33 / 154
四章 俺の気持ちと秘密、そしてまだ見えぬ君の想い
⑦
しおりを挟む
──そして迎えた週末
平日は一平からの連絡も忙しさからか途切れ途切れになっていたものの、俺らは時間を見つけては週末の予定を練り込んでいた。
《ここで十時に待ってますね!》
一平との待ち合わせの場所もしっかりと決め、迎えに行く約束もしていた。こんなに濃厚なやり取りをしているはずなのに、やっぱり一平の顔は忘れてしまっていて…
でも、それでもいいと思えた。だって、君に会えれば忘れてしまった大好きな顔もすぐに思い出して、幸せな時間を送れるのだから。
「クロ?今日は、一平に会ってくるよ?」
『ニャッ!?ニャニャっ!?』
「ははっ!大丈夫っ!ちゃんと帰ってくるから」
『ニャンニャー!!』
身支度を終えた俺は、そうクロに約束を交し、以前買ったお菓子のセットを手に、一平と約束した場所へと向かっていったんだ。
◇ ◇
待ち合わせ場所に指定されたのは、札幌の街角から少し離れた最寄り駅だった。
行ったことが無い駅でもなかったし、ナビがなくても行ける場所。ただ、車を走らせる俺の気持ちは落ち着くわけがなかった。
あの空間で会う一平とは違う一平。
いつもスーツ姿の一平とは違うわけだ。
彼の私服、そしていつもの姿が見れる。
普通の恋なら当たり前のことも、今の俺らは当たり前のことが当たり前な訳では無い。
そして、一平の本当の気持ちをまだしっかりと聞けていたわけじゃないからこそ、俺の気持ちは色んな意味で落ち着かなかったのかもしれない。
そんなソワソワした気持ちで待ち合わせ場所に着くと、いつもなら俺より後に来るはずの一平が俺の車に気付き、可愛くもどこか凛々しくもある姿と共に笑顔で手を振ってくれたんだ。
初めて見る一平の私服姿。
暑いからなのか、黒い短パン姿に華奢な足。そして、白いシャツの上には、薄青いストライプ模様のワイシャツを綺麗に身に纏う姿。
至ってシンプルなのに、全てが一平と一体化し、鮮やかに着こなされている。いつも感じる爽やかでどこか甘くも大人っぽい一平は、私服でも変わらなかった。
「優太さん!おはようございます!」
「ああ、おはよう。待たせてごめんな?」
「え!?待ってないですよ!時間ピッタリじゃないですかっ!さすが、A型!」
「おいおい、バカにしてんのか?」
「ハハッ!してませんよっ!優太さんはいつも僕のことを待っていてくれてるって知ってるから」
返す言葉が見つからなくなった。
おちょくられているのかと思ったけれど、君はちゃんと俺のことを見てくれていたんだと、そう感じてしまって。
『知っているから』
君にしか見せたことの無い姿を君が受け取り、そして感じ取り、それを言葉にしてくれたら嬉しくて仕方ない。そのことまでも君は理解しているということなのかな?
そして君が発する一言一言で、俺はどんどん君に魅了されていく。そのことまで君は気付いているのかな?
「分かった分かった!とりあえず暑いから、早く助手席乗りな」
「ふふっ!分かりました、お邪魔します」
恥ずかしさから強がる俺に対し、いつも通り爽やかな香りを放ちながら助手席に座り込む一平。
どんなに強がったって、どんなに君に心を擽られたって、俺はこの空間が好き。君とのこの空間を大事にしていきたい。その気持ちは全く変わらない。
「じゃあ、動くぞ?」
「はいっ!どこでも着いていきます!!」
一平の笑顔とその言葉と共に、俺はハンドルを握りしめ、デートの舵を切り始めたんだ。
平日は一平からの連絡も忙しさからか途切れ途切れになっていたものの、俺らは時間を見つけては週末の予定を練り込んでいた。
《ここで十時に待ってますね!》
一平との待ち合わせの場所もしっかりと決め、迎えに行く約束もしていた。こんなに濃厚なやり取りをしているはずなのに、やっぱり一平の顔は忘れてしまっていて…
でも、それでもいいと思えた。だって、君に会えれば忘れてしまった大好きな顔もすぐに思い出して、幸せな時間を送れるのだから。
「クロ?今日は、一平に会ってくるよ?」
『ニャッ!?ニャニャっ!?』
「ははっ!大丈夫っ!ちゃんと帰ってくるから」
『ニャンニャー!!』
身支度を終えた俺は、そうクロに約束を交し、以前買ったお菓子のセットを手に、一平と約束した場所へと向かっていったんだ。
◇ ◇
待ち合わせ場所に指定されたのは、札幌の街角から少し離れた最寄り駅だった。
行ったことが無い駅でもなかったし、ナビがなくても行ける場所。ただ、車を走らせる俺の気持ちは落ち着くわけがなかった。
あの空間で会う一平とは違う一平。
いつもスーツ姿の一平とは違うわけだ。
彼の私服、そしていつもの姿が見れる。
普通の恋なら当たり前のことも、今の俺らは当たり前のことが当たり前な訳では無い。
そして、一平の本当の気持ちをまだしっかりと聞けていたわけじゃないからこそ、俺の気持ちは色んな意味で落ち着かなかったのかもしれない。
