【2部まで完結!】使い捨てっ子世にはばかる!?~妹が最強の魔王になるかもしれない~

うろたんけ

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第一部 無駄な魔力と使い捨て魔法使い

「三つ目とか弱点丸わかりジャン」

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そのボスはひどく巨体で、大人の背丈を数倍したくらいはあった。

重さも比例しており、動き出すと重い足音が二人に伝わってきた。そして手には大木をそのまま棍棒にしたようなものがあり、ズリズリと引きずられている。

おそらくそれで叩かれたならば、身体がバラバラになるだろうことは二人には容易に予感できた。

何より恐ろしいと感じさせるのはその姿だ。二足歩行の割に頭部から身体までがまるで撫でるように繋がっており、首がわからない。

そして目は大きく1つ。左胸に1つ。右膝あたりにも1つあった。

得体の知れない化け物。
そう例えるのが易しい姿にロットは思わず息を呑んだ。

一方ケイトはそんな迫力に飲まれることなく分析を始めていた。

「ロット、来るわよ。初撃は必ず避けるのよ。まずは相手の出方をよく見て」

先手必勝とはよく言ったものだが、実際何をするのか、それこそ打撃のスピードや威力すらわからないこの状況に、後手に回るほかなかった。

ロットも素直に頷き、相手の動きに注意する。

おそらく棍棒が自分たちに届きそうな間合いで変化が現れた。三つ目の巨体が引きずられていた棍棒を両手で持ち上げ振り上げたのだ。

「来るわよ。かなりゆっくりだけど、振り下ろすスピードと衝撃は凄まじいはず。注意してね」

ケイトのアドバイスの後すぐに棍棒は振り下ろされた。

予想通り棍棒は振り上げたときには想像できないほどのスピードで二人の地点を目掛けて落ちてきた。

構えていた二人は咄嗟に左右に分かれて避けることができた。しかし予想外に、その威力は想定以上であり、地面を叩きつけたと思うやいなや、凄まじい音とともに衝撃が二人を襲った。

それは人間がふわりと浮くほどの衝撃で、ケイトもロットも投げ出されるように避けた先で更に転がることとなる。

「ケイト、大丈夫?!」

剣術を使うだけあってロットは吹き飛ばされたあともうまく受け身を取った。

そしてすぐさま顔を上げると、ケイトが投げ出され、地面に倒れているのが見えた。

しかも三つ目の巨体はロットではなくバランスを崩しているケイトに狙いを込めているらしく、先程の怠慢なスピードが嘘のように二撃目を振り上げている。
上級魔法は間に合わない。

そう予感したロットは、即座にスピードを重視して中級魔法を放った。

魚矢フィッシャーアロー!」

右腕から放たれた魔力は魚のような形状になり、凄まじいスピードで三つ目の巨体に飛んでいった。

それは人を殺めることもあるダツという魚のようで、振り上げた腕の一本にヒットする。

その威力はダメージこそ与えられなかったものの、手から棍棒を離すのには成功していた。

片手となった棍棒はバランスを崩し地面に落ちる。その隙にケイトも体勢を整えて今が好機と魔法を唱えた。

「中級魔法風刃ウィンドバード!」
一本の風は意志を持った鳥のように鋭く三つ目の巨体に向かっていく。

そしてバランスを整える巨体の目を1つ傷つけた。じひびきのようなうなり声と、明らかに嫌がる素振りを見せる相手に、

「やったわ!やっぱり目が弱点ね。これで一つ。私が囮になるから目を狙うのよ、あと二つ!」

勢いよく指示する。

目が弱点なのか、これ以上傷つけられまいと三つ目の巨体は顔の中心の1つ目を片手で覆った。

それでも近くにいるケイト目掛けて今度は片手で棍棒を振るう。

薙ぎ払うかのように振るわれた棍棒はすんでのところでケイトが避ける。伊達にダンジョン経験者をしているだけあった。

「よし!魚矢フィッシャーアロー!」

ロットは指示通り素早く二撃目を放つ、そして膝の目を傷つけることに成功した。

「ヴァァアア!!!」

堪らず三つ目の巨体は叫び、痛がった。
最後の止めにケイトが中級魔法を使う。

風刃ウィンドバード!」

的確に三つ目の巨体を捉え、左胸の目を傷つけることになった。3つの目が傷つけられてその巨体は膝をついた。

「やったわ!」

ケイトの声が、嬉しさに満ちた叫びで部屋を満たした。
ロットも喜びのあまり、ケイトと勝利を分かち合うために駆け寄ろうとした瞬間、

「ヴァァアア!」

巨体が呻き声を上げ、突如として立ち上がった。傷つけたはずの三つ目はいずれも再生されてしまっていた。

再び棍棒を振り回す巨体に二人は反応が遅れてしまう。

倒したと思った瞬間に訪れた安心からの油断。それが致命的な一撃を生む。

ロットは慌ててケイトを守ろうと魔法を放ったが、無力な魔法が巨体の棍棒に吸収されるように消え去った。棍棒がケイトを捉え、数メートルも空中に舞わせた。

ケイトは空を飛ぶ感覚を抱えつつ、何が起こっているのか理解し始めた。

(あぁ、これが運命なのかも。) 
まだ感じない激痛を予感しながら、心の中で諦めかけていた。

しかし今までの経験から体は生きることをあきらめず、生き延びるために少しでも受け身を取ろうとする。その痛みは予想以上で、地面に叩きつけられると同時に息が漏れ、呼吸が止まりそうになる。

「カハッ」

薄れる視界に迫ってくるのは三つ目の巨人。

すでにこん棒はまた高々と振り上げられていて今度こそ踏みつけられたカエルのようになるのは明白だ。

痛みから体が動かせず、これが本当の終わりだと感じていたケイトだったが急に視界が歪み眼前をこん棒が通り過ぎた。
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