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五章 俺と君の狭くも広い道
④
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「ふふっ!君たちの想いは受け取った。なら、この後のことを一緒に考えよう。まずは、どうやって足を付けずに逃げ回るかだ」
「一平のスマホは、彼女にほとんど乗っ取られていると考えた方がいいと思います」
「そうだな、それともしかすると『盗聴』されてる可能性もあることを考えた方がいい。優太くんのスマホは問題ないかい?」
「俺は特に変わりないです。今まで一平とやり取りをしていたメールもアドレスを変えました」
「分かった、なら…一平くん、辛いと思うけどここから逃げる途中でそのスマホを叩き壊せるかい?」
大胆不敵な大輔さんからの提案。
でも足がついてしまっては、逃げる意味が無くなってしまうのも事実。一平のスマホが無くなっても、俺のスマホがあればなんとかなるということなのだろう。
「ス、スマホをですか!?」
「ああ、監視されてる以上、それしかない」
「分かりました、あとで壊します!」
「あとは、何か監視されていそうなものはあるかい?」
「監視されそうなもの…あっ…そういえば、さっき彼女からペンを返されました」
「なっ!今すぐそのペンと、もう一つのペンが何か違いがないかを確認するんだ」
もしかすると『盗聴器』や『超小型のカメラ』がペンの中に仕組まれているかもしれないと大輔さんは続け、俺と一平は『Yuta』のペンと『Ippei』のペンを隈なく確認した。
「恐らく、何もなさそうですが…」
「『Ippei』くんのペンと見比べても?」
「素人目じゃ、同じにしか見えなくて…」
「そうか…恐らく盗聴とかはないと思うが念の為、寂しいとは思うけれど今すぐ『Yuta』くんのペンを壊すことは出来るかい?」
「一平…」
「寂しいけど、僕の隣にはずっと優太さんがいてくれるから僕は構わないです。壊しましょう」
念には念を入れるため、一平が大切に使ってくれていた『Yuta』と刻まれたペンを袋に入れ、俺は金槌で木っ端微塵に破壊した。
二人の想い出は心の中でずっと生き続ける。
今は、目の前のことに向き合わなければ。
「よし、次だ。逃げるのは早い方がいい、モタモタしてたら次は何をするのかと探られても面倒だからな?そうだな…明日でもいいか?」
「あ、明日!?…で、でもどうやって…そ、それに家には猫がいるんです…」
どうしたらいいのかと相談したものの、大輔さんのあまりにも早い決断へ、俺たちは必死に着いていくことしか出来ない。そして大輔さんは「ちょっと待ってろ」と発しては、パソコンで何かを調べる音がスマホのスピーカーから居間へと響いた。
「だ、大輔さん、もしかして車でパソコンを?」
「ああ、家に着いちまったら何も出来ないからな!車通勤だったことを感謝しろよぉ!」
「ありがとうございます…」
スムーズにかつ、手慣れた様子で話を進めてくれる大輔さん。信じても大丈夫とは分かっていても、ここまで出来る大輔さんは、本当に何者なのだろうかと感じてしまうのも確かだ。
「よし、逃げる手段は確保した。次だ、一平くん、お金の件なんだが『君しか分からない君名義の口座』ってあるかい?」
「あ、あります…!」
「それは、彼女も知らないね?」
「知りません、教えたこともありません」
「よし、ならそのお金を優太くんの口座へと移せるだけ移すんだ。君のことだ、ネットバンキングぐらい使えるだろ?」
「はい、使えます!」
「なら、今すぐに優太くんへ送れるだけお金を送金し、旅の資金をコンビニのATMで降ろすんだ。そして、どこかのタイミングでその口座ごと解約することを忘れずにな?」
「わ、分かりました…なんかあった時にと思って、口座は直ぐに解約出来るようにと準備を進めておいたので大丈夫です」
