お前のものは俺のもの-ハリネズミα男子と黒縁眼鏡のΩ男子-side:αY

翔(カケル)

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君が好き…これが言えないのに…

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 ──無事にカレーも出来上がる頃には、辺りも薄暗くなり、夜の訪れも目の前まで来ていた。

 薄暗くなってきたキャンプ場の大広場には、キャンプファイヤーが暖かさと共に力強く炎をあげて、辺り一帯を照らしてくれている。

 カレーはキャンプファイヤーを全員で囲みながら食べることになっていて、俺たち三人もカレーを片手に地面へ腰を据えたんだ。

「ん~っ!うんめぇ~っ!!!」

「うん、みんなで食べる夜飯もいいもんだな」

「うん!すごく美味しいねっ!」

 カレーの出来も完璧!さすが裕翔っ!
 ちょっと感じる肌寒さもカレーの刺激とキャンプファイヤーの暖かさが調和してくれる。

 三人で美味しくカレーを食べていたけれど、そんな中、裕翔のスプーンを持つ手が止まっている事に俺は気付き、目だけで裕翔の皿を見てみると…

 恥ずかしながらもそこには、俺が乱切りと勘違いして切り落とした輪切りの人参がちょこんと姿を現していたんだ。

 もしや…裕翔、人参嫌いなのか…?
 しかも、一個しか入ってない俺の輪切りがよりによって裕翔のカレーに…?

 誰にだって苦手なものはあるよな…なら…
 
 俺は徐に裕翔のお皿へとスプーンを伸ばし、人参をひょいっ!と奪い取ってやったんだ。

「ふ~ん…?お前の人参は俺のものな?」

 誰にだって苦手なものがあるとか言いながら、裕翔の弱みを見つけてしまった俺は、つい不敵な笑みを浮かべちまった。

「ううっ…いいよ、あげる!」

 苦手なくせに裕翔も裕翔で素直じゃなく、どこか強がって返答してくる。

 お前のそういうところも可愛いくて仕方ないんだよ?

 そんなどこか強がりな裕翔は、人参がなくなり食べやすくなったカレーをパクパクっと口へと運んでいっていたその時だ、担任の先公が俺たちの前にやって来て、手に持った無数の割り箸を差し出してきたんだ。

「お前らほんっとに仲良いよな!さぁ、この後はビッグイベント!肝試しだぞっ!?お前らはどのチームになるんだろうなっ?」

 真っ暗な山中をクラスメイト数人で協力しながらゴールを目指していく肝試しだ。

 ビッグイベントと言っていたけれど、怖いものに耐性がついてる俺は何も問題はなかった。

 けれど、心配なのは裕翔だ。

「裕翔、お前怖いのダメだろ?肝試し大丈夫なのか?」

 夏休みに連れて行ったホラー映画の出来事を知っている俺は、あの時の申し訳なさと共に何かあったらと大きな不安が過ぎったんだ。

 それでも裕翔は、怖さよりも仲間との思い出を選び、肝試しへの参加を決意したようだった。

「多分大丈夫…!もしかしたら、大和とも駿とも同じチームになれるかもしれないし!」

「はははっ!もし、裕翔が迷子になったら俺と大和で探してやるよっ!おばけの格好しながらさぁ!」

「おばけはやめて」と駿に返す裕翔に、いつの間にか俺らは笑い合っていたけれど、俺はやっぱり不安だったんだぜ…?

 そして、俺たちは先公が差し出した割り箸にそれぞれ手を添え、せーので引っこ抜いたんだ。
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