そんなソワソワした気持ちで待ち合わせ場所に着くと、いつもなら俺より後に来るはずの一平が俺の車に気付き、可愛くもどこか凛々しくもある姿と共に笑顔で手を振ってくれたんだ。
初めて見る一平の私服姿。
暑いからなのか、黒い短パン姿に華奢な足。そして、白いシャツの上には、薄青いストライプ模様のワイシャツを綺麗に身に纏う姿。
至ってシンプルなのに、全てが一平と一体化し、鮮やかに着こなされている。いつも感じる爽やかでどこか甘くも大人っぽい一平は、私服でも変わらなかった。
「優太さん!おはようございます!」
「ああ、おはよう。待たせてごめんな?」
「え!?待ってないですよ!時間ピッタリじゃないですかっ!さすが、A型!」
「おいおい、バカにしてんのか?」
「ハハッ!してませんよっ!優太さんはいつも僕のことを待っていてくれてるって知ってるから」
返す言葉が見つからなくなった。
おちょくられているのかと思ったけれど、君はちゃんと俺のことを見てくれていたんだと、そう感じてしまって。
『知っているから』
君にしか見せたことの無い姿を君が受け取り、そして感じ取り、それを言葉にしてくれたら嬉しくて仕方ない。そのことまでも君は理解しているということなのかな?
そして君が発する一言一言で、俺はどんどん君に魅了されていく。そのことまで君は気付いているのかな?
「分かった分かった!とりあえず暑いから、早く助手席乗りな」
「ふふっ!分かりました、お邪魔します」
恥ずかしさから強がる俺に対し、いつも通り爽やかな香りを放ちながら助手席に座り込む一平。
どんなに強がったって、どんなに君に心を擽られたって、俺はこの空間が好き。君とのこの空間を大事にしていきたい。その気持ちは全く変わらない。
「じゃあ、動くぞ?」
「はいっ!どこでも着いていきます!!」
一平の笑顔とその言葉と共に、俺はハンドルを握りしめ、デートの舵を切り始めたんだ。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
奇跡に祝福を
善奈美
BL
家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。
※不定期更新になります。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
36.8℃
月波結
BL
高校2年生、音寧は繊細なΩ。幼馴染の秀一郎は文武両道のα。
ふたりは「番候補」として婚約を控えながら、音寧のフェロモンの影響で距離を保たなければならない。
近づけば香りが溢れ、ふたりの感情が揺れる。音寧のフェロモンは、バニラビーンズの甘い香りに例えられ、『運命の番』と言われる秀一郎の身体はそれに強く反応してしまう。
制度、家族、将来——すべてがふたりを結びつけようとする一方で、薬で抑えた想いは、触れられない手の間をすり抜けていく。
転校生の肇くんとの友情、婚約者候補としての葛藤、そして「待ってる」の一言が、ふたりの未来を静かに照らす。
36.8℃の微熱が続く日々の中で、ふたりは“運命”を選び取ることができるのか。
香りと距離、運命、そして選択の物語。
宵の月
古紫汐桜
BL
Ωとして生を受けた鵜森月夜は、村で代々伝わるしきたりにより、幼いうちに相楽家へ召し取られ、相楽家の次期当主であり、αの相楽恭弥と番になる事を決められていた。
愛の無い関係に絶望していた頃、兄弟校から交換学生の日浦太陽に出会う。
日浦太陽は、月夜に「自分が運命の番だ」と猛アタックして来て……。
2人の間で揺れる月夜が出す答えは一体……
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
8/16番外編出しました!!!!!
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
3/6 2000❤️ありがとうございます😭
4/29 3000❤️ありがとうございます😭
8/13 4000❤️ありがとうございます😭
お気に入り登録が500を超えているだと???!嬉しすぎますありがとうございます😭
はじまりの朝
さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。
ある出来事をきっかけに離れてしまう。
中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。
これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。
✳『番外編〜はじまりの裏側で』
『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる