秘密の異世界交流

霧ちゃん→霧聖羅

文字の大きさ
66 / 80
昔がたり

☆ツンデレか

しおりを挟む
「兄上が、一緒に暮らし始めたのだ。」
「おお! いいね!!」

 アルがそう言い始めたのは、それから1カ月後。
ずっと、『なぜか王都に帰らない』とか『父上達は帰ったのに』とかと言ってはいたんだけど、ようやくどうするつもりでいるのかを訊ねたらしい。
きっと、リアルでは目を輝かせてるに違いない。


嬉しそうにしてるアルの姿、見たいな。


 チラリと、そんな気持ちが浮かんだけれど、すぐに頭を振ってその考えを追い出した。
叶わない夢を見るのは、性に合わない。
以前のQ&Aでは納得できなかった、彼が『異世界』の住民だと言う話も、今ではそうなんだなと思っている。
『どこが? 』と誰かに問われてもきちんと答えられない。
けれど、『そうらしい』と言う風に解釈してる。
感覚的なモノだから、共有が難しいんだよ?

 それからは、ともかくアルの話題はお兄ちゃんの事で占められる様になった。
やれ、今日の晩御飯はなんだった。
やれ、採集を頼んで覗き見していたら、お兄ちゃんが戦っている姿が滅茶苦茶格好良かった。
やれ、今日は自分の為に~~~~をしてくれた。

 どんだけお兄ちゃんが好きなんだwww
一生懸命、チャットでそれを語り続ける彼に、モニターの前で思わずニマニマしてしまう。
最近、最初に一緒に始めたゲームの中で、アルのお兄ちゃんトークを聞くのがわたしのお気に入りだ。
アバターが可愛いし表情豊かだから、アルがお兄ちゃんの事を語るのを聞くのにこれ以上のツールは無いと思う。
見てるだけで、物凄く可愛い。
 ただ、偶にアルが無理にそうやって明るい話題を選んでいる様な気がしないでもない。
ちょっぴり、上滑りしているような雰囲気を感じる時があるんだよね。
もし。
もしも深刻な悩みごとや、辛いことがあるんだったなら……。
前みたいに私にだけでも話して欲しいと、そう思う。



 結局、お祖父さんが亡くなっても、お兄さんと暮らし始めても、彼が『地球』に来たいと言う事に変わりは無かった。
ほっとしたのと同時に、感じたのは少しの罪悪感。
 アルと暮らし始めたお兄さんは、再会した日にアルの事を傷つけてしまったと滅茶苦茶後悔しているらしく、あれやこれやと甲斐甲斐しく面倒を見ているらしい。
聞いていて、そこまでか……と思う事も多々あるレベルだ。
5歳までは2人きりで暮らしていたって言うのもあるのかもしれないけど、彼は結構なブラコンなんじゃないかと思う。最初の内はいじけ半分、諦め半分でいたらしいアルも、今では殆どその気持ちは無くなっている……様に見える。だって、話題の大半がお兄ちゃんで占められている位だし。
それでも、お兄ちゃんの前ではその辺は見せない様に取り繕ってるらしい。
『ツンデレ?』と聞いたら『まだデレてない』と言う返事が返ってきた。


ツンデレやん。
分かっててやってんのか。


 お兄ちゃんが知ったら、泣きそうだなと思う。
まぁ、仲が良いって事なのかもしれないけど。
私が弟にやられたらと考えてみて、『ぶん殴るな』という結果が出たんだよね。
アルのお兄ちゃんはそうじゃないと良いなぁ。


 そのうち、地球に来るための準備の一環だといいながら弟子を採ったりだとか、色々しながら現在に至ってる訳なんだけど……。
本当にその計画って、成功する可能性があるものなんだろうか?
やっぱり、実現できないものなのではないかという思いが捨てきれない。
彼が神の一柱ってやつだっていうんなら、余計にだ。
自分の部下が余所に逃げ出そうとしているのを、創造主サマとやらは快く見逃してくれたりなんかするものなんだろうか?
私が創造主サマだったら、絶対に逃がしたりなんかしない。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない 

堀 和三盆
恋愛
 一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。  信じられなかった。  母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。  そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。  日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

番が見つけられなかったので諦めて婚約したら、番を見つけてしまった。←今ここ。

三谷朱花
恋愛
息が止まる。 フィオーレがその表現を理解したのは、今日が初めてだった。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...