い予感が的中した。
もちろん、私はそんなことをしていない。
「、、、本当か?桃。」
「本当なんですか?桃様。」
王子と沙桜さんが聞いてきた。つり目の女の子と、沙桜さんはグルなのだろうか。
いや、だとしたらきっと私が沙桜さんを突き飛ばしたとか言うだろう。そういうことを言わないと言うことは、つり目の女の子単独の行動なのだろう。
「国王に許可なく使用人をやめさせる、、、。本当なら、国外追放だぞ。」
重々しく険しい表情で言った王子をみて、苦しくなった。別に、本当に王子が好きなわけではない。でも、王子は優しかった。友達としてなら、きっと楽しく過ごせるような仲だった。
大切な人に裏切られること。辛い。辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い。
前に思った。
どうして私はここにいるのだろうと。
もう、疲れた。ここで弁解してもきっと何を言われるかわからないし、私は王子と結婚したいわけではない。
ただの許嫁だ。もうなんだっていい。
流行りの悪役令嬢でもなんでもいい。どうだっていい。なんだっていい。ただ、ただ、
「わかり、ました。」
復讐も何も思わない。ただ、
「私は確かに、やりました。」
ただ、自由になりたい。

荷物を持ち、城を出た。役人は私をせかした。
だがそれに構わずに、私は城を睨んだ。
王子も悪くない。
その相手も悪くない。
他の人も悪くない。
ただ1人、あの使用人が悪い。
でも、私は自由。だから、、、。
くるりと体を回転させ、国の門をゆっくり、ゆっくりと一歩ずつ歩んでいった。
もう、誰にも縛られない。
強く、生きる。
強く、生きたい。
強く、生きれたらいいな。
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