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再出発
ごめんね
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情報神様に今まで口にしないでいた本音を吐き出した晩から三日が経ち、わたしはにぃにと二人で話し合うことをきめた。
話し合いに選んだのは、お夕飯後の、あとはもう寝るだけという時間帯。
「改まって話って、なに?」
緊張した顔で背筋を伸ばしてわたし希望に耳を傾けてくれたけど、すべてを聞き終えるとにぃには口をへの字に曲げて視線をそらした。
「――ごめん。保証できない」
――やっぱり、か……
きっと、にぃにはそう言うんじゃないかと思ってたけれど、言い切られてしまうとどうしたらいいものか途方にくれてしまう。
「昨日のは、自分でも過剰反応だったと思うけど、フェリシアに危害を加えそうな相手がいたら頭に血が上る自信がある」
これは、獣人族アルアルってやつで、本能的なものからくる衝動。
獣人族の男性は、同族の女性――特に、自分に年の近い伴侶や姉妹に対する庇護欲がすごく強い。なぜかといえば、どちらも自分の種を残すことができる相手だから。
まあ、姉妹の場合は、他に託せる相手が現れたなら庇護下を外れるんだけど。
そんなわけで、庇護下にある女兄弟はとてもとても大事にするし、伴侶ができればそのお相手も同様に接する。庇護対象になっている女性に危害を加えるような相手がいたら、それこそ命がけで抵抗するものだ。
コレの面倒なところは、庇護下にある女性が手を出しちゃいけないところで――下手に手を出すと、男性が役に立たなってしまうらしい。心が折れるってやつなんだろうと思うんだけど、男性の心が繊細すぎて逆に心配だ。
「守ってくれるのは嬉しいんだけど、ね」
「うん」
「守り方にも色々あるでしょ?」
「……逃げるとか?」
「むしろ、一緒に戦う方向で」
情報神様は、わたしのことを甘やかしてながら、この件についての相談にも乗ってくれた。
そのときに、言われたのだ。
「女がだけが戦う種族もいる」って。
思い返してみれば、魔神様のほうが実は武神様より強いなんて話も聞いたような気もする。ついでに、情報神様が弱っちいってお話も。
それから、「兄ちゃんの年齢なら、ギリギリ交渉可能だろう』ってことも。
価値観の固まりきった成人には無理でも、価値観を構築中の今のにぃになら融通が利く可能性が高いらしい。
「フェリシアが?」
「うん、わたしが」
「どうやって?」
「武術系のスキルはないけど、精霊さんとの意思疎通は得意だもの」
なんか、お料理や土壌改良に協力してもらってたら、ガツンと四種類がSSランクになってしまった。情報神様いわく、あらかじめ詳細を決めて魔力の譲渡をしておけば、勝手に防御も攻撃もしてくれるレベルらしい。
そのことも含めて説得していくと、にぃには複雑な表情を浮かべる。
まあ、遠回しに『にぃには要らない』って言われてるようなものだし、気持ちは分からないでもない。でも、にぃにだって、火属性の精霊さんともっと話し合えば、すぐに同じようなことができるようになると思う。単純に肉弾戦が好きだから、魔法に手を出そうとしないだけなはずだから、そこは黙殺だ。
――むしろ、魔法主体にしてくれたほうが安心だし。
鍛錬だけでも生傷絶えないにぃにの怪我が、減りそうで。
「それは……そうだろうけど……」
「それに、わたしだって護身術は身に着けたほうがいいよね」
これも、情報神様に指摘されたこと。
獣人族の男性の庇護下にある女性だって、自衛手段は身に着けているものらしい。いくら伴侶や兄妹でも、異性が入り込めない場所があるからというのが理由の一つ。
もう一つは、庇護者がいなくなったときに子供を守るため、だ。
「え、フェリシアは無理でしょ」
「まぁ……苦手分野ではあるけど、ガンバルヨ」
わたしは体力的にも精神的にも脆弱で、他人と口喧嘩をするのにも苦手意識が強くある。物理的な暴力を振るうのなんて、もってのほかだ。
でも――
「でも……そうだね。体術や短剣術あたりは覚えた方がいいかも」
――あ、折れた。
思っていたより、ずっと早くににぃにが譲歩してくれた。
「常にミントをそばにおいて置けるわけでもないし、アレは森から出るととたんに弱体化しそうだし」
「まぁ、植物を操れるのが一番のウリだからねぇ」
それに、狭い場所では一緒にいるのは無理だ。
譲歩してくれた理由に納得しつつも、わたしの意見にキチンと耳を傾けてくれていたことが分かって、そのことがかなりうれしい。
「僕も、今は体術をメインに教わっているところだからちょうどいいね」
どうやら、にぃにはにぃになりに、わたしが泣かないようにと考えた結果、体術に身を入れ始めたところだったそうだ。
「怪我を少しでも軽く済ませられれば、今回みたいに心配を掛けずに済むんじゃないかと思ってさ」
と言われて、『そうじゃない、そうじゃないんだよっ』と心の中で叫んだ。
わたしが泣いてしまったのは、にぃにが死んじゃうと思ったからで……
――あれ?
大きく間違ってない、かも?
