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ブロッキ神国横断中
宿場町 下
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とっぷりと日が暮れた町の中、細い光があちらこちらの店の中から道へと伸びる。
あたりが暗くなっているのに人の声が聞こえるのは、なんだか不思議。ウチの村なら、もう、みんなが寝静まっていてもおかしくない時間帯だ。
「あったあった。この店、美味いんだって」
美味しい匂いの漂う中、いくつもの店を通り過ぎつつ連れて行かれたのは、大きく扉の開かれた一軒の酒場。
夜の空気はだいぶ冷たくなっているというのに、沢山の人がいるせいか入り口に近寄っただけで店の中からの熱気がムワッと襲いかかってくる。
ついでに、他の店よりもさらに騒がしい。
「にぃに、シッポがブワってなってるよ」
ビックリしすぎて跳ね上がったにぃにのシッポは。見事なまでに毛が逆立っていて、いつもの倍は太く見える。
「フェリシアこそ」
ムッとした顔でわたしの視界からシッポを隠すにぃにに言われて確認すると、ぶっとく毛羽立った自分のシッポ。これはヒドイ。
いつも綺麗に整えてくれているにぃにが、嫌そうな顔をするはずだ。これだけヒドイと、逆に笑える。ケタケタ笑っているうちに、シッポはいつもの太さに戻った。大きな音と沢山の人に、ビックリしたのや怯えた気持ちが笑ったおかげでどっかに吹き飛んでいったみたい。
にぃにのシッポも、いつも通りの平常運行。
――すぐに戻っちゃったのは、ちょっとつまんないね。
にぃにがシッポを逆立てるなんて、あんまりみない。もうちょっと、あのままだったら面白かったのに。わたしが意地の悪いことを考えてるのがわかったのか、ジトっとした目で見下ろしてくるにぃににニッコリ笑い返していたら、先に酒場に入ってたピエリスさんがヒョコッと顔を出してきた。
「四人、入れ(る)ってさ」
長机と丸椅子がいくつも並んだ店内はとっても混んでいて、人にぶつからないように席に向かうのは大変だ。時々、自分のシッポを揺らめかし、ニヤニヤするおじさんもいるから、なかなか気が抜けない。
――ダメだ、ダメダメ。
負けちゃダメっ!
シッポ遊びは、ご飯のあとでっ!
本能的なもので、視界の端で揺らめくものがあると、ついついじゃれつきたくなるんだよね。精神的に大人になってくると、そういう衝動もなくなってくるそうだけど――まだまだ、わたしは無理そうだ。
目の端に動くものが見えるたびに足は止まるし、顔がそっちを向いてしまう。それはにぃにもおんなじで、ハッと我に返ってはお口が悔しそうにへの字に曲がる。
でも、そうやってにぃにがむくれた顔をすると、誘うように動くシッポが増えるのだ。多分、大人ぶろうとするにぃにの反応が楽しくて仕方ないんだろう。
でも、からかう人の気持ちもわかる。
わたしもたまに、にぃにのことを無性にからかいたくなるもん。反応が面白くて、つい……ね。
「ピエリスさん。なんかこの店、猫耳族が多いね」
数多の誘惑を耐えに耐え、空いていた席に座ってから気付いたんだけど、他種族の人は、一列に十人は座れるテーブルに一人か二人いればいい方だ。なんというか、もっと他種族の人が居ないのはおかしいと思う。
「そりゃ、猫耳族に受けが良い店を教わったからに決まってるっしょ。ウチのメンバー、俺以外み~んな猫耳族だし」
「にゃるほど」
同行者のウケが良さそうなお店を選ぶのは当然だ、と言うことらしい。
そんでもって、猫耳族が喜びそうなお店にした結果、周りは猫耳族お客さんだらけ……なんもおかしくなかったね。
「この店の自慢は、魚料理の種類が豊富なことさ」
お隣の席に座っていた、猫耳族のお姉さんがそう言いながら皿の上を指し示す。小皿の上にうず高く盛られているのは、小さな小さなお魚さん。
「酒のつまみだけど、食べてみるかい?」
どうやら人気のおつまみらしく、他のテーブルでも同じものを口に運びながらコップを傾けている。どの顔も幸せそうだから、きっと美味しいに違いない。
「ありがとう、おねーさんっ」
お姉さんが一つつまみ上げてくれたのを、大喜びでパクリと一口。
カリッとした噛み心地を楽しんだあともモグモグしていると、お魚さんの凝縮された旨味がじわじわじわりと口の中に広がり始める。
――コレは、美味しいっ!
