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甘酸っぱい思い出と隠してた真実

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 ──そして、終業式当時
 あっという間に俺たちの一学期は、終わりを迎えようとしている。

 色々あった一学期…
 裕翔と駿という最高の親友が出来、俺の生活が一八〇度変わりを見せた大切な一学期だったな…

 そして、終業式に期末テストの結果が発表されるという、訳の分からないしきたりがこの高校にはあって、夏休み直前に天国行きか地獄行きかが分かるというなんとも鬼畜なシステムだ。

 俺はテストの出来なんか全く気にもしてなかったけれど、それより斜め後ろにいても、駿がずっとソワソワしている感じが俺に伝わってきていた。

 そりゃそうだよな、地獄行きなら彼女とのラブラブデートも無くなっちまうだろうし…

 ちなみに三角関数が苦手で、あの日答えられなかった裕翔は大丈夫なのか…?

 おいおい…デートに誘ってくれたのに、やっぱり行けませんでしたってのだけは…神様、頼むからやめてくれよ?

 それぞれみんな、いろんな思いを抱きながらも一学期最後のホームルームが始まったんだ。

 ──テスト用紙も担任の先公から全科目、返されるというなんとも異例のスタイルだ。

 出席番号順に呼ばれ、解答用紙が返却されていく…俺たちが呼ばれるのは、最後に等しい。

 周りの状況を見ては、裕翔も駿も気持ちが落ち着かない様子だ。

 順番が回り、俺も解答用紙を受け取り、最後は裕翔の番だ。

 裕翔の結果は…?

「ホッ…駿!僕、赤点なかったよ!」

「っしゃ~っ!これで夏祭りに行けるぜっ!」

「駿っ!良かったね!!頑張った甲斐があったじゃん!」

 うんうん、駿の様子だと赤点もなかったんだろうな…?

 ただ、俺は解答用紙を受け取ってから二人の会話に入ろうとはしなかった。

 俺も赤点なんてひとつも無い…
 ただ、これが引き金で俺は一人になったんだ。
 誰にも見せたくない、色々と怖かった…

 見せたくない、知られたくないと思っていたのに、この高校では学年全体の順位表が廊下に貼り出されるなんて聞いてもいなかったし、本当に勘弁して欲しかった…

「ねぇ!大和、順位表見に行こうよっ!」

 一切会話に入っていかなかった俺に、裕翔は優しく声をかけてくれたけれど、俺は昔の傷跡が疼き、とても乗り気にはなれなかったんだ。

 結局、俺を残して裕翔と駿は順位表を見に行ってしまったけれど…

 その結果を見ても、昔のように裕翔や駿が俺から離れていかないで欲しいと、この時の俺には祈る事しか出来なかったんだ。
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