109 / 117
第三部 勇者への道
「ついに頂上へ」
しおりを挟む
ロットたちは何度か敵や罠を掻い潜り塔の上部へと来ていた。
「随分登ったわよね」
螺旋状の階段を登りながらケイトが言った。
「うん、敵や罠がたくさん出てきたよね」
5人は特に問題なく順調に上の階へと進んでいる。魔物はアベンとケイトが容赦なく倒していき、クリスとトリィはこの頃には勇者を目指していたことも忘れて幾度も助けてくれているアベンにすっかり懐いていた。
「アベンさんすごいですぅ」
「アベン殿が勇者になったら私たちもパーティーに入れてくれ」
「あー? まあ考えとくよい」
アベンもまんざらではないようで、無愛想にしつつも口角が上がっており、それを隠すように手で隠している。
面白くないのはロットである。モテたい訳では無いがアベンを除いてこの中で唯一まだ勇者を目指している身としては悔しさがあった。
「チェッ、なんだよアベンばっかり」
言えば負け犬のようであるとわかりながらも呟かずにはいられなかった。それを察したケイトが手を握る力を強めて優しく語りかける。
「あなたは私といないと私が戦えないんだから仕方ないじゃない。それに戦闘の腕前もアベンにそこまで負けてないわよ」
「ほんと?」
表情を一転させて喜びを表す。こういうところがまだまだ子供っぽいのだがケイトは黙っておいてやることにした。
「ええ。あなただって魔族と戦った経験があるんだからいい線いってるわ」
一対一の実力はさすがにアベンに敵わないロットだったが、経験を含めてチーム戦では胸を張って強いと言えるほどだとケイトは思っていた。嬉しそうにするロットにアベンがすかさず言った。
「おいロット。お前もオレっちのパーティーに入って5人で魔王討伐目指そうぜい!」
「あら、私も入れてくれてるの?」
まだ結果は出ていないのに勝手に勝った気でいるアベンにロットがムッとして無視したがケイトが代わりに答えた。ちゃっかり入れていたアベンは恥ずかしそうに答える。
「と、当然だ。ケイトのうではぴかいちだぜ!」
初めは強気な性格とその顔に惚れていたアベンだったが今では強力な魔法を操って敵を一網打尽にする様子にさらに興味がわいていた。
照れているのを悟られないよう背中を向けながら言うが耳が赤いのでバレバレだった。
「うふふありがと。でもこれもロットのおかげなの。それに私たちは既に仲間がいるから結構よ。テストは落ちちゃったけどなかなか強いんだから」
ケイトはそんな気持ちを知ってか知らずか、外で待っているはずのエレナとパンチのことも引き合いを出して断った。ロットはその様子に耳を澄ましていたが安堵する。
「ちくしょう。ロット羨ましいな!」
アベンがそう叫び、少しだけ優越感をロットが感じているとようやく螺旋状の階段に終りが見えてきた。
「あぁ、扉ですぅ」
「今度こそ最上階がいいな!」
ロットはかなりの段数を登ったためこれで終われるという安心感を感じながらも扉に手を触れる寸前に悪寒を感じた。はっと顔を上げるとアベンたちも苦い顔をしていて緊張が走った。
どうやらこれが最後の試練に間違いないらしい、そう考えてゆっくりと扉を開いた。
螺旋状の階段を抜けた先は一人の男性が立っていた。執事のようななりをしており口髭と小さな丸メガネが特徴的だった。それがにやりと口角を目一杯上げているのだから不気味である。
「だれ?」
思わずロットが聞くがすぐには答えずこちらを舐め回すように一人ひとり見てきた。
「ようやく来ましたか」
ヒゲを撫でながらそう言うとまた笑う。悪寒の正体は目の前の男で間違いないらしく、笑うたびに嫌な予感が襲ってきた。
「なんだてめえ」
味方ではない、そう判断してアベンは構えた。後ろではクリスたちも怯えつつ反応できるようにしている。
「そんなに怖い顔しないでくれますか。勇者候補の一人ですよ」
「あなた一人でここまで来たの?」
勇者候補という言葉にいささか信じられなかった。そもそも50人の中にこのような人物がいた記憶はケイトには無かった。全員を覚えているわけではないので男が言っていることが正しいかもしれないが警戒を解く理由にはならなかった。
「ええ。他の皆さんは帰っていただきました。後はあなた達だけですよ」
引っかかる言い方だ。脱落していったのならそう言えばいいし、どうやって他の参加者が脱落したことがわかるのだろうか。ロットでさえ警戒をあらわにしている最中、クリスが不用意に近づいていく。
「すごいですぅ、一人でここまで来れるなんて」
「いえいえ、それほどでもありませんでしたよ。もしよろしければせっかくここまで来ましたし握手でもしましょう」
その瞬間男も音もなくクリスの下へ近づき手を差し出した。
「随分登ったわよね」
螺旋状の階段を登りながらケイトが言った。
「うん、敵や罠がたくさん出てきたよね」
5人は特に問題なく順調に上の階へと進んでいる。魔物はアベンとケイトが容赦なく倒していき、クリスとトリィはこの頃には勇者を目指していたことも忘れて幾度も助けてくれているアベンにすっかり懐いていた。
「アベンさんすごいですぅ」
「アベン殿が勇者になったら私たちもパーティーに入れてくれ」
「あー? まあ考えとくよい」
アベンもまんざらではないようで、無愛想にしつつも口角が上がっており、それを隠すように手で隠している。
面白くないのはロットである。モテたい訳では無いがアベンを除いてこの中で唯一まだ勇者を目指している身としては悔しさがあった。
「チェッ、なんだよアベンばっかり」
言えば負け犬のようであるとわかりながらも呟かずにはいられなかった。それを察したケイトが手を握る力を強めて優しく語りかける。
「あなたは私といないと私が戦えないんだから仕方ないじゃない。それに戦闘の腕前もアベンにそこまで負けてないわよ」
「ほんと?」