「どうだい?」
「しあわしぇ」
意識せずとも、笑顔になっちゃう。
「チビ達も気に入ったっぽいし、ソレは注文確定でっと……」
ピエリスさんが呟く言葉が嬉しくて、わたしとにぃにのシッポの先がくるくるくるりと円を描いた。
あたりが暗くなっているのに人の声が聞こえるのは、なんだか不思議。ウチの村なら、もう、みんなが寝静まっていてもおかしくない時間帯だ。
「あったあった。この店、美味いんだって」
美味しい匂いの漂う中、いくつもの店を通り過ぎつつ連れて行かれたのは、大きく扉の開かれた一軒の酒場。
夜の空気はだいぶ冷たくなっているというのに、沢山の人がいるせいか入り口に近寄っただけで店の中からの熱気がムワッと襲いかかってくる。
ついでに、他の店よりもさらに騒がしい。
「にぃに、シッポがブワってなってるよ」
ビックリしすぎて跳ね上がったにぃにのシッポは。見事なまでに毛が逆立っていて、いつもの倍は太く見える。
「フェリシアこそ」
ムッとした顔でわたしの視界からシッポを隠すにぃにに言われて確認すると、ぶっとく毛羽立った自分のシッポ。これはヒドイ。
いつも綺麗に整えてくれているにぃにが、嫌そうな顔をするはずだ。これだけヒドイと、逆に笑える。ケタケタ笑っているうちに、シッポはいつもの太さに戻った。大きな音と沢山の人に、ビックリしたのや怯えた気持ちが笑ったおかげでどっかに吹き飛んでいったみたい。
にぃにのシッポも、いつも通りの平常運行。
――すぐに戻っちゃったのは、ちょっとつまんないね。
にぃにがシッポを逆立てるなんて、あんまりみない。もうちょっと、あのままだったら面白かったのに。わたしが意地の悪いことを考えてるのがわかったのか、ジトっとした目で見下ろしてくるにぃににニッコリ笑い返していたら、先に酒場に入ってたピエリスさんがヒョコッと顔を出してきた。
「四人、入れ(る)ってさ」
長机と丸椅子がいくつも並んだ店内はとっても混んでいて、人にぶつからないように席に向かうのは大変だ。時々、自分のシッポを揺らめかし、ニヤニヤするおじさんもいるから、なかなか気が抜けない。
――ダメだ、ダメダメ。
負けちゃダメっ!
シッポ遊びは、ご飯のあとでっ!
本能的なもので、視界の端で揺らめくものがあると、ついついじゃれつきたくなるんだよね。精神的に大人になってくると、そういう衝動もなくなってくるそうだけど――まだまだ、わたしは無理そうだ。
目の端に動くものが見えるたびに足は止まるし、顔がそっちを向いてしまう。それはにぃにもおんなじで、ハッと我に返ってはお口が悔しそうにへの字に曲がる。
でも、そうやってにぃにがむくれた顔をすると、誘うように動くシッポが増えるのだ。多分、大人ぶろうとするにぃにの反応が楽しくて仕方ないんだろう。
でも、からかう人の気持ちもわかる。
わたしもたまに、にぃにのことを無性にからかいたくなるもん。反応が面白くて、つい……ね。
「ピエリスさん。なんかこの店、猫耳族が多いね」
数多の誘惑を耐えに耐え、空いていた席に座ってから気付いたんだけど、他種族の人は、一列に十人は座れるテーブルに一人か二人いればいい方だ。なんというか、もっと他種族の人が居ないのはおかしいと思う。
「そりゃ、猫耳族に受けが良い店を教わったからに決まってるっしょ。ウチのメンバー、俺以外み~んな猫耳族だし」
「にゃるほど」
同行者のウケが良さそうなお店を選ぶのは当然だ、と言うことらしい。
そんでもって、猫耳族が喜びそうなお店にした結果、周りは猫耳族お客さんだらけ……なんもおかしくなかったね。
「この店の自慢は、魚料理の種類が豊富なことさ」
お隣の席に座っていた、猫耳族のお姉さんがそう言いながら皿の上を指し示す。小皿の上にうず高く盛られているのは、小さな小さなお魚さん。
「酒のつまみだけど、食べてみるかい?」
どうやら人気のおつまみらしく、他のテーブルでも同じものを口に運びながらコップを傾けている。どの顔も幸せそうだから、きっと美味しいに違いない。
「ありがとう、おねーさんっ」
お姉さんが一つつまみ上げてくれたのを、大喜びでパクリと一口。
カリッとした噛み心地を楽しんだあともモグモグしていると、お魚さんの凝縮された旨味がじわじわじわりと口の中に広がり始める。
――コレは、美味しいっ!
「どうだい?」
「しあわしぇ」
意識せずとも、笑顔になっちゃう。
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