【2部まで完結!】使い捨てっ子世にはばかる!?~妹が最強の魔王になるかもしれない~

うろたんけ

文字の大きさ
13 / 117
第一部 無駄な魔力と使い捨て魔法使い

「この指輪売ったらいくらかしら」

しおりを挟む
特に読めないことに関して文句を言うつもりはなかったが、残念であることには変わりなく、同じように無言でいるロット。

それがケイトには辛い時間で

「こ、古代文字よ!?少しは習ったことがあるけど別に専門じゃないし、ここまで読めただけでも!」

ロットに顔を近づけてそう訴えた。

古代文字とは、今では使われていない文字で、魔王と勇者の軍勢が世界を二分して戦っていた時代のもの。

今でもダンジョンや勇者の称号を得られる五つの塔にはその文字が眠っているため、学者や著名なパーティには一人は読める人がいるものだ。

とはいえケイトは個人的に勉強していた稀な存在であり、読めなくても責められることはない。

しかし、状況が状況なため読めないことに責任を感じていた。そして彼女の飛び出した言い訳は、そんな事情を知らないロットには意味を成さなかった。

「あぁ、うん。ありがとう、ケイト」

必死の弁明も、ロットの冷静な感謝の前でもろく崩れ去る。ケイトは何も言えなくなり、ロットは悪気なく思考する。

ケイトにとって気まずい沈黙の時間が過ぎた。

涙が出そうなほど長く感じられた時間の後、実際は数十秒ほどだったが。

「とりあえず、この指輪、はめてみない?やっぱり危険かなぁ?」

沈黙を破ったのは、思考から戻ってきたロットだった。その姿にケイトはようやく自身を責める沈黙ではなく、単に思考していただけと気づいた。

「ちょっと危険ではあるけれど、ここがボスの部屋に通じる最後の部屋と仮定するなら、この宝箱は安全よ」

「どうして?」

ロットの疑問にケイトは答える。

「基本的にダンジョンのボスの部屋の前は、安全な最後の場所なのよ。ここで呪いの武器などがあった類の話は聞いたことがないわ」

その発言にロットも安心する。最悪の事態が引き起こされる可能性は低そうだと。

「でも、もしかしたら呪いの武器に出会った人たちは、みんな死んでしまったかもしれない」

安心しても懸念は消えないが、二人はこの指輪が現状を突破するキーアイテムになり得ると期待していた。ボスの前に置かれているのだから、何かしらの弱点や有利な効果があるかもしれない。

「……まあ、これ以上悪くなることはないわ」

そう言ってケイトはロットの手から赤を取る。
赤の背負う、の意味を悪く捉えたとき、悪い何かは自分が引き受けよう、そんな覚悟をこっそりと決めて。

「じゃあ、いくわよ。」

「「せーの」」

息を合わせて指輪をはめる。何度かサイズが合わずはめ直したが、ケイトは右の人差し指に、ロットは左の人差し指に落ち着いた。

「……何も起きない」

「そうね。特に変化はないわね」

覚悟してはめた指輪は全く意味を成さず、光ることも体に変化が起きることもなかった。しばらく待っても体調に変わりがなく、見た目も変わらなかった。

「ケイトの指輪、似合ってるね」

ロットのよくわからない気遣いを見せた以外、何も起きなかった。ロットは剣を振るい、ケイトは辺りを跳ねたり駆けたりしたが、何も変わらなかった。

魔力にも特に変化がなく、結局ただの指輪だったと結論づけた。呪われている心配もあったが、つけ外しも簡単にできた。

「仕方がないわ。次に進みましょう」

試行錯誤の後、ケイトの言葉でいよいよボスの扉へ挑むことになる。ケイトの魔力は上級一発程度、ロットはほぼ満タンで上級一発程度の魔力量。

それなりの剣術と経験、そして使い物にならない指輪を添えて、戦いの準備は整った。

二人は宝箱を後にし、ボスの部屋への扉に向かって歩き出した。扉は予想外にスムーズに開いた。

もしかしたら、二人の挑戦する意志を感じ取ったのかもしれない。重たい音を立てながら、扉がゆっくりと独りでに開き、中は真っ暗だった。

ロットは少し困惑していたが、経験者のケイトは前回のダンジョンのときと同じ流れに安心していた。

「中に入れば火が灯り、扉が閉まる。そしてボスを倒せば転移扉が現れるはずよ」

経験者らしくロットにアドバイスをするケイト。二人はついにその暗闇に踏み入れた。二人の身体が完全に暗闇に包まれたとき、不意に火が灯り始めた。

そして入ってきた扉は同じように音を立ててゆっくりと閉ざされた。ロットはもし一人だったらここでパニックになっていたに違いないと思った。やはり経験者がそばにいるのは、それだけでありがたかった。

「すごい……」

ロットが思わずそう洩らしたのは目の前の光景だ。円形にくり抜かれた部屋は広く、まるで絵巻で見たことのある街のコロシアムのようだった。

硬い地面と壁は石をなめらかに削り取ったように、つなぎ目もわからぬほどきれいに繋ぎ合わされていた。そして等間隔に灯る火は部屋全体を均等に明るく照らし、その空間の真ん中にボスが立っていた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

処理中です...