フィギュアな彼女

奏 隼人

文字の大きさ
3 / 92

綺麗な緑色

しおりを挟む
数時間後…病院の霊安室に案内された僕はもう喋る事の無い兄貴の最期の姿を見る事となってしまった…

僕も…駆けつけた両親もシズカさんもそこに呆然と立ち尽くすだけだった。

シズカさんは憔悴しきった顔で…

「ニコラは私が車に轢かれそうになったのを助けてくれたの…本当は私が…ニコラは私の身代わりになって…ううううう…」

悲しい現実に耐えきれず…僕に寄りかかって大粒の涙を流した…

シズカさんの悲しみが多分、僕以上だというのはずっと二人を見てきた僕には痛いほど分かった…


僕はシズカさんの肩を抱いて

「シズカさん…きっと、兄貴がシズカさんと入れ替わってもみんなの悲しみは同じかそれ以上ですよ。

シズカさんが無事で兄貴は天国うえで喜んでいる筈です。今は思いっきり悲しんで、その後は頑張って兄貴の仕事を引き継いでやってもらえますか…?

よろしくお願いします。」


僕の言葉にシズカさんは黙って頷いて…だけど止まらない涙を何度も何度も拭った…




そして僕は両親に後を任せてタクシーでシズカさんを自宅まで送ってから僕は自分の部屋に戻った…


突然の兄貴の死…まだ未だに受け入れられない…昨日はあんなに元気だったのに…


「あ…そうだ…これ…シズカさんに…」


兄貴から預かっていたトランクに手を伸ばしかけたが…


「今はまだ…無理だ…

落ちついたらシズカさんに渡そう…」



僕はしばらくトランクを見つめて…そして手に取った…トランクを開けようとした次の瞬間…


「プシューッ…!!!」

トランクの横の小さな穴から音が聞こえた…


後から分かったことなのだが…完全防水トランクとは空気中の水分さえもシャットアウトするために中を真空状態にしていたのだ。

この時…僕がロックを解除したことで空気がトランク内に流れ込んだのであった。


トランクの中で眠るように落ち着いていた緑色の物質が目を覚まして活動を始めていた…


トランクを開けた僕は中を覗き込むと…


綺麗に発光する緑の液体が入ったガラス状のカプセルから金属の骨組みが伸びている物…それ一つだけが中央に入っていた。


…その綺麗な緑色を見つめていると幼い頃、兄貴と森の中を歩いて空を見上げると木漏れ日が降り注いできたのを思い出して僕の目に知らず知らずのうちに涙が溢れてくる…


ううっ…


僕は思わずトランクの横に飾ってあったフィギュアを抱きしめる…

「兄さん…何故…僕達を残して…」


涙が頰を伝い…フィギュアの服や長い髪にポタポタと溢れ落ちた…


「あっ!!ゴ、ゴメンよ…」

焦った僕はすぐにタオルで拭き取り、服は脱がせてハンガーにかけて置くことにした…

「明日には乾くだろうから…本当にゴメンね……ん…?」



その時だった…緑の発光体が一段と輝きを増してブルブルと震え出した…

「うわぁぁぁぁ!!」

僕は驚いて腰を抜かして倒れた…
そしてそのまま少しずつ後退りする…


トランクに入っていた金属の骨組みはやがて動き出してズルズルとトランクから外に出て行こうとしている…

僕は怖くて近づけないでただ見ているだけしか出来なかった…

「あっ…!!」

そして僕が組み立てたフィギュアの足から中に入っていった。

僕は兄貴の言葉を思い出す…


『近くに水分があるとそれを媒体として物体と結合してしまうんだ…』



水分…結合…まさか…

僕の涙にシステムが反応してフィギュアと結合したっていうのか…

と、とりあえず…兄貴に…
そ、そうか…もう兄貴には相談できないや…

じゃあ…シズカさんは…
でも今日は疲れきって休んでいるだろうし…


僕はフィギュアを眺めた…
僕が組み立てたまま…愛らしい笑顔でこちらを見てくれている。

うん…特におかしい所は見当たらないな…

「明日…明日になったらシズカさんに相談してみよう!」



色々あって疲れていた僕はとりあえずベッドに横になってそのまま寝てしまった…

僕が寝ている間にフィギュア…彼女の目が綺麗な緑色に発光していることも知らずに…



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません

竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...