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甘酸っぱい思い出と隠してた真実

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 ──その日の帰り道
 終業式もお昼過ぎの早い時間に終わりを迎え、赤点もなく夏休みを謳歌出来ることが分かった駿は、俺たちに別れを告げて彼女と楽しく帰路に就いたようだ。

 残された俺と裕翔は、いつも通り自転車に乗り、まだまだ暑い街並みを駆け抜けていく。

 明日、俺と裕翔は、お祭りに行ける天国行きのチケットを手に入れた。

 ただ、順位表を見た裕翔と駿がどんな事を思ったのか。

 結果を見て、俺に対する気持ちはどう変化したのだろうか。

 いや、なにも変化なんてしていないと思いたい…

 だって、こうやって変わらず裕翔の特等席に座り、帰路に就いているし、駿だって笑顔で俺らに別れを告げてくれたわけだけど…

 それでも…それでも俺は怖い…
 もう二度と、一人になんかなりたくないから…

 そんな不安な気持ちを抱く俺に、裕翔はゆっくりと口を開いたんだ。

「大和?」

「ん~?なんだ?」

「どうして順位表、見たくなかったの…?」

「…………」

 一瞬にして血の気が引くような感じがした…
 聞かれたくないところを裕翔に突かれてしまったから…

 でも、どこかでいつかは明かさなきゃいけない時が来る。

 それでも今は、明日の夏祭りの思い出を綺麗に彩りたい。

 今、裕翔との間に亀裂なんかいれたくないと、そんな風に自分の中で感じてしまったんだ。

 怖い、色々と気持ちが落ち着かない…
 裕翔、もう少しだけ待ってくれ…

「大和、ごめん!今の聞かなかったことにして…!」

「…なぁ、裕翔…?」

「んんっ!?なに?」

「…このあと、時間あるのか?」

 俺は、話題を逸らそうと必死だったのかもしれない。

 それを心の優しい裕翔は悟ってくれて、俺に時間があることを伝えてくれたんだ。

「…ならさ、明日の準備をしようか」

「ん…?明日の準備?」

「ああ、お祭りに行く準備だよ」

 どちらにしても俺たちは明日、お祭りに行くことに変わりはない。

 なら、二人でいい思い出を作りたいし、裕翔にとっても最高な夏祭りだったと思ってもらえるようにしたい。

 そして俺は、どうしても裕翔のアレを着た姿が見てみたいし、むしろ一緒に着ていきたい。

 俺は裕翔にお願いをし、衣服屋へ向けて自転車を走らせてもらったんだ。

 ◇ ◇

 ──衣服屋に着き、クーラーの効いた店内で涼む俺たち…やっぱり外の暑さには敵わない。

 裕翔は、なぜ衣服屋に連れてこられたのか、把握出来ていない様子で俺の後をちょこんと付いてきてくれていた。

「…お、あったあった」

「じ、甚平?」

 俺が裕翔と夏祭りに着ていきたかった物…
 そうそれは、暑い夏を涼やかに過ごす為に、そして夏の風物詩として着られる甚平だ。

「ああ、お祭りに行けるって分かってから、裕翔と着て行きたいなって、ずっと考えてたんだよ」

「た、だから今日もずっと考え事してたの?」

 俺は恥ずかしさのあまり、裕翔から目を逸らし、髪をわしゃわしゃとさせちまった。

 着ていきたいってだけじゃねぇもん…
 お前の甚平姿を考えただけで恥ずかしくなっちまってさ…?

 だってよ…裕翔が着たら、ぜってぇ可愛いに決まってるもん…

「そうだよ」と照れながら返答する俺を見て、裕翔も裕翔でちょっぴり落ち着かなく、頬を赤くしてるのが目を逸らした俺の視線にも映り込む。

 お前とお祭りに行けるだけで嬉しいし、同じ気持ちだったら俺は嬉しいな…

 そんな事を思いながらも、俺たちはお互い似合いそうな甚平と下駄を笑いながら選び合い、甚平を買い終えた俺たちは、明日に向けてそれぞれの帰路に就いたんだ。
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