【2部まで完結!】使い捨てっ子世にはばかる!?~妹が最強の魔王になるかもしれない~

うろたんけ

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第一部 無駄な魔力と使い捨て魔法使い

「ソイルは僕一人で治すよ」「ダウト」

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ロットたちはエレナと合流することなく勇者の待つ場所に到着した。結界の一つである濃い霧が発生するその手前ほどで勇者が手を振りながら立っている。

「勇者様、お待たせしました!」

ロットが初めに挨拶し、ケイトとナルルも頭を下げた。ナルルの背でソイルは苦しそうにしていた。ここまで案内してくれたライルは元気になったらまた来てね、と言い残し霧に消えていった。

「あぁ。ところでソイルはどうだい?」

エルフのライルが去ってから勇者は口を開く。

「数日前から苦しみだして、まだ誕生日まで時間があるのに」

「そうかい、いい兆候だね」

勇者は意外な言葉を口にした。ロットはあっけにとられて言葉の意味を理解しようとしている。ナルルもケイトも勇者の意図が分からず顔をしかめた。

それを察したのかすぐさま

「いや、魔王種をソイルから解放する時期が来たってことだよ」

と、慌てて訂正する。

しかしケイトはいまいち納得できない様子だった。それでもロットが話を進めていくので訝しげにしつつも黙ってみている。

「でもこれでようやくソイルも完全に解放されるんですね」

「そうだ。きっと素晴らしいことになるよ。じゃあみんな、この先に転移陣がある祠があるからそこに向かおう。その先にソイルから魔王種を解き放つ儀式ができるから」

やはり言い方に引っかかるケイト。具体的に何がという訳ではないが、思わず不安を口にする。

「ね、ねぇ勇者様。いえ、その。……ソイルちゃんを助けるのよね?」

ケイトの視線は少しの疑念と多くの戸惑いが含まれている。

「もちろん」

勇者の言葉の意味はケイトの質問を肯定するはずなのに、その張り付けたような笑顔がケイトの不安をさらにあおることになった。

躊躇している彼女だったが、ロットとナルルはもう何も感じていないようですでに勇者について進み始めていた。

「ケイト、何やってるの?ほら、早く行こう」

「ええ、そうね」

ケイトは不安を胸に抱えつつ、勇者と共に祠へと向かう。静かな森の中で、その一行は迷うことなく進んでいった。

森は背の高い木々が生い茂り、昼だというのに夜のように薄暗く、不気味にさえ思えるほどである。やがて勇者の言う祠の入り口に到着した。

太陽に照らされて古びた石の構造物が、神秘的でありながらも不気味さを漂わせていた。転移陣が刻まれた場は、周囲の森から隔絶された異質な空間で、古代の力が息づく場所であることを感じさせる。

「これが転移陣。私が見たことあるのと違う感じがします」

ケイトが周囲を見回しながら言った。自身の経験から転移には神聖な力が入っているのか、胸の奥がスッとなるような空気感があるはずだった。

「ちょっと禍々しくねぇか?」

 ナルルも眉を顰める。ロットは初めての場所なのでこういうものかと一人納得していたので勇者たちの話を興味深く聞くのみである。

「まあ場所がちょっとアレだからね。魔王種を扱うからそれなりに場所も選ばなければならなかったんだ。だからちょっと今回は古代のモノでも魔族よりの代物なんだ」

勇者は落ち着いて説明した。どうしてそんなものを? という疑問も浮かんだケイトだったが、目の前の男が勇者であることを考えると知っていてもおかしくないとも思った。

拭えない違和感の正体に気づけぬまま、必要以上に疑ってしまうことを恐れてとにかく信じてついていくことにした。

「じゃあ、早速行こう」

勇者が前に進み、全員が転移陣に足を踏み入れると、空間が歪んで視界が曖昧になる。ロットたちは数秒ほどに感じた暗転もやがて治り、視界がクリアになるとどこかの神殿に立っていた。

古びた石造りの神殿の内部は、異様な雰囲気が漂っている。青黒い炎が灯る台座が複数並び、中央には神秘的な魔法陣が刻まれていた。

神殿の壁には奇怪な紋章が浮かび上がり、周囲に不安感を募らせる。

「ソイル?大丈夫か!?」

ナルルの声に全員が視線を向ける。見ると背負われてぐったりしていたソイルが手足をバタつかせて苦しそうに悶えていた。

「勇者様、ソイルちゃんが苦しみだしたわ」

ケイトも焦りの表情を見せて勇者に指示を仰ぐ。その一瞬、ケイトからは笑ったように見えた。

「そうかい、ならすぐにでも儀式を始めよう。ナルルは周りの台座にこの炎をともしてきて」

 しかし勇者は次の瞬間には気を遣った様子に変わった。そしてどこから取り出したのか不思議な青い色をした炎のたいまつを持っていた。

「こりゃあ何の炎だ?えらく青黒いが」

通常とことなる、禍々しささえ感じる火種に松明を取る手が躊躇する。しかし勇者は強引に渡してしまう。

「その火が魔王種を引き出す役割になるのさ。ケイトは中央の魔法陣から各台座までこの液体で線を引いてね」

「ゆ、ゆうしゃ、さま。これは?」

ケイトには謎の液体が入った。バケツとツムを引くようの筆が渡される。その液体の青黒さに悪寒を感じ。すぐさま安全かどうか確かめる。

「これも儀式に必要なんだよ。ちなみに、僕じゃ勇者の力が強すぎて、儀式の準備をうまくできないんだ。頼むよ」

勇者は真剣に言う。ナルルとケイトはその場の雰囲気にも流されて儀式の準備を始めた。ロットはナルルに降ろされたソイルに声を掛け、手を握り励ましていた。

勇者と出会ったあの日、そうすることがソイルを救うことを覚えていたから。

こうして違和感を指摘することなく準備が整った。それらに触れることなくチェックして回る勇者はやがて満足そうにうなずく。

「よし、なんとかできたね。じゃあ最後にソイルを一番奥の台座に寝かせてくれるかな」

それはロットに指示した。言われた通りソイルを運ぶためロットが抱きかかえると、その進路をふさぐようにケイトが立った。右手は勇者に突き出し、さりげなくロットの手を後ろ手で握った。

ロットは突然のことにソイルを落としそうになったが、その場にゆっくりと寝かせた。そしてどういうつもりかケイトに聞こうとして、その表情見た途端、その真剣度合いが伝わり冷静を取り戻していく。

「勇者様、その。これは悪魔降臨の儀式にとても良く似ている気がするんですが、大丈夫なんでしょうか?」

「な、なんだって?本当に勇者様大丈夫なんですか?」

 ケイトの視線が勇者を射抜く。その目は疑念に満ちていて、攻撃的になっている。

「大丈夫だよ。僕は勇者だよ?」

「で、でも……」

自信満々で言い切る姿にケイトは不安で言葉を詰まらせる。

「……今思ったんだがよお。勇者様、前までソイルのことはちゃん付けで呼んでなかったか?」

 ナルルも何かを察して剣の柄に手を置きながらそう言った。

「そ、そういえばそうです!それに勇者様、ソイルを救うのに俺たちの手なんか借りなくても大丈夫って言ってましたよね?なんで今更俺たちに頼りまくりなんですか?」 

ロットが声を荒げる。そこまで聞いて勇者だったものの表情が醜悪に変わっていく。まるで溶けるようにどろどろと変質していく有様にロットは小さく悲鳴を漏らして情けなく尻餅をついた。
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