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お前はどうしてそこまで出来る…?

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 その後も俺は、変わらず空を見続けていた。
 授業中も何も考えずに、ずっとずっと…

「ぶぇっくしゅ~んっ!!」

 俺の斜め後ろから、でっけぇくしゃみをしてる奴がいる。

 ああ、山下とよくつるんでるやつか…

 でっけぇくしゃみをしたくせにアイツが何かを話したり、アクションを起こすだけで周りは「あははっ!」と笑って応えている。

 ったく…くしゃみ、でけぇんだよ…
 ただ…くしゃみだけで周りが笑う…か…

 まぁ、俺にはどうでもいい事だ…
 俺は振り向くことなんかせず、ただただ空を見続けた。

 ◇ ◇

 ──時は過ぎ、ある日のこと、俺は昼休みに職員室へ来るよう先公に告げられ、その場で席を立っただけなのに周りの目が痛い。

 チッ…どいつもこいつもそんな目で見んじゃねぇよ…めんどくせぇ…

 俺は軽くため息をつき、足取りも重く、教室を後にしたんだ。

 そして、教室を後にした俺の目と耳に飛び込んできたもの…な、ななっ!なんだありゃ…!?

 そう、俺の目と耳に飛び込んできたものは、お昼ご飯を買おうと購買にごった返している生徒の群れ…そして、ガヤガヤ騒がしい…

 あ、ありゃ…戦争か…?
 いつか、ぜってぇ怪我人出るだろ、あれ…

 あまりの凄さに俺は、呆気に取られちまったけれど、そんな光景の中には、くしゃみ野郎の姿もあって背がでけぇから購買に突っ込んでいるのもよく見て取れる。

 それと…戦争には入れずに、後ろでちょこんと待つ山下。

 そうか、アイツ…Ωだから、あの中に入るのは負け戦に行くようなもんだよな…

 華奢で体力もない…
 そして、ちょこんと立ってるだけなのに、やっぱり可愛い…

 その後、くしゃみ野郎が手に入れてきたパンや飲み物を受け取り、満面の笑みで喜ぶ山下。

 それに応えるかのように楽しそうな、くしゃみ野郎。

 一人でいい…これからもずっと…
 あの空間に入りたいとは思わない…

 いや、思いたくない……でも……
 でも、どこか羨ましかった……

 俺は、二人の光景をなにも見てなかった事だと心に言い聞かせ、一人…職員室へ足を向けたんだ。

 これで…これでいいんだ…
 俺は一人でいいんだ…
 もう、傷つきたくないんだよ…
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