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第二部 最大級の使い捨てパンチ
「指輪ないじゃん」
しおりを挟む砂煙が晴れて現れたのは3メートルはある魔物で、全身が筋肉であるのか不自然な身体の盛り上がりがあちこちにあった。特に胸筋と腕全体にかけては以上に太く、それを支えにするように四足歩行をしていた。
ごろつきたちは残らず潰されていき、原型をとどめていない。
手近なところに潰すべき敵がいなくなった魔物は視線をロットたちへと向けた。
「それよりあたいたちも逃げるよ!あれはヤバい」
「逃げるったってどこへ!」
「とりあえずアレの真逆に!」
「とにかくあんなの喰らえば一発でアウトよ!」
四人は逃げ出した。するとその巨体が二足で立ち上がり胸を両腕で叩く。闘技場に唸るような打撃音が広がり、その振動だけで地面までもが揺れているようだった。
「グララぁぁぁぁあ!!!」
凄まじい雄叫びが響き渡った。動き回ったことによって魔物の怒りを買ってしまったようだ。目は血走り、人間というものを憎んでいる。
「あれはごリラードね」
ケイトが逃げながら冷静に魔物の名前を言う。
「あたいは確か赤い体皮に覆われた気性の荒い中型のモンスターって聞いてるよ?」
レナの言うゴリラードの姿が正しく、人間と同程度の大きさだが筋肉が発達しており強力な一撃がある油断のできない魔物だった。それでもこの4人で遅れを取るものはいないほどの魔物ではある。
しかし目の前の魔物は姿は似ていたが、青い体皮に覆われており、ところどころあてはまりはするがサイズ感がどう見ても大型の魔物であった。
「あいつはどう見ても身体が青いし身体のデカさもハンパねぇーっ」
パンチの横をこぶし大程の石が通り過ぎた。ゴリラードが腕を振り上げた際に巻き込まれた小石が飛ばされてきたのだ。それだけでも当たればかなりのダメージになってしまうためパンチは肝を冷やした。
「多分亜種よ。群れのボスでもかなり珍しい、ドラゴンにも匹敵するほどのパワーがあるのよ」
ケイトは唯一知識として知っていたため説明し、それが絶望感を煽る。
「ドラゴンだって?そんなやつ相手にどうやって太刀打ちするんだい!」
「さすがの俺のパンチもドラゴンは倒せねぇぞ!っていうかお前らこんな時に何仲良く手を繋いでんだよ!」
レナとパンチはそれほどの魔物と対峙したことがなく打つ手がないと困っていた。そもそもドラゴンは倒せばドラゴンスレイヤーという異名がつくほど希少で強力なのだ。それに匹敵するパワーとなると恐ろしいほかない。
パンチが言うようにロットとケイトはいつもどおり戦闘準備として手を繋いでいた。二人にはきちんと説明しておらず、その時間もないためどう思われようと仕方なかった。
それでも目の前の脅威に立ち向かうために魔力を練る。しかしいつまで経っても魔力が共有される感覚が訪れず、そして二人同時にあることに気がついた。
「これは魔力を共有してて……あ」
「こんなの最極魔法で一発……あ」
二人はタイミングよく互いを見た。ゆっくりとまばたきをして、その作戦が重大な欠点があることに気がついた。
「グララぁぁぁぁあああ!!!」
その時ゴリラードが凄まじい勢いで走り寄ってきて突進するかのごとく迫っていた。
「「指輪はエレナに渡してるんだったぁぁぁぁ!!!!」」
二人は手を離しゴリラードの太い腕から振り下ろされる一撃を避けて一目散に逃げる。避けたものの衝撃で左右に転げ回り、左はケイト、右はロットと完全に分断された。
その光景をルミナリアは心配そうに、エレナは額に手を当て見てられないというふうに見ている。
「ほ、ほんとうに大丈夫?」
私の仲間は強いと発言した直後の出来事だった。不安しか残らない結果と、その原因の指輪を見つめてエレナはどうしたものかと考える。
「あ、あちゃー。実はこの指輪かないとまずかったんスけど、この場所を突き止めるためにあたしが預かってんスよね」
頬を掻きながらそう言った。
苦笑いを浮かべながら、それでも「まあ、大丈夫っす!」と言うエレナに今度こそ不安を覚えたルミナリアだった。
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