表情を一転させて喜びを表す。こういうところがまだまだ子供っぽいのだがケイトは黙っておいてやることにした。
「ええ。あなただって魔族と戦った経験があるんだからいい線いってるわ」
一対一の実力はさすがにアベンに敵わないロットだったが、経験を含めてチーム戦では胸を張って強いと言えるほどだとケイトは思っていた。嬉しそうにするロットにアベンがすかさず言った。
「おいロット。お前もオレっちのパーティーに入って5人で魔王討伐目指そうぜい!」
「あら、私も入れてくれてるの?」
まだ結果は出ていないのに勝手に勝った気でいるアベンにロットがムッとして無視したがケイトが代わりに答えた。ちゃっかり入れていたアベンは恥ずかしそうに答える。
「と、当然だ。ケイトのうではぴかいちだぜ!」
初めは強気な性格とその顔に惚れていたアベンだったが今では強力な魔法を操って敵を一網打尽にする様子にさらに興味がわいていた。
照れているのを悟られないよう背中を向けながら言うが耳が赤いのでバレバレだった。
「うふふありがと。でもこれもロットのおかげなの。それに私たちは既に仲間がいるから結構よ。テストは落ちちゃったけどなかなか強いんだから」
ケイトはそんな気持ちを知ってか知らずか、外で待っているはずのエレナとパンチのことも引き合いを出して断った。ロットはその様子に耳を澄ましていたが安堵する。
「ちくしょう。ロット羨ましいな!」
アベンがそう叫び、少しだけ優越感をロットが感じているとようやく螺旋状の階段に終りが見えてきた。
「あぁ、扉ですぅ」
「今度こそ最上階がいいな!」
ロットはかなりの段数を登ったためこれで終われるという安心感を感じながらも扉に手を触れる寸前に悪寒を感じた。はっと顔を上げるとアベンたちも苦い顔をしていて緊張が走った。
どうやらこれが最後の試練に間違いないらしい、そう考えてゆっくりと扉を開いた。
螺旋状の階段を抜けた先は一人の男性が立っていた。執事のようななりをしており口髭と小さな丸メガネが特徴的だった。それがにやりと口角を目一杯上げているのだから不気味である。
「だれ?」
思わずロットが聞くがすぐには答えずこちらを舐め回すように一人ひとり見てきた。
「ようやく来ましたか」
ヒゲを撫でながらそう言うとまた笑う。悪寒の正体は目の前の男で間違いないらしく、笑うたびに嫌な予感が襲ってきた。
「なんだてめえ」
味方ではない、そう判断してアベンは構えた。後ろではクリスたちも怯えつつ反応できるようにしている。
「そんなに怖い顔しないでくれますか。勇者候補の一人ですよ」
「あなた一人でここまで来たの?」
勇者候補という言葉にいささか信じられなかった。そもそも50人の中にこのような人物がいた記憶はケイトには無かった。全員を覚えているわけではないので男が言っていることが正しいかもしれないが警戒を解く理由にはならなかった。
「ええ。他の皆さんは帰っていただきました。後はあなた達だけですよ」
引っかかる言い方だ。脱落していったのならそう言えばいいし、どうやって他の参加者が脱落したことがわかるのだろうか。ロットでさえ警戒をあらわにしている最中、クリスが不用意に近づいていく。
「すごいですぅ、一人でここまで来れるなんて」
「いえいえ、それほどでもありませんでしたよ。もしよろしければせっかくここまで来ましたし握手でもしましょう」
その瞬間男も音もなくクリスの下へ近づき手を差し出した。
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!
たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。
新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。
※※※※※
1億年の試練。
そして、神をもしのぐ力。
それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。
すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。
だが、もはや生きることに飽きていた。
『違う選択肢もあるぞ?』
創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、
その“策略”にまんまと引っかかる。
――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。
確かに神は嘘をついていない。
けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!!
そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、
神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。
記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。
それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。
だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。
くどいようだが、俺の望みはスローライフ。
……のはずだったのに。
呪いのような“女難の相”が炸裂し、
気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。
どうしてこうなった!?
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる