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第一部 無駄な魔力と使い捨て魔法使い
「姐さん」「姐さん」「姐さん」「姐さん」
しおりを挟む物言わぬ屍になったドラゴンモドキを足で確認しながらエレナはいう。
「ま、まじっすか。ドラゴンモドキを一撃で……」
ケイトの魔法の実力にエレナたちは驚いた。三人のエルフも案内でナルルにつれてこられて震えていたエルフも、その魔法のすさまじさに言葉をなくしいた。
魔法で乱れた髪を整え、ローブについた砂埃を払って涼しい顔で戻ってくるケイトの顔を眺める。
圧倒されていたのはエルフだけでなく、ロットとナルルも極魔法を打つところを見たことはあったが確実に威力が跳ね上がっていた事実に内心驚かされていた。
「ふぅ。あなた達、怪我はない?何事もなくてよかったわ」
嫌がらせをして、挙句自身に怪我まで負わせたエルフの三人に向かってそう言った。責めるでもなく、やり返すでもなく、ただ心配を向けられたライル達は自分たちがしてきたことをそこでようやく悔いた。
「う、うわぁぁあん。ケイトさんごめんなさぁい!」
「私たち、よそ者が里に来て怖かったんですう!」
「ツボも嫌がらせをし続けたら里から出ていってくれるかなと思っただけで、怪我させるつもりはなかったんですぅ!」
恐怖からも助け出された三人は口々に謝罪を口にして泣いた。ようやく目の前の人間が、自分たちの家族を奪った憎き人間とはまた違った種類の人間であることを受け入れられた。
そしてしばらく泣いて、すがって、ケイトのローブはたちまち鼻水にまみれたが、ケイトもそこは見ないふりをしてやった。ひとしきり泣き、落ち着きを取り戻した三人は今までの態度と違いしおらしい態度で立った。
「「「本当にごめんなさい」」」
改めて三人が一斉に謝罪する。
「いいわよ、別に。これできれいさっぱりおしまいにしましょ。でも今度妨害魔法の練習に付き合ってね」
ケイトがいたずらっぽく笑顔で言うと、エルフたちはケイトの魅力に堕ちた。
「「「姐さぁぁぁあん!!!」」」
今までパーティーでは一番年下のケイトだったが、ロットと出会ってからこうやって人に頼られる方が性に合っているような気がしていたのでまんざらでもない顔で三人の頭をなでた。
さらに3人は喜び、敵視していた面影はもうなかった。こうして里での嫌がらせは終了した。
ドラゴンモドキを倒し、里を守ったケイトたちは、里の人々からさらに受け入れられることとなった。訪れた当初に比べると段違いに居心地がよくなり、周りのエルフの愛想もよくなった。
そして里での生活も数か月が過ぎていった。
あの事件以来里の見張りとしてエレナは戻ったが、非常事態のときのために見張りを増やすことになった。意外なことにライルが自ら名乗りを上げ、里のみんなを驚かせた。
そして今ではあの三人とエレナも姐さん(ケイト)という共通点で仲を深めて談笑できるほどになっている。
ロットとナルルはお互い手を抜くことが出来ないくらい実力は拮抗し始めたり、ケイトは相手の魔力を散らし、無効化する魔力妨害の技術をさらに高めていった。
そうやってロットたちが修練を重ねていたある日、ケイトがエレナと一緒に修練場で魔法の訓練をしていると、突然ソイルがやってきた。
「あら、ソイルちゃんどうしたの?」
気が付いたケイトが声を掛ける。どうもフラフラとした足取りで様子がおかしかった。
「おに、ちゃ……」
ソイルはそのまま力なく倒れた。
熱にうなされいるようだった。その姿を見たケイトは驚愕し、慌てて駆け寄る。エレナはソイルが倒れた瞬間、心当たりにピンと来て、その場をケイトに任せた。
しばらくすると里長がエレナにつれられてきた。ロットたちも他のエルフが気を聞かせて呼んできてくれたので修練場に数人のエルフとロットたちが揃った。
「ソイルは大丈夫なんでしょうか?」
ロットは居ても立ってもいられないのか里長とソイルを交互に見て忙しない。
「ふむ、どうやら魔力種が動き出しておる」
里長が静かに答える。
「そんな!誕生日までまだ先ですよ!」
エルフの里にきて半年ほどの時間が過ぎていた。つまりソイルの誕生日まではまだ二ヶ月ほど猶予があるはずだったのだ。
それを想定して勇者もソイルの誕生日の一月前には合流する手はずになっている。頼みの綱である勇者の到着まで一月、体調を崩したソイルと待つには長すぎる期間である。
「出産も予定から前後するように、魔力種も発芽に関しては稀に多少前後することもあるのじゃ。しかしまさかこんなに早いとは思わなんだが」
「勇者様が戻ってくるのってまだ一月はあるわよね?」
「そのようじゃな。それまでは里長のワシが責任を持ってソイルさんの安全を約束しよう」
きっぱりと言い切る里長にロットも安堵する。そして思い出す。そもそもいままでの体調が例年になく良すぎたのだ。
ロットが過去を振り返ると、こうやって体調を崩すことも日常茶飯事だった。そう思うと目の前に魔力種について自分よりも詳しく対処法を知っている里長がいることが非常に頼もしく思え、どうにかなりそうに思えた。
「よろしくお願いします!」
ソイルを託して一週間が過ぎた頃。ロットは深い思考の沼に沈んでいた。彼はソイルが倒れた日から不安を抱えながらも、自分にできることはないと自覚し、修行に励もうとした。
もちろんソイルのことがよぎり、修練にならずナルルに帰されてしまうほど気はそぞろだったが。
専門家のような里長がそばにいるのだから数日もすればよくなってくるのではと、簡単に考えてしまっていたロットだったが、ソイルの体調は一向に良くならず、微熱と体のだるさが延々と続いていた。
なので心の中では、勇者の帰還を切望し、ソイルのために何ができるかを考えながら日々を過ごしていたロットも、精神的なところで限界を迎えつつあった。
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