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私はこれから
しおりを挟む屋上の扉が開いた。
「こら、何やってる!」
気がつけば空は真っ暗になっていた。周りの静けさから判断するに部活動の生徒ですら帰っている時間だろう。
それなのになぜか担任がいた。
私になんて興味なさそうにしている強面のスキンヘッド、グラサンまでかけていて組長なんてあだ名がついている。
その組長がなんで?
「お前、こんなところでこんな時間に、どれだけ心配したと思ってるんだ!」
「心配?」
「そうだ心配だ。俺だけじゃなく叔父さんや叔母さんもとても心配していたぞ。パニックになり警察にもかけ込んでいたくらいだ。俺も気になって校舎を見回っていたがまさかこんなところにいるとは」
叔父さんと叔母さんが心配。
嘘みたいだ。腫れ物を触るように距離があったのに。
「とにかく職員室に行くぞ」
そう言って組長は強引に手を掴むと私を連れて行った。
心なしか震えているようだったが、気のせいだろう。
「お前、自殺しようとしてたのか」
「……はい。でももうする気はありません」
私の言葉に安心したようだ。
「それにしても先生、私に興味なんてないと思ってましたけど。どうして探してくれたんですか?」
「あぁ?なんで大事な生徒に興味ないんだ。それよりも俺の方がお前に嫌われてると思ってたよ。というよりな、先生のこと怖いと思ってた。まあ今話してる感じ、そうでもなかったみたいだけどな」
先生がそんなふうに思っていたなんて。
意外な真実は少しおかしくて。しばらく待っていると到着した叔父さんや叔母さんも同じように、おかしな本音が聞けた。
「私、叔父さんや叔母さんに嫌われていると思っていたの」
「すまなかった、ワタシたちも君の父や母が大好きで、もちろん君も大好きだった。だから塞ぎ込む君になんて声をかけたらいいか、関わったらいいかわからなくなってしまったんだ」
叔父さんは言った。
「そうよ、でもそれがいけなかったのね。ワタシも主人もあなたのことが大好きなのよ。本当にごめんなさい」
叔母さんもいった。
そう、だったんだ。
「こちらこそごめんなさい。私、ひとりぼっちだと思ってた。ずっと誰も、パパとママと妹以外誰も私のことなんて好きじゃないと思ってた。ごめんなさい」
そう言って謝る私の肩にそっと置かれた手や、包み込む腕はとても暖かった。
後日、学校でも、私は友だちとも向き合う。
人生なんて捉え方で変わるものだ。
ダメだと思うこともきっかけさえあれば意外と違うものだ?
なにより、ひとりぼっちではないんだ。
両親や妹の元に行こうと決意した4月13日
今日がもう終わろうとし、明日が来る。
あぁ、生きるのが楽しみになった。
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