【2部まで完結!】使い捨てっ子世にはばかる!?~妹が最強の魔王になるかもしれない~

うろたんけ

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第二部 最大級の使い捨てパンチ

「うーん魔力種っすね」

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ケイトの叫び声が聞こえてなお、セリーナは朗らかな表情を崩しておらず、ジュリもまたしおらしい子どもに戻っている。

「うちのが、すみません」

エレナが笑いながら言った。

「いえいえ。それで、息子の様子はどうですか?」

セリーナは息子の状況を気にかける。エレナに余計なことは言うなよ、と視線を送るジュリは、さっきまでの生意気な態度とは裏腹に、大人しくなっている。

「んー、まだなんとも言えないっすね。とりあえず、この闘病日誌を読ませてもらってもいいですか?」

エレナが手にしたのは一冊の古びた日誌。表紙には「ジュリの闘病記録」と書かれている。彼の過去の記録が詰まっているのだろう。

「ええ。でも、私は少し用事があるから、また後で呼んでくださいね。ジュリちゃん、あなたはお部屋に戻ってる?」

母親は別れを告げ、ジュリに優しく声をかける。

「別に外で遊んできてもいいっすよ。見たところ体調も良さそうですし」

エレナはジュリに気を遣いながら提案したが、母親は少し慌てた様子で言った。

「だめよ。ジュリちゃんに何かあったらどうするの?それより、お部屋でお勉強しましょう」

「あー、ならせっかくなんでここにいてもらってもいいっすか?直接話を聞いてみたいと思ってるんで」

エレナはジュリを引き止めた。ジュリはどこかホッとしたような表情を浮かべる。

「それじゃ、お願いね」

母親はジュリをエレナに託すと、足早に部屋を後にした。

扉が閉まり、母親の足音が遠ざかっていく。部屋に静寂が訪れ、エレナはジュリに向き直った。

「外には出られないんですか?」

エレナの問いかけに、ジュリは落ち着いた声で答えた。

「ああ。3歳頃から体調を崩しやすくなってな。去年も、誕生日の1週間前に倒れて、数週間は意識が朦朧としていた」

ジュリは冷めた態度を保ちながら話している。。

「うーん。つまんないっすね」

エレナは闘病記録をパラパラとめくりながら、難しい顔をしてつぶやいた。

「ふん、お前に何がわかる」

ジュリは、これまでの経験からか、他人に理解されたことがなかった。エレナの軽い態度に苛立ちを覚えた。

「いや、実はあたしもエルフの里にずっといたんで、100年近くは退屈な生活を送ってたんですよ。でも今はロット君たちと一緒に旅に出て、外の世界を楽しんでるっす」

エレナは自分の経験を語りながら、ジュリの目を真っ直ぐに見つめた。

「エルフは閉鎖的だと聞いたことがあるな。楽しいとは具体的にどういうことだ?」

ジュリは興味を惹かれたようで、少し前のめりになった。

「街によって名物が違うんすよ。シカァの街ならイコ焼き、ベウコはピグ饅頭、他にも蛇蜥蜴の蒲焼とか、タリアでは果物が絶品だったっす」

エレナの話に、ジュリは呆れたように笑ってしまった。

「ふっ、食べ物ばかりじゃないか」

「そりゃあ、あたしは食べるのが好きっすからね。ジュリ君は何が好きっすか?」

エレナの軽快なペースに、ジュリは少しだけ心を開きかけるが、すぐに警戒心を取り戻し、背もたれに深くもたれかかった。

「僕は……お前なんかには言わん」

ジュリは再び距離を置くような態度を取る。しかしエレナはそんなことを気にせず、本題に入った。

「ところで、この日誌を見る限り、ジュリ君は魔力種っぽいですよ」

エレナの突然の指摘に、ジュリは動揺することなく、冷静に聞き返した。

「治るのか?」

「うん、あの二人がいればすぐに治るっす。エルフの里でも何度も練習したんで、バッチリですよ。そしたら外でたくさん遊べるし、ご両親も安心っすね」

エレナの言葉に何処か他人事のような雰囲気を見せる。

「ふっ、そうだといいがな。それより、仕事をしたらどうだ。僕は自室で勉強でもするよ」

ジュリは軽くエレナに微笑んだ後、立ち上がって部屋を出て行った。

エレナはしばらく闘病記録を読み進めていたが、大量に用意されたアルバムは必要ないと判断し、ジュリが残した手つかずの茶菓子を平らげた。

部屋の外で待っていたメイドに帰ることを伝えたが、昼ご飯が用意されているとのことで、しっかりとご馳走になってから屋敷を後にした。

昼がとっくに過ぎて太陽も傾き始めた頃、ケイトとロットはエレナの帰りを待っていた。ケイトはまだ怒りが収まらず、ロットがその怒りをなんとか宥めようとしているところだった。

「おーやっぱりここだったんすね?」

軽やかな声とともにエレナが姿を現した。いつもの笑顔が浮かんでいる。

「遅かったのね」

ケイトは仁王立ちでエレナを迎えた。屋敷を出てから数時間が経っており、待たされたことに少し苛立ちが残っているようだ。一方、ロットはエレナが戻ってきたことに安堵している。

「いやぁ、セリーナさんが昼ごはんごちそうしてくれたんすよ」

「私たちがあの生意気なガキに追い出されたってのに、あんたは呑気にご飯食べてたっていうの!?」

ケイトの言葉に、ロットは心の中でため息をついた。ケイトの怒りを沈めるのは、まるで焼け石に水をかけるようなものだった。

「ちょ、ケイト、落ち着いて。エレナは俺たちの代わりに話を聞いてきてくれたんだから。それに追い出されたのはケイトだけで…」

ロットは口を滑らせてしまい、ケイトの視線が鋭くなる。

「はっ?」

「あ、なんでもないよ。で、どうだった?ジュリ君について何かわかったの?」

慌てて話題を変えるロットに、エレナは恩着せがましい笑みを浮かべた。

「んー、多分魔力種だと思うんすけどね。薬師がつけてた闘病日誌も見させてもらったんで間違いないっす。普段から体調は悪いみたいですが、誕生日の1週間前から特に酷くなって、誕生日を過ぎた翌日にはケロリとしていることが多かったっす」

ロットはエレナがただ食事を楽しんでいただけではなかったことに安堵した。

「ところで、ジュリ君の誕生日は来月なんすよね。だから取り除くなら早めがいいんすけど、大丈夫っすか?」

「もちろんよ。きっちり治して、私に言ったことを謝らせるんだから」

ケイトは自信たっぷりに答えた。

「場所はどこでするの?」

ロットが尋ねると、エレナは軽く頷いた。

「あの家、かなり広いじゃないっすか?応接間の一つを空っぽにしてくれるみたいっすよ」

「さすが金持ちね。報酬も楽しみだわ」

ケイトはまだジュリへの怒りを忘れていないが、報酬のことになると気持ちが少し和らいだようだ。

一方、エレナは相変わらず楽観的で緊張のきの字もない。そんな二人の間で、ロットはこれが初めての魔力種除去になることに、内心で緊張を抱えながら、決意を固めていた。
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