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三章 救いの手、嫉妬
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──気付けば日も過ぎ、週が明けた。
土曜、日曜は君にメールを送ることは出来ないために俺は何も出来ず、ただただ君への罪悪感だけが心を行ったり来たりとしているだけだった。
家ではクロが側にいてくれたから、一人じゃないんだと、心に少しだけゆとりはあったものの、クロもクロで俺の様子がおかしいことは、長く一緒にいるからこそ、お見通しだったのだろう。
それでも時間は待ってはくれない。
今日も変わらず職場へと足を運び、営業の合間に俺は、いつもの喫煙所でタバコに火を灯す。
いつもは美味しいはずのタバコが、何故だか煙を吐き出す行為すら、ため息混じりとなり、その行為の度に君のことを思い出す。
この喫煙所で君と過ごした日々。
二人でサボりながらも、笑い合ったこの空間。
君に会いたい…俺は君に謝らなきゃいけない。
俺の本当の答えは見つかった。そして、君も本当の答えを見つける為に距離を置いていたというのに、この誤解をしっかりと晴らさないと前には進めない…そう、また前の時と同じになってしまう。
俺は、寒さで手が震えているのだろうと心に何度も言い聞かせながら、意を決して一平へとメールを飛ばした。
《一平、ちゃんと話したいことがあるんだ。時間がある時に一度、会えたら嬉しいよ》
メールでなんて書き表せない。君に会い、君に誤解だったことをしっかりと自分の口から伝えなければ、俺の本当の想いは届かない…そう感じていたから。
ピコンっ!
《優太さん、今どこにいますか?》
メールを送って一分も経たずのこと、俺のスマホに届いたのは、一平からの返信だ。
あまりにも早い君からの返信に、久々の連絡なに対する嬉しさと、返ってきて良かったと思う安堵感、その裏に謝らなければいけないと強く思う罪悪感も入り混じり、俺はなんとも言えない気持ちになってしまう。
《いつもの喫煙所で、タバコ吸ってた》
《分かりました、五分もかからずで着きます》
《えっ?会いたいけど、仕事大丈夫なのか?》
《はい、僕も優太さんに会いたいので》
『僕も優太さんに会いたい』
いつもなら嬉しい響きなはずなのに、今はとてもそんな気持ちにはなれなかった。何故なら、君からの返事が、とても嬉しいような響きには聞こえないように感じてしまったから…
土曜、日曜は君にメールを送ることは出来ないために俺は何も出来ず、ただただ君への罪悪感だけが心を行ったり来たりとしているだけだった。
家ではクロが側にいてくれたから、一人じゃないんだと、心に少しだけゆとりはあったものの、クロもクロで俺の様子がおかしいことは、長く一緒にいるからこそ、お見通しだったのだろう。
それでも時間は待ってはくれない。
今日も変わらず職場へと足を運び、営業の合間に俺は、いつもの喫煙所でタバコに火を灯す。
いつもは美味しいはずのタバコが、何故だか煙を吐き出す行為すら、ため息混じりとなり、その行為の度に君のことを思い出す。
この喫煙所で君と過ごした日々。
二人でサボりながらも、笑い合ったこの空間。
君に会いたい…俺は君に謝らなきゃいけない。
俺の本当の答えは見つかった。そして、君も本当の答えを見つける為に距離を置いていたというのに、この誤解をしっかりと晴らさないと前には進めない…そう、また前の時と同じになってしまう。
俺は、寒さで手が震えているのだろうと心に何度も言い聞かせながら、意を決して一平へとメールを飛ばした。
《一平、ちゃんと話したいことがあるんだ。時間がある時に一度、会えたら嬉しいよ》
メールでなんて書き表せない。君に会い、君に誤解だったことをしっかりと自分の口から伝えなければ、俺の本当の想いは届かない…そう感じていたから。
ピコンっ!
《優太さん、今どこにいますか?》
メールを送って一分も経たずのこと、俺のスマホに届いたのは、一平からの返信だ。
あまりにも早い君からの返信に、久々の連絡なに対する嬉しさと、返ってきて良かったと思う安堵感、その裏に謝らなければいけないと強く思う罪悪感も入り混じり、俺はなんとも言えない気持ちになってしまう。
《いつもの喫煙所で、タバコ吸ってた》
《分かりました、五分もかからずで着きます》
《えっ?会いたいけど、仕事大丈夫なのか?》
《はい、僕も優太さんに会いたいので》
『僕も優太さんに会いたい』
いつもなら嬉しい響きなはずなのに、今はとてもそんな気持ちにはなれなかった。何故なら、君からの返事が、とても嬉しいような響きには聞こえないように感じてしまったから…
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