【2部まで完結!】使い捨てっ子世にはばかる!?~妹が最強の魔王になるかもしれない~

うろたんけ

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第一部 無駄な魔力と使い捨て魔法使い

「そんな都合よく文字が読めるキャラが登場するわけないでしょ」

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「ケイトは風魔法が得意なの?」

いつの間にか呼び捨てになっている。
それは無意識でケイトを甘く見た結果であるが、ケイト自身も先ほどの醜態を見せておいて訂正させる気は起きなかった。

「えぇ、風なら超級まで扱えるわ。……一発で魔力切れを起こしちゃうけど。そういうロットは水魔法ね?」

せめてもの抵抗として自身も呼び捨てで言い返した。

「うん。ずっと練習してきたんだ。それでも上級までしか魔力が持たない。だから同じ少ない魔力だけど超級をつかえるケイトはすごいよ」

今度はお互いに褒め合う二人。

しばらくの褒め合戦が続き、会話が途切れると二人は立ち上がりこの状況を打破する可能性がある黒い宝箱へ向かっていった。

その間にもダンジョンはロットよりも慣れているケイトがあたまをフル回転させていた。

身投げの穴から落ちた先で、運良く生き残ることができたが、その穴を再び登るのは不可能なほど深い。

少なくとも人間では穴を登り切るのは無理だろうと思えるほどの高さがあった。

穴の底から再び空を見るためにはどうするか。ケイトの経験上、方法は二つだ。

ここがダンジョンなら上層へつながる道が必ずあるはず。

だから、この人骨が山になった不気味な場所から遠ざかり上を目指すか、それともダンジョンに必ずいるボスのような生き物を倒して転移扉を見つけるか。


後者はダンジョン破壊と呼ばれ、冒険組合にて報告するとダンジョンを破壊した功績を認められ実力者として認定される。

通常のダンジョンなら、確実に前者、上層へつながる道を探し歩くケイトだった。

しかし、このダンジョンはあれだけの距離を落ちたのだからよじ登ったりダンジョンを抜けて脱出するのは得策ではないような気がしていた。

それならまだボスを倒してダンジョン破壊を目指す方が現実的に思われた。

どうみても初心者のロットが倒せる魔物が出てきたのだ。それだけボスのレベルも低いはず。

もしかしたら例外はあるかもしれないが、二人の体力や気力を考えてもボス攻略が良さそうに思えた。

他にも理由があり、この部屋の穴を除いた出入りできそうな場所のうち一つがボスの部屋に繋がっていそうな重々しい大きな扉だからだ。

赤黒く、無機質なそれがそびえ立っている。

ケイトは一度、ここよりも少し難易度が高いとされるダンジョンのボスを倒したことがある。

もちろん一人ではなく、四人のパーティで挑んだ。その時の経験を照らし合わせると、剣術と一発とはいえ上級魔法を扱えるロット、そして少しは回復し、魔法がつかえる自分がいることで随分と勝機が上がることを実感していた。

欲を言えば、自身の魔力も完全まで回復を待ちたいところだが、一日近く待機するのは先程も蜘蛛の魔物が襲ってきたことを考えると避けたほうがいいように思えた。

(それにしてもおかしいな。ボス部屋の前は安置(魔物が入ってこない場所)と教えられてきたのに。まぁ、何事にも例外はあるということなのかな。)

自分を強引に納得させて、普段ならもっと深く考えるはずのケイトも、それ以上の思考はしなかった。

なぜなら、考えても状況が変わるわけではないから。だから、魔力が回復する薬が入っていたらいいなという少しの望みをかけて宝箱を開封していた。


……のだが。


「ふんぬぬぬぬ!」

年上ぶり、「下がってて。こういう宝箱は罠のこともあるから」と、意気込んだケイトだったが全く開かなかった。

鍵がかかっている様子はなく、それどころか鍵をつける穴すらなかった。それなのに重たいというよりびくともしなかった。

ただ箱に蓋が覆いかぶさっているだけの状況で、なぜ開かないのかケイトには全くわからなかった。

「なんで開かないのよ!」

蹴れば開くかと蹴ってみたりもしたが、脚を痛めただけだ。年下の少年が見ていることを思い出し、無様に痛がり足を抱えることは我慢した。

ロットは、ケイトが背中を向けて肩がぷるぷる震えていたが見て見ぬふりをしてやった。優しさというやつだ。

「俺もやってみるよ」

こう見えて力はあるからね、と張り切るロットに、無駄よ無駄、体力を使うだけよ。そう言って止めるケイト。その言葉も無視しロットは宝箱に手をかける。

そして持ち上げると、先程のケイトの形相が嘘のように簡単に開いた。特に苦戦するほどの重さではない。

おそらくケイトがとんでもなくひ弱なんだろう、そう結論付けた。

「あいた!」

「うそでしょ!?」

慌てて振り返るケイト。本当に開いている宝箱に信じられない思いで近づいていく。

「あんなに重いのにどうして?」

「結構軽かったよ?きっとケイトの力が弱すぎただけだよ」

また余計な一言というやつだ。すかさずケイトに頭を掴まれ

「そのひ弱な力であなたの頭を潰しましょうか?」

と笑顔で言うものだからロットはすぐさま謝った。解放されたロットが今度はフルフルと震える羽目になったが、ケイトに怯えつつも気になる中身を覗き込む。

「って何もないじゃない?」

先に見たケイトが言う。確かに、とさらに奥まで顔を突っ込むようにロットが覗き込むと、箱の中にキラリと光る何かを見つけた。

「これは?」

拾い上げるとそれは指輪だった。指輪は二つあり、一つは透き通るような赤い宝石がついていた。もう一つは濃い蒼をしており、吸い込まれそうな渦を巻いていた。

二つの指輪はロットに持ち上げられると待ち構えていたように淡く光りだす。そしてその光は宝箱の蓋へと繋がった。みるみる浮かび上がってくる言葉に驚いた二人はそのまま成り行きを見守った。

どういう細工なのかじわじわと浮かび上がる文字は、最後の一文字を表し終わると光もまた役目を終えたのか輝きを止めた。

「読めない……」

幻想的に表された文字の羅列は、残念ながらロットの知る文字ではなかった。

おそらくこの指輪の使い方だったり、これを作った人の思いだったりが載せられているのだろうが、読み取ることはかなわない。

もしかしたらかなり昔の人が何かを託したのかもしれない、そう思うと少し悲しくなったロットだった。そんな彼の隣で

「これって、古代文字……だわ」

そう呟くケイト。

「読めるの?ケイトすごいよ!」

惜しみない拍手を送りたい気持ちになり、ロットはケイトが話し出すのを待つ。すなわち訳せという無言のお願いだ。

「わ、わかったわ。コホン、……この、た、から、たからばこ!は、……二人?ね。……赤、背負う?、青、が、託す?…………」

次第にトーンダウンしていくケイトの声は、文字の二段目辺りで完全に静止した。

「……………」
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