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第一部 無駄な魔力と使い捨て魔法使い
「目が覚めると知らない女の子とがいこつの山にいました」
しおりを挟む「ここは……?」
目を覚ましたロットは困惑していた。
あたりを見回すと人らしきものの骨が積み重なり、その上に自分自身が眠っていたのだから仕方ない。
しかしこのタイミングで目を覚ましたのは幸運だったことをロットは知らない。
さきほど落ちた身投げの穴は自身が想像していた以上の深さだったこと、そしてロットの隣で魔力切れを起こして眠っているケイトのこともまだ気がついていない。
更にはその部屋の端々から、落ちてきた死体を喰おうとするこのダンジョンの虫たちが顔をのぞかせていたこともだ。
それもロットが起き上がったことにより驚き警戒して穴へ戻っていったから運が良かった。
そしてケイトが気絶して五分と経たない時間だった。
ただ、ロットは眠ったままのケイトから聞き出すことができず、状況がわからず困惑することとはなった。
とはいえ虫に生きたまま身体を蝕まれるという事態は運良く避けているからやはり幸運といえよう。
そんなロットはあたりをひとしきり見回してようやく今座っているのは人の骨の上であることに気がつく。
「じ、人骨?」
手に持っていた誰かの頭蓋骨を驚きで放り投げる。哀れにも落ちた衝撃で割れた。
そうして身じろぎ慌てて立ち上がると足元で眠っているケイトにもようやく気がついた。
ケイトはロットが立ち上がる拍子に人骨の山を少し転げたがまだ目を覚まさなかった。
それもまたケイトにとって幸運といえよう。もしケイトが人骨の上で自分が眠っていたことを知ったら恐怖から取り乱していたから。
それを知らずかロットは人骨の山で唯一生きている女性ケイトを担いで足場の悪いところをどうにか下った。
人骨の山は少し離れるとすぐに終わりを迎えてダンジョンらしい不可思議な模様の床が現れる。その床を今度は警戒して歩く。
流石に罠という存在に警戒心を持った瞬間だった。
「この部屋はいったいなんなんだ?俺は確か、穴から落ちて……」
落ちてからの記憶がないものの、かすかなところを辿っていくと、落ちる瞬間の他人の声が思い出された。
その時は勇者が助けに来てくれたと思っていたロットだったが、どうやらそれは違い、目の前で眠る女性のことらしいことはわかった。
(ありがとうございます……)
寝息を立てては眠る彼女がどうやって助けてくれたのか、聞きたいところではあったが、この寝顔をどうしても邪魔する気になれず、なにかに襲われても対処できるように待ち構えた。
しかし残念なことにロットは男らしく守ろうという気概だけはあったものの、未知の場所で見知らぬ人といること、そして穴をかなり落ちてしまったことなど先行きのない不安から傍から見ると怯えた様子になってしまっている。
本人は気張って殺気を込めていたつもりだがダンジョンの虫にとっては全くの無意味だ。
先程ロットとケイトの血肉を狙って顔を出しかけていた虫にも脅威に見えなかったようで、やがて一匹の虫が地面を気味悪く擦りながら姿を表してきた。
その様子にロットの心臓は跳ね上がり、手にもつ剣に力がこもる。
大人の顔程はある蜘蛛だ。しかしそれは糸を持たず鋭い牙とどこにでも引っかかり歩ける八本の足を持っている獰猛な生き物だった。
ロットは蜘蛛自体は見たことがあったが、それはやはり普段見慣れているサイズとは違い数十倍は巨大な姿をしている。
いくら自分より小さくても気色が悪いものである。しかもそれが跳躍し自分の顔より高くから落ちてくるのだから恐怖でしかなかった。鋭い牙が妖しく光っている。
「う、ぅぁあい!!」
悲鳴か気合かよくわからない奇声を発したロットは剣を抜きその蜘蛛に向かって振り切った。
剣の一太刀とともに蜘蛛の身体は二つに分かれる。バランスを失った身体は両側でうねうねと動き続けるが、やがて目的を忘れて停止した。
断末魔がまた気味悪く、ロットは顔を青ざめることになったのだが、他の蜘蛛へと集合のような効果ももたらしたようでさらに悪化させることとなる。
この蜘蛛は仲間意識も強いため先遣がやられたことを知ると、どこに隠れていたのかぞろぞろと十数体が現れ、あっという間にロットとケイトを囲むこととなった。
「ひ、ひひはぁ」
もはや笑っているかのような悲鳴を漏らすと引きつった笑顔のままでロットは剣を振るっていく。
幸いなことにロットが学んできた剣術でも十分に戦える程度の相手であったことと、恐怖が高まりすぎて無我夢中で剣を振っていたことにより、おかげで変な緊張せずに戦えていた。
さらにこの蜘蛛の名を百蜘蛛(ひゃくぐも)といい、通常百体以上の群れを持つのになぜか十数体という少ない群れであったことが功を奏した。
とにかく一生懸命剣を振り続けたロットは動く蜘蛛が見えなくなったのを確認して肩で息をついた。
そしてこれだけ戦闘で騒いで(ロットが叫んでいただけだが)いたのに目を覚まさない女性に呆れていると蜘蛛が出てきたその付近に箱がおいてあったことに気がつく。
それも黒くかなり大きかった。
ロットが入り込めるくらいには大きく、この中身に宝が入っているならかなりの量だなと少し現金なことも考えつつ、開けに行くべきか考える。
蜘蛛との戦闘を乗りこえ、体液もしっかりと浴びたロットは半ばやけくそで開けることを決意する。そして向かおうとしたその時、ようやく女性が身体を起こして目を覚ました。
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