一平は大輔さんの指示に従っては、俺の口座へとお金を送金してくれたのだけれど、俺へと送り込まれた桁に、俺の目が点になってしまったのは、言うまでもなかった。
「一平のスマホは、彼女にほとんど乗っ取られていると考えた方がいいと思います」
「そうだな、それともしかすると『盗聴』されてる可能性もあることを考えた方がいい。優太くんのスマホは問題ないかい?」
「俺は特に変わりないです。今まで一平とやり取りをしていたメールもアドレスを変えました」
「分かった、なら…一平くん、辛いと思うけどここから逃げる途中でそのスマホを叩き壊せるかい?」
大胆不敵な大輔さんからの提案。
でも足がついてしまっては、逃げる意味が無くなってしまうのも事実。一平のスマホが無くなっても、俺のスマホがあればなんとかなるということなのだろう。
「ス、スマホをですか!?」
「ああ、監視されてる以上、それしかない」
「分かりました、あとで壊します!」
「あとは、何か監視されていそうなものはあるかい?」
「監視されそうなもの…あっ…そういえば、さっき彼女からペンを返されました」
「なっ!今すぐそのペンと、もう一つのペンが何か違いがないかを確認するんだ」
もしかすると『盗聴器』や『超小型のカメラ』がペンの中に仕組まれているかもしれないと大輔さんは続け、俺と一平は『Yuta』のペンと『Ippei』のペンを隈なく確認した。
「恐らく、何もなさそうですが…」
「『Ippei』くんのペンと見比べても?」
「素人目じゃ、同じにしか見えなくて…」
「そうか…恐らく盗聴とかはないと思うが念の為、寂しいとは思うけれど今すぐ『Yuta』くんのペンを壊すことは出来るかい?」
「一平…」
「寂しいけど、僕の隣にはずっと優太さんがいてくれるから僕は構わないです。壊しましょう」
念には念を入れるため、一平が大切に使ってくれていた『Yuta』と刻まれたペンを袋に入れ、俺は金槌で木っ端微塵に破壊した。
二人の想い出は心の中でずっと生き続ける。
今は、目の前のことに向き合わなければ。
「よし、次だ。逃げるのは早い方がいい、モタモタしてたら次は何をするのかと探られても面倒だからな?そうだな…明日でもいいか?」
「あ、明日!?…で、でもどうやって…そ、それに家には猫がいるんです…」
どうしたらいいのかと相談したものの、大輔さんのあまりにも早い決断へ、俺たちは必死に着いていくことしか出来ない。そして大輔さんは「ちょっと待ってろ」と発しては、パソコンで何かを調べる音がスマホのスピーカーから居間へと響いた。
「だ、大輔さん、もしかして車でパソコンを?」
「ああ、家に着いちまったら何も出来ないからな!車通勤だったことを感謝しろよぉ!」
「ありがとうございます…」
スムーズにかつ、手慣れた様子で話を進めてくれる大輔さん。信じても大丈夫とは分かっていても、ここまで出来る大輔さんは、本当に何者なのだろうかと感じてしまうのも確かだ。
「よし、逃げる手段は確保した。次だ、一平くん、お金の件なんだが『君しか分からない君名義の口座』ってあるかい?」
「あ、あります…!」
「それは、彼女も知らないね?」
「知りません、教えたこともありません」
「よし、ならそのお金を優太くんの口座へと移せるだけ移すんだ。君のことだ、ネットバンキングぐらい使えるだろ?」
「はい、使えます!」
「なら、今すぐに優太くんへ送れるだけお金を送金し、旅の資金をコンビニのATMで降ろすんだ。そして、どこかのタイミングでその口座ごと解約することを忘れずにな?」
「わ、分かりました…なんかあった時にと思って、口座は直ぐに解約出来るようにと準備を進めておいたので大丈夫です」
一平は大輔さんの指示に従っては、俺の口座へとお金を送金してくれたのだけれど、俺へと送り込まれた桁に、俺の目が点になってしまったのは、言うまでもなかった。
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