とりあえず明日からは移動を再開して、夕飯前の鍛錬にわたしも混じることにした。
「でも、フェリシアのことだからすぐにへばるんじゃないかな」
「にぃに、ひどっ! 事実かもだけどっ」
いつもの憎まれ口にとっさに言い返すと、ホッとした顔でにぃにが笑う。
「良かった。いつものフェリシアだ」
ここ数日、ずっと塞ぎ込んでいたものだから、ずいぶんと心配をかけていたらしい。
「ごめんね、にぃに」
「僕も、ごめん」
二人で一緒に謝り合って、この問題は一旦終了っ。
明日から、わたしも鍛錬、がんばります。
話し合いに選んだのは、お夕飯後の、あとはもう寝るだけという時間帯。
「改まって話って、なに?」
緊張した顔で背筋を伸ばしてわたし希望に耳を傾けてくれたけど、すべてを聞き終えるとにぃには口をへの字に曲げて視線をそらした。
「――ごめん。保証できない」
――やっぱり、か……
きっと、にぃにはそう言うんじゃないかと思ってたけれど、言い切られてしまうとどうしたらいいものか途方にくれてしまう。
「昨日のは、自分でも過剰反応だったと思うけど、フェリシアに危害を加えそうな相手がいたら頭に血が上る自信がある」
これは、獣人族アルアルってやつで、本能的なものからくる衝動。
獣人族の男性は、同族の女性――特に、自分に年の近い伴侶や姉妹に対する庇護欲がすごく強い。なぜかといえば、どちらも自分の種を残すことができる相手だから。
まあ、姉妹の場合は、他に託せる相手が現れたなら庇護下を外れるんだけど。
そんなわけで、庇護下にある女兄弟はとてもとても大事にするし、伴侶ができればそのお相手も同様に接する。庇護対象になっている女性に危害を加えるような相手がいたら、それこそ命がけで抵抗するものだ。
コレの面倒なところは、庇護下にある女性が手を出しちゃいけないところで――下手に手を出すと、男性が役に立たなってしまうらしい。心が折れるってやつなんだろうと思うんだけど、男性の心が繊細すぎて逆に心配だ。
「守ってくれるのは嬉しいんだけど、ね」
「うん」
「守り方にも色々あるでしょ?」
「……逃げるとか?」
「むしろ、一緒に戦う方向で」
情報神様は、わたしのことを甘やかしてながら、この件についての相談にも乗ってくれた。
そのときに、言われたのだ。
「女がだけが戦う種族もいる」って。
思い返してみれば、魔神様のほうが実は武神様より強いなんて話も聞いたような気もする。ついでに、情報神様が弱っちいってお話も。
それから、「兄ちゃんの年齢なら、ギリギリ交渉可能だろう』ってことも。
価値観の固まりきった成人には無理でも、価値観を構築中の今のにぃになら融通が利く可能性が高いらしい。
「フェリシアが?」
「うん、わたしが」
「どうやって?」
「武術系のスキルはないけど、精霊さんとの意思疎通は得意だもの」
なんか、お料理や土壌改良に協力してもらってたら、ガツンと四種類がSSランクになってしまった。情報神様いわく、あらかじめ詳細を決めて魔力の譲渡をしておけば、勝手に防御も攻撃もしてくれるレベルらしい。
そのことも含めて説得していくと、にぃには複雑な表情を浮かべる。
まあ、遠回しに『にぃには要らない』って言われてるようなものだし、気持ちは分からないでもない。でも、にぃにだって、火属性の精霊さんともっと話し合えば、すぐに同じようなことができるようになると思う。単純に肉弾戦が好きだから、魔法に手を出そうとしないだけなはずだから、そこは黙殺だ。
――むしろ、魔法主体にしてくれたほうが安心だし。
鍛錬だけでも生傷絶えないにぃにの怪我が、減りそうで。
「それは……そうだろうけど……」
「それに、わたしだって護身術は身に着けたほうがいいよね」
これも、情報神様に指摘されたこと。
獣人族の男性の庇護下にある女性だって、自衛手段は身に着けているものらしい。いくら伴侶や兄妹でも、異性が入り込めない場所があるからというのが理由の一つ。
もう一つは、庇護者がいなくなったときに子供を守るため、だ。
「え、フェリシアは無理でしょ」
「まぁ……苦手分野ではあるけど、ガンバルヨ」
わたしは体力的にも精神的にも脆弱で、他人と口喧嘩をするのにも苦手意識が強くある。物理的な暴力を振るうのなんて、もってのほかだ。
でも――
「でも……そうだね。体術や短剣術あたりは覚えた方がいいかも」
――あ、折れた。
思っていたより、ずっと早くににぃにが譲歩してくれた。
「常にミントをそばにおいて置けるわけでもないし、アレは森から出るととたんに弱体化しそうだし」
「まぁ、植物を操れるのが一番のウリだからねぇ」
それに、狭い場所では一緒にいるのは無理だ。
譲歩してくれた理由に納得しつつも、わたしの意見にキチンと耳を傾けてくれていたことが分かって、そのことがかなりうれしい。
「僕も、今は体術をメインに教わっているところだからちょうどいいね」
どうやら、にぃにはにぃになりに、わたしが泣かないようにと考えた結果、体術に身を入れ始めたところだったそうだ。
「怪我を少しでも軽く済ませられれば、今回みたいに心配を掛けずに済むんじゃないかと思ってさ」
と言われて、『そうじゃない、そうじゃないんだよっ』と心の中で叫んだ。
わたしが泣いてしまったのは、にぃにが死んじゃうと思ったからで……
――あれ?
大きく間違ってない、かも?
とりあえず明日からは移動を再開して、夕飯前の鍛錬にわたしも混じることにした。
「でも、フェリシアのことだからすぐにへばるんじゃないかな」
「にぃに、ひどっ! 事実かもだけどっ」
いつもの憎まれ口にとっさに言い返すと、ホッとした顔でにぃにが笑う。
「良かった。いつものフェリシアだ」
ここ数日、ずっと塞ぎ込んでいたものだから、ずいぶんと心配をかけていたらしい。
「ごめんね、にぃに」
「僕も、ごめん」
二人で一緒に謝り合って、この問題は一旦終了っ。
明日から、わたしも鍛錬、がんばります。
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